Table of Contents
飾りを足す前に:イントロダクション
コースターはすでに編まれた土台。ここに新しい糸を“表面上で”走らせるのがサーフェスかぎ針編みです。動画では3mmのかぎ針と合細系の糸を使用していますが、目的はあくまで表面に引き抜きのラインを描くこと。

プロジェクトの全体像としては、(1) サーフェスかぎ針編みで中央に縦の白いチェーンを10目つくり、(2) その糸端をとじ針に通して、(3) レイジーデイジーステッチで枝葉のようなループを左右に重ね、(4) 裏で固定して糸始末をして完成、という流れです。

クイックチェック
- 土台の“表裏”を正しく把握できていますか?
 
- デザインの起点(今回は下辺中央)を決めましたか?
 
- 作業糸は常に裏側、見えるのは表側のループのみになるよう意識しましょう。
 
サーフェスかぎ針編みを始める
最初のハードルは“糸の取り付け”。動画では、かぎ針を起点の目に差し込み、長めの糸端(後で処理するため)を残して、糸をフックにひっかけた状態で軽く結びます。必要なら二重にしてもOK。

この結び目はあとで裏側へ引き込めるので、表で少し見えても心配いりません。大切なのは、糸端を手で押さえて“アンカー”にし、最初のループを前面に出すこと。

プロのコツ
- 結び目は“仮留め”の意識で。強く締めすぎると、あとで裏に逃がしにくくなります。
 
- 糸端は後工程でも活躍します。ほどけ防止の相棒として、しっかりキープ。
 
次に、上方向へ一目進めて引き抜き編み(スリップステッチ)でラインを描きます。工程はシンプル。裏にある作業糸を針にかけ、表へ引き出し、そのままかぎ針上のループを通して引き抜く——これで1目。テンションは“微ゆる”が吉。

3〜4目つくると、等間隔の白いチェーンが見えてきます。動画では直線で10目を目標に進めますが、進行方向は自由。曲線やジグザグも、同じ引き抜きの積み重ねです。

注意
- 目に通す位置は毎回かならずしも“完全な目の中心”でなくてOK。大切なのは、土台の糸を確実に少し拾って固定すること(コメントにも回答あり)。
 
- 引き抜きがきつすぎると生地がつれます。ループの輪郭が見えるくらいの緩さを保ちましょう。
サーフェスの締めはシンプル。所定の10目ができたら、約70cmの糸端を残し、最後のループに糸を通して引き抜き、編みパートをクローズします。次章の刺繍にこの糸端を使います。
クイックチェック
- 10目できましたか? 目の大きさはだいたい揃っていますか?
 
- 糸端は十分に長く残しましたか(目安:70cm)?
 
レイジーデイジーステッチを極める
刺繍パートの準備は、いま残した糸端をとじ針に通すだけ。ここからは“針を上げる・ループを支える・固定する”の繰り返しです。
ループの作り方(最初のひと花)
起点は、サーフェスチェーンの糸が表に出てきた同じ場所。そこへ針を入れて一度下に落とし、少し上の位置から針を表へ戻します。親指でループを軽く押さえながら糸を引くと、きれいな涙型のループが立ち上がります。
動画では、サーフェスのラインよりもやや大きなループにして“モチーフが映える”バランスを取っています。ループが決まったら、出てきた点の少し上にひと針落として固定。これで最初のレイジーデイジーが完成。
クイックチェック
- ループの大きさは均一? きつすぎず、緩すぎず。
 
- 糸がねじれたり結び目になっていない? 親指で軽く押さえながら引くのがコツ。
分岐させてリズムを作る
次のループは、ただいま固定した起点と同じ場所から再スタート。斜め上へ角度をつけて針を出し、同じ要領でループを作ります。左右に交互に作っていくと、中央のサーフェスチェーンを軸にした“枝”のような対称形に。
プロのコツ
- 左右対称を保つには、針を出す位置を“前のループの固定点と平行”に意識。大きさが揃います。
 
- ループがきつく閉じてしまったら、針を戻さず“ループ側をそっと開く”イメージで整えると跡が残りにくい。
 
2つの技法をデザインに落とし込む
サーフェスチェーン=幹、レイジーデイジー=葉や花。たったこれだけで、見た目にメリハリのあるモチーフが作れます。動画でも、片側に数枚、反対側に数枚と、左右に振り分けることで、シンプルなのに映えるレイアウトに仕上がっています。
デザインのポイント
- 幹(サーフェスチェーン)の長さは“10目”が目安。短いと詰まり、長すぎると間延びします。
 
- ループは“幹より大きめ”が効果的。幹と葉の対比が生まれます。
 
- 固定のひと針は、ループ先端のやや上。押さえ過ぎず、形を保つ位置に。
 
完成形の例:動画後半では、枝を1本にした控えめなコースターと、3本の並列枝で少しリッチに見せたコースターの2種が紹介されています。シーンに合わせて使い分けられるのも魅力。
仕上げと糸始末
すべてのループを縫い終えたら、針を裏側へ抜き、結び止め。表に影響が出ないよう、裏で糸端どうしを小さく結んでから、数方向に分けてくぐらせて隠します。結び目は最小限に、糸端は表に透けないラインを選んで処理しましょう。
注意
- 結びが甘いと使用中に浮きが出ます。気になる場合は“二重結び→複数方向へくぐらせ”で安心感を。
 
- 透け色の糸は、厚みのある編み目の下を選んで通すと表に影が出にくいです。
 
アイデアとインスピレーション
・初心者は、まず“幹1本+葉3枚×左右”から。形が安定し、配置の感覚がつかめます。 ・慣れたら“幹2〜3本の並列”でリズムを変えて。コースターを2枚1組にして、柄違いのセットにしても素敵。 ・レイジーデイジーは葉にも花弁にも見える万能ステッチ。糸色を変えれば季節感も演出できます。
編集部メモ(機械刺繍派の方へ) 手刺繍と機械刺繍はアプローチが異なります。本記事は手で仕上げる方法に特化していますが、用語検索の目安として、次のキーワード例を残しておきます(詳細は別記事で扱います)。このチュートリアルの内容とは直接関係しない補足です。磁気 刺繍枠 for brother
同様に、ブランド別の呼称も複数存在します。比較検討のための語感を掴む用途でどうぞ。babylock 磁気 刺繍枠
産業機向けのアクセサリー名も広く流通しています。名称の一例としての記載にとどめます。mighty hoops for tajima
家庭用ミシンでも専用フレーム名が使われます。こちらも語彙リストとして参照ください。bernina 磁気 刺繍枠
アクセサリーブランド由来の用語も見かけます。製品固有情報は公式情報をご確認ください。dime snap hoop
一般名詞的に“磁気フレーム”と呼ばれることも。用途や互換性は機種次第です。magnetic フレーム
機種名そのものが話題のハブになる場合もあります。機能や仕様は公式の資料を参照してください。brother pr1055x
よくある質問
Q. サーフェスかぎ針編みって何ですか? A. すでに編まれた生地の“表面上”に、引き抜き編みなどで線や模様を描く技法です。動画では直線に10目のチェーンを作っています。
Q. どんな糸でもできますか? A. 動画では合細(fingering)を使用。糸や針サイズは生地との相性が大切で、硬すぎるとつれやすくなります。サイズ選びの具体値は動画以外では示されていません。
Q. レイジーデイジーの絡まり防止は? A. 親指でループを軽く押さえながら糸を引くと絡みを防げます。ゆっくり、スムーズに引くのがコツです。
Q. どんな作品に向いていますか? A. コースターはもちろん、ブランケットやバッグ、帽子など、編地のアクセントとして幅広く使えます(動画はコースター例)。
Q. 糸端はなぜ長めに残すの? A. 仕上げの縫いとめや、刺繍への移行(とじ針に通す)のため。長さは動画では約70cmが目安です。
コメントから:現場の疑問に答える
質問:ステッチの“中”を必ず通さないとダメ? 生地の糸を少し拾うだけでも固定される?
回答(制作者):完全にステッチの中を通らなくてもOK。作品の糸を少しでも確実に拾えていれば、サーフェスかぎ針編みはしっかり固定されます。
このポイントは、目を外したときの“やり直し負担”を減らす実務的な知恵。芯になる糸を見極めて、確実にキャッチしましょう。
—— 仕上がりを左右するのは、いつでも“テンション・位置・固定”。動画の手つきとこのガイドを往復しながら、一枚のコースターに小さな枝を育ててみてください。きっと次の作品でも、指が自然と同じリズムを刻んでくれるはずです。
