Table of Contents
1 プロジェクトの概要
蝶は左右対称の羽、色の面構成、点・線・面の三要素が揃っているため、ジグザグステッチによる塗りの練習に最適です。今回の作品は、1匹目がブルー×レッド×オレンジにゴールドのドット、2匹目がブルー階調×ブラウン、3匹目がブルー×グリーンにゴールドのアクセントという三様の配色で、塗りの密度・色替え・ドットの置き方を段階的に習得できます。
1.1 何を目指すか(出来上がり像)
・1匹目:濃紺→赤→オレンジの順に大面積から小面積へ塗り、最後に金色の点で動きを加えます。 ・2匹目:外周をブラウンで落ち着かせ、中域〜内側をブルーの濃淡で重ねて深みを出します。 ・3匹目:外周を濃紺で締め、内側をグリーンの濃淡で爽やかに、金色の点で光を散らします。
1.2 いつ・どんな場面で使えるか
・配色練習:面のバランスと境界の処理を繰り返し学べます。 ・小物〜ウォールアート:完成したモチーフはミニ額装やパネル張りに向きます。 ・ステッチ密度の感覚づくり:ジグザグの幅・送りの関係を目で体得できます。
1.3 適用の前提と制約
・布の種類や下処理(スタビライザーなど)は動画で明示されていません。ここでは見た目の挙動から、通常の刺繍用の安定した下地が使われている前提で進めます。 ・機械の具体的な型番は映像では不明ですが、コメントによると工業用ジグザグ機(Singer 20u)をフリーモーションで運用し、膝の圧力でジグザグ幅をコントロールしています(詳細は「コメントから」参照)。
2 準備(道具・材料・下ごしらえ)
本プロジェクトの素材と道具は次のとおりです。動画で視認できる範囲に基づき、追加の推測は避けています。
2.1 道具
・刺繍用ミシン(手動コントロールが可能なジグザグ機) ・刺繍枠(布をピンと張れるサイズ) ・針(適合サイズ。動画で番手は示されていません)
2.2 材料
・布(事前に蝶の図案が描かれています) ・糸:ダークブルー、レッド、オレンジ、ライトイエロー/ゴールド、ライトブルー、ブラウン、ブルー、ダークグリーン、グリーン、ゴールデンイエロー(映像で確認できた色)
2.3 下ごしらえ
・布に蝶の輪郭を描いておく(動画ではすでに下描き済み) ・糸巻きの用意と順番の並び替え(色替えの回数が多いため)
動画では固定方式の具体言及はありませんが、手元の環境で布を安定させたい場合、マグネット刺繍枠 を使うと枠入れ後のたわみを抑えやすくなります。
【プロのコツ】 色替えの直前に、次に埋める領域の「縫い方向」を指先でなぞって視線を誘導しておくと、境界の重なりが減り、色の段差が滑らかに見えます。
【クイックチェック】 ・糸は順番通りに並んでいるか。 ・図案の左右対称が目視で合っているか。 ・枠上の布にたるみがないか。
チェックリスト(準備)
- 図案の下描きが明瞭か
- 必要な糸色が手の届く位置に並んでいるか
- 針に傷や曲がりがないか
- 枠の締め具が緩んでいないか
- 可能なら 刺繍用 枠固定台 で水平を確保しているか
3 セットアップ(ワークスペースとミシン)
刺繍機の操作感はセットアップで決まります。今回はフリーモーションでの手動コントロールが前提です。
3.1 ワークスペースの安定化
作業台は揺れが少なく、手前に十分な支えがあること。布の重みで枠が引っ張られないよう、台面と枠の高さを近づけます。長時間の色替えに備えて糸立てを整理し、誤色替えを防ぎます。枠の保持に不安がある場合は 枠固定台 を用いて両手の自由度を上げましょう。

3.2 ミシンの基本設定(映像情報に基づく)
・縫い目:ジグザグ(幅は可変) ・送り:フリーモーション(布は手で送る) ・速度:狭い領域やドットは低速、大面積の塗りは中速 ・テンション:均一な塗り面になるよう、必要に応じて微調整(具体数値は動画に明示なし)
【注意】 スタビライザーの種類は動画で明示されていません。手元の環境に応じて、伸びやすい布ならカットアウェイ、非伸縮ならティアアウェイなどを検討してください。ただし本記事では新情報の断定は避け、判断は読者の手持ち環境に委ねます。
3.3 機材について(コメント情報)
コメントによると、工業用ジグザグミシン(Singer 20u)をフリーモーションで使用し、膝の圧力でジグザグ幅を調整しています。この方式は、指先で布を操りながら、膝で幅を変えることで、塗りの密度・境界・ドットの粒感を即座にコントロールできるのが利点です。

チェックリスト(セットアップ)
- 枠と布がたわみなく固定されているか
- フットコントロールと膝レバーの位置が自然か
- 試し縫いで上糸・下糸の張り具合が均一か
- ドット用の低速運転がスムーズか
- 予備のボビンを用意したか(色替えが多いため)
4 手順:3匹の蝶を刺繍する
以降は実際の映像の流れに沿って、3匹の蝶を順に仕上げます。各ステップの色替えと中間結果を明示し、うまくいっている状態を「見える化」します。
4.1 蝶1:レッド/オレンジ/ブルーの華やか配色(00:02–02:39)
1) 布を枠に張る(下描きあり)。 2) 濃紺糸で外周の羽からジグザグで塗り始める。ここは面積が大きいため、幅はやや広め、送りは一定に。

3) 赤糸に切り替え、中域のパネルを塗る。濃紺との境界は少し重ねて、色の段差を柔らかく見せる。

4) オレンジ糸で内側の小さな領域を塗る。面積が小さいため、送りをやや遅くする。
5) ライトイエロー/ゴールド糸で小さな円形のドットを打つ。低速で円周を描く感覚で、中心に密度を寄せる。
6) 体幹部は赤糸でまとめる。羽の鮮やかさに対して、中央のまとまり感が出る。

【期待される中間結果】 ・濃紺→赤→オレンジの順で、面積が外から内へと自然に小さくなる。 ・金色の点が、羽の流れに沿ってアクセントとして見える。
【注意】 ・糸切れや不均一なテンションが起きたら、すぐに止めて再糸掛け。小領域は過剰な密度で生地が硬くなりやすい。
【プロのコツ】 小さな円点は、最初に1周の輪郭を“軽く描く”→内側に密度を足す。これで形崩れが減ります。必要に応じて 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 を使うと、微細な手元操作が安定します。
チェックリスト(蝶1)
- 濃紺の塗り面に筋(スジ)が出ていないか
- 赤との境界で色がにじんで見えないか
- オレンジの小面積が潰れていないか
- 金色の点が均等な粒に見えるか
4.2 蝶2:クールブルー×アースブラウン(02:42–05:40)
1) ブラウン糸で外周部を塗る。1匹目よりもやや落ち着いた速度で密度を確保する。

2) ブルー糸で中央の帯を塗る。外周との境界は軽く重ねて段差感を減らす。

3) ライトブルーで内側の領域を塗る。青の濃淡によるグラデーションがポイント。

4) ライトブラウン(ゴールド寄りのトーン)で下層の縁を整え、全体の色調に一体感を出す(映像で確認)。 5) ダークブルーで小さな点や輪郭の強調を加える。点は等間隔に、羽の流れに沿わせる。

6) 体幹はライトブルーでまとめ、羽の青と響き合う。

【期待される中間結果】 ・ブラウンの外周が“額縁”の役割を果たし、青系の深みが中央に集まる。 ・ダークブルーの点が視線のガイドになり、羽の方向性が強調される。
【クイックチェック】 ・青の濃淡の境界がギザついていないか。 ・点の間隔が途中で詰まっていないか。
【プロのコツ】 青の層を塗る時は送りを一定に保ち、幅の変化は小刻みに。送りムラは“光のムラ”として目立つので、リズムを優先します。必要なら 刺繍枠 の位置を微調整し、視線の正対を保ちましょう。
4.3 蝶3:グリーン×ブルーに金色の光(05:43–09:07)
1) 濃紺糸で外側の大面積を塗る。完成像では、このラインが全体のシャープさを決める。

2) ダークグリーンで中域を塗る。濃紺と重ねる部分は、斜め方向に走らせると自然な混ざりに見える。

3) ライトグリーンで内側を塗ってグラデーションを作る。

4) ゴールデンイエローで小さなドットを羽縁に沿って等間隔で配置する。

5) 体幹をブルーで繋ぎ、左右の羽の色調を束ねる(映像終盤で確認)。
【期待される中間結果】 ・濃紺→濃緑→淡緑の順で色が自然につながる。 ・金色の点が羽の輪郭に“光の粒”として並ぶ。
【注意】 ・グリーン系はわずかな密度差でも色段差が目立つため、送りを乱さない。 ・ドットは低速で。針の貫通が同じ穴に集中しないようわずかに位置をずらして密度を作る。
チェックリスト(蝶3)
- 濃紺の外周が途切れなく繋がっているか
- 緑の濃淡が帯状に均一か
- 金色の点が点列として読み取れるか
5 仕上がりチェック
完成直前・直後の検品ポイントを、視覚と触感で確認します。
5.1 視覚の基準
・面の均一性:大面積の塗りに筋やスカスカがない。 ・境界の滑らかさ:色の切り替えがギザつかず、意図した方向へ流れている。 ・ディテール:ドットの径・間隔が揃い、輪郭線が必要な箇所だけ強調されている。
5.2 触感の基準
・過密で硬くなっていないか(特に小領域) ・厚みの段差が急でないか(段差があると洗濯や額装時に浮きやすい)
【プロのコツ】 仕上げの蒸気アイロンは、布地と刺繍面の上から軽く“浮かせて”当てるだけで十分。押し付けず、繊維を起こして面を整えます。
6 完成と活用
映像終盤では、3匹の蝶がそれぞれの配色で仕上がり、並べて見ても色の個性がはっきりとわかります。額装やパネル張り、ポーチのワンポイントなど、飾り方は自由です。大きな作品に展開する際は、複数モチーフを順次配置していく「位置合わせ」の練習にもなります。
作品をさらに大判へ展開したい場合、同一布上に複数の蝶を並べていく運用では、ミシン刺繍 マルチフーピング の手順整理が役立ちます(本記事では映像範囲を超える具体手法の断定は避けますが、位置合わせと枠の再装着の“反復精度”が肝です)。
7 トラブルシューティングとリカバリー
現場で起こりやすい症状を、原因と対処で整理します。
【症状】色境界がギザギザに見える ・原因:送りムラ/ジグザグ幅の急変 ・対処:速度を一定に、幅を小刻みに変化させる。境界の1〜2mm内側で先に薄く下塗りしてから本塗りで重ねる。
【症状】糸切れが起こる ・原因:同一点への穿孔集中/テンション過多 ・対処:ドットは低速で位置を微妙にずらす。テンションを一段緩め、再度試し縫いを行う。
【症状】面のスカスカ感(薄い筋)が出る ・原因:送りが速すぎる/幅が狭すぎる ・対処:送りを落とし、幅を1段上げて重ね量を確保。必要なら一度停止して角度を変える。
【症状】色がにじんで見える ・原因:境界の重ねすぎ/糸の艶差の錯視 ・対処:重ねは“見えるか見えないか”の最小限に。艶の強い糸は境界側をやや少なめにして反射を抑える。
【症状】小面積で生地が硬くなる ・原因:過密の塗り ・対処:送りをやや増やし、同じ場所に針を落とし続けない。必要なら周囲から内側に向けて密度を分散する。
補助策として、枠の保持を安定させたい場合は 刺繍機能付きミシン の付属枠や市販の マグネット刺繍枠 11x13 などを活用し、作業ごとの再装着精度を高めるとリカバリーが容易になります(本記事では具体製品の性能評価は行いません)。
8 コメントから(補足と確認事項)
・機材についての質問に対し、作者は「工業用ジグザグミシン Singer 20u をフリーモーションで使い、膝の圧力でジグザグ幅を制御」と回答しています。これは、羽の塗り・境界・点の表現を即時に切り替えるのに理にかなった方法です。 ・自動機での再現可能性については、デジタイズ済みデザインがあれば運用可能ですが、本記事の範囲(手動ジグザグ)とは操作思想が異なります。ここでは手動の“塗りの呼吸”に焦点を当てています。
なお、枠入れの安定性が課題の場合には 刺繍ミシン 用 枠入れ の段取り見直しや、布の厚みに応じた マグネット刺繍枠 brother 用 の選択肢もありますが、動画では具体製品は示されていません。自分の環境に合うサイズと固定力を選ぶ、という原則のみを共有します。
まとめ: 3匹の蝶は、それぞれ異なる配色と密度設計で、ジグザグステッチのコントロールを段階的に学べる教材でした。大面積→中面積→小面積→ドットの順で密度と動きを調整し、境界では“重ねすぎない最小限”を意識する。手動コントロールの要は、速度の均一化と幅変化の滑らかさ。枠と手元の安定化に課題を感じたら、マグネット刺繍枠 や 刺繍用 枠固定台 の導入も選択肢です(ただし本作品では具体機材の明示はありません)。これらの原則をつかめば、色数やモチーフが増えても、完成像の“光と面”を崩さずに仕上げられます。
