インザフープ(ITH)で作るビニール製IDバッジホルダー(4x4枠):窓の仕上がり・直線カット・位置合わせを崩さないための精密チュートリアル

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4x4刺繍枠でビニール製のインザフープ(ITH)IDバッジホルダーを作る手順を、2回の枠張り(背面パネル+任意のカードポケット/透明窓付きの前面パネル)で解説します。スタビライザー上の配置線を“外まで延長”して確実に位置合わせする方法、縫い目を傷めずに窓をシャープに切り抜くコツ、ビニール層をテープで固定してフローティング(浮かせ)してズレを防ぐやり方、そして「穴にピンを通して合わせる」精密アライメントで前後パネルを正確に合体させる工程までを、現場目線でまとめました。スタビライザー選びの考え方、量産を意識した段取り、ITHビニールで起きがちな失敗の切り分け(原因→確認→対処)も含めています。
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目次

マスタークラス:ITHビニール・バッジホルダー(精密ガイド)

教育責任者より

ビニールは“やり直しが効かない”素材です。綿のように針穴が戻ることはなく、1針ズレれば穴は残ります。枠の圧で付いた枠跡も、ツヤ面では致命傷になりがちです。だからこそ、ビニールが怖いのではなく、工程(プロセス)でミスを起こさないように組み立てます。

この作品は、真の「インザフープ(ITH)」です。ミシンが枠内で組み立て、最後に外周をカットして完成させます。ポイントは レイヤー管理見えない状態での位置合わせ。縫製の感覚というより、治具を使う加工の感覚で進めると成功率が上がります。

Close-up holding multiple finished ID badge holders in different colors.
Introduction / Showcase

用意するもの:「きれいに仕上げる」ための基本セット

見た目を“手作り感”ではなく“製品感”に寄せるには、材料選びが結果を左右します。このデータは、標準的な4x4サイズ(120x120mm)で、背面と前面を2回の枠張りで作ります。

基本材料(ここは省けない)

  • 刺繍ミシン:(動画はHusqvarna Vikingで実演。原理はどの機種でも同じです)
  • 刺繍枠サイズ: 4x4(120x120mm)
  • スタビライザー: 1回目(背面)はティアアウェイが基本。仕上がりの硬さを出したい場合はカットアウェイを混ぜる選択もあります(後半の判断ガイド参照)。
  • 素材:
    • 刺繍用ビニール/合皮(フェイクレザー): 中厚程度推奨。薄すぎると波打ち、厚すぎると枠内の段差が増えて縫いが不安定になりやすいです。
    • 透明ビニール窓: 12〜20 mil
    • 触って確認: 厚手のフリーザーバッグ〜柔らかいデスクマット程度のコシが目安。セロハンのようにパリパリなら薄すぎて裂けやすくなります。
  • 固定用:
    • Wonder Tape(両面テープ/水溶性): 透明窓の固定に必須。糊残りを抑えやすいです。
    • Scotch Tape: スタビライザーや素材端の仮固定に。
  • カット道具:
    • エグザクトナイフ(デザインナイフ): 新品刃推奨。
    • 定規: 安全のため金属定規が扱いやすいです。
    • ロータリーカッター: 外周の仕上げカット用。
    • 日本式スクリューポンチ:(任意)裂けにくい“きれいな穴”を作るのに有効。

見落としがちな消耗品&事前チェック

失敗の原因になりやすい、地味だけど重要な項目です。

  • 針: 75/11 Sharp。ボールポイントはビニールに不向きで、ユニバーサルも貫通が不安定になる場合があります。鋭い先端で“切るように”貫通させます。
  • 糸: 40wtポリエステル推奨。ビニールは摩擦が増えやすく、綿糸は切れやすいことがあります。
  • 滑り: ベッド面が引っかかるとビニールが引きずられます。必要に応じてベッド面の摩擦を下げる工夫(滑り補助)を検討してください。

枠跡(枠跡=枠跡)対策:道具アップグレードの考え方

ビニールは枠跡が出やすく、標準枠で強く締めるほど白っぽい圧痕が残ることがあります。販売や量産を視野に入れるなら、ここがボトルネックになりがちです。

判断のきっかけ: 枠跡で素材を捨てている/やり直しが多い 目安: 週5個以上作る 選択肢: マグネット刺繍枠。ネジ締めの“局所的な圧”を避け、面で保持しやすく、段取り(着脱)も短縮しやすくなります。

注意:作業安全
本工程は刃物を使い、針の近くで手作業も発生します。枠内で窓を切るときは、必ず枠をミシンから外して作業してください。装着したまま切ると、手を切るだけでなく機械側(可動部)を傷める恐れがあります。


ステップ1:背面パネルを作る(枠張り1回目)

目的: 背面の土台と、任意のカードポケットを作る 重要スキル: 見えない状態での位置合わせ(基準線の延長)

Embroidery machine stitching the initial placement lines on white stabilizer.
Machine running placement stitch

1. 「ゴースト縫い」(スタビライザーに地図を作る)

  1. ティアアウェイをしっかり枠張りします。
    • 触って確認: 指で軽く叩いて、太鼓の皮のように張っている感覚が目安です。
  2. 最初の配置縫い(プレースメント)をスタビライザーに打ちます。
    • 補足: 動画では糸を通さずに縫って針穴だけを残しています。糸だまりを避けられる反面、穴が見えにくい場合があるので照明は強めに。

チェックポイント: 針穴が点線状に並び、形が追える状態になっていること。

Using a red pen and ruler to extend placement lines on the stabilizer.
Preparation

2. 線を“外まで延長”する(現場で効く位置合わせのコツ)

問題はここです。ビニールを置くと、中心の針穴が隠れてポケット位置が見えなくなります。

  1. 枠を平らな作業台へ移動。
  2. 定規と細字ペンで、針穴を結ぶように線を引き、デザイン外側へ見えるところまで延長します。
  3. 中心線と、ポケット配置用の目印(高さ位置)を同様に延長します。

なぜ効く?: 不透明ビニールで中心が隠れても、外周に出した線が“航海灯”になり、次工程の位置合わせが安定します。

チェックポイント: 枠の外周方向へ線が伸び、治具のケガキのように見える状態。

Placing the textured black vinyl piece onto the stabilizer.
Placing material

3. 背面ビニールを置く

  1. 背面パーツは、配置枠より少し大きめに裁断しておきます。
  2. 角をテープで仮固定します。
    • 補足: 針が通るライン上に一般的なテープをかけると、糊が針に付きやすくなります。縫い線を避けて固定してください。

4. ポケット1&2(“突き合わせ”で段差を作らない)

厚みは敵です。ポケットが重なると段差ができ、押さえが引っかかったり、後工程で縫い飛びの原因になります。

  1. ポケット1: 上端を延長した基準線に合わせてテープ固定→縫う。
  2. ポケット2: 2枚目は、ポケット1の下端に重ねず、ぴったり突き合わせます。
    • 触って確認: 継ぎ目を指でなぞり、段差がないこと。
  3. しっかりテープ固定して縫います。
Placing the second pocket piece directly abutting the first pocket piece.
Assembling pockets

チェックポイント: ポケットがフラットに寝ていること。浮き(バブル)があるまま縫うと、ビニールは綿のように“なじんでくれない”ため、そのままシワとして残りやすくなります。

Using a Japanese screw punch to create holes at the ends of the card slot line.
Finishing pocket slit

5. 背面パネルを取り出して仕上げ準備

  1. 枠から外します。
  2. スタビライザーをカットします(外周は余裕を残す)。
  3. 重要: ティアアウェイの場合、最終合体の位置合わせが終わるまでは、むやみに全部を剥がさず、必要な目印が残るようにします。
  4. カード差し込みスリット: エグザクトナイフで中央を切り、両端はポンチ等で穴を作ってからつなぐと裂け止めになります。

ステップ2:前面パネル&“失敗しやすい”窓抜き

目的: 透明窓付きの前面を作る 重要スキル: 枠内での精密カット

Placing the main vinyl piece for the front of the badge holder on Hoop 2.
Hooping second part

1. 枠張り2回目:下準備と仮止め縫い

  1. 新しいスタビライザーを枠張りします(枠張り2回目)。
  2. 配置縫いを実行。
  3. 前面ビニールを表向きに置きます。
  4. 仮止め縫い(タックダウン)を実行。
    • 見た目で確認: ここでたるみがあると、窓が歪みやすくなります。

2. 窓の輪郭縫い

  1. 窓の四角を定義する縫いを実行。
  2. ミシンを停止します。

3. “外さず切る”はNG:窓を切り抜く

  1. 枠をミシンから外します。
  2. 硬いカッティング面に置きます。
  3. 定規+エグザクトナイフで、窓を切り抜きます。動画の手順は、縫い線を残すために、縫い線を傷つけない位置でカットします。
    • 直線のコツ: 刃を立て、引きずらずに“切る”。引きずるとビニールが伸びて、切り口がガタつきます。
Cutting out the window rectangle using an exacto knife and metal ruler.
Cutting window

チェックポイント: 四角がシャープで、切り残し(ささくれ)がないこと。窓の周囲の縫いが生きていること。


ステップ3:透明窓(クリアビニール)を入れる

この工程が一番“技術が出る”ところです。透明ビニールは枠の裏側から取り付けます。

Placing clear vinyl over the window cutout on the back of the hoop.
Adding clear window

1. 裏側からフローティング(浮かせ)で貼る

  1. 枠を裏返します。
  2. 窓周りにゴミがあるとそのまま封入されるため、必要に応じて埃を除去します。
  3. 窓の周囲(裏側)にWonder Tapeを貼ります。
  4. 事前に裁断した透明ビニールを、外周にはみ出さないように貼り付けます。

補足: これは、枠で挟まずに下側で保持する フローティング用 刺繍枠 的な考え方です。透明素材を“表から押さえつけない”ので、見た目が安定しやすくなります。

注意:マグネット枠を使う場合
強力マグネットは指を挟む危険があります。磁石同士を不用意に近づけないでください(急に吸着して危険/破損の恐れ)。ペースメーカー等の医療機器にも注意が必要です。

2. 窓を固定縫いでロックする

  1. 透明ビニールがズレないように枠を戻します。
  2. 窓固定の縫いを実行します。

チェックポイント: 透明窓がピンと張り、波打ちがないこと。


最終組み立て:サンドイッチ合体

目的: 枠張り1回目(背面)と枠張り2回目(前面)を合体 重要スキル: 穴基準での精密位置合わせ

Using yellow pins to align the back panel with the front panel through stabilizer holes.
Final Alignment

1. “穴にピンを通す”位置合わせ

裏側で合わせるとき、目視だけだとズレやすい工程です。

  1. 枠を再度裏返します。
  2. 完成済みの背面パネル(ステップ1)を用意。
  3. コツ: 背面パネルの配置縫いの穴(角など)にピンを通し、枠張り2回目側の対応する穴へ導いて合わせます。
  4. 少なくとも対角2点で合わせます。
  5. 位置が決まったらピンを抜き、テープでしっかり固定します。
Machine stitching the final perimeter stitch through all layers.
Final Stitch

2. 外周の最終縫い

  1. 枠をセットします。
  2. 前面ビニール+スタビライザー+透明ビニール+背面側スタビライザー+背面ビニール+ポケット…と多層になるため、無理のない速度で縫います。
  3. 外周の最終縫いを実行します。

チェックポイント: 縫っている最中に背面パネル端がめくれて押さえに引っかからないこと。

道具の考え方: 裏側での固定が難しい場合、枠を安定させる 刺繍用 枠固定台 が“第三の手”になり、位置合わせ中の枠の動きを抑えられます。


仕上げ:製品っぽく見せる最終工程

Holding up the finished embroidery still in the hoop showing the ID window.
Product Reveal

1. 外周カット

  1. 枠から外します。
  2. ロータリーカッター+定規で外周を整え、1/8〜3/16インチの縁を残します。
    • 品質基準: 縁幅がガタつくと一気に“手作り感”が出ます。一定幅を意識します。
Trimming the excess material around the badge holder with a rotary cutter.
Finishing/Trimming

2. 金具用スロット

  1. 上部のスロットをカットします。
  2. 現場のコツ: スロット両端に日本式スクリューポンチ(またはレザーポンチ)で穴を開けてから、中央をナイフでつなぐと裂けにくくなります。
Cutting the top slot for the lanyard clip using an exacto knife.
Cutting hardware slot
Final display of the front and back of the completed black vinyl ID holder.
Final Showcase

仕上がり: 透明窓がきれいで、外周もシャープなIDホルダーになります。Husqvarna Vikingを使っていて段取りを短縮したい場合は、対応する husqvarna viking 用 マグネット刺繍枠 を探すと、厚い“サンドイッチ”でも保持が安定しやすくなります。


この方法が効く理由(簡潔に)

2回枠張りで前後を別パーツとして作ると、折り返し方式のような過剰な厚みが出にくく、角が立ちやすくなります。前面と背面を“部品”として扱うことで、薄く、角がきれいにまとまります。

この作品で身につくこと:

  1. 配置縫いの読み方: ITHは「縫い目が指示書」
  2. 素材コントロール: 枠に挟めない素材をテープとフローティングで扱う
  3. 見えない位置合わせ: 延長線と穴基準でズレを潰す

事前準備:失敗を減らす考え方

判断ガイド:スタビライザーと素材

高価なビニールを無駄にしないための目安です。

Q1:ビニールは硬い(薄い板状)?柔らかい(布っぽい)?

  • 硬い: ティアアウェイが扱いやすい
  • 柔らかい: カットアウェイで“骨”を残すと、日常使用で縫い目が裂けにくくなります

Q2:1個だけ?量産(例:100個)?

  • 1個: 標準枠+テープでも進められます
  • 量産: ネジ枠の締め直しが負担になりやすいので、段取り改善(道具見直し)を検討

準備チェックリスト(作業前の安全カード)

  • データ確認: 4x4のデータを読み込んだ(5x7とは縫い順や線が異なる場合があります)
  • 針: 新しい 75/11 Sharp
  • 下糸(ボビン糸): 残量十分(一般的に60wtまたは40wt)
  • 刃: エグザクトナイフは新品刃
  • テープ: すぐ使える長さに事前カット
  • 刺繍枠: brother 4x4 刺繍枠(または使用機種の枠)の内側に糊残りがない

セットアップ:枠張りの基本戦略

標準枠を使う場合の基本は、スタビライザーを枠張りし、ビニールはフローティング(浮かせ)で固定です。厚いビニールを無理に挟むと、抜け・歪み・枠跡の原因になります。

アップグレードの考え方: 重ね縫いでスタビライザーが緩む場合は保持圧の問題です。マグネット刺繍枠 は面で均一に保持しやすく、張りを維持しやすいことがあります。


運用:作業フロー(現場用チェック)

作業チェックリスト

  • ステップ1: 配置線をペンで外まで延長した(はい/いいえ)
  • ステップ2: ポケットの突き合わせが段差なし(はい/いいえ)
  • ステップ3: 窓のカットが直線で欠けなし(はい/いいえ)
  • ステップ4: 透明ビニールを“裏側”で確実に固定した(はい/いいえ)
  • ステップ5: 位置合わせ用のピンを抜いてから縫った(はい/いいえ)

現場のコツ(量産向け): 小規模でも数を回すなら、hoopmaster 枠固定台 のような枠固定台で“枠を動かさない”だけでも段取りが安定します。ただしITHの場合、今回の「延長線+穴合わせ」が、実質的にあなた専用の“位置合わせ治具”になります。


品質チェック:「店頭品質」になっているか

完成品を見て、ここを確認します。

  1. 窓: 透明ビニールがピンと張っているか。波打つならステップ3の固定が甘い可能性。
  2. 外周: 縫い幅が一定か。細くなる箇所があるなら保持が動いたサイン。
  3. 背面: ポケットが機能しているか。縫い込んで塞いでしまった場合はステップ1の位置がズレています。

トラブルシューティング:現場の切り分け表

症状 主な原因 低コスト対処
糸絡み(鳥の巣) ビニールの摩擦で針周りが不安定 針を清掃し、摩擦を下げる工夫をする
外周縫いが落ちる 最終合体で背面がズレた テープ量を増やし、「穴にピンを通す」合わせを徹底
枠跡(白いリング状の跡) ビニールを強く挟みすぎ ビニールを枠に挟まない。スタビライザーのみ枠張りし、ビニールはフローティング固定
針折れ 針が鈍い/厚い段差に当たった 新しい針に交換、必要なら太さを上げる検討
針がベタつく テープの糊を縫ってしまった テープは縫い線の外に配置する

まとめ

このIDホルダーは、丈夫で実用的、かつ窓と外周がきれいに決まるITH作品です。背面の“見えない位置合わせ”と、透明窓の“裏側フローティング”を押さえれば、ITHの応用力が一段上がります。

次の改善ポイント: 精度は出たけれど段取りがつらい場合、次のボトルネックは枠の着脱です。brother 4x4 マグネット刺繍枠 のようなマグネット方式は、ネジ枠の締め直しが減り、準備時間が短縮しやすいという声があります。

まずは1つを“完璧に”。その後、手順を固定してスピードを上げていきましょう。