Table of Contents
パフ刺繍とは?なぜ使う?
伝統的なマシン刺繍は生地にフラットに寝ますが、パフ刺繍はフォームを糸の下に閉じ込めることで明確な「高さ」を作ります。視覚的なアクセントが強く、衣装のモチーフを遠目にも際立たせられます。

衣装に直接刺すことも、まずシアーなオーガンザに刺してから本体の生地へ手縫いで載せることも可能。後者はさらに“持ち上がる”印象になり、取り付け・位置調整の自由度も上がります。
この技法の鍵は、サテンステッチの下に敷く専用のパフフォーム。フォームの外周は手で気持ちよくパリッとちぎれて、ステッチの内側に残った部分だけがふくらみを形作ります。

クラフトフォームでも「代用」は可能ですが、動画の実演では除去に時間がかかり、細かいカスが残りやすいという結果に。仕上げの清掃時間と完成度を考えると、専用パフフォームの使用が推奨です。

材料を選ぶ:フォームと生地
パフ刺繍に使うフォームは2mm厚が基本。多くの意匠は一枚で十分な高さが出ます。より高低差を出したい場合も、ただ二枚重ねにするより“中心だけを盛る”切り出しの工夫が効果的です。

生地は作品に応じて。動画ではポリエステル・オーガンザを土台に使用し、密なサテンでも歪みを抑えるため安定紙を二枚重ねに。これにより、後で縁を焼き落とすなどの加工にも対応しやすくなります。なお、刺繍時の固定方法として、用途に応じて磁気 刺繍枠のような着脱しやすいフレームを使うと薄地でもテンションを均一に保ちやすい場面があります(動画では機種名やフレーム種類の指定はありません)。
立体になるデザイン設計
サテンステッチ・フィルが必須条件です。下縫いや密なフラットフィルはフォームを押し潰し、狙いの“盛り”を失わせます。最終的に立体にしたい領域の内側へステッチが落ちないよう、設計段階から注意しましょう。

さらに幅の上限も意識を。多くのミシンでサテンが安定するのは6〜7mm程度。大きなモチーフは形を分割して、噛み合うパーツに分ける発想が有効です。

より自然な丸みを出すには、フォームを細長くスライスして“山の芯”になる部分だけを増し盛りします。動画でも、単純な二枚重ねはエッジの落差が急になりがちで、中心にスライスを足す方法のほうが滑らかな曲面になったと紹介。
設計時のポイントとして、サテンの密度は通常より高め、上糸テンションは緩めが推奨。穿孔回数が増えるほどフォームは切り離しやすく、また高密度はフォームの透け露出も防ぎます。こうしたデザイン準備は、どのメーカーの刺繍枠 for 刺繍ミシンでも共通して活きる基礎です。
ミシン設定と下準備
- サテン密度:通常よりタイトに。フォームを完全に覆い、切り離しをクリーンにします。
- 上糸テンション:やや緩め。糸がフォームを優しく包み、露出を防止。
- テスト:小片で事前確認。露出や段差の出方を掴みましょう。
薄地のオーガンザを使う場合は、安定紙を二枚重ね。縫製前に生地と安定紙をしっかり張った状態で枠に入れ、皺やたるみをゼロに。フォーム固定の頭には、疎なランニングステッチ(ガイド)を入れて、フォームの穿孔を最小限に抑えます。


作業性の観点では、着脱が素早いmighty hoopやsnap hoop monsterのような磁気系フレームを活用すると、何度も枠を外す工程が続く大型意匠でテンポよく進められます(本動画で特定製品の使用言及はありません)。
手順で学ぶパフ刺繍プロセス
1) フォームスライスを固定(必要な場合)
- まずガイドとなるランニングステッチを走らせます。
- スライスしたフォームの片面に仮止めスプレーを吹き、所定位置に置きます。
- もう一度ランニングステッチで軽く留め、位置を安定。密な穿孔はここでは避けます。

2) 一層目のフォームを全面に貼り、第一色を刺繍
- フォームの片面にスプレーを吹き、面でしっかり密着させます。
- 糸色と近いフォーム色を選ぶと、仮に露出しても目立ちにくい利点があります。
- ミシンを走らせ、サテンでフォームを完全に覆います。


3) 余分なフォームを除去
- ジャンプ糸をカット。
- サテン外周のフォームを指で気持ちよく“ペリッ”と外します。専用パフフォームなら素直に剥がれます。

4) 多色の場合は二色目以降も同様に
- 二色目用フォームを同様に貼り、サテンで覆います。
- 色領域が重ならない設計なら、最終的な高さは同じに揃います。

5) 細部清掃と安定紙の除去 - 複雑な意匠ではステッチの狭間にフォーム片が残ることも。ピンセットで丁寧に除去します。

- 裏側の安定紙は優しく手で剥がし、カスや糸端を整えれば完成。オーガンザに残した状態で、後から本体生地に手縫いで取り付け可能です。

なお、こうしたプロセスはブランドや機種を問わず基本は共通です。コスプレで人気のbrother 刺繍ミシンや家庭用のjanome 刺繍ミシン、工業機の枠運用など、環境に合わせて枠の保持力とテンションを最適化しましょう(本動画では具体モデル名の提示はありません)。
仕上げ:フォームと安定紙の除去
仕上がりを左右するのは“除去の清潔さ”。専用パフフォームは外周がよく割け、取り残しも少なく済みます。とはいえ、ステッチの狭い谷間には微細な残渣が入り込むことがあるため、ピンセットで方向を変えながら一片ずつ抜き取りましょう。裏面の安定紙(二枚)は、表を潰さないように支えながらゆっくり剥がします。
動画の例では、ピンクとゴールドの二色構成ですが、色の重なりはなく、双方が同じ高さに。フォーム色は糸色と同系を選んでいるため、微細な露出も目立ちません。
多ロット制作や量産の下準備には、各社の産業ミシン向け枠体系(例:barudan 刺繍ミシン 刺繍枠)を検討するのも手です。ワークフローを組む際は、脱着時間とテンション再現性が品質の安定につながります(本動画で特定製品名は登場しません)。
クイックチェック
- サテン幅は6〜7mm程度に収まっている?(機種による)
- サテン密度は高め?上糸テンションはやや緩め?
- ランニングステッチでフォームを固定してから本縫いしている?
- フォーム色は糸色と近い?
- 外周フォームはきれいに除去できた?狭部はピンセットで清掃した?
チェックで迷ったら、まず小さなスウォッチで試験縫いを。枠の選択に迷う場合は、作業効率を優先して磁気 刺繍枠やクランプ式を一度テスト導入してみると、工程の詰まりが見えます(動画では枠種は指定されていません)。
プロのコツ
- 分割設計:幅制限を超えそうなパーツは互い違いに噛み合う形で分割し、縫い順も分けて管理。
- スライスで“芯”を作る:二枚ベタ重ねより、中心線上に細切りフォームを足すと曲面が滑らか。
- 色合わせ:フォームは糸色と同系色が無難。露出リスクに備えられます。
- 清掃ツール:細長い先のピンセットを常備。フォームの“カス”は角度を変えてつまむと抜けやすい。
- 下地強化:薄地は安定紙二枚。張りの弱い生地ほど効果的。
長時間の連続作業では、着脱が速いmighty hoopや磁気クランプの利便性が光ります。大型モチーフの位置合わせにも好適です(本動画では使用機材の銘柄は明示されていません)。
注意
- クラフトフォーム代用は除去が難しく、細片が残りやすい。可能なら専用パフフォームを。
- 立体化したい領域内にステッチが落ちる設計は避ける。フォームが潰れます。
- サテン幅の上限(6〜7mm目安)を超えるとミシン側で不安定になりがち。
- 多色でも領域が重なると高さに差が出る可能性。設計段階で重なりを回避。
環境によっては磁気 刺繍枠系のフレームは磁力が強く、針板や送りに影響しない取り付け方が大切。必ず各機のマニュアルに準じて使用しましょう(本動画は具体的な枠指定なし)。
コメントから
- 「衣装に付けたまま洗える?」という質問がありましたが、動画内では洗濯方法は未言及です。取り外し可能なオーガンザ基布に刺してから本体へ手縫いで留める方法は、クリーニング時の取り扱いを柔軟にできるので有効です。
- 「どのソフトでデジタイズ?」という声も。本動画ではソフト名は示されていませんが、サテン密度を高め、上糸テンションを緩める設計方針が核であると説明されています。
- 「自分のミシンでフォーム層を縫える?」という不安には、幅上限(6〜7mm目安)と密度・テンションの調整、テストスウォッチでの事前検証が最善策。機種名の具体言及はありません。
関連の機材で枠選びを検討している読者へ:mighty hoopや磁気 刺繍枠、量産向けの産業枠など、ワークフロー・素材・意匠サイズに合わせて選択を。なお本記事は動画内容に基づく技法解説であり、特定製品の推奨や性能保証は行いません。
