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なぜ「緑の標準枠」よりマグネット刺繍枠が現場で選ばれるのか
従来のいわゆる「緑の標準枠」での枠張りに苦労したことがある方なら、厚手素材をリングに押し込むストレス、指を挟む痛み、そして仕上がりに残る枠跡(枠焼け)がどれだけ厄介か実感しているはずです。ベロアや機能素材など、跡が残りやすい生地ほどダメージは致命的になります。
業務用刺繍の現場では、ここが生産性を落とす典型的な詰まりポイントになりがちです。
動画の投稿者は「ほとんど緑枠を使わない」と話しています。理由はシンプルで、マグネット式8-in-1タイプのフレームに切り替えると、作業が「力で押し込む」から「位置を管理する」へ変わるからです。周囲をマグネットで挟み、布は上に“乗せて”固定する発想(フローティング)にすると、手の負担が減り、同じ品質を繰り返し出しやすくなります。
このチュートリアルでは、多針刺繍機でマグネット式「Eight in One」フレームを使う流れを分解します。ポイントは、摩擦で張るのではなく、スタビライザー+テープで土台を作り、仮止めスプレーで布ズレを止め、最後にマグネットでロックすることです。
刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠を探している場合、宣伝文句よりも「現場で再現できるか」を基準に見てください。厚手タオルや滑りやすいキルトブロックを、無理なく・まっすぐ・同じ手順で枠張りできるかが重要です。


DIYフローティング手法:テープ+仮止めスプレー
まず押さえる:この手法で身につくこと(なぜ効くのか)
ここで扱う「フローティング」は、安定(スタビライザーの張り)と保持(布の固定)を分けて考える方法です。従来の枠張りは布そのものがテンション構造の一部になりますが、この方法では、テンションはスタビライザー側で作り、布はその上に“乗るだけ”になります。
作業フロー:
- 土台を作る: 下側の金属枠にスタビライザーをテープで固定
- 粘着を作る: 仮止めスプレーを「ごく薄く」吹いて軽いタックを出す
- 布を浮かせて置く: 布(例:キルトブロック)をそっと載せる
- 位置合わせ: 透明定規で平行・直角を確認(目測に頼らない)
- ロック: 上側のマグネット枠を載せて挟み込む
なぜテープ+マグネットなのか: マグネットは周囲を強く挟みますが、テープでスタビライザーを固定しておくと、中央部が上下に暴れる(たわむ)状態を抑えやすくなります。さらに仮止めスプレーの“軽い摩擦”が、配置中や装着中の布ズレを減らします。
準備:見落としがちな消耗品と事前チェック(省略しない)
刺繍は「縫い始める前」で品質が決まります。動画では青い養生テープが中心ですが、作業を止めないために、手の届く範囲に最低限そろえておくと安定します。
消耗品・道具(動画に基づく必須):
- スタビライザー(シート): 手持ちのものを使えるのがこの方法の利点(粘着タイプ必須ではない)
- 青い養生テープ(Painter’s Tape): 端を固定するため
- キルト用仮止めスプレー: 動画では June Tailor を使用(メーカーは固定ではなく、要点は「薄く」)
- 透明キルティング定規: 直角・平行の確認に使用
注意:指挟みリスク。 マグネット枠は想像以上に勢いよく吸着します。上枠は必ず外周を持ち、指を挟み込みやすい“吸着ゾーン”に入れないでください。
準備チェック(このセクションの最後に確認):
- スタビライザーのサイズ: 枠の開口部を確実に覆い、テープで固定できる余白がある
- テープの粘着: 使い回しは可能だが、保持が弱いと感じたら交換する
- スプレーの噴霧状態: いきなり本番に吹かず、ミスト状に出るか確認する(詰まり・ダマ噴き防止)
- 枠の表面: 糸くずや異物がない(マグネットに金属片が付くと危険)

手順:下側の金属枠にスタビライザーをテープ固定する
手順1 — 土台を置く カットしたスタビライザーを下側の金属枠にかぶせ、開口部を完全に覆います。
手順2 — テープで“張り”を作る 青い養生テープで端を固定します。動画では、テープを再利用して効率化しています。
チェックポイント(触って確認): 指で軽く叩いたとき、たわみが少なく、フラットに張れている状態が理想です。波打っている場合は、固定位置をやり直して張りを整えます。
期待する状態: 持ち上げてもスタビライザーが枠から浮かず、開口部が均一にフラット。

手順:仮止めスプレーは「ごく薄く」ミストする
初心者が失敗しやすいのが、スプレーのかけ過ぎです。ここで作りたいのは“接着”ではなく、軽いタック(仮止め)です。
やること: スタビライザー表面に、短く・薄くミストします。動画でも「ほとんど吹かない」「少しタックが出れば十分」と説明されています。
チェックポイント(触感): 軽く触れて「ほんの少し吸い付く」程度。
- かけ過ぎのサイン: ベタつきが強い/濡れ感がある → 針や糸に影響が出やすい
- 足りないサイン: 布が置いた瞬間から動く → 追加は“少しだけ”
期待する状態: 布を置いたときに軽く止まり、微調整で持ち上げ直しもできる。
マグネット刺繍枠という言葉だけで「何でも解決」と思われがちですが、実際はこの“テープ+薄ミスト”の土台作りが品質を支えます。


多針刺繍機でのバウンド対策:フレーム反転という選択肢
なぜ反転でバウンド(振動)が減ることがあるのか
振動は文字のシャープさや位置合わせに直結します。枠が支持点(枠アーム)から離れるほど、先端が揺れやすくなります。
動画の投稿者は、金具(ブラケット)の向きを確認し、必要に応じてフレームを上下反転して装着面を下側にすることで、枠位置をボビン側に近づけ、バウンドを減らす工夫を紹介しています。
注意すべきトレードオフ: 低くすると揺れは減りやすい一方、機種やデザインサイズによってはアーム周りの干渉リスクが変わります。必ず事前に干渉を確認してください。
手順:フレームを閉じる前に向きを決める
- 目視: ブラケットの向き(下向き/上向き)を確認
- 試し装着: 空の状態で枠アームに付け、端を軽く触って揺れ方を比較
- クリアランス確認: ベッドやアームに当たりそうな箇所がないか確認
チェックポイント:
- 枠が水平に近い
- ベッドに擦る気配がない(装着後に手で軽く動かして確認)
期待する状態: 揺れが減り、縫い中の不安定さが出にくい。

透明定規で「まっすぐ」を作る位置合わせ
タック面に布を“浮かせて置く”(フローティング)
ここが一番ズレやすい工程です。タック面に布を置き、しわを逃がしながら整えます。
手順:置いて、ならす
- 置く: 布を上で保持し、狙い位置にそっと下ろす
- ならす: 中心から外側へ、軽く押さえて平らにする
- やってはいけない: 強く引っ張って伸ばさない(後で戻ってシワ・歪みの原因)
チェックポイント(見た目): 柄や織り目が歪んでいないか。違和感があれば一度持ち上げて置き直します。
期待する状態: 布がテンションレスでフラット、軽く傾けても大きくズレない。
フローティング用 刺繍枠が難しく感じる原因は、押さえ過ぎ・引っ張り過ぎで歪みを作ってしまうケースが多いです。軽いタッチで十分です。

十字(クロスヘア)でセンターを作る:テープ方式と描画方式
機械側は中心を理解していますが、枠側に“見える基準”がないと合わせ込みが難しくなります。
- テープ方式(動画): 養生テープに「+」を書き、中心の目印として使う
- 描画方式(コメントの代替案): スタビライザーや布に水溶性ペンで十字線を引く(テープより安定しやすいという意見あり)
運用の考え方: 動画はテープ方式で説明されています。一方でコメントでは「スタビライザー裏と布表に十字線を描く方が簡単で安定する」という提案もあります。現場では、素材や作業者の癖に合わせて、どちらが“ズレにくいか”で選ぶのが実務的です。
大きい透明キルティング定規で直角・平行を検証する
投稿者が使っている透明定規は、目測の誤差を消すための重要ツールです。柄物ほど効果が出ます。
手順:定規チェック
- 透明定規を枠全体にかぶせる
- 定規のグリッド線を、マグネット枠の直線エッジに合わせる
- 布の柄/十字線がグリッドと平行かを透かして確認する
チェックポイント:
- グリッド線が枠のエッジと一致
- 布の基準線(柄・織り目・十字)がグリッドと平行
期待する状態: 「たぶん真っすぐ」ではなく、根拠のある位置合わせ。
透明定規を使うだけで、作業台が簡易的な刺繍用 枠固定台のように機能し、位置合わせの再現性が上がります。


刺繍機への取り付け(枠アームへの装着)
手順:上側のマグネット枠を載せて固定する
ズレが起きやすい瞬間: 上枠は“落とす”のではなく、外周を持って、吸着を段階的に効かせるイメージで載せます。
チェックポイント:
- 噛み込み: 端で布が折れて挟まっていないか
- 密着: 上枠が下枠にきちんと座っているか
期待する状態: 布が挟み込まれて動かない“サンドイッチ”状態。
手順:枠アーム(ホルダー)にフレームを装着する
- 緩める: 枠ホルダーのノブ(つまみネジ)を緩める
- 差し込む: フレーム側の取り付け部を枠アームに差し込む
- 締める: 手でしっかり締めて固定する(動画でも手締め)
「枠サイズが表示されない」問題(コメントの質問に対応): 視聴者から「機械側の枠選択にこの枠が出てこない」という質問があり、投稿者は刺繍機側で“Other(その他)”を選び、開始前に必ずトレース(枠内確認)すると回答しています。
セットアップチェック(このセクションの最後に確認):
- 物理固定: 枠が枠アームに奥まで入り、ガタつかない
- ノブの締め: 左右に揺すっても動かない
- 機械側設定: 枠サイズは「Other(その他)」等で運用
- トレース: 必ず枠内確認を行い、フレームに当たらないことを確認
判断の目安:フローティング時のスタビライザー選び
この動画の方法は「粘着スタビライザーを使わない」ための実務的な代替です。基本は、素材の安定性に合わせて“土台の強さ”を決めます。
- ケースA:安定している素材(キルトブロックなど)
- 構成例: スタビライザー(シート)+テープ固定+薄ミスト+マグネット枠
- 狙い: 布が自立するので、平面保持が主目的
- ケースB:ズレやすい/動きやすい場合(配置中に布が動く)
- 構成例: 薄ミストを“少しだけ”追加してタックを上げる
- 狙い: 動いてしまう原因がタック不足なら、最小限の追加で安定させる
注意:スプレーの使い過ぎ。 動画内でも「詰まりやすい」「少量で十分」と触れられています。かけ過ぎは針周りへの付着につながりやすいので、まずは薄く。

品質チェック
1針目の前に確認するポイント
開始前に、最低限ここだけは確認します。
- 軽い引っ張り確認: 布の角を軽く触って、明らかなズレがないか
- トレース(枠内確認): 針(または枠内確認動作)がフレームに当たらないかを最優先で見る
- 下糸(ボビン糸)の残量: 途中交換が必要になると、フローティングではズレのリスクが上がるため事前に確認
トレース後の「良い状態」
- 動作がスムーズで、引っ掛かりがない
- デザイン外周とフレーム壁に余裕がある
- 装着後に布が波打っていない
bai マグネット刺繍枠のような運用では、トレースを“保険”として習慣化できるかが安定稼働の分かれ目です。
トラブルシューティング
症状:枠がバウンドする/アームに当たりそう
- 原因候補: ブラケット向きが合っていない、枠位置が高い
- 対処: 反転装着(ブラケットを下向き)を試し、空枠で揺れと干渉を確認
症状:針周りがベタつく/スプレーが詰まる
- 原因候補: 仮止めスプレーのかけ過ぎ、ノズルの汚れ
- 対処: ミストは最小限にし、ノズルは清潔に保つ(動画内でも詰まりへの言及あり)
症状:配置中に布が動いてしまう
- 原因候補: タック不足(動画内でも「動くならもう少しタックが必要かも」と言及)
- 対処: 追加は“少しだけ”ミストし、再度ならしてから上枠を載せる
症状:開閉で指を挟む
- 原因候補: 吸着ゾーンに指が入っている
- 対処: 外周だけを持って操作し、慣れが必要(コメント返信でも「慣れるしかない」との趣旨)
症状:フレームの入手先が分からない
- 状況: コメントでは「BAi購入時に担当者経由で入手した」「以前はRichwordで扱いがあったが停止した」という情報が出ています
- 対処: まずは機種購入時の窓口(担当者)に確認し、在庫・流通状況を確認する
クランプ枠 刺繍枠のような呼び方で探す場合も、最終的には「自分の機種に合う取り付け金具が用意できるか」「継続して入手できるか」が判断材料になります。
まとめ(得られる結果)
テープでスタビライザーを固定し、仮止めスプレーは薄く、透明定規でまっすぐを保証し、マグネットでロックしてから装着・トレースする——この流れを身につけると、枠張りのストレスとズレの大半を減らせます。
最終Go/No-Goチェック:
- スタビライザー: テープ固定でフラット
- タック: 薄ミストで軽く止まる
- 位置合わせ: 透明定規で平行・直角を確認
- 安全: 指を挟まず上枠を密着させた
- 装着: 枠アームに奥まで入り、ノブで固定
- トレース: フレーム干渉なしを確認
bai 刺繍枠の運用でも、互換枠でも、重要なのは「再現できる手順」に落とし込むことです。
