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ベルニナ「ミディアム・ボーダー・クランプフープ」とは?
刺繍をする人なら、一度はヒヤッとする瞬間があります。完成済みのキルト(しかも大切な作品)に、中央をまたぐようにボーダー刺繍を入れたい——でも、厚い“サンドイッチ”を通常の丸枠に押し込むと、枠跡が残ったり、縫製中に外れたりしそうで怖い。
ベルニナのミディアム・ボーダー・クランプフープは、まさに「厚い・重い」を前提に設計された解決策です。動画では、このツールの特長として 8.5" × 16" という大きな刺繍可能エリアが紹介されています。内枠/外枠の摩擦で固定する一般的な刺繍枠と違い、周囲をクランプで“上から押さえる”方式。テーブルランナー、ジャケットの背中、キルティング済みのホームデコ素材など、かさ高い素材の枠張りに強いのがポイントです。

サイズと刺繍可能エリア
枠張りの段取りは「安全に縫える範囲(刺繍可能エリア)」の把握がすべてです。ここでの要点は 8.5" × 16" の刺繍可能エリア。横長なので、長いボーダー柄を無理に分割して何度も枠張りし直す回数を減らせます。

動画で扱われているシステムは、物理的に次の3要素で構成されています。
- ベースフレーム: テーブル上に置く長方形の土台。
- 位置合わせ用グリッド: 刺繍可能エリアを可視化し、センターや直角を取りやすくする透明テンプレート。
- クランプ: 周囲を点で押さえて固定するパーツ(必要数だけ使える)。


正方形クランプフープとの違い
動画内では、ベルニナから 6.5" と 8.5" の正方形クランプフープが先に出ていたことにも触れられています。では、なぜ横長のミディアム・ボーダーを選ぶのか。答えはシンプルで、作業効率(枠張り回数の削減)です。連続するボーダーや、長手方向に余裕が欲しい配置では、長方形の方が段取りが安定します。
このガイドで身につけること(作業の骨格):
- 固定の考え方: 厚みを潰しすぎず、ズレない程度に押さえる。
- 位置合わせ: 目視+グリッドで、中心と直角を短時間で合わせる。
- クランプの掛け方: 片側から固めず、左右を行き来してテンションを均す。
- 安全と選択: クランプが向く場面/マグネット刺繍枠が向く場面の判断軸。
クランプフープとマグネット刺繍枠の違い
動画では、クランプ方式とマグネット方式の違いが分かりやすく比較されています。どちらも「内枠を押し込む」タイプではありませんが、得意分野が異なります。
位置合わせの“コントロール感”
クランプフープは、周囲を“点”で止めていくため、部分的に固定→整える→次を固定という流れが作れます。
- クランプの感触: 手で押し込む抵抗があり、固定できた感覚が掴みやすい。
- マグネット刺繍枠の感触: ある程度まとめて吸着し、スピードが出やすい(作業が速い)。
現場目線の使い分け: クランプは、段差や厚みムラが大きい素材で「ここだけ微調整したい」場面に強く、マグネットは、枠張りスピードや表面保護(押さえ跡を減らしたい)を優先したい場面で有利です。
キルトのような厚手素材への適性
動画のデモは キルティング済みのテーブルランナー。ふくらみ(ロフト)があり、縫い目方向もあるため、枠張りの難易度が上がる代表例です。

起きがちな問題: 通常枠に押し込むと、上布が引きずられて“波打ち”やすい。
クランプ方式の利点: 上から押さえるので、押し込み時の引きずりが起きにくく、位置合わせを保ちやすい。
手順でわかる枠張りガイド
枠張りは刺繍品質の土台です。枠がズレていれば、機械側で取り返すのは難しくなります。ここでは動画の流れを、作業者が再現しやすい形に整理します。
準備(作業環境と事前チェック)
動画では、フープを平らなテーブル上で扱っています。大きい・重い素材ほど、これは必須条件です。布がテーブルから垂れると、その重みで中心が引っ張られてズレやすくなります。
チェックリスト(作業前):
- 作業面: フープと素材の“はみ出し”を支えられる広さがある
- グリッド: 汚れや曇りがなく、中心線が見える
- クランプ: 必要数を手元に分けて置けている(途中で探さない)
注意(安全): クランプはテコで強い力がかかります。押し込む際は指先を挟み込みやすいので、クランプの可動部(噛み込み部)に指を入れないようにしてください。
ステップ1 — フープとグリッドを準備する
長方形のベースフレームを平らな面に置き、透明グリッドをセットします。

チェックポイント: グリッドがきちんと収まり、ガタつかないこと。中心線が読み取れる状態にしておきます。
ステップ2 — 素材を置いて位置合わせする
動画では、キルティング済みランナーをフレームの上に“かぶせる”ように置き、中心を目視で合わせています。

作業のコツ(コメントより要約): グリッド(テンプレート)を使って布を上から押さえ込み、位置を決めてからクランプすると、短時間で狙い位置に置きやすくなります。
チェックポイント:
- フレーム全周を布が十分に覆っている
- 斜めに入っていない(柄や縫い目がある場合はグリッド線と平行を意識)
ステップ3 — クランプを掛ける(左右を行き来して均す)
ここが仕上がりを左右します。片側だけを先に固めると、反対側へ引っ張る動きが出て、歪みやズレの原因になります。


動画の流れに沿った掛け方:
- まず長辺の左右など、離れた位置から数か所を止める
- 反対側へ移って止める(左右を行き来してテンションを均す)
- 必要に応じて短辺(端)にも追加する
- クランプは全部使う必要はなく、素材の重さ・厚み・安心できる固定感に合わせて必要数だけ使う




チェックポイント:
- クランプが最後までしっかり座っている
- 布が過度に引っ張られていない(柄や織りが歪んでいない)
ズレたときの戻し方: いったん該当箇所のクランプだけ外し、布をならしてから掛け直します。クランプ方式は、この“部分的なやり直し”がしやすいのが利点です。
ステップ4 — グリッドで最終確認する
最後に、グリッドを上から当てて、狙い位置に来ているかを確認します。ズレていればクランプを外して調整し、再度確認します。


チェックポイント: 中心や基準線(柄・縫い目など)がグリッド線と合っていること。
作品アイデア(大きいフープの活かし方)
フープ内でキルティング(イン・ザ・フープ)
動画では、刺繍だけでなくキルティング用途にも触れています。上糸と下糸(ボビン糸)の色を合わせて縫えば、なじませるキルティング表現も可能です。
タオルへの刺繍
動画内でも、キルト以外にタオルなどの厚手素材が例として挙がっています。ループがつぶれやすい素材では、押し込み式の枠よりクランプ方式が扱いやすい場面があります。
ジャケット背中・ホームデコ
動画では、ジャケット背中やホームデコ素材にも言及があります。大面積を一度に扱えるフープは、配置の自由度が上がります。
トラブルシューティング
現場で起きやすい「枠張り起因」の不具合を、症状→原因→対処の順で整理します。
| 症状 | ありがちな原因 | まずやる対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| 配置が斜め/中心がズレた | グリッド確認前にクランプを固めた | クランプを一部外して位置を戻し、グリッドで再確認 | グリッドで“置き”を決めてからクランプする |
| 布が歪む/柄が引っ張られる | 片側から連続でクランプした | 左右を行き来して掛け直す | 離れた位置から数か所を止め、均等に増やす |
| 固定が不安で動きそう | クランプ数が不足/端の保持が弱い | 必要箇所にクランプを追加(短辺も検討) | 素材の重さに合わせて必要数を使う |
まとめ
ベルニナのミディアム・ボーダー・クランプフープは、厚手キルトやかさ高素材を「押し込まずに上から固定」できる、実務向けの選択肢です。ポイントは、平らな作業台で、グリッドを使って位置を決め、クランプを左右交互に掛けてテンションを均すこと。ズレたら一部だけ外して調整できる——この“微調整のしやすさ”が、クランプ方式の強みです。
