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課題:刺繍ミシン本体で長文を打ち込むのがつらい
家族のレシピ全文、詩の一節、複数行のメッセージなどを、刺繍ミシンのタッチパネル上で直接入力したことがある方なら、あの「しんどさ」は身に覚えがあるはずです。キーが小さく、反応がもたつくこともあり、途中の誤字を直そうとすると後ろをまとめて消す羽目になりがち。
現場的には、こういう状況は「操作疲れ(インターフェース疲労)」が起きやすい作業です。
動画ではCathyがBaby Lock Altairを使って、ミシン本体でも文字刺繍はできる一方で、「Carrot Cake(キャロットケーキ)」のように情報量が多い文章は、PCで文章を扱い、ミシンは刺すことに集中させた方が、速く・安全で・仕上がりも安定する、という実務的な回避策を見せています。
この手順で身につくこと(実務向けの流れ):
- 文章の整え方: Wordなどで文章を用意し、必要な範囲だけを確実に取り出す。
- 「Small Text」の使いどころ: 小文字向けの文字機能を使い、細かい文字を読みやすくする。
- 無線転送: USBの抜き差しを減らして、Palette 11からAltairへ送る。
- ミシン側での追加編集: IQ Designerで簡単なワンポイント(にんじん)を足す。
- 縫い上がりチェック: 小文字で起きやすい「下糸の見え」「極小ジャンプ糸」を潰す。

解決策:Palette 11で「コピー&ペースト」して一気に文字刺繍化
ポイントは、ミシン画面で同じ文章を二重に入力しないことです。PC上で文章を一度選択してコピーし、Palette 11の「Small Text」にそのまま貼り付けます。
これが品質管理として効く理由: 小さな文字ほど、わずかなミスが致命傷になります。
- 入力ミスの低減: 例えば「2 cups sugar」の数字が抜けると内容が破綻します。刺繍になった誤字は基本的に取り返しがつきません。
- 見た目の間隔確認: PC画面の方が、文字間(詰まり/空き)を確認しやすい。
- 再計算が前提の拡大縮小: Palette 11側でサイズ変更すると、文字刺繍としてステッチが再計算されます。ミシン側で単純縮小だけをすると、密度が詰まりすぎて糸切れや針負荷につながるリスクがあります。

デザイン作成:ソフトでの手順(ステップバイステップ)
事前整理:今回の作業範囲
Cathyの作例は、コンポジションノート(表紙カバー)に、レシピ文章を密度高めの文字ブロックとして入れ、5x7枠で刺繍する内容です。
ゴールの定義: 文字が潰れずに読めること。動画ではソフト上のサイズを16に設定し、貼り付けた文章が刺繍として成立するように調整しています。

準備(ソフトを触る前)
小文字はごまかしが効きません。データが良くても、段取りが雑だと縫い上がりで一気に崩れます。
作業前の「見落としがちな確認」:
- 原稿の確認: Word等で誤字・改行位置を先に確定(ミシンやソフトで直すほど時間が増えます)。
- スタビライザー: 動画内でもスタビライザーを使用しています。小文字は布が動くと即アウトなので、安定性を優先してください。
- 糸色の考え方: 小文字は下糸が表に引き上がりやすい(後述)。最初から「上糸と下糸(ボビン糸)の色合わせ」を想定しておくと、やり直しが減ります。
- 糸切り用の小バサミ: 極小文字はジャンプ糸が残りやすいので、細かい糸処理ができるハサミを用意します(動画でも小さなハサミでのカットに触れています)。
量産や位置の再現性が必要なら、刺繍 枠固定台のような枠固定台を使うと、枠張り位置のブレを減らしやすくなります(同じ位置に同じレイアウトを置きたい作業ほど効果が出ます)。
準備チェック(Go/No-Go):
- 原稿(文章): 誤字・改行・不要な空白がない。
- 上糸/下糸: 小文字用に色合わせするか、少なくとも「下糸が出ても目立たない」設計にしている。
- スタビライザー: 文字が潰れない安定性を優先した構成にしている。
- 糸処理: ジャンプ糸をカットできる道具が手元にある。

ステップ1 — 文章ソースからレシピ文をコピーする
ここが一番の時短ポイントです。
- 文章ソースを開く(Microsoft Word、メール、Webページなど)。
- 必要な文章範囲をドラッグで選択。
- 操作: Ctrl + C(コピー)。
チェックポイント: 選択範囲の末尾に余計な空白や改行が混ざると、貼り付け後の整列や見た目に影響することがあります。貼り付け前に「必要な範囲だけ」になっているか確認します。

ステップ2 — Palette 11のSmall Textへ貼り付ける
- Palette 11を起動。
- 操作経路: Home Ribbon > Text > Small Text。
- ワークスペース(枠内)をクリックして入力状態にする。
- 操作: Ctrl + V(貼り付け)。
結果: 文章が一気にステッチ化されて表示されます。貼り付け直後は密集して見えることがありますが、まずは次のサイズ調整・整列まで進めます。

ステップ3 — フォント/ステッチ情報を確認し、サイズを調整する
動画では、フォントとして Calgary Medium Italic を選択しています。
- データ確認: ステッチ数は 7,490。
- サイズ調整: サイズを 16 に設定。
注意: 小さすぎる文字は一気に判読性が落ちます。動画でも「文字がとても小さい」前提で進むため、まずはソフト側で読みやすさを優先し、無理に極小化しないのが安全です。

ステップ4 — 5x7枠の中央へ正確に配置する
目測で寄せるのは避けます。
- 操作: Home > Edit > Arrange > Move to Center。
チェックポイント: 枠の外周ギリギリまで文字を寄せると、縫製中の干渉や余裕不足につながります。中央配置を基準に、必要なら全体を少し内側に寄せて安全側に倒します。

ステップ5 — 文字列を編集する(見出しを分ける)
動画では、タイトルの「Carrot Cake」を本文の小文字ブロックから外し、別の文字として作り直しています。
- 小文字ブロック側から「Carrot Cake」を削除。
- 見出し用に、別の文字オブジェクトを作成して追加。
狙い: 本文は小文字向け、見出しは見出し向けに作ることで、読みやすさと見栄えを両立しやすくなります。


小文字が「原因不明で崩れる」のを防ぐ段取りメモ
小文字が崩れる典型は、縫製中に布がわずかに動くことです。文字は線が細いぶん、ズレがそのまま読みにくさになります。
また、強く締めすぎる枠張りは、素材によっては枠跡(枠の白いリング跡)が残ることがあります。厚みのある素材や、押さえたくない表面のものは、無理にネジ式枠で締め上げない方が安全です。
改善の方向性: 厚みのある素材や、ネジ式枠で安定させにくい場合は、マグネット刺繍枠のようなマグネット刺繍枠を検討するのも一手です。
注意: マグネットの安全管理。 強力なマグネット枠は勢いよく吸着して指を挟む危険があります。接触面に指を入れないこと。ペースメーカー等の医療機器を使用している場合は取り扱いに注意してください。
Baby Lock Altairへ無線転送する
ステップ6 — ネットワーク経由で送信する
- Palette 11: Send and Sew タブを開く。
- 選択: Send to Network Machine ->(Altairなど該当機)
- 確認: 「Finished outputting data」のポップアップを待つ。
トラブル時の切り分け: 送信先のミシンが一覧に出ない場合は、PCとミシンが同じネットワークに接続されているかを確認します。

実務のコツ(運用)
業務や複数案件で回すなら、都度1ファイルずつ送るより、元データ(テンプレート)をPC側に残して管理する方が安全です。ミシン本体の保存領域だけに頼らず、再送できる状態を作っておくと、再作業が減ります。
IQ Designerでワンポイント図案を追加する
ステップ7 — Altair側でデータを呼び出す
- ミシン画面: 無線(クラウド/ワイヤレス)アイコンをタップ。
- 選択: 送ったレシピデータ。
- 操作: Set。

ステップ8 — 図形から「にんじん」を作る
動画では、IQ Designer(ミシン内蔵のデザイン機能)で、にんじんのワンポイントを素早く作っています。
- 図形: 葉っぱ形状を選ぶ。
- 編集: 横幅を細くして、にんじんっぽいシルエットに寄せる。
- 塗り: バケツ(塗りつぶし)でオレンジ。
- 葉: ブラシでグリーンを描き足す。
チェックポイント: 線の種類がジグザグになっていると、細部が太く出やすくなります。小さな図案は、狙う見た目に合わせて線種を確認します(動画でもジグザグ設定に注意しています)。



小さな文字を「読める状態」で縫うためのチェック
ステップ9 — 枠張りして縫う
いよいよ縫製です。
縫い順のイメージ: 動画では、文字(小文字)を縫ってから図案(にんじん)へ進みます。

運転中チェック(縫いながら見るポイント)
- 縫い始め: 異音がないか。
- 文字の見え方: 1行目が縫えた時点で一時停止し、潰れや糸の引きつれがないか確認。
- 下糸の見え: 小文字は下糸が表に出やすいので、早めに兆候を見つける。
トラブルシュート:動画で触れている「2大あるある」
1. 症状:下糸(ボビン糸)が表に点々と見える
- 見え方: 黒文字の上に、下糸色が「ゴマ塩」状に見える。
- 原因: 極小ステッチでは引き込みが起きやすく、下糸が表に出やすい。
- 対策: 動画のコツどおり、上糸と下糸の色を合わせる(例:上糸が黒なら下糸も黒)。見えても目立ちません。
2. 症状:文字間に極小の糸(ジャンプ糸)が残る
- 見え方: 文字と文字が細い糸でつながって「毛羽立った」ように見える。
- 原因: 文字間が短すぎて自動糸切りが効かない/糸端が残る。
- 対策: 小回りの利くハサミで手でカットする(動画でも小さなハサミでの処理を推奨)。
結果
完成したコンポジションノートの作例は、「PCで文章を作り、ソフトで小文字化し、ミシンは縫うだけにする」流れの強さがよく分かります。
- 判読性: Palette 11のSmall Textを使うことで、小さな文字でも読みやすさを確保しやすい。
- 作業効率: ミシン画面での長文入力を避けられる。
- 仕上がり: 下糸色を合わせる運用で、小文字の見え方が安定する。
標準の刺繍枠でも進められますが、厚みのある素材や枠張りの再現性を上げたい場合は、マグネット刺繍枠 babylock 刺繍ミシン 用のような選択肢も含めて、現場のボトルネック(枠張り・位置合わせ・枠跡)から逆算して道具を選ぶのが近道です。
