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刺繍キーホルダーに必要な基本資材
キーフォブ、キーホルダー、スナップタブは一見シンプルです。サイズが小さいぶん「初心者向けで簡単」と思われがちですが、実際はマシン刺繍の精度がそのまま仕上がりに出る“シビアな小物”です。スタビライザーのズレ、糸飛び、金具の固定不良など、どれも目立ちやすく、最悪の場合は実用品として成立しなくなります。
元動画では、Jennifer が実際に購入した資材を見せながら、特にビニールの種類と金具の耐久性に焦点を当てて解説しています。プラスチックスナップよりも金属リベットを選ぶ理由として、「使っているうちに外れてしまう」リスクを避けたい、という実感ベースの判断が語られています。
ただし、brother 4x4 刺繍枠 のような小さめの枠で厚手の“ビニールサンド”を扱うと、別の物理的ハードルが出ます。硬くて厚い材料をしっかり固定しようとすると、枠の圧痕(枠跡)が残ったり、無理なテンションで歪みが出たりしやすいからです。このガイドでは、単なる「買った物紹介」を、毎回同じ品質で作れる“工程”として整理します。勘に頼らず、再現性のあるチェックで「売れる仕上がり」を目指します。


この記事で身につくこと(初心者が見落としがちな点)
以下を、現場で使える形で理解できます。
- 材料の特性を読む: マリンビニール(強度)と椅子張り用ビニール(見た目・柔らかさ)を、折り返しや重なり厚みの観点で選ぶ。
- 金具サイズを外さない: リベット 6mm/8mm を積層厚みに合わせ、固定後に“空回り”しない状態にする。
- 穴あけをきれいに決める: ビニールを割らず、層ズレを起こさずに穴を抜く。
- 裏面の触感まで仕上げる: リベット/ハトメの裏側を引っかかりのない状態にし、使用感とクレームを防ぐ。
- 作業をスケールさせる: 手首と時間を守るための「工具アップグレードの順序」を組み立てる。
コメントは「素晴らしい動画でした」といった感想が中心でしたが、このジャンルではよくある流れです。動画は楽しく見られても、実際に作り始めると「スナップが外れる」「穴位置がずれる」「ビニールが波打つ」といったところで止まりがちです。ここでは、そのつまずきを工程内のチェックとして先回りします。
マリンビニール vs 椅子張り用ビニール:何が違う?
Jennifer は主に2種類のビニールを使い分けています。この違いを理解すると、ペラペラのタグで終わるか、長持ちするキーフォブになるかが変わります。
- 黒のマリンビニール(厚めでしっかり、耐久寄り)
- 白の椅子張り用ビニール(薄めで柔らかい)


キーフォブで効く“実務上の違い”
1)厚みは、金具・枠張り・縫い目の見え方を全部変えます。
- 積層厚み(スタック): マリンビニールは“骨格”になります。鍵の擦れにも強い一方、マリンビニールを2枚+スタビライザーの構成にすると厚くなり、一般的な樹脂枠では固定がきつくなりがちです。
- 折り返し(折り癖): 薄い椅子張り用ビニールは折り返しやすく、スナップタブの上部に向きます。マリンビニールは折り返しに力が要るため、折り位置のズレや浮きが出やすくなります。
2)フェルト貼りは助けになりますが、スタビライザーの代わりではありません。
Jennifer が紹介している「フェイクレザーリボン」のような素材は、裏がフェルト貼りの薄手ビニールです。フェルトは摩擦が増えるのでズレにくくはなりますが、刺繍の支持体としては別物です。用途に応じてスタビライザーを併用する前提で考えると失敗が減ります。
3)ビニールが枠内で“扱いにくい”理由(現象を言語化)
ビニールは織物ではなく、伸び戻りや馴染み方が布と違います。一般的な枠で強く張りすぎると、縫製後に歪みが出やすくなります。
この制約があるため、ビニール系のITH小物では マグネット刺繍枠 を検討する人が増えます。マグネット刺繍枠は、ネジ締めの横方向の圧力ではなく、上からの吸着で材料をフラットに保持しやすく、枠跡の軽減や固定の安定に繋がります。
注意: ビニール刺繍時の針まわり安全
ビニールは針にまとわりつきやすく、針が上がると材料が一緒に持ち上がることがあります。糸飛びや針折れの原因になります。作業中は押さえ周りに指を近づけすぎないようにし、針の貫通が重そうな音がしたら速度を落として様子を見てください。
プラスチックスナップより金属リベットを推す理由
Jennifer の主張の核はシンプルです。プラスチックスナップは使用回数や負荷で外れやすくなることがあり、キーホルダー用途では不安が残る。一方、金属リベット(両面カシメ)は固定後に外れにくく、日常の摩耗に強い、という考え方です。
動画内で使い分けているリベットサイズ
厚み違いに対応するため 2サイズ を用意しています。
- 6mm:薄い積層向け
- 8mm:厚い積層向け(黒のマリンビニールなど)



手順:リベットサイズ選定(チェック付き)
手順1 — 積層厚みを“金具位置”で見る。 金具は平面ではなく厚みのある部分に入ります。リベットを打つ位置の構成(表材+裏材+必要なら補強)を前提に考えます。
チェックポイント:指先の感触 指でつまんだときに、極端にフカフカしていると、打ち込み時に傾いたり、潰れすぎたりしやすくなります。
手順2 — 厚みに合わせて 6mm/8mm を選ぶ。 Jennifer の使い分けは「厚いマリンビニールには 8mm、薄い椅子張り用には 6mm」という実務的な判断です。
期待する状態: カシメ前に差し込んだとき、ポストが材料面から少し出て、キャップが確実に噛む余裕があること。
手順3 — “レシピ化”して迷いを減らす。 同じ材料構成なら同じ金具サイズで通せるように、材料とサイズの組み合わせをメモしておくと、量産時のロスが減ります。
現場のコツ(見た目の統一)
Jennifer は複数色のリベットセットにも触れています。仕上がりの印象は金具の統一感で大きく変わるので、リベット色とキーリング色を揃えると“商品感”が出やすくなります。
コスパ重視の工具:Harbor Freight で揃えるなら
高価な工具が必須というわけではありません。Jennifer が紹介しているのは、まず押さえるべき3点です。
1) 回転式レザーパンチ(穴あけ) 2) リベット打ち工具(台座+打ち棒) 3) 小型ハンマー(力加減がしやすい)




手順:穴あけをきれいにする(ビニールを割らない)
回転式パンチは、叩き抜くタイプよりも手元でコントロールしやすく、連続作業でも疲れにくいのが利点です。
手順1 — 穴サイズを選ぶ。 動画内で触れているサイズは 5/64, 3/32, 1/8, 9/64, 5/32, 11/64 です。 考え方: リベットのポスト径に対して、無理なく通るサイズを選びます。
- 小さすぎる:押し込むときに割れ・白化が出やすい
- 大きすぎる:使用中に金具が動きやすい
手順2 — 一発で抜く(層ズレを防ぐ)。 材料を安定させ、しっかり握って一気に抜きます。途中で力が抜けると、穴が楕円になったり層がずれたりします。
手順3 — くず詰まりを定期的に掃除。 Jennifer はパンチ内部にくずが溜まる点にも触れています。くずが詰まると切れ味が落ち、余計な握力が必要になります。連続作業前後で掃除しておくと安定します。
手順:リベットを打つ(Jennifer のやり方)
1) 台座(アンビル)を硬い面に置く(ぐらつくテーブルは避ける) 2) 下キャップ → 材料 → 上キャップ の順に重ねる 3) 打ち棒を上キャップにまっすぐ当てる 4) 小型ハンマーで数回に分けて叩く(1発で潰し切ろうとしない)
チェックポイント:回り止め 指でつまんでキャップが回るようなら、まだ締まりが甘い可能性があります。
補足(叩き作業を減らす発想)
Jennifer は「不要なハンマー作業を増やしたくない」と話しています。小物を数十個作ると、叩く回数がそのまま疲労とミスに直結します。
量が増えてきたら、まず作業姿勢と固定を見直すのが効果的です。枠作業が多い人は、刺繍用 枠固定台 を導入すると、材料を扱う両手が使いやすくなり、位置合わせの再現性も上がります。
金具はAmazon、素材はHobby Lobby/Joann:買い分けの考え方
調達も工程の一部です。Jennifer は用途に応じて購入先を分けています。
- Amazon: リベットやリングなどの金具をまとめ買い
- Harbor Freight: パンチやハンマーなどの工具
- Hobby Lobby/Joann: ビニールなど素材(見た目のバリエーション)
動画内で出てくる具体例
- リベット:100個入りの箱、240ピースセット
- キーリング:3/4インチ と 1インチ
- リボン状ビニール:7.5" x 24"




材料戦略:「サンド構成」で耐久を作る
Jennifer は薄い装飾ビニールの裏に黒のマリンビニールを当てる使い方に触れています。見た目と強度を両立させる定番の考え方です。
- 表: 薄くてきれい(ただし単体だと弱い)
- 裏: 厚くて強い
- 結果: 見た目は軽やか、使うと丈夫
判断フロー:ビニールと補強の選び方
- 表材が薄い/柔らかいか?
- はい: 裏にマリンビニール等で強度を足す方向で検討
- いいえ: 構成次第で進められる
- 用途は重い鍵か、軽い鍵か?
- 重い: 裏を強く、金具も余裕のあるサイズ(動画では厚手に 8mm)
- 軽い: 薄手構成でも成立しやすい
- 枠で安定して固定できるか?
- できる: 通常枠で進行
- できない(滑る/浮く): 工具側の見直しポイント。厚手材料では ミシン刺繍用 刺繍枠 の中でも保持力の高い方式を検討すると作業が安定します。
注意: マグネットの取り扱い
マグネット刺繍枠は強力です。指を挟まないように注意し、医療機器を使用している場合は距離を取るなど安全面を優先してください。
工具アップグレードの考え方(段階的に)
- 入門: 手動パンチ+手打ちハンマー+通常枠
- 効率化: 回転式パンチ+枠固定台+マグネット刺繍枠(例:マグネット刺繍枠 brother 用 のように対応機種向けを検討)
- 事業: リベット用プレス機+多針刺繍機
今後の制作と、糸切れの話(小さく密なデザインで起きやすい)
Jennifer は、ブックマークのような小さくて密度の高いデザインで糸切れが起きたことにも触れています。小物ほど縫い密度が上がりやすく、材料がビニール系だと負荷が増えます。
「小さいデザイン」で糸切れが出るときの考え方
- 症状: 糸が切れる/毛羽立つ
- 背景: 針周りの摩擦が増え、条件によっては針に付着が出る
- 対処: 速度を落として様子を見る、針の状態を確認する
刺繍ミシン 用 枠入れ の位置合わせが難しい小物は、スタビライザーだけを枠張りして素材を上に固定する「フローティング」で枠跡を抑える考え方もあります。
ハトメ(アイレット/グロメット)を使うなら
Jennifer は1ピースのハトメを紹介しています。
- リスク: 裏側が荒くなりやすく、引っかかりの原因になる
- 考え方: 実用品として使うなら、裏側が滑らかに仕上がる構成を優先する
Prep(準備)
成功の大半は準備で決まります。ミシンを回す前に整えておくと、失敗が減ります。
見落としがちな消耗品と事前チェック
- テスト用の端材: 穴サイズ確認用に必須
- 工具の状態: パンチの切れ味、くず詰まり
- 糸と下糸(ボビン糸): 裏が見える構成なら色も意識
準備チェックリスト
- 材料チェック: 積層が“硬さはあるが縫える範囲”に収まっている
- 金具チェック: 6mm/8mmのどちらが合うか、実物で当てて確認
- 針チェック: 針先に欠けや曲がりがない
- 下糸チェック: 裏面の見え方に合わせて色を選ぶ
Setup(段取り)
作業台を「組み立て(乾)」と「接着剤など(汚れやすい)」で分けると、ビニール表面の汚れ事故が減ります。
“2ゾーン”で組む
刺繍用 枠固定台 のような枠固定台、または簡易治具を使うと、毎回同じ位置で枠張りしやすくなります。ファイル側の位置を毎回調整しなくて済むため、量産に向きます。
段取りチェックリスト
- 台座の安定: リベット打ちの面が跳ねない
- パンチのくず: くず詰まりを除去
- リベットの仕分け: 6mm と 8mm を混ぜない
- 作業速度: 厚手素材は無理をしない速度に落とす
Operation(作業)
品質は“順番”で安定します。毎回この順で進めます。
手順
1)刺繍
- デザインを縫う
- チェックポイント: 音や振動が急に重くなったら一旦止めて確認
2)トリミング
- 枠から外し、糸始末
- 外形カット(曲線は素材を回すときれい)
3)穴あけ
- ガイド穴があるデザインは、その位置に合わせる
4)組み立て
- ポストを通し、キャップを載せる
- チェックポイント: 叩く前に層がずれていない
5)カシメ
- 数回に分けて叩く
- チェックポイント: キャップが傾いていない/回らない
作業チェックリスト
- リベットがしっかり固定されている(指で回らない)
- 端面がガタつかず、曲線が滑らか
- 裏材で下糸が見えにくい構成になっている
- ハトメ裏面に引っかかりがない(触って確認)
Troubleshooting(トラブルシュート)
問題が出たら、症状→原因→対処を切り分けます。
| 症状 | ありがちな原因 | すぐできる対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| リベットが空回りする | 積層に対してポストが長い/打ちが甘い | 追加で軽く打って締める | 厚みに合うサイズ(6mm/8mm)を選ぶ |
| 穴周りが割れる | 穴が小さく、無理に通した | 基本的に部品交換 | 先に端材で穴サイズを確認 |
| 枠跡(リング跡)が残る | 枠の圧が強い/長時間挟んだ | 状態を見て対処 | フローティングや マグネット刺繍枠 を検討 |
| 糸飛び/針が重そう | 材料が持ち上がる、貫通負荷が高い | 速度を落として確認 | 厚みと固定方法を見直す |
| スナップが外れる | プラスチックの保持力不足 | 金具方式を変更 | キーホルダー用途は金属リベットを優先 |
Results(仕上がり)
Jennifer の資材選び(ビニールの使い分け、金属リベットの採用)をベースに、積層厚みと金具サイズを工程として管理すると、仕上がりは大きく変わります。
- 耐久性: 日常使用の負荷に耐える固定
- 見た目: 穴あけと端面が整うと一気に“商品感”が出る
- 再現性: 枠固定や保持方法を整えると、1個目と50個目が揃う
枠跡が気になる、硬いビニールの固定が大変、手が疲れて精度が落ちる——それは技術だけの問題ではなく、工具と段取りの問題でもあります。必要に応じて マグネット刺繍枠 brother 用 のような選択肢や、対応するマグネット刺繍枠を検討し、作業の安全域(失敗しにくさ)を作ってください。
素材を選ぶ。穴を正しく抜く。厚みに合うリベットで確実にカシメる。結果は必ずついてきます。
