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Hoop Master Stationを開封する
従来のネジ締め式フープで、横の小さなネジを何度も回しては締め直し、最後の最後で生地がズレてやり直し……さらに円形の圧痕(枠跡)が残ってしまう。そんな経験があるなら、この開封はまさに「道具を変えるタイミング」の象徴です。動画の投稿者も、標準フープでの枠張りが「もう限界」と感じ、Tシャツの枠張りをもっと楽に、もっと安定させたいという目的がはっきりしています。
現場目線で言うと、枠張りは“利益が出るか消えるか”を左右する工程です。ここが不安定だと、位置ズレ→縫い直し→段取り替え→機械停止が連鎖します。
この記事では、動画を「実際に作業できる手順」に組み替えます。パーツ紹介だけでなく、なぜこの仕組みが再現性を作れるのか、マグネット刺繍枠の挟み込みリスクをどう避けるか、そして“買ったはいいが現場の受注に合わないサイズだらけ”を防ぐ考え方まで扱います。


eBayで中古購入した場合(到着直後に確認すべきこと)
投稿者はステーションをeBayで中古購入しています。初期コストを抑えられる一方で、リスクは上がります。中古の枠固定台は、見た目は揃っていても「足ゴムが欠けている」「ブラケットが曲がっている」「治具(fixture)が別サイズ用だった」など、到着してから気づく不足が起きがちです。動画内でも、別の枠用ブラケットが“別便で届く”と触れており、「箱が届いた=すぐ稼働」ではない典型例です。
現場的な結論はシンプルで、中古品は“キット監査(Kit Audit)”として扱うのが安全です。
このセクションで押さえること
- 箱を開けた瞬間にやる確認(いわゆる「振って確認」)
- 最初に使う枠に対して、治具が正しいかの見分け
- ブラケット/アーム不足で段取りが止まるのを防ぐ段取り
準備(組み立て前に効く“地味な”消耗品と事前チェック)
動画は開封が中心ですが、実際の枠張り品質は、こうした地味な準備で決まります。ここを飛ばすと、原因が治具や枠ではなくても「道具が悪い」と誤解しがちです。
見落としやすい準備物&事前チェック(省略しない):
- テーブルの周囲スペース(360°): 服が壁や荷物に当たって引っ張られると、枠が斜めに入ります。布が自然に垂れる余白を確保します。
- マイクロファイバー布: 中古は汚れや粘着残りがあることがあるため、ボード面の滑りを整えます。
- 小物トレー: つまみネジ等の小物を紛失しないため。床に落ちると探す時間が一番ムダです。
- 仮止め用テープ: 位置が決まったら“自分の基準位置”を目印化しておくと、次回から迷いません。
ペグ位置の合わせ方(動画で触れているポイント)
投稿者はまずメインボードを取り出し、「これでシャツの枠張りが楽になる」と話しています。

続いて治具について、5x5用の治具だと認識しており、設置位置としてpeg number 19に置くよう言われた、と触れています。
なぜペグ位置が重要か(現場の考え方): 枠固定台は、要するに再現性を作る治具です。ペグ番号は、襟や肩線からデザイン中心までの距離を“毎回同じにする”ための基準になります。
- 成人の左胸は、肩線から一定距離で管理することが多い
- peg 19は、投稿者が聞いた「基準位置」として提示されています
チェックポイント: 治具がペグにしっかり噛んでいないと、枠が傾きやすくなります。置いたあとにガタつきがないか確認します。
5x5治具の使い方(動画を手順化)
動画内で実際に手を動かしているセットアップはここが中心なので、作業として迷わない形に整理します。
手順1 — ボードを出して設置
- 大箱を開ける
- Hoop Masterのボードを取り出す
- 安定した台に水平に置く
チェックポイント: 四隅を軽く押して、ボードがカタつかないか確認します。カタつきは、そのまま位置ズレの原因になります。
期待結果: ボードが動かず、作業中にズレない状態。
手順2 — 5x5治具をペグにセット
- 治具をペグ位置に合わせて置く(動画ではpeg number 19に言及)
チェックポイント: 置いたあとに左右へ軽く動かしてみて、ズレないこと。
期待結果: 治具が固定され、枠を受ける準備ができる。
手順3 — 5x5枠(下枠)を治具に載せる

- 5x5枠の下側リングを治具に載せる
- 投稿者が向きのルールに触れています:下側の文字(bottom wording)が下向き
チェックポイント: 文字や注意書きのある側が下になる向きで合わせます。
期待結果: 下枠が治具に正しく収まり、衣類を入れる準備ができる。
手順4 — 上枠を合わせてマグネットの吸着を確認

- 上側リングを近づけ、吸着(スナップ)を確認します
チェックポイント: マグネットは一気に吸い付きます。指を挟まない持ち方(縁をつままない)で行います。
現場のコツ: 吸着後、外周を一周見て、上下リングが均一に当たっているか確認します。生地の折れ込みを噛んだまま閉じると、縫製中のズレにつながります。
プロジェクト別:Mighty Hoopサイズの使い分け
動画は、購入したMighty Hoopsの“サイズ紹介ツアー”になっています。サイズ選びは、品質とスピードの隠れた差が出るポイントです。
小規模事業でも、サイズは「入るかどうか」だけではありません。枠が大きいほど布が動きやすくなり、位置合わせが難しくなることがあります。ここでは、動画に出てきたサイズを用途に落とし込みます。
左胸の定番:5.5インチ
投稿者はセットアップで5.5インチの枠を使っています。
向いている用途(最初の1枚目に最適): 左胸ロゴ、小さめのフロント、ポロシャツ、キッズ衣類など。
現場で定番になりやすい理由: 扱いやすいサイズで、枠張りの再現性を作りやすい一方、作業性も確保できます。
袖・裾などの筒物:細長い枠
投稿者は細長い枠を2つ開封し、袖用途を想定しています。

- 4.25 x 13

- 4.25 x 16.2
これらが解決すること: 袖やパンツ裾は筒状でねじれやすく、まっすぐ枠張りしにくい部位です。細長い枠は“まっすぐなレーン”を作りやすくなります。
小〜中サイズ:用途の幅を増やす枠
投稿者は続けて以下を開封しています。
- 11 x 13
- 9 x 3
- 6.25 x 8.25

11 x 13: 投稿者は、ジャケット背中の大きめロゴ用途を想定しています。

9 x 3: 投稿者は「小さめの枠」と説明しています。横長で浅い領域に向きます。

6.25 x 8.25: 5.5インチでは縦が足りないが、大型枠ほどではない案件に使いやすいサイズです。
マグネット刺繍枠に切り替える理由
投稿者の動機は明快で、従来フープのネジ締めがストレスで、マグネットの方が枠張りが楽だという点です。
ただし現場では「楽」だけでなく、枠跡や段取り時間にも直結します。
枠跡(枠焼け)を減らす
投稿者は序盤で、従来フープの扱いづらさと跡の問題を示しています。
従来フープは摩擦と圧力で保持するため、素材によっては圧痕が残りやすくなります。マグネット刺繍枠は保持の仕方が異なるため、枠跡のストレス軽減につながる場面があります。
スピードと段取り(枠固定台の価値)
投稿者が「道具が合うと全部楽になる」と言っているのは、作業の迷いが減ることでもあります。
枠固定台は、位置合わせを“毎回同じ”に寄せるための道具です。枠張りの再現性が上がると、測り直しややり直しが減り、結果として段取りが短くなります。
使いやすさと引き換えの安全面(挟み込み)
マグネット刺繍枠はネジを回さない分、手首の負担は減りますが、挟み込みリスクが増えます。
強い磁力で一気に閉じます。
- 閉じるときに縁を指でつままない
- 不用意に近づけない
よくある反応(コメントより要約): 「すごい量の枠だね」という驚きの声がありました。サイズを一気に揃えるのは魅力的ですが、現場では“使う順番”を決めて、まずは定番サイズから運用を固める方が失敗が減ります。
大型枠(ラージフォーマット)の考え方
大型枠は、できることが増える一方で、ミスの影響も大きくなります。投稿者は非常に大きい枠を2つ開封しています。


13x16インチの用途
投稿者は13 x 16を「本当に巨大」と表現しています。
向いている用途: ジャケット背中など大面積。
10x19インチの用途
横に広い比率の枠です。
向いている用途: 横長の大きいデザイン。
大型枠のスタビライザー運用(動画で種類は出ないが、考え方は必須)
動画ではスタビライザーの種類までは指定されていませんが、大型枠ほどスタビライザー設計が重要になります。ここでは、素材の特徴から選ぶ考え方を整理します。
判断フロー:生地 → 大型枠向けスタビライザー
- 伸縮が強い(スポーツ系、フーディー等)?
- YES: カットアウェイ系を優先
- NO: 次へ
- 薄い/不安定(薄手コットン等)?
- YES: かさを抑えつつ支えるタイプを検討
- NO: 次へ
- 厚手で安定(キャンバス、デニム等)?
- YES: 目的に応じてティアアウェイ系も選択肢
- 表面が起毛・パイル(タオル、フリース等)?
- 常に: 上に水溶性フィルムを追加して沈みを防ぐ

ブラケット補足: 投稿者は、ブラケットが横向き/縦向きで使えるかの説明書を読んでいます。

実務の結論: 大型枠は、枠固定台側のブラケット/アームがサイズに合っていないと正しく固定できません。無理に合わない組み合わせで使うのは避けます。
次にやるべきこと(導入直後の立ち上げ手順)
投稿者は最後に、新しい枠を試すのが楽しみだと締めています。ここでは、そのまま現場導入できる“立ち上げ手順”にします。
新しい枠のテスト(ドライラン)
本番衣類を入れる前に、テストで確認します。
- 固定確認: スタビライザー+端切れを枠張りし、軽く動かしてズレがないか確認します。
- 干渉確認: 空枠を機械に付け、縫製範囲をトレースして干渉がないか確認します。
開封前チェックリスト
- テーブルを安定させ、衣類が垂れるスペースを確保
- 梱包材をすぐ捨てられるゴミ箱を用意(足元の転倒防止)
- マグネットを置く“安全エリア”を決め、電子機器から離す
- 自分の機械に必要なブラケット類が揃っているか確認(不足は別便の可能性あり)
ステーション組み立てチェックリスト
- ボードが水平でガタつかない
- 治具が指定ペグ位置(例:#19)にセットされている
- 治具がズレない
- 下枠の向き(文字が下)を確認
- 大型枠を使う場合、ブラケット/アームの適合を確認
毎回の運用チェックリスト(1枚ごと)
- 裏側の生地が引っ張られていない
- 厚い縫い代や段差がマグネットの噛み込み部に入っていない
- 吸着後、外周に隙間がない
- スタビライザーが枠範囲を十分にカバーしている
トラブルシュート(症状 → 原因 → すぐできる対処)
| 症状 | ありがちな原因 | すぐできる対処 |
|---|---|---|
| 縫製中に枠が外れる | 厚すぎる箇所や段差を噛んでいる | 段差を避けて枠張りし直す/その素材は別の枠方式も検討 |
| デザインが毎回傾く | 治具のセットが甘い/衣類を引っ張っている | 治具の固定を再確認し、衣類は“引っ張らずに置く” |
| 位置合わせがズレる(輪郭が合わない) | 枠内でのズレ/スタビライザー不足 | スタビライザーの固定方法を見直し、ズレ要因を減らす |
| マグネットでも枠跡が気になる | デリケート素材で圧が強く出る | 当て布や緩衝材を挟み、圧痕を分散する |
次の学習テーマ
投稿者は今後の動画も示唆しています。導入直後に伸びるテーマは次の2つです。
- 位置合わせの再現性: 左胸/中央など、基準点の取り方を固定する
- 動線設計: 枠固定台→刺繍機→取り外しの流れを短くする
マグネット刺繍枠で枠張りが速くなると、次は「機械の縫い速度がボトルネック」になりやすくなります。自分の受注量と作業時間を記録し、どこが詰まっているかを見える化するのが次の一手です。

