Sew Artで作る「イン・ザ・フープ(ITH)」キルトコースター(グリッド+ビーンズステッチ)|Brother 4x4枠

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Sew Artでシンプルなキルト用グリッドを作成(デジタイズ)し、枠張りしたスタビライザーの上にキルト綿と布をフロート(貼り付け)して、Brotherの刺繍ミシン+4x4枠でコースター表面をキルティング風に仕上げる手順を、サイズ上限(94〜95mm)や失敗しやすいポイント、現場で効くチェック方法とあわせて解説します。きれいに縫い上がるか、シワ・波打ちで台無しになるかは「準備」と「枠の張り」にかかっています。
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目次

ITHコースター完全ガイド:デジタイズ/枠張り/キルティングを一気に身につける

編集部より(刺繍教育担当)

マシン刺繍は「ボタンを押せば完成」と思われがちですが、実際は“布・糸・張力・摩擦”の物理です。特に イン・ザ・フープ(ITH) のように、刺繍枠の中だけで形を作る工程では、刺繍オペレーターは「構造を成立させる人」になります。

今回は、Sew Artで簡単なグリッド(格子)を作り、Brotherの4x4枠で“キルト風ステッチ”のコースター表面を縫います。この題材が良い理由は、現場で必須の3要素をまとめて練習できるからです。

  • スタビライザー戦略(何を土台にするか)
  • レイヤー管理(フロート=貼り付け)
  • 枠サイズ制約(4x4の実寸上限)

グリッドの描き方で起きる「線がつながらない」「沈む」「ズレる」を整理し、厚みのあるキルト綿をフロートする不安も、手順とチェックで潰していきます。完成するのはコースターですが、身につくのは“次のキルトブロックに進める手の感覚”です。

Title card reading 'Making a Quilted Coaster in Sew Art'.
Video Introduction

1. このプロジェクトで作るもの/得られるスキル

実際に作るもの

作るのは キルト風の「表面パネル」 です。Sew Artで作った格子を ビーンズステッチ(Bean Stitch) で縫い、布・キルト綿・スタビライザーを一体化させます。

この方法を選ぶ理由

  • よくある問題: キルト綿+コットンをそのまま刺繍枠に挟もうとすると、厚みで内枠が浮いたり、締め付け過多で 枠跡 が出たり、そもそも均一に張れず位置ズレの原因になります。
  • 解決策: フロート方式。枠に張るのはスタビライザーだけにして、厚い層(キルト綿と表布)はスプレーのりで上から固定します。

学習目標

  1. デジタイズの考え方: 手描きの線を「刺繍機が走る経路」に変換する。
  2. 枠張りの物理: スタビライザーが緩いと位置合わせが崩れる(いわゆる“たわみ”問題)。
  3. 作業安全: 接着剤と厚物を扱うときの段取り(手・機械を守る)。

2. 材料と道具(触感で判断するための“現場セット”)

成功には道具の揃え方が効きます。動画の内容をベースに、作業で抜けがちな消耗品も含めて整理します。

Holding up a finished quilted coaster with a blue floral pattern.
Showcasing final product sample

必須アイテム

  • 刺繍ミシン: 動画はBrother(単針)ですが、考え方は共通です。
  • 刺繍枠: 4x4インチ枠(実刺繍範囲は約100×100mm相当)。
  • デジタイズソフト: Sew Art。
  • 布: コットン 5x5インチ角を2枚(アイロンでしっかりプレス)。
  • キルト綿: 5x5インチより少し大きめにカット。
  • スタビライザー: 動画では ポリプロピレンのガーデンファブリック(防草シート) を使用。
  • 糸: 40番相当の刺繍糸(見えやすい色が練習向き)。

仕上がりを左右する“隠れ必需品”

  • スプレーのり: フロート固定に必須。
    • チェックポイント: 触ると「付箋のように軽くベタつく」状態が理想。ベタベタに濡れていると針や糸に付着しやすくなります。
  • ハサミ/糸切り: 糸端処理用。

注意(作業安全)
スプレーのりは刺繍機の近くで噴霧しないでください。ミストが機械内部に付着すると、ホコリと混ざって固着の原因になります。必ず別の場所(箱の中など)で噴霧してから枠に戻します。

なぜ4x4枠に5x5インチの布を使うのか

4x4枠で縫うのに、布を少し大きくして 余白(安全マージン) を作ります。

  • 押さえ・ならし作業がしやすい(端を持てる)
  • 中心合わせの目安が取りやすい
  • 標準の brother 4x4 刺繍枠 でも、枠の縁で生地表面が潰れにくく、作業中の扱いが安定します

3. 準備:縫う前に勝負が決まる「プレフライト」

縫い始めを急ぐほど失敗します。トラブルの多くは、スタート前に起きています。

Showing a green coaster with a horse silhouette, explaining quilting around motifs.
Explaining variations

A. 「防草シート」スタビライザーの特徴(動画の方法)

防草シートは、伸びにくいポリプロピレン系のメッシュ状素材です。

  • メリット: 安価/強い/やや耐水
  • 注意点: 熱に弱いので、直接アイロンを当てない(溶けやすい)
  • 結論: テストやコースター用途には扱いやすい選択肢です

B. ミシン側の事前チェック

  1. 針の状態確認: 先端に引っかかりがある針は交換。厚物(スタビライザー+キルト綿+布)では糸切れや目飛びの原因になります。
  2. ボビン周り: キルト綿は糸くずが多く出ます。可能なら掃除してから開始。
  3. 上糸経路: 上糸が正しくテンションに入っているか確認。

判断:枠に挟む?フロートする?

  • 厚みがある(キルト綿を含む)フロート推奨
  • 枠跡が気になる素材フロート推奨
  • 薄手コットン単体 → 枠に挟むことも可能ですが、量産ならフロートの方が段取りが安定します

準備チェックリスト(全部OKで次へ)

  • 布はプレス済み
  • 布2枚は5x5インチ、キルト綿は少し大きめ
  • スタビライザーは枠より十分大きくカット
  • スプレーのりを噴霧する場所を確保

4. フェーズ1:Sew Artでグリッドをデジタイズする

ここは「線を描く」ではなく「針が走る道を作る」工程です。ビーンズステッチは前進→後退→前進を繰り返し、手縫い風に太く見えるのが特徴で、キルト綿の上でも線が埋もれにくくなります。

Ironing the blue polka dot fabric square on an ironing board.
Preparing fabric

手順(画面操作の流れ)

  1. Sew Artを起動し、Pencil Tool を選択
  2. Rectangle Outline を選択
  3. 見やすいように 最も太いピクセル幅 に設定し、View > Grid を表示
  4. 外枠の四角を描いてから、内側の格子線を描き足します
Black polypropylene garden fabric visible hooped in the frame.
Discussing stabilizer choice

重要:線をつなげる「接続ルール」

Sew Artは、描いた線の“つながり”を刺繍経路として解釈します。

  • 起きやすい失敗: 内側の線を、外枠から少し離れた空中から描き始めると、ソフトが「別の線」と判断し、縫いが不自然になったり、つながりが悪く見えます。
  • 対策: 内側の線は、外枠の線の上から描き始めて ピクセルが重なる ようにします。

この「つながり」を意識するのが、刺繍データ作りと枠内の安定(位置合わせ)を噛み合わせる第一歩です。

キルト風に見せる設定(動画の数値)

Stitch Image(ミシンのアイコン)からステッチ化します。

Applying spray adhesive to the hooped stabilizer.
Preparing for applique/floating

設定値:

  • モード: Outline(Center Line)
  • ステッチ: Bean Stitch
  • Separation: 4
  • Length: 45
Placing the white cotton batting onto the sticky stabilizer.
Layering materials

5. フェーズ2:枠張りとフロート(物理セットアップ)

ここが一番“手が効く”工程です。土台(スタビライザー)は強く、上面(布)は引っ張らずにフラットに、が基本です。

A. スタビライザーの枠張り(「ドラムの張り」基準)

  1. 枠ネジをしっかり緩める
  2. 防草シート(スタビライザー)を枠に挟む
  3. ネジを締めて抵抗が出るところまで固定
  4. 周囲を軽く引いてたるみを取る
  5. 最後に締め増し(無理に締めて枠を割らない)

チェックポイント: 指で中央を軽く叩きます。

  • しっかり張れていると、張りのある音と感触になります
  • たわむ感じがあれば、張り直し推奨です
Finished sandwich with fabric on top, fully secured in the hoop.
Hooping complete
Sew Art software interface showing pencil tool selection.
Selecting software tools

B. フロート手順(スプレーのりで層を固定)

  1. スタビライザー面にスプレーのりを薄く噴霧
  2. キルト綿を中心に置いて押さえる
  3. キルト綿の上面に薄く噴霧
  4. 表布(5x5インチ)を中心から置き、なでるように密着させる
Drawing black grid lines on the white canvas in Sew Art.
Designing the pattern
Setting the stitch length to 45 in the software menu.
Configuring technical parameters
Saving the digitizing file to a removable USB drive.
Exporting file

よくある失敗:布をピンと張ってしまう シワを消そうとして布を引っ張ると、貼り付け時にテンションがかかり、枠から外した後に戻って 波打ち(パッカリング) の原因になります。

  • 正解: 中心から外へ、押さえて“置く”感覚でならします。

量産目線:段取りのボトルネックを減らす

複数枚(4枚、6枚、12枚など)を作ると、枠ネジの締め直しが作業の詰まりになります。

この場面で現場が導入しやすいのが マグネット刺繍枠 です。

  • ネジ締めが不要で、厚みのあるサンドイッチでも固定が速い
  • 内枠の圧迫が減り、枠跡対策にもつながります

注意(マグネットの安全)
マグネットは強い力で吸着します。指を挟まないよう、接触面に指を入れないでください。

C. 4x4枠のサイズ制約(Brotherでの注意点)

「4x4」といっても、実際は機械側の余裕(クリアランス)があるため、データが大きすぎると読み込めないことがあります。

  • 動画の目安: 4x4枠は 94〜95mm を上限として扱う
  • 操作: USBに保存してミシンに読み込み、画面でサイズを確認し、必要なら縮小します
Brother embroidery machine screen showing file upload.
Loading design
Adjusting the size of grip pattern on the machine screen.
Final adjustments

セットアップ最終チェック

  • スタビライザーがしっかり張れている
  • キルト綿と布が中心にあり、浮き・気泡がない
  • デザインサイズが94〜95mm以内

6. フェーズ3:縫い(スティッチアウト)

スタート後、最初の動きは必ず見守ります。

The machine stitching the blue thread grid onto the polka dot fabric.
Stitch out process

観察ポイント

  • 音: 異音(強いカチカチ音など)が出たらすぐ停止し、枠や針周りの干渉を確認
  • 布の動き: 押さえ前で布が押されて波になる場合は、一時停止して表面を落ち着かせます(指を針の近くに入れない)

なぜビーンズステッチがキルト風に効くのか

ビーンズステッチは同じ線を往復するため、線が太く見え、キルト綿が押さえ込まれて立体感が出ます。


7. 仕上げ:トリミングと縁処理

縫い終わったら枠から外して仕上げます。

Close up of the finished blue stitch on the fabric.
Reviewing result

仕上げ手順

  1. 枠から外す
  2. 防草シート(スタビライザー)の余りをハサミでカット
  3. 必要に応じて四角く整える
  4. 端はバイアステープでくるむなどして仕上げ

8. トラブルシューティング(現場の診断表)

不具合は「物理(枠・貼り)→データ(描き方)」の順で潰すと早いです。

症状 ありがちな原因 その場の対処 根本対策
線がつながらない/交差が甘い Sew Artで線の描き始めが外枠に乗っていない 外枠の線上から描き直す つながり(重なり)を意識して描く
波打ち/シワ 貼り付け時に布を引っ張った/スタビライザーが緩い いったん止めて表面を整える スタビライザーを張り直し、フロートは“置く”動作に徹する
糸が裏で絡む 上糸経路の不具合/ボビン周りの乱れ 上糸をかけ直す 清掃と再セット、針交換
枠跡が出る 枠の締めすぎ 仕上げで軽く整える マグネット刺繍枠 などで圧迫を減らす
データが読み込めない サイズが上限超え 画面で縮小 最初から94〜95mm以内で作る

道具を見直すタイミング

1枚は楽しくても、段取りで詰まったなら改善余地があります。


最後に

今回の格子は、ただの模様ではありません。ソフトの“つながり”と、枠内の“張り”を一致させて、厚物を安定して縫い切った証拠です。

次は格子の密度を変えたり、モチーフの周りを避けてキルティングするなど、応用に進めます。基本は同じです。

  • 物理を尊重する
  • 触感チェックを信じる
  • スタビライザーはしっかり張る

Happy Stitching.