家庭用ミシンでつくるベルベット風刺繍:ジグザグ下地→接着芯→サテン→カットで立体感を出す完全ガイド

· EmbroideryHoop
家庭用ミシンでつくるベルベット風刺繍:ジグザグ下地→接着芯→サテン→カットで立体感を出す完全ガイド
ジグザグの下地で“切るための溝”を作り、裏に接着芯を貼って安定させ、濃淡のサテンステッチでバラを刺繍。保護ガード付きの専用カッティングツールで上層布だけを切り起こし、ブラシとハサミで整える――この一連の流れで、手触りの良いベルベット風の質感を安全かつ確実に再現します。動画で示された要点を工程別に言語化し、道具・材料、セットアップ、作業手順、仕上がりの見極め、よくある失敗と復旧までを“見なくても作れる”水準で整理しました。

教育目的の解説のみです。 本ページは、オリジナル制作者の作品についての学習用ノート/解説です。権利はすべて原作者に帰属し、再アップロードや再配布は禁止されています。

元の動画は制作者のチャンネルでご視聴ください。今後のチュートリアルを支援するため、ぜひチャンネル登録を。下の「登録」ボタンをタップして応援してください。

制作者ご本人で、内容の修正・情報源の追加・一部削除をご希望の場合は、サイトの問い合わせフォームからご連絡ください。速やかに対応いたします。

Table of Contents
  1. プロジェクトの概要
  2. 準備するもの
  3. セットアップのポイント
  4. 手順:バラをベルベット風に仕上げる
  5. 仕上がりチェック
  6. 完成イメージと扱い方
  7. トラブルシューティングと復旧
  8. コメントから

1 プロジェクトの概要

ベルベット風刺繍は、刺繍で“切るための道筋”を作ってから、表層の布を選択的にカットし、ループ状の繊維や下に隠れた糸束を起こす手法です。安全に美しく仕上げるには、切る前の下地づくりが8割。ジグザグの幅・連続性、そして裏面の安定化が鍵となります。

この手法が特に映えるのは、花弁のように面と線が交錯するモチーフ。サテンステッチの面がつやを生み、切り起こした部分が柔らかな影を作ります。金糸の葉とボーダーを最後に加えることで、立体感がさらに強調されます。

適用範囲は広いものの、切り起こしを伴うため、極端に薄くて脆い布や、熱・圧に極端に弱い素材は不向きです。動画の作者はコットン系の白地を使用しています(コメント情報)。ここでは同様の安定した織物を想定します。

2 準備するもの

  • ミシン刺繍用のデザインデータ(バラのボーダー)
  • 刺繍用の糸:ピンク、レッド、ゴールド(コメントではレーヨン糸 SAKURA を使用)
  • 布:安定した白系の織物(コメントでコットン使用の言及あり)
  • 熱接着タイプの接着芯(裏面安定化用)
  • アイロン(温度は接着芯の指示に従う)
  • 保護ガード付きのカッティングツール(シームリッパーに似た専用ツール)
  • 小さめのブラシ(カット粉の除去・起毛)、先細のハサミ(余分糸のトリム)
  • しっかりフーピングできる枠と安定した作業面

材料と糸の色は映像の通りですが、正確な番手・密度・速度は明示されていません。密度や速度は手持ちの機種と布でテストし、糸切れが少なく面が埋まる設定を見つけてください。

Spools of pink, red, and gold embroidery thread next to the hooped fabric.
Various colorful embroidery threads are shown, ready to be used for the project, indicating the materials involved in creating the vibrant design.

加えて、フーピングの安定性が仕上がりを大きく左右します。もし枠が緩くなりがちなら、マグネット刺繍枠 を使って均一なテンションを確保すると、後工程のカット時にも布ずれが起きにくくなります。

2.1 道具ごとの役割

  • 接着芯:切り起こし時に下地を保護し、刺繍面の歪みを抑制
  • カッティングツール:ジグザグが作る“谷”に沿って表層のみを開く
  • ブラシ:カット粉の除去とパイルの立ち上げ
  • ハサミ:仕上げの飛び糸・毛羽を個別に整える

2.2 クイックチェック

  • 布はしっかりフーピングできるか
  • 接着芯は布と相性が良いか(テスト片で圧着テスト)
  • カッティングツールのガードは安定して機能するか

3 セットアップのポイント

刺繍機の型番や詳細設定は動画で明示されていませんが、最初に小さなジグザグで“切るための溝”を作り、その後サテンで面を満たす構成です。コメントによれば、作者は工業用のジグザグミシン(SINGER 20u)を自由運動(フリーモーション)で使用しています。家庭の刺繍機でも同様の工程は可能です。

フーピングは“ずれゼロ”を目指します。裏面に接着芯を貼る前提なので、刺繍前の布のたるみはこの段階で解消しておきましょう。もし枠入れが苦手なら、刺繍用 枠固定台 を使って水平・直角を一気に揃えると、長尺のボーダーでも位置ずれを防ぎやすくなります。

3.1 送りとジグザグ幅

ジグザグの幅・送りは具体数値の公開がありません。大切なのは“途切れない溝”を作ること。幅が狭すぎると切る時にツールが乗らず、広すぎるとサテン下地として弱くなります。

3.2 コメントからの補足(テーパー)

ジグザグの先細り(テーパー)について、作者は「膝で幅をコントロール」と回答しています。家庭機での再現は機種に依存しますが、要は“花弁の先端ほど狭い溝”を提供できれば、後のカットでも自然に先端が細く立ち上がります。

3.3 セットアップのチェックリスト

  • 枠のテンションが均一
  • 針・糸通し・上糸・下糸の状態が良好
  • テスト片でジグザグが連続して縫える

4 手順:バラをベルベット風に仕上げる

本章は動画の時系列に沿って進めます。各段階で「狙い」「注意」「期待される中間結果」を明示します。

4.1 ジグザグの下地を作る(00:09–01:29)

狙い:花弁を形づくる小さなジグザグで“切るためのチャネル”を全周に作ること。

手順: 1) 布を枠に張り、ピンク糸でジグザグを開始。 2) 花弁の各セクションを、隙間なく連続で縫い進める。 3) 1輪分の内側花弁がすべて埋まるまで繰り返す。

注意:密度がまばらだと、カット時に刃先が逸れやすくなります。

Embroidery machine needle creating small zigzag stitches on a rose petal outline.
A close-up shot of the embroidery machine needle creating small zigzag stitches, which form the foundational outline for the velvet effect on a rose petal.

期待される中間結果:1輪分の花弁に浅い谷ができ、次工程に進める状態。

One complete embroidered rose with all petals filled with zigzag stitches.
This image shows a single rose design where all petals have been meticulously outlined and filled with the initial small zigzag stitches, preparing them for further embroidery.

フーピング時に布が滑る環境では、刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 の保持力が有効で、微細なジグザグでも目飛びを抑えやすくなります。

4.2 接着芯を貼る(01:36–01:47)

狙い:裏面から面全体を安定化し、後のサテン・カットに耐える基盤を確保すること。

手順: 1) 刺繍面の裏側に接着芯を当てる。 2) アイロンで圧着(温度・時間は使用芯の指示に従う)。

クイックチェック:気泡やシワがなく全面が密着しているか。軽く引っ張って安定しているか。

An iron pressing fusible interfacing onto the back of the embroidered fabric.
An iron is used to carefully fuse a piece of interfacing onto the back of the embroidered fabric, which adds crucial stability for the subsequent detailed work.

注意:熱による生地ダメージを避けるため、当て布を併用するのが安全です。ここでの圧着が甘いと、カット時に下地が裂けやすくなります。

4.3 サテンステッチで花弁を満たす(01:52–02:50)

狙い:濃淡のサテンで花弁の面を形成し、最終的な色表現を作ること。

手順: 1) レッド糸で1輪のサテン面を刺繍。 2) ピンク糸へ交換し、他の花弁も同様に埋める。 3) すべての花弁が面で覆われるまで繰り返す。

期待される中間結果:すべての花がサテンで満たされ、下地のジグザグは覆われている。

Embroidery machine stitching red satin stitches over the zigzag base of a rose petal.
The machine is now applying dense red satin stitches over the earlier zigzag base, giving the rose petals their vibrant color and smooth appearance.
Two roses fully embroidered with red and pink satin stitches.
Here, two roses are fully embroidered with satin stitches, showcasing the completed main design of the roses before the gold accents are added.

裏面の状態も確認し、接着芯が支えていることを視認。

Close-up of the back of the fabric showing the satin stitches and interfacing.
A reverse view of the embroidery reveals the neat satin stitches on the back of the fabric, clearly showing the applied fusible interfacing for stability.

長尺の連続縫いでは、マグネット刺繍枠 brother 用 のように保持力が一定の枠だと、サテンの面に“波”が出にくく仕上がりが安定します。

4.4 金の葉とボーダーを加える(02:51–03:13)

狙い:金色の葉で陰影を強調し、上下のボーダーで図案をフレーミングすること。

手順: 1) 金糸に交換し、花の周りに小さな葉を刺繍。 2) デザイン帯の上下にボーダーラインを追加。

期待される中間結果:金の葉が要所に入り、上下のラインが一直線。

Embroidery machine stitching gold leaf details next to a pink rose.
Gold thread is precisely stitched by the machine to create delicate leaf details, adding a touch of elegance and contrast to the pink rose.
Embroidery machine stitching a gold border line along the edge of the design.
The machine is completing the gold border line, which frames the entire rose and leaf pattern, defining the edges of the embroidered strip.

金糸は摩擦に繊細です。糸調子が厳しい機種では、試し縫いでテンションを整えるとトラブルが減ります。ここまでの工程は通常の刺繍と同じ考え方でOK。安定したフーピングのために hoopmaster 枠固定台 を併用すれば、長いボーダーでも位置ずれを抑えやすくなります。

4.5 ベルベット化:上層を切り開く(03:14–04:05)

狙い:ジグザグの“溝”に沿って表層布だけをカットし、起毛感・立体感を引き出すこと。

手順: 1) ガード付きカッティングツールを溝に添えて滑らせる。

A blue velvet shaving tool placed on top of a finished embroidered red rose.
The specialized blue velvet shaving tool is introduced, positioned over a finished red rose, ready to begin the intricate process of cutting the fabric to create the velvet pile.

2) 押し込み過ぎない力加減で、サテンや下地を傷めないように進める。

Close-up of the velvet shaving tool cutting into the red rose petals.
The velvet shaving tool is carefully guided over the embroidered red rose petals, cutting the top fabric layer along the zigzag stitches to expose the underlying threads and create a textured surface.

3) ブラシでカット粉を払い、起毛を確認。

A small white brush sweeping away cut fabric fibers from the red rose.
A small white brush is used to gently sweep away the loose cut fabric fibers, tidying the surface and revealing the emerging plush velvet texture of the rose.

クイックチェック:溝の中だけが均一に開いているか、境界のサテンが無傷か。

注意:深く切り過ぎると基布を破損します。はじめては端材で習熟しましょう。

この工程で布の安定が甘いと破断リスクが上がります。保持力を底上げしたいときは、mighty hoop マグネット刺繍枠 のような強磁力で面圧を均一化できる枠が有効です。

4.6 余分糸のトリム(04:06–04:29)

狙い:飛び糸や毛羽を整え、仕上がりをクリーンにすること。

手順: 1) 先細の小バサミで、はみ出しや絡みを一点ずつ切る。

期待される中間結果:面の乱れがなく、触れて引っかかる糸がない状態。

この工程を終えると、ベルベット風の起毛が際立ち、金の葉・ボーダーとの対比が美しくなります。

Close-up of the finished velvet embroidered rose border, showing detailed texture.
An exquisite close-up of the completed velvet embroidery, highlighting the luxurious, raised texture of the rose petals, beautifully contrasted with the gold leaves and border.

4.7 参考:完成像(04:30–05:17)

最終仕上がりは、花弁がふわりと立ち上がり、金の葉と直線のボーダーで引き締まったボーダーデザイン。全景でも質感の差がはっきり読み取れます。

Full view of the finished velvet machine embroidered border.
The video ends with a full view of the stunning velvet machine-embroidered border, a testament to the intricate process and the beautiful tactile finish achieved.

5 仕上がりチェック

  • カットライン:溝の内側だけが均一に開いている。
  • サテン面:隙間や荒れがなく、色の面が連続している。
  • 起毛:ブラシで掃いたあとも自然に立ち、薄い“影”が出ている。
  • 裏面:接着芯とステッチが健全で、裂けや過度な波打ちがない。

プロのコツ:カット→ブラシ→再カットの小刻みループで仕上げると、過切断を防ぎやすい。途中で躊躇したら、一度ブラシで“現状の立ち上がり”を見てから次に進みます。

6 完成イメージと扱い方

  • ベルベット風の花弁に触れると、柔らかな凹凸が感じられる。
  • 金の葉とボーダーは、面と質感のコントラストをつくる飾り。
  • 取り扱い:起毛を潰さないよう、保管は平置き推奨。埃が気になれば柔らかいブラシで軽く払うだけで十分です。

長尺のボーダーでも、均一なテンションで刺繍できていれば、最終の見た目が整います。たるみが出やすい布なら、マグネット刺繍枠 と当て布+接着芯の併用で安定感を高めましょう。

7 トラブルシューティングと復旧

症状:カットが深く、基布まで傷ついた

  • 原因:押圧が強すぎる/溝が浅い
  • 復旧:作業を止め、周囲に補強の接着芯を追加。以降は極軽圧で再開。次回はジグザグの連続性を高め、テスト片で“力加減”を習熟。

症状:サテン面に隙間や段差

  • 原因:布のたるみ/枠のテンション不足
  • 復旧:枠を張り直し、面が均一になるように再縫い。テンション問題には マグネット刺繍枠 のような保持力が助けになります。

症状:金糸で糸切れ・毛羽立ち

  • 原因:テンション過多/針摩耗
  • 復旧:テンションを弱め、予備で試し縫い。針交換。

症状:切ったのに毛足が立たない

  • 原因:ブラッシング不足/切れていない箇所が点在
  • 復旧:ブラシで全体を均し、立ち上がらない箇所は溝の内側だけを軽く再カット。

症状:布が送られず溝が乱れる

  • 原因:摩擦・送り量の不一致
  • 復旧:押さえ圧・送り設定を見直し。端材で“連続性”の出る設定を再確認。

8 コメントから

  • どんな機械?作者は工業用ジグザグミシン SINGER 20u を自由運動で使用(コメント回答)。家庭機でも工程の思想は同じです。
  • テーパー(先細り)はどう作る?作者は“膝でジグザグ幅をコントロール”と回答。機種によっては代替操作になります。
  • 布は?コメントでコットン使用の回答。
  • 接着芯とは?“アイロンで貼る裏地(lining fabric ironed)”と説明されています。役割は裏からの安定化です。
  • 糸は?レーヨン糸 SAKURA を使用との回答。

実際の操作感は機種差が出ます。例えば brother ミシン など家庭機では、刺繍ユニットの仕様に合わせ、同様の“溝→接着芯→サテン→カット”の順序を厳守してください。

プロのコツ:長尺フレームワークでは マグネット刺繍枠hoopmaster 枠固定台 の併用で位置合わせと保持力を両立しやすく、後工程のカットでもズレにくくなります。

注意:メーカー・モデル固有の数値(密度・速度など)は動画で明示されていません。設定はテスト片で必ず合わせ込み、溝の連続性・面の埋まり・カット時の安全性で評価しましょう。

チェックリスト(作業前の最終確認)

  • データ:ジグザグ下地→サテン→装飾(金糸)の順で構成
  • 布と接着芯:テスト片で圧着と耐カット性を確認
  • ツール:カッティングツールのガードが機能すること、ブラシ・小バサミを手元に

作業中の合言葉は“浅く・連続・整える”。浅い溝を連続で刻み、切ったら必ず整える。このリズムが、失敗を最小化しながら立体感を最大化する近道です。