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刺繍用キャップの枠張りを理解する
最初に誤解を解いておきましょう。帽子は「全面をフープで挟む」必要はありません。挟むのは前面の刺繍する部分だけ。これを理解すると、ラッチが閉まらない苛立ちは一気に解消します。

初回のつまずきは、リングで帽子全体を抱え込もうとすること。動画の講師も同じ誤解を経験しています。「ラッチが閉まらない」問題の正体は、過剰に巻き込んでいることにありました。前面だけを乗せる意識に切り替えれば、操作はぐっと軽くなります。なお、他社のキャップ用フレームでも基本概念は共通です(例:brother キャップ 刺繍枠 でも“前面だけ”の固定が原則)。
プロのコツ
- 目線を“前面の張りとセンター”に固定し、側面や後ろは気にしすぎない。
- 迷ったら、ステーションのパーツがどこを支えているかを見直す。
注意
- 装着に力が要りすぎるなら、やり方が間違っているサイン。無理をしないで抜き差しを見直す。
正しいフープ手順:ステップ・バイ・ステップ
1) フープリングをキャップステーションにラッチ
リングをステーションにかけ、3回のクリック音で確実に固定します。音が頼り。軽く引いてズレがないか確認までがワンセットです。

クイックチェック
- 「カチッ」が3回聞こえたか?
- 軽く引いても動かないか?

2) スタビライザー(芯地)を置く
好みは分かれますが、講師は“先に置く派”。リングとステーションの隙間(ノッチ)に差し込み、軽く保持させます。先置きにすると、後の工程で安定感が増します。

プロのコツ
- 軽く“挟まる”位置に差し込む。ピンと張るより、面で支えるイメージ。
注意
- 後入れ派もいますが、この動画では「先に入れて安定させる」方法を採用しています。どちらでも最終的に動かなければOK。なお、強磁力のフレーム(例:mighty hoop embroidery)を使う場合も、芯地の一体化でズレを抑える考え方は変わりません。
3) 帽子の準備:厚紙除去とインナーリップ折り
帽子内部の厚紙を必ず取り除きます。厚く硬いため、針を傷める原因になります。見落としがちな工程なので、ここは意識的に。

次に、帽子内側の下端(インナーリップ)を折り下げておきます。これを忘れると、刺繍と一緒に縫い込んでしまい、見た目が一気に低品質化。折る、が正解です。

クイックチェック
- 厚紙は完全に除去した?
- インナーリップはすべて折り下げた?
コメントから
- 「どのOttoの帽子?」という質問がありました(型番は動画では未公表)。型によって厚みや芯の強さが異なるため、同じ操作でも“効く力”は微妙に変わります。
精密な位置決めとラッチのコツ
4) キャップステーションへスライド
帽子を上からスッと差し込みます。金属パーツがツバの上端に“触れたら止める”——深追いは不要です。押し込み過ぎは歪みのもと。

最重要ポイントは、金属とツバが接触するライン。ここで位置が決まります。触れたら十分、さらに押す必要はありません。


横から見ると、前面だけがフープで支えられ、側面や後部は巻き込んでいないのが分かります。これが正解の姿。

注意
- 「もっと下に入れたくなる」衝動を抑える。接触=適正位置。
プロのコツ
- 他機種のフレーム(例:tajima キャップ 刺繍枠)でも、ツバ上端の接触点で止める原理は同じ。
5) センターガイドで“少し右寄せ”に合わせる
ラッチを締める瞬間、帽子はわずかに左へ引っ張られます。そこで、合わせの時点では“ほんの少しだけ右”に置くのがコツ。センターガイドを活用して微差で狙い撃ちします。

次に、フープの“歯”がクラウンとツバの境目を確実に噛むよう配置。ここが噛めていないと、刺繍中に横ズレが生まれます。

ラッチを締めると、狙いどおりに中央へ収束。前から見て、左右に曲がらず真っすぐであることを確認します。

クイックチェック
- 右寄せ→ラッチ→中央に戻る動きが再現できたか?
- 左右に引いても動かないか?(動くなら再セット)
注意
- 歯が境目を掴めていないと、縫い進行で引っ張られてズレます。
コメントから
- 「帽子用フープは付属?」→付属との回答あり。センターガイドも活用できます。Smartstitchユーザーでも、他ブランドでも、センター合わせの理屈は共通です(例:ricoma 刺繍枠 を使う場合も同様)。
キャップステーションから刺繍ミシンへ
6) フープ済み帽子の取り外し
3つのリリースボタン(上1つ・側2つ・下1つ)を順に押して、フープ済みの帽子を外します。ここでズレがないか、再び軽く引いて確認しましょう。

ダッドハットなど柔らかい構造の帽子は、後部をクランプで補助固定すると安定します。構造がしっかりした帽子なら不要な場合もあります。
プロのコツ
- 作業の合間に、フープと芯地の一体感を指で“なでて”再確認。段差があれば、芯地が浮いているサイン。
7) 刺繍ミシンへ横向きに装着→スタート
フープ済み帽子は「横向き」で装着します。正面から突っ込むとヘッドに当たるため、必ず横方向から。3つのラッチ音を確認し、軽く引いて固定を確かめたら、デザインを選んでスタートを押します。


ミシンが走り出し、設定どおりに縫い始めれば成功。最初の数秒は手元を見守り、異音や引っかかりがないかをチェックしましょう。

注意
- 真っ直ぐ入れようとしない。横向きが正解。
- クリック音と手応えのダブルチェックで、走行中のトラブルを未然に防ぐ。
コメントから
- 「USBの読み込み・DST形式について」→DSTをUSBで読み込み、作成はHatch/Embrilliance/Inkstitch等のソフトを使用との回答あり。
正しくフープする意味と仕上がりの差
正しいフープは、刺繍の“見た目”だけでなく、“機械負荷”も軽くします。前面だけを確実に張り、芯地と帽子が一体となっていれば、針落ちも安定し、刺繍線が暴れません。センターが合っていれば、左右対称のロゴやモノグラムの印象は段違いです。
構造の硬い帽子はクランプなしでもいけますが、柔らかいタイプは補助固定が有効。フープやステーションの種類が違っても、基本原理は普遍です。たとえば、治具一体のステーション(hoopmaster station kit)であっても、「前面のみ」「ツバ基準」「右寄せ→中央」の考え方は共通します。
また、別ブランドのキャップフレーム(例:smartstitch キャップ 刺繍枠)でも、ツバ上端での“触れたら止める”基準は変わりません。異なるフレームにスイッチする現場でも、原理を押さえておけば迷いません。
プロのコツ
- 仕上がり確認は“正面からまっすぐ”と“真上から”の二視点で。左右の逃げや傾きは真上視点で見つかりやすい。
- 5回に1回は、最初の数百ステッチで一時停止→テンションやたるみを再チェック。
コメントから
- 「先のステッチへスキップできる?」など操作系の質問も出ていましたが、動画内では触れられていません。機種マニュアルの項目参照を推奨します。
まとめと次の一歩
帽子のフープは「前面のみ」「3クリック」「ツバ上端で止める」「右寄せ→中央」の4点を守れば、再現性が上がります。工程ごとに“軽く引く”チェックを挟むことで、走行中のトラブルを未然に防げます。
最後に、異なる機種・フレームを使う読者へ。原理は同じです。たとえば、磁力系フレーム(smartstitch 磁気 刺繍枠)でも、芯地と帽子を面で安定させ、前面にピンポイントでテンションを掛けるのが要。ブランドが変わっても、ツバ基準とセンター合わせは普遍です。
次の一歩
- USB→DSTの基本を学ぶ(読み込み・刺繍開始までの流れ)
- 帽子以外(シャツ/パーカー)でのフレーミングも原理を転用(動画コメントにも要望あり)
- 作業効率を高めるステーションの比較検討(例:master 刺繍枠 系や配置治具)
注意
- この動画では具体的なテンションやスピードなどの機械設定には触れていません。設定は機種や糸・生地によって異なるため、各自の環境でテストしてください。
参考メモ
- フレームや機種が異なっても、ツバ上端の接触点とセンターの管理が結果を左右します。
- 代替のキャップフレーム(例:bai hat フレーム)でも、工程の順序とチェックは共通化できます。
コメントから(抜粋・要旨)
- 付属品の確認:帽子用フープは本体に付属との回答あり。
- データ形式:DST形式をUSBで読み込み。作成はデジタイザソフトを利用。
- 追加教材:USB関連の解説動画リンクが共有されました。
——シンプルに、正しく。あなたの一刺し目が、まっすぐ走りますように。
