はじめてのテキスタイルアート:スケッチから始める水仙の草原(ニードルフェルティングとエンベリッシャー)

· EmbroideryHoop
はじめてのテキスタイルアート:スケッチから始める水仙の草原(ニードルフェルティングとエンベリッシャー)
春のスケッチを起点に、エンベリッシャーマシン(ニードルフェルティング)と端切れの布を使って、長いグリーンのストリップで草原のような背景を作り、水仙の色や形のリズムを表現する入門プロジェクト。柔らかなコットンの中厚地(カーテン用インタ―ライニング)をベースに、ピンで仮固定→エンベリッシャーで繊維を絡め合わせて新しい「布」へと変形させていく。マシンの基本構造、ピンの扱い、収縮への備え、うるさい布への対処など安全と品質の要点を押さえ、コメントで寄せられた素材選び(綿も可・密織は注意)や怖さを和らげるコツ(小さく始める・音を聞く)も織り交ぜて、動画なしでも実作業できるよう実践的にまとめた。なお具体的な寸法や厳密な配色指定は動画では示されていないため、自由に試しながら進める。

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Table of Contents
  1. プロジェクトの概要
  2. 準備するもの
  3. セットアップと下地づくり
  4. 背景づくりの手順
  5. エンベリッシャーでの加工
  6. 仕上がりチェック
  7. 完成イメージと次の展開
  8. トラブルシューティング
  9. コメントから

1 プロジェクトの概要

水仙のスケッチから色と形のリズムを取り出し、端切れを重ねて新しい布地のような面を作ります。目的は“そっくり”ではなく、春らしい黄色と、葉・草のとがった縦の気配を背景に宿すこと。

An open sketchbook showing two pages with daffodil drawings; one is colored, the other a line drawing.
An open sketchbook displays two different interpretations of daffodils: a vibrant colored drawing on the left, and a detailed line drawing on the right. This sketch serves as the artistic inspiration for the textile project.

1.1 何を・いつやるか

・小さなスケッチを起点に、グリーンの細長いストリップを縦方向に配置して草原感をつくる。 ・エンベリッシャー(ニードルパンチ)で繊維を上下に貫通させ、複数の布をメッシュ状に一体化する。 ・完成後のサイズ指定や厳密な配色は、動画では“未具体化”。直感に従って構成します。

An open sketchbook with black and white drawings of kitchen items like bowls and bottles.
An open sketchbook reveals detailed black and white sketches of everyday kitchen items, including bowls, bottles, and utensils. These drawings exemplify Emma's practice of drawing what's around her.

1.2 クリエイティブの怖さを越える

“結果の良し悪し”より“手を動かす”を優先。朝食の前に1スケッチ、1色拾う——そんな小さな習慣が弾みになります。コメントでも「はじめが怖い」との声がありましたが、作者自身も同じ。未完を許し、まず着手することが推進力になります。

An open sketchbook showing a detailed pencil drawing of a pair of bare feet on one page.
A page in the open sketchbook features a detailed pencil drawing of a pair of bare feet, illustrating the artist's spontaneous drawing habit. This shows her diverse range of subjects.

1.3 インスピレーションの源

日常のもの(キッチン、足元など)を無理なく描き溜め、季節の気分(水仙)に触れる。線の気持ちよさや色の組み合わせが、布選びの軸になります。

A woman holding an open sketchbook displaying a colorful daffodil sketch and a line drawing of daffodils.
Emma holds up her sketchbook, showcasing a vibrant, colored sketch of daffodils on one page and a simple line drawing on the other. This image reiterates the primary inspiration for the textile project.

クイックチェック ・“草原のような縦の流れ”を背景にする狙いが自分の言葉で説明できるか。 ・色は“黄色+緑”を主軸に、強弱・透明感・きらめきの差を用意できたか。

2 準備するもの

動画に基づく実材料は次の通り。特定の寸法は示されていません。

・端切れ:緑(シルク調、しぼ感のある布、シアー生地=オーガンザ等)、黄色(サテン、レース、薄手ブラウス地、スカーフ等)。

Hands rummaging through a container of yellow fabric scraps.
Hands delve into a clear plastic container, sorting through a pile of yellow fabric scraps of various textures and shades. This action demonstrates the hands-on process of material selection.

・糸:黄色系・緑系を色箱で整理(選色補助)。

Close-up of numerous green thread spools in a clear container, some upright, some lying down.
A collection of green thread spools, varying in shades and sizes, are gathered in a translucent container, ready for a new textile art project. This close-up highlights the initial material selection.
A clear container filled with various yellow and golden thread spools.
A clear plastic container holds a vibrant assortment of yellow and golden thread spools, all neatly organized by color for easy access. The varying hues suggest potential for rich color blending.

・下地:コットンのカーテン用インタ―ライニング(柔らかく厚みがあり、針の通りがよい)。 ・道具:ハサミ、待ち針、スケッチブック、ペン・鉛筆。 ・マシン:エンベリッシャー(ニードルフェルティング/ニードルパンチ)。

プロのコツ ・作者は色ごとに“糸の色箱”を分け、小皿に“今回使う糸だけ”を移すと迷いが減ります。

A small decorative bowl filled with yellow, green, and orange thread spools.
A small decorative bowl, featuring a patterned interior, is filled with a mix of yellow, green, and orange thread spools. This close-up shows a curated selection for a specific project.

注意 ・ピンは浅めに留め、マシンが近づいたら必ず抜く(針折れ防止)。

チェックリスト(準備)

  • 緑・黄色の端切れをざっと分類(透け・光沢・しぼ・密織)。
  • 糸は色箱から3本前後を“お皿”にピックアップ。
  • 下地は中厚でやわらかいもの(動画ではカーテン用インタ―ライニング)。
  • 針に当たりやすい金属パーツは作業域から排除。

3 セットアップと下地づくり

3.1 下地布を用意する

コットンのインタ―ライニングを作品サイズよりやや大きめにカット。エンベリッシャーは生地を“押し込み・絡ませる”ため、柔らかく厚みのある下地が安定します。

Hands holding a piece of light cream-colored cotton curtain interlining fabric.
Hands gently hold a piece of light cream-colored cotton curtain interlining fabric, highlighting its soft and thick texture. This fabric serves as the sturdy base for the embellishment project.

3.2 なぜ厚みが必要か

針群が上から下へ繊維を運ぶことで面が一体化します。薄すぎる下地だと貫通の痕が強く出たり、面の腰が弱くなりがち。必要に応じて後ろからスタビライザーを追加するのも一案(動画では「後で足すかも」と言及に留まります)。

3.3 収縮を見越す

エンベリッシュ後は“スクランチ(しわ寄せ)”が出ます。背景ストリップは余裕を見て長めに。足りない所は後から上から足してOKです。

チェックリスト(セットアップ)

  • 下地はシワをのばし、作業台で平らに。
  • 仕上がり外周+αのマージンを確保。
  • 予備ストリップを数本用意(収縮対応)。

4 背景づくりの手順

4.1 ストリップを切る

緑の端切れを“長く・細く”。縦方向に流すと草のスパイク感が生まれます。織りや質感の違う素材をミックスして単調さを避けます。

Hands cutting a strip of light green fabric with orange-handled scissors.
Hands carefully cut a long, thin strip of shimmering light green fabric using orange-handled scissors. This strip will contribute to the layered, grassy background of the textile artwork.

4.2 縦方向に配置する

下地の上にストリップを縦に並べ、濃淡・透け・しぼをランダムに散らして層を作る。透明なオーガンザは上から重ねることで陰影を作れます(ただし、下地のクリームに直置きすると透けすぎるため“上から”が基本)。

Hands arranging strips of light green fabric vertically on a cream-colored base fabric.
Hands carefully arrange strips of light green fabric of varying textures and shades vertically onto a cream-colored base fabric. This step creates the layered, grassy effect for the daffodil meadow.

4.3 ピンで仮固定

“きっちり”ではなく“ゆるく”。マシンが寄ってきたら逐次ピンを抜きます。小片はピンを使わず、作業しながら都度足してもOK(スクランチの自然さが出ます)。

注意 ・ピンの向きは進行方向と直角に。見落とし防止の頭付きピンを推奨。

クイックチェック ・縦の流れが途切れていないか(水平のラインが目立たないか)。 ・濃い緑は点在にして“筋”になりすぎないように。

チェックリスト(背景)

  • 長短・細広のストリップを混在。
  • しぼ(シアサッカー等)やシアーを局所投入。
  • 予備ストリップを端にスタンバイ。

5 エンベリッシャーでの加工

5.1 マシンの要点

エンベリッシャーは糸を使いません。複数の専用針(動画例では12本)で上から下へ繊維を“打ち込み”、生地同士をメッシュ状に絡ませます。押さえ機構は上下に調整でき、厚物時は上げてクリアランスを確保。押さえは下ろして使用します。

A Baby Lock Embellisher machine with fabric underneath its needle area.
A Baby Lock Embellisher machine is shown from a medium perspective, with green fabric strips positioned under its needle punching area. This highlights the specialized machine used for the textile art.

5.2 フロー(実演と同等の順序)

1) ピンに注意しつつ、下地+ストリップを針下へ送る。 2) 針が上下に動く間、面をゆっくり動かして全体を“面で”留める。 3) うるさい音の布は速度を落とす(密な織りや硬い素材は無理をしない)。 4) 背面を確認。上布の繊維が下地側にプツプツ抜けていれば絡み合っています。 5) スキマは上から新たなストリップを重ね、再度パンチして面の密度を均す。

Hands guiding green fabric strips under the needles of an embellishing machine, which is actively punching.
Hands carefully guide layered green fabric strips under the rapidly moving needles of the embellishing machine. The needles punch through the fabrics, fusing them together and creating texture, as small pins are strategically removed.

プロのコツ(コメントより) ・素材に怯えるときは、まず“針交換”を一度やって慣れておくと安心。テストは小片で、音を“聴診”のように聞く——うるさければ素材を替えるか、極端にスローで。作者も「音で判断」を推奨しています。

注意(安全) ・ピンに当てると針折れ・故障リスク。必ず手前で抜く。 ・一部の布は非常にうるさく鳴ることがあります。急がず“ゆっくり・一定”。

クイックチェック ・背面に“貫通の点々”が均一か。 ・表面に“新しい布のような”一体感が出てきたか。

チェックリスト(加工)

  • 押さえは下ろしたか/高さは素材に合っているか。
  • ピンの回収漏れがないか。
  • うるさい素材は速度ダウン、または別素材に変更。

6 仕上がりチェック

良い状態

  • 全体として縦方向の流れが保たれ、グリーンが“草原”の印象をつくる。
  • 表面は適度にスクランチし、触るとふっくら・密。背面に繊維の貫通点が見える(均一)。

要調整のサイン

  • ストリップの境目に“裂け目”のような隙間→上から細ストリップを重ねて追い打ち。
  • 部分的にペタンとしすぎ→しぼ感のある素材やシアーを薄く追加して再パンチ。
  • 針跡が荒い→素材が硬すぎ・密織。別素材に差し替えるか、テスト速度をさらに落とす。

7 完成イメージと次の展開

完成時の背景は、異素材ミックスが一体化して“新しい布”のようになります。黄色の花要素は、この後に上から追加したり、自由ミシン刺しを重ねたりと多様な展開が可能(動画時点では背景合体まで)。ワークショップではアコーディオン式のファブリックブックなど、応用の世界も広がっていますが、動画内では作り方は公開されていません。

プロのコツ ・色の苦手意識(例:黄色)を“課題色”として箱に追加してみると、配色の幅が広がります。

Hands holding a white plastic basket filled with yellow thread spools.
Hands hold up a small white plastic basket overflowing with yellow thread spools, all neatly organized by color. This method helps quickly identify desired threads for a project.
Hands holding a white plastic basket filled with green thread spools.
Hands present another white plastic basket, this one filled with various shades of green thread spools. This systematic organization streamlines the thread selection process for textile artists.

8 トラブルシューティング

症状: 針が折れる/異音が続く

  • 可能原因: ピン接触/素材が硬い・密織/送りが速すぎる。
  • 解決: ピンを直前で抜く。密織はテスト片で音を確認。速度を落として“面で押さえる”。

症状: 背景が縮み過ぎた/寸法が足りない

  • 可能原因: 収縮見込み不足。
  • 解決: 外周に余白を設定。足りない箇所へストリップを追加して再パンチ。

症状: 表面がのっぺり

  • 可能原因: 素材の単調さ。
  • 解決: 透ける層(オーガンザ)や“しぼ”の布を薄く足し、再パンチで局所に陰影。

症状: 綿が絡みにくい

  • 可能原因: 密織で繊維の移動が少ない。
  • 解決: やや粗めの綿を選ぶ。密織はごく薄いスライスにして上から軽くパンチ。

クイックチェック(復帰前)

  • 5×5cmのテスト片で背面の貫通点を確認してから本番に戻る。

9 コメントから

  • 素材選び: 綿も“密織でなければ”よく馴染むという実例コメントが多数。
  • マシンの扱い: まず針交換を試して心理的ハードルを下げる/音で素材適性を判断。
  • 始める勇気: “未完でも着手”を合言葉に、小さな行動を先に。笑いとともに怖さを流す姿勢が共有されました。

補足(ミシン刺繍への発展を考える読者へ) 本プロジェクトは“糸なしで絡ませる”エンベリッシャーの手法ですが、背景を作った後に“ミシン刺繍で描写を足す”という進行もあります。その場合は、工程差し替えに伴ってフレーミングの準備が必要です。例えば、マグネット刺繍枠 を使うと厚みのある下地でも着脱が容易になりやすく、刺繍用 枠固定台 と併用すれば位置決めの反復も安定します。また、環境によっては 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のサイズ互換や布厚みへの対応を事前に確認してください。ブランド機を使う場合は、brother 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のように機種適合が明記されたものを参照し、重ね布の段差では無理なテンションを避けます。家庭用アクセサリの運用では hoopmaster 枠固定台 が反復配置の助けになりますし、大きな柄の分割配置では ミシン刺繍 マルチフーピング の計画を立ててから背景と合わせると、後戻りが減ります。Baby Lock系の刺繍機ユーザーなら、適合をうたう マグネット刺繍枠 babylock 用 の製品仕様を確認してからレイヤー厚を決めると安心です。

実務メモ - 本稿では、具体サイズや機種設定値は動画に示されていないため、テスト片で“音と背面の貫通状態”を基準に最適点を探ります。

  • 背景ができたら、自由ミシン刺しを選ぶ場合は、ストリップの“縦流れ”を崩しすぎないステッチで足し引きすると調和します(動画内ではエンベリッシュまで)。