目次
取付に必要な工具
拡張(フラット)テーブルは一見シンプルな追加パーツですが、多針刺繍機では作業インフラそのものです。重いパーカーや厚手ジャケットがアーム先で垂れると、生地の自重でフープ側に「引き(ドラッグ)」が発生し、位置合わせズレ(アウトラインとタタミが合わない等)や不要な振動につながります。
正しく取り付けると、生地を“支えて滑らせる面”ができ、アーム周りで生地が引っ張られにくくなります。このガイドは Smartstitch 系プラットフォームの動画手順をそのまま踏襲しつつ、現場で失敗しやすい「手応え」「仮締めのコツ」「面一チェック」を追加して、ガタつきのない仕上がりに寄せます。

この作業で身につくこと(失敗しやすい点も含む)
これは「板を付ける」作業ではなく、作業面の精度出しです。完了時点で、次ができる状態を目指します。
- 工具の見分け: 5mm と 4mm の六角レンチを、実際のネジの“入り方”で迷わず判断できる。
- ネジを傷めない外し方: 工場出荷時の固いネジをナメずに外す。
- 支柱の据え付け: 円筒サポート(支柱)をまっすぐ入れて、座面をきちんと当てる。
- 天板の向き判定: 皿もみ(段付き)のある面を上にして、ネジ頭を面一に沈める。
- 締結順: 位置ズレを作らない「仮締め→なじませ→本締め」でガタつきを防ぐ。
最大の失敗ポイント: 天板を上下逆に付けることです。ネジ頭が天面から出ると、衣類が引っ掛かりやすくなり、量産中に生地を傷める原因になります。
事前チェックリスト(段取りで差が出る)
金属に触る前に、現場の段取りを整えます。ここを急ぐと、ネジ紛失や斜め締めの原因になります。
- 電源OFF: 針・可動部の近くで作業します。必ず停止状態にしてください。
- ネジ置き: 外した純正ネジを保管するため、小皿やパーツトレーを用意します(後で戻す可能性があります)。
- 視認性: アーム下や穴位置は影になりやすいので、ライト(スマホライトでも可)を用意します。
- 当たり面の清掃: 取り付け面に糸くずやホコリが挟まると“高い点”になり、締めてもガタつきが残ります。布で軽く拭いておきます。
- 工具確認: 5mm 六角レンチ、4mm 六角レンチ、14番スパナ(片口)を手元に並べます。
作業の視点切替: テーブルを付ける=重衣料の作業が増えるサインです。テーブルで「引き」は減らせますが、枠張りのスピード課題は別問題です。段取りを見直すタイミングとして、ミシン刺繍 用 枠固定台 の導入を検討する方も多いです(枠張り時に衣類が作業者と“ケンカ”しにくくなります)。

アーム部の純正ネジを外す
動画では、外す場所が2エリアに分かれています。
- アーム前面(縦面)のネジ(5mm)
- アーム上面(中ほど)のネジ(4mm)
ここは精度が重要です。テーブルと衣類の荷重を受ける“取り付け穴”を使うため、外すネジ位置を間違えないように進めます。
手順1 — 前面のネジを外す(5mm 六角レンチ)
アーム前面(縦面)にある六角ボルトを探します。工場出荷状態で固いことがあります。
- 5mm 六角レンチを差し込み、ネジ頭の奥までしっかり入っていることを確認します。浅いと角がナメやすくなります。
- 反時計回りに、一定の力でゆっくり緩めます。最初に「パキッ」とした感触が出ることがありますが、これは固着が切れる感触として動画でも想定される動きです。
- 外したネジはすぐにトレーへ。

手順2 — 中ほどのネジを外す(4mm 六角レンチ)
4mm 六角レンチに持ち替えます。アーム上面の中ほど(機械本体側寄り)にあるネジを外します。
- 手応えチェック: 緩め始めに違和感がある場合は、レンチが斜めに入っていないかを確認してから続行します。
- 穴の中が見えにくい場合はライトで照らし、ネジ穴周りにゴミがないか確認します。


補足:ネジの外し方が“ガタつき”に直結する理由
テーブルが微妙に振動する/しっくり来ない場合、原因がこの工程にあることが多いです。取り付け穴に異物が残っていたり、レンチの掛かりが浅くてネジ頭を傷めたりすると、後工程で正しく締結できません。
指先チェック: ネジを外した穴の周辺を指でなぞり、段差やゴミの噛み込みがないか確認します。ここに当たりが残ると、支柱が座面まで当たらず、締めても“永続的なガタ”になります。
円筒サポート(支柱)を取り付ける
円筒サポート(支柱)はテーブルの“脚”です。重い衣類の荷重を受け、機械側へ逃がします。動画では、先ほど外した前面側の穴に取り付けます。
手順3 — 円筒サポート(2本)をねじ込む
- 作業: 大きい円筒サポート(支柱)を2本用意します。
- 手応え: 最初の数回転がスムーズに入るのが正常です。最初から噛む/ザラつく感触がある場合は斜めに入っています。いったん戻して、面に対してまっすぐ(90度)を意識してやり直します。
- 締め付け: 手締めで座面まで当てたら、14番スパナでしっかり締めます。



手順4 — 支柱上部のネジを外す
支柱を機械に固定したら、支柱の上に付いている小さな六角ネジを外します。
- 六角レンチで外します。
- これは後で、白い天板を支柱に固定するために使うネジなので、紛失しないように分けて置きます。

補足:「しっかり」=「締めすぎ」ではない
支柱は“止まるところまで”が基本です。
- 緩い: テーブルが揺れ、刺繍中の振動要因になります。
- 締めすぎ: 機械側のネジ山を傷めるリスクが上がります。
動画では「確実に締める」ことが主眼です。手締めで座面を出してからスパナで締め、違和感が出るほど無理に追い込まないのが安全です。
増設を検討して 多針 刺繍ミシン 販売 を調べている段階の方ほど、こうした治具・固定の再現性が、日々のメンテ時間を左右することを実感しやすいはずです。
天板の向きを判定する(皿もみ側を上に)
ここが“成否を分ける”工程です。動画でも、向きを間違えるとネジが飛び出す(=間違い)と明確に示されています。
手順5 — 上になる面を見分ける(小さい段付き=皿もみが上)
白い天板の4つの取り付け穴をよく見ます。
- 面A: ただの丸穴に見える。
- 面B: 穴の周りに、少し広い段(すり鉢状の“座”)がある。
ルール: この段(皿もみ)がある面を上にします。 ネジ頭がその段に沈み、天面が面一(フラット)になります。



動画に沿った簡易確認(面一の考え方)
取り付け後にネジの余り(飛び出し)が見える場合、向きが逆です。無理に締め込まず、いったん外して天板を反転してください。
ネジ頭が面一であるべき理由(品質と安全)
面一は見た目の問題ではなく、作業上の必須条件です。
- 生地保護: ネジ頭が出ていると、衣類が引っ掛かる原因になります。
- 滑り: 天面が滑らかだと、生地が引っ張られにくくなり、作業中のストレスが減ります。
テーブルがフラットになった後、枠張り時の負担をさらに下げたい場合は、マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような固定台と組み合わせて、準備工程の再現性を上げる方向に進む方もいます。
テーブル固定:位置合わせと締結のコツ
ここから天板を機械に“馴染ませる”工程です。焦って1本ずつ本締めすると、穴位置が引っ張られて最後の1本が入りにくくなります。
手順6 — 天板をアームに載せる
- 天板のU字切り欠きを、機械のフリーアームに回し込むように差し込みます。
- 見え方チェック: 天板の穴から覗いて、下のネジ穴(支柱側/機械側)が中心に見える位置まで軽く動かして合わせます。

手順7 — 4本のネジを入れて締める(4mm 六角レンチ)
動画の重要ポイントは「最初は少しだけ締める」です。
- ネジ1本目: まずは数回転だけ。まだグラつくくらいでOK。
- ネジ2〜4本目: 同様に、全部“掛ける”だけにします。
- なじませ: 天板を軽く揺すって、自然な位置に落ち着かせます。
- 本締め: 4本すべてが素直に回る状態を確認してから、順番にしっかり締めます。

チェックポイント(工程ごとの合格ライン)
チェックA — 天板を載せた直後(ネジなし):
- 見た目: 支柱の上に天板が素直に乗る。
- 感触: 角を押しても、極端なシーソー状態になりにくい。
チェックB — 4本を仮締めした状態:
- 感触: 六角レンチが無理なく回る。重い場合は穴位置がズレています。いったん緩めて天板を動かして合わせ直します。
チェックC — 本締め後:
- 見た目: ネジ頭が天面から出ていない(面一)。
- 感触: 手でなぞって段差がない。
取付後の最終確認(作業前チェック)
- 4本のネジが確実に締まっている。
- 引っ掛かりチェック: 端切れを天面に滑らせ、ネジ頭で引っ掛からない。
- ガタつきチェック: 左右前角を押して、テーブルが機械に対して動かない。
- クリアランス: U字切り欠きが機械側パーツに当たっていない(擦れ音の原因)。
smartstitch s1501 のように動きの速い機種ほど、擦れや当たりは音・振動の原因になるため、最後に必ず確認します。
トラブルシューティング
経験者でもつまずくポイントを、症状ベースで整理します。
症状:ネジ頭が出る/天面が面一にならない
- 原因: 手順5の向きが逆(天板が上下逆)。
- 対処: 無理に沈めようとせず、いったん外して皿もみ側を上にして付け直します。
症状:1本だけネジが入りにくい
- 原因: 先に他のネジを締めすぎて、穴位置が引っ張られている。
- 対処: 他のネジをいったん緩め、天板が少し動く状態に戻してから入れ直します。最初は必ず“仮締め”で揃えます。
症状:締めたのにテーブルがわずかに揺れる
- 原因: 支柱の座面にゴミが噛んでいる/支柱が座面まで入っていない。
- 対処: 天板を外し、支柱上面と取り付け面を清掃してから再取付します。
症状:六角レンチに力をかけたくなる
- 原因: 斜め締め(ネジ山を噛ませている)。
- 対処: いったん戻し、手でまっすぐ入る状態を作ってから再開します。
* 医療機器: ペースメーカー等から距離を取ってください。
* 挟み込み: 強い力で吸着し、指を挟むことがあります。端を持って扱います。
* 電子機器: 機械の画面やUSBメモリ付近に直接置かないよう注意します。
現場のコツ:テーブルの安定化は“生地側”、次は“枠張り側”
テーブルが安定すると、生地の自重による引きが減り、作業が一段ラクになります。ただし、枠張りに時間がかかっている場合、テーブルだけでは生産性は上がり切りません。
その次の改善として、smartstitch 刺繍枠 の中でもマグネットタイプを検討する方が多いのは自然な流れです。ネジ式フープの締め込み疲れを減らし、テンションを素早く作りやすくなります。
改善の段階イメージ:
- レベル1(基礎): 拡張テーブル取付(本記事)。結果:重衣料の引きが減りやすい。
- レベル2(段取り短縮): マグネット刺繍枠へ。結果:枠張りの手数を減らしやすい。
- レベル3(再現性): 枠固定台の導入。結果:量産で位置合わせのブレを抑えやすい。
仕上がり(完成状態)
正しく取り付けできていれば、天板は面一でフラットに収まり、作業面が大きく広がります。

「正しくできた」状態の見分け方
- 向き: 皿もみ穴が上。
- 剛性: 支柱がしっかり座面まで入り、天板が機械の延長として一体に感じる。
- 天面: ネジ頭の段差がなく、手でなぞっても引っ掛からない。
- 実用: 重い衣類がアーム先で垂れにくく、作業中に生地が引っ張られにくい。
テーブルの次に何を強化するか(判断の目安)
作業が増えてくると、次の投資判断が必要になります。
- デリケート素材で枠跡が気になる?
- はい: テーブルは有効ですが、枠の圧が原因のこともあります。mighty hoops smartstitch 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のような選択肢を比較検討する人もいます。
- いいえ: 現状の枠でもOK。スタビライザー(刺繍用安定紙)の選定を優先します。
- 枠張り時間が刺繍時間より長い?
- はい: ボトルネックは準備工程です。固定台や治具の導入を検討します。
- いいえ: バランスは良好。データ作成や段取りの標準化へ。
- 一定間隔でロゴ位置がズレる?
- はい: 位置合わせの再現性課題です。Smartstitch 刺繍枠 の運用を含め、同じ位置に置ける治具・基準作りを検討します。
- いいえ: 現状の手合わせ精度は良好です。
次の仕事前チェック(運用面)
- 手なぞり: 天面を左右に撫で、段差があれば直す。
- 通り: 衣類が針板周りへスムーズに入るか確認。
- 工具保管: 六角レンチは紛失しない場所へ(後でテーブルを外す場面が出ます)。
- 最終固定: 体重を軽くかけても、テーブルがズレない。
smartstitch 1501 のような定番機では、この拡張テーブルは“付けたら効く”基礎アップグレードです。面一とガタなしを今日のうちに作っておくと、その後の作業が安定します。
