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埋め込みモジュールに関する注記: この記事はチャンネル「Kathy's Jewelry and Crafts」の動画「Machine Embroidery Vlog: Running Brother NQ1700E & PE900 Simultaneously」を元にしていますが、動画を見なくても再現できるように“段取り書”として独立した手順に再編集しています。
「2台同時に回せるの?」「厚紙に直接刺繍してもボロボロにならない?」——そんな疑問がある方に向けて、実際の運用シーンをベースに、破綻しやすいポイント(色替えの取りこぼし、糸切れ、厚紙の裂け・シワ、軽い波打ち)を避けながら回す手順を整理します。
この回では、片方の機械が“3.5時間級”のステンドグラス風バタフライを進める一方、もう片方が厚紙のバースデーカードを約21分で仕上げます。長時間案件をバックグラウンドで走らせつつ、短時間案件の色替えをテンポ良く回すのがコツです。
この記事でわかること
- 2台同時運用で、色替え停止を取りこぼさない段取りの作り方
- キャンバス生地で高密度・多色デザイン(バタフライ)を安定して回す要点
- 厚紙(カードストック)に裂けにくく刺繍するための「浮かせ貼り」考え方
- Embrillianceから対応機へWi-Fiでデータ転送する流れ
- 糸切れ・毛羽立ち・軽いパッカリングを“長時間案件が台無しになる前”に止めるチェック
2台同時運用の段取り(マルチマシン・ワークフロー)
2台同時は効率的ですが、成功の鍵は「縫い時間」よりも「停止タイミング(色替え/糸切れ)」に合わせて動ける配置と手順です。このセッションでは、NQ1700Eが高ステッチ・多色の壁飾り、PE900が短時間のカード刺繍を担当します。

基本方針はシンプルです。
- 長時間・複雑デザイン(バタフライ)は、色替えの合間に“自走”させる
- 短時間・停止が多いデザイン(カード)は、止まる前提で手元作業を回す
こうすると、進捗バーを眺め続けるのではなく、「止まった方だけ処理する」動きにできます。
それぞれの機械で何が起きているか(停止の性格を把握)
- NQ1700E(バタフライ):画面上の目安で約162分、色替え15回。色替えごとに止まるので、段取りがないと“止まり待ち”が増えます。
- PE900(カード):約21分の短時間ですが、文字や風船などで色ブロックが分かれており、色ごとに止まる設計です。
運用中のリズムは「次の色替えまで何分あるか」よりも、どちらが先に止まりそうかで決まります。画面の進捗表示や色リストを“チラ見”できる状態にしておくのが重要です。
NQ1700EとPE900の作業配置
実運用では、2台を“体をひねれば届く”距離に置き、近くに糸立て(大巻対応)とハサミを配置しています。片方はキャンバス生地を通常の刺繍枠で枠張りし、もう片方は厚紙をスタビライザー上に浮かせて固定してカードを縫います。
注意: 2台とも、針・キャリッジ・刺繍枠が動いている状態で手を入れないでください。糸始末、ジャンプ糸カット、素材のならし、取り外しは必ず一時停止してから行います。
この運用の良い点は、衣類縫製の経験がなくても成立することです。必要なのは、枠張り(または浮かせ固定)、スタビライザーの理解、そして停止時の対処手順です。
また、2台を回していると「今どこを縫っているか」が不安になりがちです。そんなときは、画面の進捗表示と色リストを確認します。PE900では、画面上の小さなマーク(位置表示)を目印に、どの要素を縫っているかを把握できます。
2台運用に慣れてくると、枠張りの手間や再現性がボトルネックになります。基本動作が安定してきたら、ミシン刺繍用 刺繍枠のような選択肢を検討して、段取り時間を削るのも一つの方向性です。
縫い時間と色替え停止の“回し方”
バタフライは長いものの、色替えの間は比較的放置できます。一方カードは短いのに、デザイン都合で色ごとに止まります(ソフト側で色順を整理しても、ブロックが分かれていれば停止は発生します)。
実務的な回し方は次の通りです。
- バタフライをスタート(次の色替えまで走らせる)
- カード側をスタート/再開
- どちらかが止まったら、止まった方だけ色替え・糸掛け直し・糸始末
- もう一方が動いている間に、次の糸色や道具を準備
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プロジェクト1:ステンドグラス風バタフライの壁飾り(キャンバス)
このプロジェクトは、キャンバス生地に細密なバタフライ柄を縫い、仕上げに木製フープへ入れて飾る内容です。画面上の目安は約162分・色替え15回ですが、停止や糸トラブルを含めると実運用では約3.5時間になっています。

刺繍枠サイズと素材(キャンバス)の選び方
動画内では一般的な枠サイズ(例:5x7)が言及されています。キャンバスはステンドグラス風のような密度が高いデザインでも形が崩れにくく、完成後にフープ額装する用途とも相性が良い素材です。
キャンバスが向く理由
- 密度の高い面埋めでも歪みにくい
- 額装フープに入れたときに“たわみ”が出にくい
- 長時間運転でも伸びやすい素材より安定しやすい
薄手素材で同等のデザインを回す場合は、スタビライザーの選定や枠張りの張力がよりシビアになります。繰り返し同サイズを作るようになったら、枠張りのスピードと安定性のためにbrother 5x7 マグネット刺繍枠のような選択肢を検討する人もいます(まずは現行手順が安定してからが安全です)。

高ステッチ・多色(色替え15回)を崩さない管理
管理の中心は「色替えの取りこぼし防止」です。機械画面には残り時間と色リストが出るので、次の停止までの余裕を見て、もう一台の作業に移ります。
チェックポイント
- スタート前に、画面の枠サイズ/向きが“実際に付けた枠”と一致しているか
- 画面の色順と、手元に並べた糸が一致しているか(特に似た色)
長時間案件ほど、糸の通り道の抵抗や毛羽立ちが効いてきます。大巻を使う場合は糸立てを使い、糸が引っ掛からずに供給される状態を作ると安定します。

見落としがちな消耗品と事前チェック
動画は縫っている最中が中心ですが、長時間案件は“縫う前のチェック”で結果が決まります。少なくとも次は押さえてください。
- 上糸/下糸(ボビン糸):下糸の巻きムラやセット不良は長時間で表面化しやすいので、スムーズに巻けているか確認します。
- 針:糸切れや毛羽立ちが出たら、まず針交換が最短ルートになりがちです。
- スタビライザー:キャンバスでも、密度が高いデザインでは支持力が必要です。縫い崩れや波打ちが出る場合は、支持を見直します。
- 小物:糸切りバサミ、予備針、ボビン周りの清掃用具は手の届く場所に。長時間は糸くずの蓄積も無視できません。
事前チェックリスト(バタフライ)
- キャンバスが安定して固定されている
- 画面で枠サイズが正しい
- 針が新品または状態良好
- ボビン糸がスムーズに供給される
- 色替え順に糸を並べてある
木製フープに額装する
縫い上がったら、刺繍枠から外して木製フープに入れ、中心を合わせてネジを締め、裏側の余り布を整えます。

額装前の品質チェック
- 密度の高い箇所の波打ち(軽いパッカリング)が目立たないか
- 表のジャンプ糸が残っていないか(必要に応じてカット)
同じサイズを何度も作る場合は、位置再現のための治具や固定台を検討する人もいますが、本記事内に対応するKWDマッピングがないため、ここでは一般論以上の言及は避けます。
プロジェクト2:厚紙(カードストック)への刺繍
2つ目は、厚紙に「Happy Birthday」を刺繍するカード案件です。目安は約21分ですが、文字と風船などで色替えが複数回発生します。

Embrillianceでデータを用意する
文字とシンプルな要素を刺繍ソフトで用意し、機械へ送ります。デザインは色ブロックが分かれており、たとえば文字の一部にピンク、風船に青など、意図的に色替えが入ります。
厚紙は“針穴=切れ目”なので、密度が高すぎると裂けやすくなります。厚紙向けには、過度に詰まった表現より、比較的抜けのある文字表現のほうが安全に回しやすい傾向があります(まずはテスト縫いで確認してください)。

Brother PE900へWi-Fiで転送する
このセッションでは、Embrillianceを使ってPCからPE900へWi-Fiでデータ転送しています。USBメモリの抜き差しが不要になるため、2台同時運用では特に段取りが軽くなります。
機械側にデータが表示されたら、配置と枠サイズを確認してスタートします。
小物案件(カード、ワッペン、小さなサイン等)を頻繁に回す場合、枠の着脱がボトルネックになりやすいので、慣れてきたらbrother pe900 用 マグネット刺繍枠を検討する人もいます。

厚紙を裂けにくく縫うコツ(浮かせ貼りの考え方)
厚紙は布と違い、針穴が連続するとミシン目のように裂けます。ここでは、厚紙を刺繍枠で直接挟み込まず、スタビライザーを枠に張り、厚紙はその上に固定する(浮かせる)方法が示されています。
浮かせ貼りが効く理由
- 枠で挟むのはスタビライザーだけなので、厚紙の端が潰れにくい
- 張力をスタビライザー側で受けられ、厚紙のシワ・割れを減らしやすい
チェックポイント(厚紙)
- 厚紙がスタビライザーにしっかり固定され、反りや波打ちが出ていない
- 刺繍範囲の下にスタビライザーが十分にある
注意: 厚紙のジャンプ糸を切るときは、必ず停止してから小さく鋭いハサミで行います。動作中に引っ張ると、厚紙が裂けたり、針周りで指を傷つけるリスクが上がります。
運用チェックリスト(カード)
- 厚紙がスタビライザー上に安定して固定されている
- デザインがカード範囲内に収まる位置にある
- 色替え用の糸を手元に段取りしてある
- 速度は厚紙に無理のない範囲(不安なら落とす)
- 迷う場合は、同じ厚紙でテスト縫いして密度感を確認する
よくあるトラブルと対処
長時間デザインと厚紙は、準備してもトラブルが起きやすい組み合わせです。ここでは動画内で触れられている内容を中心に、現場での切り分け手順に落とし込みます。

糸切れ(毛羽立ち)への対処
バタフライ運用中に糸切れが発生し、特定の糸が機械内部の糸道で毛羽立って切れやすい可能性が示唆されています。長時間案件では、糸切れのたびに復旧ロスが積み上がるため、早めの切り分けが重要です。
症状 → 原因 → すぐできる確認 → 対処 → 代替案
- 症状: 同じあたりで糸が繰り返し切れる
- 想定原因: 糸の毛羽立ち、糸道の抵抗、針の劣化、糸の供給姿勢
- すぐできる確認: 糸をガイドに通す前に手で引き出し、引っ掛かり感がないか/切れ端がモサモサしていないかを見る
- 対処: いったん上糸を最初から掛け直す、針交換、糸の向きと糸立ての位置を見直す(大巻は糸立て推奨)
- 代替案: 別の糸に替えて挙動を比較する(長時間案件は特に“相性”が出ます)
- 症状: カーブや密度の高い面で切れやすい
- 想定原因: 速度が高い/負荷が高い/(機種設定が可能なら)上糸張力が強め
- すぐできる確認: 速度を落として数分回し、切れが止まるかを見る
- 対処: 速度を落とす。張力調整が可能な場合は、取扱説明書の範囲で見直す
- 代替案: 次回以降、密度が過剰なデザインは選定段階で避ける/ソフト側で調整を検討する
枠の保持が不安定で素材が動くと、結果的に糸への負荷が増えることがあります。安定した固定が必要な場合は、マグネット刺繍枠のような選択肢を検討するのも一案です(ただし、まずは現状の枠張り・支持を整えてから)。

糸品質が結果に直結する理由(長時間ほど差が出る)
糸の毛羽、太さムラ、巻きの不均一は、次のような形で表に出ます。
- 糸道での摩擦増加
- ボビン周りやテンション周りの糸くず増加
- 長時間での縫い目不安定
チェックポイント(メンテ習慣)
- ボビン周りは定期的に清掃(糸くずが増えたら早めに)
- 糸は直射日光とホコリを避けて保管
- 明らかに毛羽立って切れる糸は、途中で見切る判断も重要
事前セットアップと判断フロー
スタート前に、スタビライザーと固定方法を“条件分岐”で決めておくと、今回のようなトラブルの多くを未然に減らせます。

セットアップチェックリスト(両案件共通)
- それぞれの機械で、枠サイズが正しく選択・装着されている
- 素材(布/厚紙)がスタビライザーで適切に支持されている
- 針の種類と状態を確認(迷ったら交換)
- 糸道に引っ掛かりがない/大巻は糸立てで安定供給
- デザインの向き・配置が画面上で正しい
判断フロー:素材・スタビライザー・固定方法
- 素材が硬めで伸びない(キャンバス、厚紙)
- → 中程度のスタビライザーで支持し、挟むと傷む素材(厚紙)は浮かせ固定を優先
- 素材が薄い/やや伸びる
- → スタビライザーを増やす、素材とスタビライザーを一緒に枠張りして保持力を上げる
- デザインが高密度・長時間(バタフライのような案件)
- → 支持力のある組み合わせを選び、必要なら速度を落として安定優先
- 固定が不安定でズレる
- → 枠張りをやり直す/固定方法を見直す/より保持力の高い固定具を検討
単針機で色替えが多い運用を継続すると、将来的に多針刺繍機が選択肢に入ることもあります。ただし本動画の範囲では具体的な機種比較や互換性の断定はできないため、ここでは「色替え負荷がボトルネックになり得る」点の示唆に留めます。
PEシリーズで枠の選択肢を増やしたい場合は、用途に合うbrother pe900 刺繍枠を揃えておくと段取りが組みやすくなります。
注意: マグネット系アクセサリーは吸着時に指を挟みやすいので、挟み込みポイントを避けて扱ってください。外すときは引っ張るより“スライドしてずらす”ほうが急な反発を抑えやすくなります。
枠張りと段取りの改善(アップグレードの考え方)
同じ種類の案件(壁飾りやカード)を繰り返すほど、縫いそのものより「セットにかかる時間」と「再現性」が効いてきます。動画では標準枠で運用していますが、枠張りの戦略は改善余地が大きい領域です。

枠や固定方法を見直すタイミング
次のような状況が増えたら、枠や固定方法の見直しどきです。
- 同サイズを何度も枠張りし直している
- 厚紙や薄物で、固定のたびに反り・シワが出る
- 位置合わせに時間がかかり、2台運用のメリットが薄れる
PEシリーズでは、フラット素材(カード、ワッペン等)の着脱を早めたい目的で、brother pe900 用 マグネット刺繍枠を検討するケースがあります。
また、より高い生産性を求める場合は多針刺繍機という方向性もありますが、導入時は必ず仕様確認と取扱説明書に従ってください。
まずは、よく使うサイズ帯に合わせてミシン刺繍用 刺繍枠を整理し、段取りの標準化から始めるのが現実的です。
仕上がり確認と引き渡し
最終的に、厚紙のバースデーカードはきれいに縫い上がり、バタフライ壁飾りは木製フープに額装されました。バタフライは約3.5時間かかっており、「次は同じのはやらないかも」という感想が出るのも納得の負荷です。長時間案件は、着手前にステッチ量と色替え回数を確認しておくのが最重要です。



完了前の品質チェック
- カード:厚紙が裂けていない/文字と風船が読める/位置がずれていない
- バタフライ:大きな波打ちがない/糸飛びや緩みが目立たない/額装前に糸始末ができている
ギフトや販売を想定するなら、成功した条件(スタビライザー、針、糸、枠サイズ、速度)をメモして再現性を上げるのが近道です。
また、厚紙案件は特に、いきなり本番カードで回すより、同じ厚紙の端材で密度感を確認してから本番に移るほうが安全です。
2台運用が日常になってきたら、brother nq1700e関連の周辺アクセサリーを含め、段取りの標準化と“止まったときの復旧手順”を整備していくと、品質を落とさずにスループットを上げやすくなります。
準備・チェック・トラブル対応の型を作っておけば、長時間のバタフライと短時間のカードを並走させても、落ち着いて回せるようになります。
