目次
Baby Lock Flourish 2の概要
「市販品みたいに見える秋プロジェクトを、家庭用刺繍機でも無理なく仕上げたい」——そんなときに参考になるのが、Lindaの「Pumpkin Kisses」デモです。ここで示されているのは、機械の価格や派手な機能ではなく、スタビライザーの選び方と貼り方、糸の扱い、画面情報の読み取りで仕上がりが決まる、という現実的なワークフローです。
現場でよく言う通り、刺繍は「操作2割・準備8割」。この解説では、LindaがBaby Lock Flourish 2をどう使っているかを、作業手順として再構成します。Konaコットンとシルク・デュピオニを同じ「布」として扱わない理由(布の性質が違う)、そして不安になりやすい2大トラブル——「糸端が残る」「糸色を間違えて縫い始める」——を落ち着いて処理する方法まで、手順化していきます。

補足(難易度について): デモ自体は「中級」扱いですが、ここでは初心者でも迷いにくいように、判断ポイントをチェック形式で整理しています。
また、BrotherのNQ系など別の単針機を使っていても、刺繍の物理(布が動く理由、テンションが崩れる理由)は同じです。ボタン配置が違っても、枠張りの精度、スタビライザーの設計、トッパーの考え方は共通して使えます。
プロジェクト準備:「Pumpkin Kisses」デザイン
LindaはScissortail Stitchesの「Pumpkin Kisses」を例に、縫い始めてから気づくと痛いミス(時間・材料ロス)を、スタート前に潰す段取りを見せています。
1) 刺繍枠サイズは「実寸ベース」で選ぶ
Flourish 2は5x7や4x4などの枠に対応します。Lindaは容量を見せるために大きめデザインを選んでいますが、ここは作業者側の判断が重要です。
「余白(セーフティマージン)」の考え方: 「入るはず」で枠を選ばず、デザインの刺繍範囲(ステッチフィールド)を基準に決めます。
- 余白の目安: デザイン外周に少し余裕がある枠の方が、針の動きに対して安定します。
- 布の支え: 薄い布に大きい枠を使うと、縫っている最中に布がバタつく(フラッギング)原因になります。デザインが小さいなら、可能な範囲で小さい枠を優先して安定性を上げます。

2) USBでデザインを読み込む(手順はシンプルに)
刺繍はデータ運用が前提です。Lindaは本体側面のUSBポートにUSBメモリを挿してデザインを読み込みます。
- 挿す: USBメモリを側面ポートへ。
- 探す: 画面の矢印でフォルダ/デザインを移動。
- 決める: デザインを選択し、画面で枠サイズを確認。

現場のコツ: 作業中はUSBを挿したままにしておくと、画面を戻したときの再呼び出しがスムーズです。
3) 画面は「生産チェック表」として読む
Lindaが強調しているのは、画面は単なるプレビューではなく、作業管理のための情報源だという点です。画面には次が出ます。
- 色順(カラーシーケンス): 糸替えの順番。
- 刺繍時間: 目安時間(最初の色が14分と表示)。
- 開始位置: 針が最初に入る位置(クロスヘア)。
不安が減る理由:
- 糸準備: スプールを先に並べておけます。
- 段取り: 「この色は14分」と分かれば、次のアイロン作業や次工程の準備が組めます。
- ミスの早期発見: 画面が次色を示しているのに違う糸を通していたら、縫う前に気づけます。

素材別の下準備:Konaコットン vs シルク・デュピオニ
ここが今回の技術的な核です。LindaはKonaコットンとシルク・デュピオニを、別の「対策が必要な素材」として扱っています。
安定(スタビライザー)の考え方:布のズレとシワを止める
高速で何千回も針が刺さると、布はズレたり縮んだりして形が崩れます。スタビライザーは単に厚みを足すのではなく、布が動きにくい状態を作るための土台です。
Konaコットン:接着タイプで“硬い土台”を作る
Konaコットン(Lindaは赤系「Pimento/Chili」)には、接着タイプの裏打ちを推奨しています。
手順:
- 「Heat and Stay」接着スタビライザーを必要サイズにカット。
- アイロンで布裏に貼り付け(温度などは製品指示に従う)。
- 貼り合わせた状態で刺繍枠に枠張り。

なぜ効くのか: コットンは安定しているようで、密度の高い刺繍では波打ちやすい素材です。接着で一体化させると、布がスタビライザーから逃げにくくなり、文字やサテンが締まりやすくなります。
枠跡(枠焼け)で悩む場合: コットンで枠を強く締めると枠跡が出たり、ネジ枠の締め込みが負担になることがあります。そうした作業性の課題を調べる入口として、マグネット刺繍枠のような選択肢があります。一般的なネジ枠の「摩擦と圧」で固定する方式に対し、マグネット刺繍枠は磁力で面を押さえるため、枠跡のリスクを抑えつつ張りを作りやすい、という考え方です。
シルク・デュピオニ:Dream Weaveを接着して“ほつれ崩壊”を止める
Lindaが見せるグリーンのシルク・デュピオニは、シワよりもほつれが問題になりやすい素材です。
手順:
- Floriani Dream Weave(柔らかい接着タイプ)を用意。
- カット後できるだけ早く、布裏に接着。
- 風合いを残しつつ、織りを固定して扱いやすくします。

なぜ効くのか: デュピオニは織りが動きやすく、針の貫通で糸が開いてほつれが進みがちです。接着で繊維を押さえることで、縫製中の崩れを抑えやすくなります。
トッパーの考え方:表面を整えてステッチを沈ませない
- コットン: 水溶性トッパーで表面を整え、文字やサテンをシャープに。
- シルク: Lindaは濡らして仕上げたくない意図を説明しています。水溶性を避ける判断が出る素材なので、仕上げ方法(濡らす/濡らさない)を先に決めてからトッパーを選びます。
手順化:枠張りと糸掛け
ここから「感覚」を「再現できる手順」にします。
ステップ1:枠張り——張りは“強すぎず弱すぎず”
Lindaは「きれいにピンと張る」ことを強調しています。
チェックポイント(触って判断):
- NG(緩い): ハンモック状。位置ズレや縫い乱れの原因。
- NG(引っ張りすぎ): 太鼓みたいに張る。外した後に戻ってシワ(パッカリング)になりやすい。
- OK: 軽く叩いても波打たない程度。過度に伸ばさない。
段取りの改善: ネジ枠での枠張りが毎回ブレる/曲がる/疲れる場合、まずは刺繍ミシン 用 枠入れの基本(張り・地の目・位置合わせ)を見直すのが近道です。作業量が増えるなら、刺繍用 枠固定台のような枠固定台や、babylock マグネット刺繍枠の導入で「人の手のブレ」を減らす考え方もあります。

ステップ2:トッパー貼り(見えにくいが効く工程)
Lindaは、通常は水溶性トッパーを角でテープ留めすると説明しています(動画では見やすさ優先で省略)。
手順:
- デザインより少し大きめにトッパーをカット。
- 枠に張った布の上に“置く”(浮かせる)。
- 角をテープで固定(マスキングテープ/スタビライザーテープ等)。粘着残りが強いテープは避ける。

ステップ3:糸掛け——テンション不良を防ぐ「1つのルール」
Lindaは上糸をガイドに沿って通し、レバーで針穴に通す流れを見せています。ここで結果を分けるのが次です。
最重要ルール:押さえ(フット)を上げた状態で糸掛けする。
- 理由: フットが上がるとテンション皿が開き、糸が正しく間に入ります。
- フットが下がったままだと: 糸がテンションに噛まず、下側で糸が団子状(いわゆる鳥の巣)になりやすくなります。
チェックポイント: 針穴を通した糸を軽く引いたとき、わずかな抵抗がある状態を目安にします。

注意(安全): 通電中は針周りに指・ハサミ・袖口を近づけないでください。停止後に再開する際は、手が完全に離れていることを確認してからスタートボタンを押します。
準備チェックリスト(スタート前)
- 画面: 枠サイズは合っているか/向きは正しいか
- 針: 針先は良好か(刺繍品質が落ちたら交換を検討)
- ボビン周り: 糸くずが溜まっていないか/ボビンが正しくセットされているか
- スタビライザー: 接着が甘くないか(浮き・シワがないか)
- トッパー: 角が浮いていないか
- 道具: カーブハサミが手元にあるか
よくあるトラブルと対処
ミス自体は誰でも起きます。差が出るのは「止め方」と「戻し方」です。
| 症状 | ありがちな原因 | Linda式の対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| デザイン上に糸端が残る | ジャンプ糸/縫い始めの糸端処理不足 | すぐ停止。 カーブハサミで布面ギリギリにカットして再開。 | 最初の数十針は目視で監視し、糸端が出たら早めに処理。 |
| 糸色を間違えて縫い始めた | 画面確認不足/糸替え時の取り違え | 位置合わせ(ステッチ位置)で復帰:<br>1. 停止<br>2. 糸を切る<br>3. 画面の位置(+/-)でステッチを戻す<br>4. 正しい色で再度糸掛け<br>5. 再開 | 糸を通す前に、画面の指示色とスプールを突き合わせる。 |
| 布端がほつれる(シルク等) | 素材の織り特性 | 枠張り前(できればカット直後)にDream Weaveを裏から接着して織りを固定。 | 触った時点でほつれやすい素材は、先に接着系で補強する前提で段取り。 |
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注意(マグネットの取り扱い): マグネット刺繍枠を使用する場合は強い磁力と挟み込みに注意してください。ペースメーカー等の医療機器、スマートフォン、磁気カード類から離し、保管時はスペーサーを挟んで安全に扱います。
仕上がりイメージ:秋のシャツ制作へ展開
Lindaは「I Love Fall Most of All」のシャツ例にも触れ、デザインのリサイズは「枠に入れるため」だけでなく、服としてのバランス(大きすぎて主張しすぎない)で決めることを示しています。

運用:色ごとに“ミニ工場”として回す
色ブロックを1工程として扱うと、ミスが減ります。
- 立ち上げ: 最初の30秒は必ず見守る。
- 監視: 自動糸切りがない/取りこぼす機種は、ジャンプ糸を見つけた時点で早めに処理。
- 切り替え: 停止したら、次色を画面で確認してからスプールを手に取る。

効率の分岐点: Lindaは、単針でも糸掛けが簡単だとテンポ良く進む点に触れています。趣味用途では大きな強みです。一方で、例えば同じシャツを大量に作る状況では、糸替え回数がそのまま段取りロスになります。
- 趣味: 糸の並べ方・段取りで改善。
- 準業務: 枠の掛け替え時間を減らす目的で、マグネット刺繍枠 babylock 刺繍ミシン 用のような選択肢を検討する、という考え方になります。
判断フロー:スタビライザーの選び方
カット前に、この順で判断します。
- 素材が繊細/ほつれやすい(シルク、レーヨン系など)?
- YES: Dream Weaveを先に接着。濡らす仕上げは避ける前提で段取り。
- NO: 次へ。
- 安定した織物(Konaコットン等)?
- YES: Heat and Stayを接着して土台作り。必要に応じて水溶性トッパー。
- NO: 次へ。
- 伸縮・起毛・凹凸がある(Tシャツ、フリース、タオル等)?
- YES: トッパーで沈み防止、裏は適切なスタビライザーで支える。
- NO: 取扱説明書の推奨に戻る。
仕上げチェック(作業後)
- 表: ジャンプ糸をすべて処理
- 縁: サテンが毛羽立つ場合は次回トッパーを見直す
- 裏: 下糸の出方を確認(極端なテンション崩れがないか)
- 記録: 「素材+スタビライザー+糸」をメモして再現性を作る

道具のアップグレードは“痛点”から決める
困りごとは、気合ではなく仕組みで減らします。
- 痛点: 「厚物で枠張りが毎回つらい/張りが揃わない」
- 対策: 互換性がある前提で、brother 5x7 マグネット刺繍枠のようなマグネット刺繍枠や、機種別のマグネット枠を比較検討する人が多い領域です。
- 痛点: 「シルクでパッカリングが出る」
- 対策1: 接着系(Dream Weave等)で織りを固定してから縫う。
- 対策2: 枠の圧迫による歪みが気になる場合は、マグネット刺繍枠のような保持方式を検討する。

まとめ
Lindaのように手順を“見える化”すると、「うまくいくといいな」から「この条件なら再現できる」へ変わります。シルク・デュピオニのような扱いにくい素材でも、接着による下準備で安定し、糸色ミスも画面の位置合わせ機能で慌てず復帰できます。
うまくいった組み合わせ(素材+スタビライザー)を記録する習慣が、次の案件の時短と品質安定に直結します。
