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小さな文字に合うフォント選び(失敗の原因はここが最多)
小さなワッペン文字が崩れる最大の理由は、そのサイズで縫えるように設計されたフォントを使っていないことです。初心者がよく遭遇するのが、いわゆる「モヤっと潰れて読めない」状態。糸のループが重なって、文字というより“塊”になってしまいます。
動画では、Reen Wilcoxさんが3インチワッペンのレイアウトを作り、Perfect Embroidery Pro内でフォント名の前に小さな「m」印が付いたものを選びます。これはマイクロフォント(小文字用に刺繍向け最適化されたフォント)で、目安として約0.24インチ(約6mm)前後の文字高でも読みやすさを保ちやすい設計です。この選択が、縫い上がりを「読める文字」にするための最重要ポイントになります。

この記事でできるようになること(現場で効く理由)
2行の文字(「BEE CREATIVE」「BEE DIFFERENT」)を入力し、上弧+下弧の円形レイアウトに変換します。その後、3インチのワッペン台に対して余白が残るように、文字全体を2.75インチにリサイズ。最後に中央へハチのデザインを配置し、不要な影(ドロップシャドウ)ステッチを削除して完成させます。
ワッペンを販売・量産する場合、この流れを固定化すると強いです。フォント・余白・サイズが揃うと、枠張り〜刺繍までの段取りが安定し、やり直し(作り直し)も減ります。
補足:マイクロフォントは「見た目」ではなく「縫える仕組み」
マイクロフォントが強いのは、単に細いからではありません。小さな形状でも破綻しにくいように、サテン幅・角の処理・密度などが刺繍向けに調整されています。画面上で似て見えても、マイクロ設計のフォントは小サイズで列(サテン柱)が過密になりにくく、'e' や 'a' のような文字の内側が潰れにくい傾向があります。
- チェックポイント(縮小の落とし穴):通常フォントをそのまま縮小すると、曲線部や内側の空間が先に詰まりやすく、円形配置ではさらに読みづらくなります。
作業を安定させるなら、マイクロフォントを「店(工房)の標準」として決めておくのが近道です。また、ワッペン台を毎回同じ位置・同じテンションでセットしたい場合、従来の枠張りよりも 枠固定台 を使った固定化が、作業時間とバラつきの削減につながります。
Perfect Embroidery Proで円形テキストを作る
ここがチュートリアルの核です。2行テキストを入力し、直線配置から円形(上弧+下弧)へ変換します。

手順:テキスト入力〜マイクロフォント選択
- Perfect Embroidery Proを起動します。
- テキスト機能を有効化:上部ツールバーのText(テキスト)をクリックします。
- 配置:キャンバス上をクリックして、文字入力を開始します。
- 文字入力:右側のプロパティ(テキストツール)で以下を入力します。
BEE CREATIVE- Enterで改行
BEE DIFFERENT
- フォント選択:フォント一覧で、先頭に小さな「m」印が付いたものを探します。動画では Arial Small を選択しています。
- 文字高の確認:表示される高さが0.24インチ前後になっていることを確認します。




チェックポイント(変形前の目視確認)
- スペル:"CREATIVE" の綴りは正しいか(円形にしてから直すと、間隔が崩れて再調整が増えます)。
- 2行になっているか:スペースで無理に分けず、必ずEnterで改行しているか。
- 「m」印の有無:「m」が無い場合は一旦止める(小サイズでの縫いを想定していない可能性が高い)。
この時点の想定結果
- キャンバス上に、細めで小さい2行の直線テキストが表示されます。
手順:「Normal」から円形(Circle)へ変換
- オブジェクト選択:テキストをクリックして選択状態にします。
- プロパティを確認:Textのプロパティ内にある Type(タイプ)を探します。
- タイプ変更:Type を Normal から Circle に変更します。
- 適用:Apply をクリックします。



チェックポイント(見た目のバランス確認)
- 左右のバランス:上段(CREATIVE)と下段(DIFFERENT)の左右の空きが極端に偏っていないか。
- 下側の可読性:下弧の文字が不自然に寝て見えないか(読める向きになっているか)。
この時点の想定結果
- 2行のテキストが、上弧+下弧の円形リングに変換されます。
補足:円形配置は“小文字の弱点”が出やすい
直線配置では主にX方向の動きが中心ですが、円形ではX・Yの協調動作が増え、素材の目(織り方向)や押さえの影響も受けやすくなります。円が小さいほど、次の症状が出やすくなります。
- 詰まり:内側(円の内周側)で文字が押し潰される
- 歪み:スタビライザー不足などで円が楕円っぽくなる
動画でも「後から間隔などを編集できる」と触れていますが、量産を考えるなら“編集できる前提”で詰まりを早めに見つけるのが重要です。また、物理的な保持方法が安定性を左右します。手締めのバラつきを減らしたい現場では、マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような固定化で、セット位置とテンションを再現しやすくします。
ワッペン台に合わせて正確にリサイズする(3インチ→文字は2.75インチ)
円形文字ができたら、次は「実物のワッペン台」に合わせてサイズを決めます。動画ではワッペン台が3インチで、文字リング全体を高さ2.75インチにリサイズしています。

手順:Transformで縦横比を固定してリサイズ
- 現状サイズ確認:画面上部の表示で、現在の幅・高さを確認します。
- Transformを開く:定規アイコンの Transform をクリックします。
- 比率固定:Transformパネルで Maintain aspect ratio(縦横比を維持)にチェックが入っていることを確認します。ここは必須です。
- 目標値入力:Height(高さ)に 2.75(インチ)を入力します。
- 適用:Apply をクリックします。




チェックポイント(重要)
- 縦横比:幅も比例して変わっているか。円が“卵形”に見えたら、すぐに戻して比率固定を確認します。
- 余白:3インチ外周に対して、文字がギリギリになっていないか(外周に近すぎると、縁処理や位置ズレで事故が起きやすい)。
この時点の想定結果
- 円形文字が歪まずに縮小され、3インチの範囲内に収まるサイズ(高さ2.75インチ)になります。
注意:作業安全 ソフト上で完成しても、実刺繍では安全が最優先です。ワッペンを押さえる・位置を直すなどで手を近づける場合、針棒まわりに指を入れないでください。後工程でカッター等を使う場合も、刃は必ず身体の外側へ向けて扱います。
補足:2.75インチにする意味(余白設計)
3.00インチのワッペン台に対して、文字リングを2.75インチにすると、外周に余白が残ります。量産ではこの余白が“保険”になります。
- 位置ズレ対策:わずかなズレがあっても外へはみ出しにくい
- 縁への干渉回避:縁が厚いタイプのワッペンでは、外周ギリギリを縫うと針負荷が上がりやすい
小さく硬めのワッペン台は、一般的な刺繍枠での枠張りが難しく、ズレや浮きが出やすいことがあります。もし 刺繍ミシン 用 枠入れ で「固定が安定しない」「作業がつらい」と感じるなら、マグネットで挟み込む方式の枠は現場でよく使われる選択肢です。
既存デザイン(ハチ)を読み込み、影ステッチを削除する
文字リングのサイズが決まったら、動画では内蔵のフリーデザインからハチを追加し、不要なドロップシャドウ(影)部分のステッチを削除して、厚みを減らしています。

手順:ハチを配置して影を消す
- ライブラリを開く:Free Designs のタブを開きます。
- 読み込み:Bee(ハチ)デザインを、円形文字の中心へドラッグします。
- 確認:ハチの下に影(ドロップシャドウ)のステッチが入っているのを確認します。
- 影だけ選択:影のオブジェクト(ステッチ)を狙って選択します。
- 削除:Delete で削除します。


チェックポイント
- 中心位置:ハチが上下左右の中心に入っているか。
- 削除ミス:影だけを消せているか(ハチ本体の一部まで消してしまったら、Undoしてやり直します)。
この時点の想定結果
- 円形文字の中央に、影のないスッキリしたハチが配置されます。
補足:影を消すのは“見た目”より“刺繍負荷”のため
小さなワッペンでは、余計な針数(特に影や背景の密な部分)が増えるほど、硬さ・糸切れ・仕上がりのゴワつきにつながりやすくなります。影を削除するのは、見た目を軽くするだけでなく、刺繍としての負荷を下げる判断でもあります。
最終確認:『Bee Creative』ワッペンを失敗させないために
この章は、ソフトの手順を「実際に縫えるか」に結びつけるための確認です。画面上で完璧でも、現物では保持・余白・安定が崩れると失敗します。
事前準備:見落としがちな消耗品とチェック
刺繍開始前の準備で、仕上がりの大半が決まります。
チェックポイント(作業前)
- 針:小文字は針の状態に影響されやすいので、違和感があれば交換を優先します。
- 下糸(ボビン糸):糸くずが多いとテンションが乱れやすいので、ケース内を清掃してから始めます。
- 上糸:一度上糸を通し直し、テンション周りの通し忘れを防ぎます。
- 試し縫い:本番ワッペン台の前に、近い素材で試し縫いして文字の潰れを確認します。
セット方法の考え方:保持の再現性が品質を決める
3インチの小さなワッペン台をどう保持するかは、つまずきやすいポイントです。
- 同じ位置に置ける
- 同じテンションで固定できる
この2点が揃うほど、文字の潰れ・ズレ・歪みが減ります。量産で段取りを揃えたい場合は、ミシン刺繍 用 枠固定台 のような治具化で、セットの再現性を上げる考え方が有効です。
トラブル対策(症状 → ありがちな原因 → まずやること)
| 症状 | ありがちな原因 | まずやること | 再発防止 |
|---|---|---|---|
| 文字が潰れて読めない | 小文字向けでないフォントを縮小している | 「m」印のマイクロフォントに切り替える | 小文字はマイクロフォントを標準化する |
| 円が歪む/楕円っぽい | リサイズ時に縦横比が崩れた | Maintain aspect ratioを確認してやり直す | リサイズは高さ基準で固定手順化 |
| 中心がズレる | 配置が目視頼み | 配置後に中心を再確認する | 位置合わせの基準を決めて毎回同じ手順にする |
| 厚くてゴワつく | 影や不要ステッチが多い | 影(ドロップシャドウ)を削除する | 小サイズは“軽く作る”を優先 |
仕上がりの目安(できている状態)
合格ラインの目安
- 可読性:少し離れても円形文字が読める
- バランス:上弧と下弧の見た目が安定している
- 中央配置:ハチが中心に収まっている
量産では「毎回同じ結果が出る」ことが利益に直結します。枠張りのバラつきがボトルネックなら、現場では dime マグネット刺繍枠 のようなマグネット式の刺繍枠(同等方式を含む)を検討し、セット工程の変動要因を減らす方向で改善するケースもあります。
