IllustratorとPhotoshopでつくるレトロな刺繍パッチ:リアル質感までの完全ワークフロー

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IllustratorとPhotoshopでつくるレトロな刺繍パッチ:リアル質感までの完全ワークフロー
レトロなナショナルパーク風のワッペンを、Illustratorで設計してPhotoshopで“糸の立体感”まで再現。Spoon Graphicsの動画手順を日本語で要点整理し、形状作成からタイポ整え、PSD書き出し、刺繍アクション適用と色の復元・微調整まで、つまずきやすいポイントもあわせて解説します。

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Table of Contents
  1. イントロダクション:レトロなナショナルパーク・パッチを設計する
  2. ステップ1:Illustratorドキュメントの準備
  3. ステップ2:タトゥイーンの風景を組み立てる
  4. ステップ3:イラスト要素と二重ボーダーを追加
  5. ステップ4:タイポグラフィと文字スタイリング
  6. ステップ5:Photoshop用に整えて書き出す
  7. ステップ6:Photoshopでリアル刺繍エフェクトを適用
  8. クイックチェック
  9. トラブルシューティング
  10. コメントから:よくある質問と答え
  11. まとめ

動画を見る:Spoon Graphics「How to Create a Colourful Embroidered Patch in Illustrator」(チャンネル:Spoon Graphics)

レトロなナショナルパーク風パッチを、ベクターの美しさはそのままに“糸の質感”までリアルに。Illustratorで設計し、Photoshopアクションで刺繍の立体感へ。デザインも質感も両立させたい人のための、実践ワークフローです。

The final embroidered patch design of 'Tatooine National Park' shown on a textured blue denim background.
The final result showcases the realistic embroidery effect applied to the vector design, complete with detailed thread textures, highlights, and shadows, making it look like a physical patch.

このガイドでは、動画の流れに沿って要点を日本語で整理。六角形のベースづくり、風景レイヤーの組み立て、二重ストロークの縁取り、文字組のセンタリング、色ごとのオブジェクト整理、PSD書き出し、そしてアクションの適用・色復元・微調整までを一気に駆け抜けます。

学べること

  • ナショナルパーク風のレトロパッチをIllustratorで設計する手順
  • 形状の重なりをクリーンに整理し、色ごとにまとめる方法
  • Photoshopアクションで刺繍のステッチと糸目を表現するコツ
  • 色の“青被り”をOverlayで戻す現実的ワークアラウンド
  • エラー回避と完成度を高める仕上げの見直しポイント

イントロダクション:レトロなナショナルパーク・パッチを設計する

チュートリアルのテーマは「タトゥイーンを題材にした夕景バッジ」。単純化したシルエットと、水平のレトロストライプ、そして二重ストロークの縁取りが、どこか懐かしい国立公園風の空気をつくります。Illustratorで平面的に設計しつつ、最終出力ではPhotoshopのアクションで糸の凹凸や布地の歪みまで再現していくのがポイントです。

プロのコツ:完成を急がず、まずはベクターを“清潔に”整える。Photoshopでの質感づくりは、ベースが整理されていてこそ威力を発揮します。

注意:動画では外部のカラーパレットが参照されていますが、正確なHEX値は明示されていません。色は近似で構いません。

ステップ1:Illustratorドキュメントの準備

A4の新規ドキュメントを作成し、単位はピクセルに。View > Hide Artboardsで作業領域を広げます。ベースは六角形。Polygon ToolでShiftを押しながら描き、90度回転、縦長にスケールして土台のプロポーションを決めます。

A user drawing a hexagon shape in Adobe Illustrator using the Polygon Tool.
The first step involves creating the base shape for the patch. The Polygon Tool is used with the Shift key held down to draw a perfectly constrained hexagon.

六角形をややラウンドさせて、硬さを取り除きます。Direct Selection Toolでコーナーウィジェットをドラッグして角丸に。これで“バッジらしい”柔らかい輪郭になりました。

Using the Direct Selection Tool's corner widgets to round the corners of the hexagon.
To give the patch a softer, more authentic look, the Direct Selection tool is used to drag the corner widgets inward, rounding all corners of the hexagon simultaneously.

ステップ2:タトゥイーンの風景を組み立てる

Pencil Toolで前景の地平線をフリーハンドで描き、閉じたシェイプに。カラーはパレットから最も暗いブラウンをサンプル。六角形の外に出てしまった部分は、Shape Builder ToolでAltを押しながら不要領域を削除して、枠内にきれいに収めます。

Drawing a wavy horizon line with the Pencil Tool in Illustrator.
The Pencil Tool is used to freehand draw the first landscape layer. This creates a natural, slightly uneven horizon line for the foreground silhouette.

続けて中景の山並みを描き、紫系で塗って前景とのレイヤー差をつくります。ここでもShape Builder Toolで外側を落とし、必要なら背面へ送って前景を優先表示にします。

Using the Shape Builder Tool with the Alt key to delete an unwanted part of a shape.
The Shape Builder tool provides a quick and intuitive way to trim excess shapes. Holding the Alt key turns the cursor into a minus sign, allowing for easy deletion of parts outside the main hexagon.

プロのコツ:Pencil Toolは閉じたパスにしてから塗りを適用。閉じ忘れると塗りが漏れて見えます。Undoを活用し、選択対象を確認しながらShape Builderでトリムしましょう。

レトロストライプの夕空をつくる

Rectangle Toolで横長の帯を重ね、濃い赤、オレンジ、淡い赤の順で3本のストライプを作成。Smart Guidesを頼りに、山並みの背後へと回しながら正確に整列させます。これでアイコニックなレトロ空の完成です。

Drawing a horizontal rectangle for a sunset sky stripe in Illustrator.
To create a retro sunset effect, horizontal rectangles are drawn and colored. This rectangle will form the first stripe of the sky.

ステップ3:イラスト要素と二重ボーダーを追加

タトゥイーンの“二つの太陽”をEllipse Toolで配置。1つは淡い黄色で山の稜線に半分埋もれる位置へ。もう1つは小さめにして色をやや薄く。山に隠れる部分は、山形を複製して前面へ持ってきてからPathfinderのMinus Frontで太陽の下側を切り落とすと、すっきり綺麗に回避できます。

Using the Pathfinder's 'Minus Front' command to trim the sun shape.
A duplicate of the mountain layer is used to trim the sun. The 'Minus Front' command in the Pathfinder panel subtracts the top shape from the bottom one, creating the illusion of the sun setting.

バッジの縁取りは二重ストローク。メインの六角形を選んでAppearanceパネルで新規ストロークを追加し、外側に5ptの薄い黄色、その下に20ptの濃いブラウンを重ねます。順序を入れ替えるときはドラッグでOK。これで“細い内縁+太い外縁”のリッチな輪郭が完成です。

The Illustrator Appearance panel showing two separate stroke attributes applied to one shape.
The Appearance panel is used to add multiple strokes to a single object. Here, a thin yellow stroke is layered on top of a thick brown stroke to create the patch's detailed border.

シルエットのディテールとして、前景にモイスチャーファーム風の小建物を矩形から作成。上部角だけを丸めてドーム状にすれば、最低限の形でも十分に伝わります。

A completed silhouette of a moisture farm building with a rounded dome top.
By rounding the top two corners of a rectangle, a simple yet effective silhouette of a moisture farm building is created, adding a thematic detail to the foreground.

注意:Appearanceパネルのストローク順を逆にすると内縁が隠れます。薄い黄色が上、濃いブラウンが下になるよう確認を。

ステップ4:タイポグラフィと文字スタイリング

Type Toolでメインタイトル「TATOOINE」を追加(Titling Gothic)。塗りは淡い黄色、サイズはバランスを見ながら調整。精密に中央揃えするため、文字をCreate Outlinesに変換し、六角形をキーオブジェクトに指定してAlignパネルで水平方向中央に。

Adding the main title 'TATOOINE' to the patch design using the Type Tool.
The Type Tool is used to add the main text element. The font 'Titling Gothic' is chosen for its bold, condensed style, fitting the National Park theme.

サブの「NATIONAL PARK」は圧縮系ウェイトにし、トラッキングを広めに(動画では400)。左右にドットを配置してアクセントをつけます。「Visit the」はスクリプト体(Scriptorama)、「OUTER RIM」はワイドなサンセリフ。スクリプトはわずかにShear(縦方向5°)で流れをつけ、SansはDirect Selectionでコーナーをほんの少し丸める(大きい文字で約1.5px、小さい文字で約0.5px)と、硬さが抜けて上質に仕上がります。

A thick border around a shape indicates it has been selected as the key object for alignment.
After selecting multiple objects, an extra click on one of them (the hexagon border) makes it the 'key object'. Subsequent alignments will be relative to this object, ensuring perfect centering.

プロのコツ:ライブテキストのままでは正確な整列が難しいケースがあります。アウトライン化→キーオブジェクト基準のAlignが安全で再現性も高い方法です。

ステップ5:Photoshop用に整えて書き出す

まずは外観を確定させるため、全選択してObject > Expand Appearance。つづいてPathfinderのDivideで重なりを分割後、Ungroupでバラし、色ごとにSelect > Same > Fill Color→PathfinderのUniteで“一色=一つの形”へ統合します。これを全色に繰り返して、色単位のクリーンな構造に。

The Object menu is open with 'Expand Appearance' highlighted, ready to be selected.
Before exporting, 'Expand Appearance' is used to convert procedural effects like multiple strokes into standard paths and shapes. This is a crucial step to lock in the design.

クイックチェック:色ごとにひとつの形状だけが残っているか。分割片が残っていると、Photoshop側で予期しない分割・エラーの原因になります。

The Pathfinder panel's 'Unite' button is about to be clicked to merge all selected shapes of the same color.
After using 'Divide', all shapes with the same fill color are selected and merged using the 'Unite' function. This cleans up the file, creating a single object per color.

File > Export > Export AsからPhotoshop(PSD)を選択。解像度はHigh(300ppi)にして、Write Layersを必ずオン。こうすることで各色が独立レイヤーとしてPhotoshopへ渡ります。

The Photoshop Export Options dialog box in Illustrator.
When exporting, the settings are configured to write layers and use a high resolution (300 ppi). This ensures the file opens in Photoshop with each color on its own layer, ready for the action.

注意:Write Layersを忘れると、PSDは1枚絵になります。設定ダイアログを毎回確認する習慣を。

ステップ6:Photoshopでリアル刺繍エフェクトを適用

PSDをPhotoshopで開き、Envato Elements配布の「Realistic Embroidery」アクションを色レイヤーごとに個別適用。推奨の順序は、縫い目の外周(Stitched Outline)→面の糸目(Fill Detail)→最終レンダー(Render)。各色の処理が終わるたびに、アクション出力レイヤーをリネームして上書き衝突を防ぎます。

The result of the embroidery action in Photoshop, showing realistic thread texture on several layers.
The Photoshop action processes each color layer, applying complex effects to simulate thread texture, stitching, highlights, and shadows, building up the realistic embroidery look.

アクションは既定で青系の糸色が乗るため、元のカラーグループ(Illustrator由来の色レイヤー)を最前面に移動し、ブレンドモードをOverlayへ。これで元の色味が刺繍テクスチャと自然に合成されます。小さな文字のボーダーは“不要なら外す”、ドロップシャドウは状況に応じてオフ、Cloth Displaceは一部のレイヤーに限定するなど、スマートオブジェクト内で個別に調整すると精度が上がります。

プロのコツ:対象オブジェクトが小さすぎるとアクションが失敗することがあります。必要に応じてサイズを大きくしてから処理を。

クイックチェック

  • 各色レイヤーに対して、Stitched Outline→Fill Detail→Renderの順で適用したか。
  • アクション出力レイヤーにわかりやすい名前をつけ、次の処理で上書きされないようにしたか。
  • 元カラーグループを最上段にしてブレンドモードOverlayを適用したか(青被り対策)。
  • 小さな文字は不要なボーダーや影をオフにして、視認性を確保したか。

トラブルシューティング

  • 仕上がりが色あせて見える:元カラーグループを最前面にしてOverlay。必要ならスマートオブジェクト内のカラーオーバーレイをオフ。
  • PSDが1レイヤーで開く:IllustratorのExport AsでWrite Layersをオン。書き出し前にExpand/Divide/Uniteで色を統合。
  • アクションが途中で止まる(Make/Invert/Apply不可):処理対象のサイズが小さすぎる可能性。拡大して再試行。Photoshopのバージョン差異による非対応コマンドがある場合は、同アクションの説明書を確認。
  • Illustratorにアクションを読み込めない:これはPhotoshop用です。Illustrator内では動作しません。

コメントから:よくある質問と答え

  • 「AIだけでできないの?」— 動画はPhotoshopアクションで仕上げる前提。Illustrator内のエンベリッシュ(Scribble等)での代替は動画では扱っていません。
  • 「リンクが動かない」— コメント欄でリンクの案内がありますが、動作状況は時期により変わることがあります。取得先は動画の説明欄を参照してください。
  • 「アクションが青に染まる」— 元カラーグループを最前面+Overlayで色を戻します。
  • 「レイヤーが分かれない」— Expand→Divide→Unite→Write Layers(300ppi)で再書き出しを。

もし実機で刺繍化したいなら

本チュートリアルは“見た目をリアルにするモックアップ”です。実機での刺繍データ化(例えば.PESなどのステッチデータ生成)は別工程となり、本動画では扱っていません。量産や依頼時は、業者の入稿仕様(カラーカウント、最小ステッチ長、糸種など)に合わせて、専用デジタイジングが必要です。なお、実機での試作・量産を見据えるなら、保持力の高いフレーミングや生地固定も品質に直結します。たとえば、磁気 刺繍枠は素早い着脱と安定固定に優れ、ステッチのズレを抑えやすいのが利点です。

また、メーカー別に適合するフレームを選ぶことも重要です。たとえばbrother 刺繍枠やjanome 刺繍ミシン、工業機ならtajima 刺繍枠など、機種対応の情報を事前に確認しておきましょう。さらに、水平荷重に強いmagnetic フレームや、着磁クランプ系のmighty hoopは厚物や多層生地でも安定した固定を実現しやすく、試作効率を高めます。これから始める人は、入門に向いた機材・糸・芯地・枠のスターター構成を検討するのも有効です(刺繍ミシン for beginners)。

まとめ

  • 形を作る:六角形のベースと角丸、前景と中景、レトロストライプ、二つの太陽、シルエットの小物で“物語性”を加える。
  • 文字で締める:アウトライン化とキーオブジェクト整列で、構図の軸を正確に。
  • データを整える:Expand→Divide→Uniteで色単位の単一形状にし、PSDはWrite Layers+高解像度で書き出す。
  • 質感を仕上げる:色ごとにアクションを適用し、Overlayで色を復元。必要に応じて影や布地変形を微調整。

この流れを一度身につければ、他の風景やテーマ(街、山、海、SF)にも応用自在。ベクターの明快さと、刺繍の温度感。二つの魅力を、あなたの次のパッチで両立させてください。

注意:商標・著作物に関する取扱いは地域・用途によって異なります。動画でも言及がありましたが、特定の名称や意匠を使用する場合は、必ず事前に権利範囲を確認してください。