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SewWhatPro:フォント合体(文字の結合)手順
名入れタオルが「売り物みたい」に見えるかどうかは、ほぼ次の2点で決まります。データが整理されていること(余計な工程や不要な層がない)、そして刺繍順がムダなく組まれていること。単針機で色替えが頻発するとテンポが崩れ、停止のたびに糸が絡んだり、密度が高い箇所で針折れのリスクも上がります。
このプロジェクトでは、分割アップリケのイニシャル(ユニコーンの「B」)に、別フォントで名前を並べて1つのレイアウトにします。しかも枠は標準の4x4。単に「文字を置く」だけでなく、4x4の実刺繍範囲に収め、機械が止まらずに縫えるデータに整えるのが目的です。

まず押さえる:今回できるようになること(なぜ重要か)
作業は大きく2つに分かれます。ソフト側の整理が甘いと、ミシン側で必ず破綻します。
- ソフト側(SewWhatPro)
- 基準作り: 先にイニシャルを開いて「基準(アンカー)」にする
- 効率化: Iconsパネルで文字をドラッグ&ドロップして配置を高速化
- 整理: 不要な「透かし/追加層(白いビーンズテッチ)」を削除
- 安全設計: 4x4の安全範囲に収まるサイズへ調整
- 工程削減: 名前を1つの色工程にまとめ、停止回数を減らす
- ミシン側(Brother SE425)
- 下準備: アップリケ生地を“紙みたい”に扱える状態へ
- 縫いの流れ: 位置縫い→仮止め→カット→サテン
- パイル対策: タオルの毛足(パイル)をトッピングで押さえる
brother 4x4 刺繍枠で作業する場合、見落としがちなのは枠そのものより実刺繍範囲(一般に100mm×100mm)です。見た目は入っていても、どこか1点でも外側にステッチが出ると保存や読み込みでエラーになります。

Step 1 — 先にアップリケのイニシャルを開いて、位置を決める
- 基準(アンカー)を開く: SewWhatProでユニコーンのイニシャルデータを最初に開きます。これが作業全体の基準になります。
- 左へ寄せて余白を作る: 大きいイニシャルをグリッド左側へ移動します。チェックポイント: デザイン外周と赤い境界線の間に、目視で分かる余白があること。
- 意図してリサイズ: 動画では最大寄りの 3.90インチ まで上げています。
- 補足: 4x4で慣れていないうちは、エラー回避のために少し余裕を見てサイズを控えめにする考え方もあります(ただし本動画の実演は3.90インチ)。
チェックポイント: イニシャルが左に固定され、右側に名前を置くためのスペースが確保できている。
期待される状態: イニシャルが主役のまま、名前が窮屈にならないバランス。
Step 2 — 不要なステッチ層(「透かし」)を削除してデータを軽くする
データによっては、見た目を固める目的や制作者の都合で、余計なランニング/ビーンズテッチ層が入っていることがあります。動画では、仕上がりを濁す 白いビーンズテッチ が該当します。
- 糸順(Thread List)を確認: 右側の糸リストを見ます。
- 不要層を特定: 該当の糸番号(白)をプレビューで確認します。
- 削除: その糸レイヤーを右クリックして Delete。

チェックポイント: 糸リストの工程数が減り、プレビューがすっきりする。
期待される状態: 不要な密度が減り、時間・糸・硬さ(ゴワつき)を抑えられる。
注意: 刺繍順の安全確認。 レイヤー削除は順番に影響します。保存前に色順を追って、少なくとも「位置縫い(1周のアウトライン)」と「仮止め(タックダウン)」が残っていることを確認してください。これを消すとアップリケが成立しません。
Step 3 — フォントを合体し、Iconsで残りの文字をドラッグ配置する
毎回 File > Merge で1文字ずつ読み込むのは非効率です。動画のように Iconsパネル を使うと、配置が一気に速くなります。
- 最初の1文字だけMerge:
File > Mergeでフォントの最初の文字を読み込みます。 - サイズは小さいものを選ぶ: 動画でも「最小サイズを選ぶ」方針です。小枠では、後から無理に縮小するより安全に調整できます。
- Iconsパネルを開く: 右側の Icons タブ/パネルを表示します。
- ドラッグ&ドロップ: 残りの文字(r, o, o, k, l, y, n)をキャンバスへ直接ドラッグして並べます。

チェックポイント: 文字は一旦バラバラでもOK。整列ツール等でベースラインを揃え、読みやすい間隔に調整できる状態になっている。
期待される状態: 名前の配置が短時間で完了し、レイアウト調整に集中できる。
Step 4 — 4x4で詰まりやすい「長い y」問題(=範囲外ステッチ)
4x4では、y/g/j/p などの下に伸びる形(ディセンダー)が原因で、見た目は入っていても範囲外になることがあります。
- 症状: SewWhatProで「枠に入らない」旨の警告が出る。
- 原因: 文字の先端がわずかに外側へ出ている(例:境界を0.1mmでも超える)。
- 選択: 動画では「大きい枠で保存するか?」の確認が出ます。4x4しか使わない場合は、そのまま大枠保存するとミシン側で扱えない可能性が高いので、フォント変更やレイアウト調整で4x4内に収めるのが現実的です。
実務の判断: どうしても収まらない場合は、尾の短いフォントへ変更する/全体をわずかに縮小する、といった方向で解決します。
Step 5 — 名前を1工程にまとめる(Join Threads)
名前が8文字で、各文字が別工程扱いだと、単針機では停止・糸切り・再開が何度も発生します。そこで「同色の連続工程」をまとめて、名前を一気に縫う状態にします。
- 色を統一: 名前の各文字の糸色を、いったん同じ色(動画ではPowder Pink)に揃えます。
- コマンド:
Edit > Join Threadsを実行。 - 開始番号を指定: 動画では「名前が始まる糸番号(例:#22)から」同色の隣接工程を結合します。
チェックポイント: 糸リスト上で、文字ごとの工程がまとまって1つの工程になる。
期待される状態: 名前が1回の流れで縫えるため、停止回数が減って作業が安定する。
この「停止を減らす」考え方は、枠作業の安定にも直結します。標準枠だと停止のたびに枠や生地に触れてズレやすいので、データ側で止まる回数を減らすのは有効です。作業効率を上げるなら、刺繍ミシン 用 枠入れのように段取りを整える発想が役立ちます。
Heat n Bond Liteでアップリケ生地を準備する
アップリケは「準備が8割」です。生地が柔らかいままだと、サテンで縁を包むときに毛羽(ヒゲ)が出やすくなります。ここでは、アップリケ生地をコシのある状態にして、カットも縫いも安定させます。

準備:必要なものと段取りチェック
ミシンを動かし始めてから探し物をすると、ズレや糸絡みの原因になります。手元に揃えておきます。
- ハサミ: アップリケ用(小回りの利くもの)。タオル地は引っ掛けやすいので、刃先の扱いに注意。
- 接着芯: Heat n Bond Lite(縫えるタイプ)。
- アイロン: スチームなし(動画でも強調)。
Step 6 — スターチ → Heat n Bondの「サンドイッチ」で貼る
動画の流れは「スターチで固めてから貼る」です。
- 生地を固くする: 端切れに強めのスターチをスプレーし、押さえてハリを出します。
- サンドイッチ構成:
- 下:Heat n Bond Lite
- 中:生地
- 上:クッキングシート(パーチメントペーパー。アイロン保護)
- 接着: スチームなしでアイロンを当てて貼り付けます。
- 冷まして剥がす: 冷めたら紙を剥がし、裏面がツヤっとした接着層になっているのを確認します。

チェックポイント: 裏面の接着層が均一で、端切れが扱いやすい硬さになっている。
期待される状態: 後のカットで端がきれいに切れ、サテンで包んだときに毛羽が出にくい。
注意: 動画では「スチームを使うとトラブルになる」と明言しています。Heat n Bondの貼り付けはスチームなしを基本にしてください。
タオルへの枠張りと刺繍(凹凸素材の扱い)
タオル(パイル)は、沈みやすくズレやすい素材です。枠張りと押さえの工夫が仕上がりを左右します。

セットアップ:凹凸素材の枠張り方針
動画ではBrother SE425と標準枠で進めています。
失敗が起きる理由: 厚みのある素材を標準枠で強く締めると、枠跡が出たり、締め不足だと縫っている最中に動きやすくなります。
作業がきつい場合の選択肢: 厚手で枠が閉めづらい/枠跡が気になる場合は、マグネット刺繍枠のような選択肢を検討するタイミングになります。
Step 7 — 位置縫い(ダイライン)をタオルに縫う
- セット: タオルを枠にセットして刺繍準備をします(動画は標準枠)。
- 最初の工程: 位置縫い(アウトライン)を縫います。
- 避けたいミス: 動画では、開始糸の糸端を切らずに進めてしまったと述べています。位置縫いが終わったら、糸端は早めに処理しておくと後で目立ちにくくなります。

チェックポイント: タオル上に、アップリケ配置のための輪郭線がはっきり出ている。
期待される状態: 生地を置く「地図」ができる。
Step 8 — 生地を置く → 仮止め → きわでカット
- 配置: 接着準備した生地を輪郭線の上に置き、線が完全に隠れるようにします。
- 仮止め: 次の工程(タックダウン)を縫います。
- カット: 枠は外しても生地は枠から外さず、ハサミで縫い線ギリギリを狙って余分を切ります。


チェックポイント: 縫い線の外に出る余りが最小限になっている。
期待される状態: 後のサテンがきれいに縁を包み、はみ出しが出にくい。
タオル向け:スタビライザー選びの目安
| タオルの厚み | 想定用途 | 推奨スタビライザー | 枠の考え方 |
|---|---|---|---|
| 薄手(キッチンタオル等) | 飾り・軽使用 | 破れるタイプ(中厚) | 標準枠でも可 |
| 一般的なハンドタオル | 日常使用 | 状況により選択 | 標準枠/マグネット枠 |
| 厚手(バスタオル級) | 洗濯頻繁 | 状況により選択 | マグネット枠が有利な場合あり |
厚手素材で枠作業が不安定なら、マグネット刺繍枠 brother 用のように機械に合う枠方式を調べておくと、段取りが組みやすくなります。
セットアップ最終チェック
- 下糸(ボビン糸)残量: サテン工程まで足りるか
- 枠の固定: ぐらつきがないか
- 干渉: タオルの余りがアームやテーブルに引っ掛からないか
- 道具: ハサミが手の届く位置にあるか
水溶性トッピング(Solvy)でパイル沈みを防ぐ
タオルに直接サテンを打つと、パイルが縫い目から顔を出して仕上がりが荒れやすくなります。動画では Sulky Solvy を上に「浮かせて」使い、沈みを抑えています。

Step 9 — サテン前に水溶性トッピングを置く
- 素材: 透明の水溶性フィルム(Solvy等)。
- 置き方: 枠に一緒に張らず、デザイン部分にふわっと被せます。
- 効果: パイルを押さえて縫い目が表に出やすくなり、押さえ金の滑りも良くなります(動画内の言及)。
チェックポイント: 刺繍範囲全体がフィルムで覆われている。
期待される状態: サテンが沈まず、表面がなめらかに見える。
マグネット枠を使う場合の安全メモ
注意: 挟み込みに注意。 強力なマグネット枠は吸着力が強く、指を挟むと危険です。接合面に指を入れないようにし、慎重に扱ってください。
仕上げ:サテン縫いと糸始末
最後のサテン工程で、アップリケの端が「製品っぽく」決まります。

Step 10 — サテン縫いを走らせる
- 引っ張られ対策: タオルの重みで引っ張られると位置ズレの原因になります。タオルの余りはテーブル上で支え、無理なテンションが掛からないようにします。
- 糸の選択: 動画ではユニコーンのディテールに Sulky Holoshimmer を使用しています。
- 補足: 特殊糸は切れやすいことがあるため、糸調子やスピードは様子を見ながら安定側に寄せます。

チェックポイント: 生地端がサテンで完全に包まれ、パイルが表に出ていない。
期待される状態: エッジが均一で、近くで見ても粗が目立たない。
トラブルシューティング(症状→原因→対処)
| 症状 | 主な原因 | すぐできる対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| 「枠に入らない」警告 | 4x4の実刺繍範囲外にステッチが出ている(例:長いy) | フォント変更/全体縮小/レイアウト調整 | 端の突起(最外周)を確認してから保存する |
| サテンからパイルが飛び出す | トッピングなし | 可能なら上からトッピングを追加して再開(工程次第) | タオルは基本トッピングを使う |
| 工程が多くて停止が多い | 文字が別工程扱い | Join Threadsでまとめる | 文字部分は同色に統一してから結合 |
| ソフト上で白い線が見える | 不要なビーンズテッチ層 | 刺繍前にDelete | 取り込み後に糸リストを必ず確認 |
| 糸端が目立つ/塊になる | 開始糸端を処理せず進めた | 早めに糸始末 | 位置縫い直後に糸端を切る習慣化 |
仕上がりイメージ(完成の基準)
完成品は、アップリケが「貼り付けた布」ではなく、面が整って見え、名前もタオル表面にきれいに乗っている状態が理想です。

最終チェック
- 触って確認: サテンの縁がガサつかず、均一に感じる
- 見た目: 余計な白い層が出ていない/パイルが目立たない
- トッピングの除去: 余分は破って取り、残りは湿らせて溶かしてから仕上げる
量産目線:段取りを「再現可能」にする
1枚なら楽しくても、枚数が増えると枠張りと位置合わせがボトルネックになります。枠作業がつらい/安定しないと感じたら、brother 用 マグネット刺繍枠 4x4のような枠方式を検討すると、作業の再現性が上がります。
さらに位置を毎回揃えたい場合は、刺繍 枠固定台を組み合わせると、名入れ位置のブレを抑えた運用がしやすくなります。
