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1 プロジェクトの概要
大胆なレザレットの窓抜き文字から、下地の柄生地がのぞく「DAD」パッチ。帽子本体は一般的なRichardsonのトラッカーハットで、仕上がりはカジュアルかつトレンド感のある印象です。今回の方法は「レーザーカット+熱圧着」を組み合わせたもの。刺繍ワッペンではなく、レザレットを枠状に切り抜き、その窓に柄生地を収める構成がポイントです。
適したシーンと制約についても把握しましょう。デュアルヒートのハットプレスが活きる手法のため、上面のみ加熱のプレスでは初期タックがやや不安定になります(動画内でも「他機種の設定は不明」と言及)。一方で、デュアルヒートなら下プラテンの熱で粘着がすぐに活性化し、細かな位置調整や小パーツ(D/Aの中抜き)もズレにくいのが利点です。
2 準備するもの
- レーザー対応のレザレット(例:Lonestar Leatherette)
- 帽子(例:Richardson)
- 柄生地(コットンやフランネルなど)
- レーザーカッター(動画ではThunder系)
- LightBurn(デザイン用)
- マスキングテープ(レザレット裏の小片保持と汚れ軽減)
- LA Awesomeクリーナー+ペーパータオル(スス拭き取り)
- 鉛筆・ハサミ(生地のトレースとカット)
- ハットプレス(動画ではHotronix Fusion IQ 360のデュアルヒート)
- シリコンシート(本プレス時の保護)
- リントローラー(帽子のホコリ除去)
なお、刺繍で似た見た目を狙う場合は、帽子の固定と位置決めを安定させる意味で刺繍用 枠固定台を用意しておくと作業の再現性が高まります。
クイックチェック
- デュアルヒートのプレスを用意できるか(上下面加熱)
- レザレットと生地の色柄を相性で選べているか
- レーザーの排気・安全対策が十分か
3 LightBurnでのデザイン
3.1 ベース長方形の作成
新規テンプレートを開き、長方形ツールでパッチの外形を描きます。幅3.9インチ、高さ2.2インチに設定し、比率をロックします。角が立つと見た目が硬くなるため、角丸を適用して柔らかい雰囲気に整えます。角丸半径は0.2インチが基準。見た目に応じて0.1〜0.025へと弱めてもOKです。

寸法を確定したら、後工程の見切りをイメージして、文字周囲のマージン(縁幅)をイメージします。縁幅が狭いと、窓抜き文字の周囲で生地を抑える“フチ”が不足し、プレス後に端が持ち上がるリスクが増えます。

プロのコツ - 角丸半径0.2インチは、視覚的に柔らかく、角からの剥離や糸ほつれ(もし縫い留めを追加する場合)も抑えやすい無難値。最終の柄バランスを見て微調整しましょう。

3.2 文字追加(Impact)
フォントは視認性の高いImpactを使用し、中央に「DAD」を配置。生地を多く見せるため、文字サイズは可能な限り大きく、ただし縁幅が足りなくならないよう注意します。センター揃えツールで長方形と文字を正確に中央寄せ。色分けは「切断=赤」に統一(作者の運用ルール)し、すべてLine(カット)に設定、Fill(彫刻)になっていないか確認します。

クイックチェック
- 3.9×2.2インチになっているか
- 角丸が意図どおりか(強すぎないか)
- 文字サイズで縁幅が確保されているか
- Cuts設定がLine(Cut)で統一されているか
3.3 レーザー設定の目安
動画の例では、Speed 10 mm/s、Min Power 90%、Max Power 10%、エアアシストOnでレザレットをカットしています。設定次第でススの量や切断面が変わるため、素材と機種に応じて微調整を。作者は「低出力×複数パス」も今後検討すると述べており、スス低減の余地があります。

注意
- 設定は機種・素材差が大きく、動画ではThunder系での例示に留まります。他機種ではテストカットで最小限のスス・確実な貫通を両立するセットを探りましょう。
4 レーザーカットとクリーニング
4.1 クリーンな切断のコツ
レザレットをレーザー床に載せる前に、裏面へマスキングテープを貼っておくと、小片(DやAの中抜き)が散らばりにくく、煤汚れの裏写りも抑えられます。カット経路のプレビューで全体の動きと所要時間(目安:1.5分程度)を確認し、素材の置き方と発煙の排気を見直しましょう。

プロのコツ
- マスキングテープは端までしっかり密着させ、カット後に一括で剥がすとパーツ管理が楽になります。特に細いストロークや鋭角部は剥がれやすいので押さえ直しを。
4.2 ススの拭き取り(LA Awesome)
カット後はLA Awesomeをペーパータオルに吹き付け、レザレットの表面・側面をやさしく拭きます。黒いススがしっかり移るので、タオルはこまめに面を変えましょう。拭き残しは白い帽子や明るい柄生地に色移りしやすいため、丁寧に。クリーナーの残留がないかも最後に目視します。

クイックチェック
- 表面のススがタオルへ移り、レザレットに残っていないか
- 角部・切断面にクリーナーが残っていないか
- 小パーツが紛失していないか(D/Aの中抜き)

5 生地インレイの用意
5.1 トレースと微小調整
レザレットの窓抜き文字に合うよう、柄生地の位置を決め、文字の内側を鉛筆で軽くトレースします。カットは線より気持ち小さめに。わずかな余裕が、レザレット縁への干渉や盛り上がりを防ぎます。柄の向き(上下・リピート)もこの段階で確定しましょう。

プロのコツ - まずは大きめに荒取り→現物合わせで少しずつ落としていくと、隙間のない“ピタッと感”が得られます。

5.2 位置合わせの判断基準
- 文字輪郭と生地エッジが干渉せず、浮きや波打ちがない
- 柄の主役(花・チェックの交点など)が見せたい位置に来ている
- 3文字(D/A/D)間で柄のトーンが大きくズレない
ここで「刺繍版」の作り方も想像してみると、帽子向けの固定・位置決めはbrother 帽子用 刺繍枠が便利ですし、下準備の土台にhoopmaster 枠固定台を併用するとスピードと再現性が上がります。
チェックリスト(生地)
- トレースからの微少マージンが確保できている
- 柄の向き・見せ場が決まっている
- 3文字のバランスに違和感がない
6 ハットプレスのセットアップ
帽子はHotronix Fusion IQ 360のプラテンにしっかり装着。センターと高さを合わせ、しわが出ないようテンションを整えます。表面はリントローラーで微細なホコリまで除去しておきましょう。汚れが残ると圧着ムラや剥離の原因になります。

デュアルヒートの強み 下プラテンが約320°F(動画の文脈で言及)に温まっているため、レザレットの粘着が触れた瞬間に“仮接着”状態になります。これにより、文字の内側パーツ(D/Aの中抜き)も指で押さえるだけで安定し、ズレずに本プレス工程へ移行できます。

注意
- 上面のみ加熱のプレスを使う場合、初期タックが弱く中抜きが動きやすくなります。耐熱テープでの仮固定など、追加の工夫が必要です。
7 配置と本プレスの手順
7.1 配置(初期タック)
- 下プラテン上に生地片を配置(D/A/Dの窓に対応)
- レザレットのパッチを帽子センターに重ね、指で軽く押さえてタック
- 中抜きパーツを順に収め、位置・角度を微調整
デュアルヒートなら指圧だけで十分なタックが得られるため、位置が決まったらシリコンシートで覆います。

コメントからのヒント
- 単面加熱機のユーザーから「ワックスペーパー上で事前にレイヤーを仮接着し、まとめて帽子へ移す」アイデアが寄せられています。動画内での検証はなく、あくまで発想レベルですが、位置ズレ対策として一案です。
7.2 本プレス
- シリコンシートをパッチの上にかける
- プレスを閉じ、熱と圧で一体化させる(動画では詳細時間の明言なし。温度は約320°Fの文脈)
- 開いてエッジの浮きや気泡がないか確認し、必要なら部分的に再プレス
プロのコツ
- プレス痕が気になる場合、保護材を併用し、圧力分散を図ると痕が出にくくなります。ある視聴者の質問に対し、作者は保護材を分割して使っている旨を共有しています。
クイックチェック
- パッチ外周が均一に密着している
- 文字の中抜きが中心からズレていない
- 生地のしわ・気泡が見当たらない
8 仕上がりチェック
近接で確認すると、Aの中抜きなど細かいパーツにわずかなズレや寄りが出ることがあります。動画では「Aの中央が黒地の上でわずかにズレて見える」ケースがあり、作者は許容範囲ながら課題意識を共有しています。気になる場合は、初期タック時の押さえ時間を少し延ばし、エッジを一段強く“仮固定”してから本プレスに入ると改善します。
良い状態の目安
- 文字エッジに破れ・めくれがない
- パッチ縁が均一に密着し、指でなぞっても段差が気にならない
- 生地の柄が狙いどおりに見えている
9 完成イメージと活用
完成した帽子は、トレンド感のある太字フォントと、柄生地がのぞく立体感が魅力。色や柄を変えれば、イベントやギフト、自店舗のマーチにも応用できます。LightBurn側で文字を少し小さくして、下部に「EST. 2025」などの刻印スペースを残すアレンジも動画内で言及されました(刻印自体の手順・設定は未解説)。
アップリケではなく刺繍で展開するなら、厚みのある帽子のフレーミングにマグネット刺繍枠が扱いやすく、特に繰り返し量産では同じ位置に素早くセットできます。また、ブランドや機種に依存せず使える選択肢としてマグネット刺繍枠 brother 用のような互換情報を事前に確認しておくと、治具選びがスムーズです。
10 トラブルシューティング
症状:ススが多く、拭き取りに時間がかかる
- 可能性:出力が高すぎ/速度が遅すぎ/エアアシスト不足
- 対処:低出力×複数パスや速度見直しで発火を抑える。マスキングで裏移りも軽減
症状:中抜きがズレる・落ちる
- 可能性:初期タック不足/単面加熱で粘着が弱い
- 対処:デュアルヒートで押さえる時間をやや延長。単面加熱なら耐熱テープで仮固定
症状:パッチの縁が浮く
- 可能性:生地片が大きすぎて干渉/帽子面の油分・ホコリ
- 対処:生地をわずかに小さく再カット、リントローラーで表面クリーンアップ
症状:プレス痕が残る
- 可能性:保護材不足/圧力が一点に集中
- 対処:保護シートやパッドをかませる。シリコンシートで面圧を均一化
症状:柄の見え方がちぐはぐ
- 可能性:3文字間で柄の向き・見せ場が不統一
- 対処:トレース時に見せ場を決め、3文字の調和を優先して再配置
11 コメントから
- 生地裏の接着材は?:今回の制作では生地裏に追加の接着材は未使用(作者談)。必要に応じて独自に試験を。
- プレス痕対策:作者は保護材を分割して使用。シリコンシートで覆って本プレス。
- どのプレス?:Hotronix Fusion IQ 360(デュアルヒート)を使用。
- 単面加熱の工夫案:視聴者から、ワックスペーパー上で事前に仮接着→まとめて転送というアイデア。動画での検証はなし。
12 安全と前提
レーザーの運用では素材適合の確認と排気、周辺の可燃物管理が必須です。熱プレスは高温部に触れないよう、耐熱手袋の着用や作業動線の整理を。動画では数値の網羅はなく、温度は下プラテン320°Fの文脈がある一方、プレス時間・圧力の詳細は明言されていません。各自の機材・素材ごとにテストを行い、最小の時間と圧で確実な密着を見つけましょう。
決定分岐(素材・機材差への対処)
- デュアルヒートが使える→初期タックで位置を固め、短時間で本プレス
- 単面加熱しかない→耐熱テープや仮接着アイデアを併用、圧・時間を慎重に最適化
- ススが多い→低出力・複数パスやエアアシスト強化で燃焼を減らす
13 手順まとめ(チェックリスト)
準備(Before)
- レザレットと柄生地を選定、LightBurnを起動
- 帽子のセンター取り用品(定規・目印)とシリコンシートを手元に
- クリーナー、ペーパータオル、マスキングテープを準備
セットアップ(Design & Cut)
- 3.9×2.2インチの角丸長方形+Impactの「DAD」配置
- LightBurnはLine(Cut)、赤色レイヤーで統一
- レザレット裏にマスキング、テストカットでスス量を確認
組立(Assemble & Press)
- 生地をトレースして微小に内側でカット
- デュアルヒートで初期タック→中抜きを配置→シリコンシートで本プレス
- エッジ浮き・気泡・ズレを確認、必要なら追いプレス
発展メモ(刺繍派へのブリッジ) 刺繍で同系統の見た目を狙うなら、厚物に強いmighty hoop マグネット刺繍枠のような治具で帽子の再現性を確保し、位置決めにはhoopmaster 枠固定台で左胸位置合わせと同じ考え方を流用できます。機種ごとの互換やサイズではjanome 500e 用 マグネット刺繍枠の適合を事前に確認したり、汎用性の高いマグネット刺繍枠を選ぶ判断も有効です。さらにBrother系での拡張を想定するならマグネット刺繍枠 brother 用の情報整理も役立ちます。
