Table of Contents
動画を見る: How to Hoop a Shirt for Embroidery(AllStitch)
余りシワなし、ズレなし、そして針が走っても布が暴れない。機械刺繍で“仕上がりの9割”を決めるのがシャツのフーピング(枠張り)です。このガイドは、AllStitch のレッスン動画をもとに、最適な枠サイズと下紙の重ね方、テンションの作り方を、現場の順番通りに整理しました。

初心者でも迷わない基準で、丸枠・角枠のテンション差や、カットアウェイ/Webblon White/ティアアウェイの役割まで解説。単針・多針どちらにも応用できる「原理」を押さえておけば、手元の機材が変わっても安定した刺繍面が作れます。
学べること
- デザインに合わせた枠サイズの見極め方(大きすぎる/小さすぎるの判断)
- 丸枠と角枠のテンション特性と使い分け
- カットアウェイ、Webblon White、ティアアウェイの重ね順と目的
- しわ・たるみを抑える挿入と微調整のコツ
- 刺繍直前の安全・品質チェックリスト
はじめに:刺繍枠とテンションの基本 丸枠は円周全体で連続的に力がかかるため、テンションが均一になりやすいのが最大の利点。対して角枠は、角では張りが出る一方で直線部分のテンションがやや弱くなりがちです。

サイズは代表的に直径12cm、15cm、18cmの丸枠、さらにスウェット前身頃やジャケット背面に向く32×32cmの角枠が登場します。デザインに必要な縫製領域だけでなく、縫っている最中の布の動きまで見通して選びましょう。

また、7.5×7.5インチのサードパーティ枠のように、角の余白を活かせるタイプもあります。丸枠とほぼ同寸でも、コーナーを使って斜め配置ができるなど、レイアウトの自由度が上がるのが特長です。

一方で、ラウンドは総じてテンションが安定的。模様の精度重視なら、まず丸枠を基準に考え、必要に応じて角枠のメリット(大きな刺繍面や斜め配置)を取り入れるのが安全策です。

デザインに合う枠サイズの選び方 シャツに既存の小さなロゴがあるケースで検討していきます。最初にやりがちなのは「余裕を見て大きい枠」を選ぶこと。しかし、縫製中にデザイン周りの余白が多いほど布は動きやすく、結果としてズレや歪みを招きます。

大枠を当ててみると、デザインの外側に広い空間が残ってしまいます。これはNGの兆候。刺繍中に素材が波打ちやすく、上糸の表情も不安定になりがちです。

次に最小枠を合わせると、外周の余白は最小限。縁に近すぎないかを目視で確認しつつ、適合性を評価します。基本は「必要最小限」。それが布の動きを抑える最短ルートです。

さらに中サイズ枠も試すと、今度は余白が増え気味に。比較のうえ、最小枠に軍配。決定前に必ずマシンのトレース機能でニードルやレーザーが枠に干渉しないかを確認してから刺繍に移ります。ここは安全面での必須プロセスです。
下紙(バックリング)の選定と重ね方 使用する下紙は3種。まずは2オンスのカットアウェイ(安定した支持材として汎用的)。次にWebblon Whiteの1.5オンス(薄く透明感のあるタイプ)で、Tシャツやパフォーマンス素材に好相性。Webblonは薄いぶん、2枚使いが日常的で、状況によっては1枚でも足ります。

さらに中厚のティアアウェイ(裂いて剥がせるタイプ)。Tシャツや伸縮素材には通常は使いませんが「最下層の土台」として一番下に一枚だけ入れて基礎を作る、といった使い方が可能です(刺繍後はきれいに剥がせます)。

重ね順は「下:ティアアウェイ → 上:カットアウェイ(またはWebblon)」の順。目的は、上層の安定性と、最下層の土台力の両立です。生地の種類やデザイン密度に応じて、Webblonの枚数は柔軟に調整してください。
ステップ別:シャツのフーピング手順 準備:シャツと下紙をフラットに
- テーブルは清潔で平らに。シャツを中表に開き、刺繍位置の真裏に、ティアアウェイとカットアウェイを重ねて入れます。
- 刺繍エリアの中央に下紙が来るようにセットし、シワや段差が出ないよう全体をならします。

ボトム枠(内枠)の挿入
- 襟ぐりからボトム枠を差し入れ、下紙の中心と重なる位置までガイドします。
- 下紙が半分だけ掛かっている、折れている、外にはみ出している…といった “不完全な内包” は禁物。後工程での不安定さに直結します。

トップ枠(外枠)の装着と位置合わせ - トップ枠は、ボトム側から軽く押し上げる要領でセットするとコントロールしやすいです(天地方向の水平線がある生地なら、そのラインを基準に直角を出します)。

完璧なテンションを作る調整術 テンションづくりの肝は「たるみ取り」と「過伸長の回避」の両立。 - たるみ取り:枠が入ったら、布端を軽く四方に引いて、枠内がピンと張るまで微調整。シワ・波打ちが残らない状態が目標です。

- 押し込み:トップから軽く圧をかけて、枠同士を密着。押しても入らないほど固い場合は締めすぎのサイン。ネジをわずかに戻し、手圧で入る硬さに調整します。
- 打撃はNG:ゴムハンマーが必要なら確実に固すぎます。道具に頼らず“適度にスッと入る”硬さへ。枠側面の目印線を基準に、締め・緩めの再現性を高めましょう。
- まっすぐ再チェック:水平・垂直が崩れていたら、潔く外してやり直し。正しいテンションを維持したまま角度を取り直すのが近道です。
刺繍前の最終チェック 刺繍の出来を左右する「最後の1分」。ここで品質を確定させます。
- 中央を指で軽く押して、枠内がフラットでピンと張れているかを確認。
- 裏面をチェックし、下紙が完全に枠内に収まっているか、半掛かりや折れがないかを確認。
- マシン上でデザイントレースを行い、ニードルやレーザーが枠に当たらないことを必ず確認。

プロのコツ
- 丸枠優先:迷ったら丸枠。連続テンションが効き、縫製中の布の動きを抑えやすい。
- 最小サイズ主義:デザインに対して“できるだけ小さい枠”で固定するほど、縫っている最中のブレを低減できる。
- 下紙の役割分担:最下層のティアアウェイは土台、上層のカットアウェイ/Webblonで安定性を担保。Webblonは薄いので2枚使いが基本線。
- 締めすぎ回避:ハンマーが要る硬さはアウト。ネジで微調整し、手圧でスムーズに入る設定に。
注意
- 枠への干渉は致命傷:開始前のトレースで、針・レーザーと枠の衝突リスクを必ず排除。
- シワ・段差は即やり直し:枠内に皺や波打ちが残ると、糸調子が良くても仕上がりは乱れます。
- バッキングのはみ出し:半掛かりは不安定の温床。裏面で“完全内包”を確認。
クイックチェック
- 枠サイズ:余白は最小限か?(大枠で広すぎない)
- テンション:押しても“たわみゼロ”で、引っ張り跡が出るほど強すぎない。
- 裏面:下紙はしっかり内包、折れやズレなし。
- トレース:全周で干渉なしを確認。
コメントから:単針ユーザーへのヒント 視聴者の声では、「多針前提の枠やサイズに限らず、より汎用的な説明が欲しい」という意見が挙がっていました。ブランドや機種で枠寸法・規格が違うため、動画の原理(枠サイズの決め方、テンション、下紙の役割)を手元の機材に当てはめるのが近道です。単針向けでも、
- “最小サイズ主義”と“丸枠優先”の原理
- ティアアウェイ(最下層)+カットアウェイ/Webblon(上層)の基本重ね
- トレースで干渉ゼロ確認
この3点を徹底すれば、機種差に左右されず安定した結果を得られます。
用語メモ(検索のヒント) 機種やアクセサリーは各社で名称や選択肢が異なります。製品選定の際は、以下のような用語で情報収集すると比較がしやすくなります(本記事は原理解説であり、特定製品の推奨・仕様は扱っていません)。
- 例:磁気 刺繍枠(一般呼称/方式名の一つ)
- 例:brother 刺繍枠 sizes(サイズ表の確認などに)
- 例:babylock 刺繍枠(機種適合の枠を探す際のキーワード)
- 例:janome 刺繍ミシン(メーカー別の枠や対応を調べる起点に)
- 例:snap hoop monster(製品系名称での一般検索例)
- 例:bernina 磁気 刺繍枠(磁気タイプの適合やサイズを調べる際)
- 例:mighty hoops for brother(対応シリーズの把握に)
- 例:tajima 刺繍枠(業務機向けの枠情報の確認に)
FAQ(抜粋) Q. 丸枠の代表サイズは? A. 12cm、15cm、18cmが一般的に紹介されました。なお、1ヘッドあたり2個ずつ付属するケースもあります(次の作業に備えて同時運用しやすい)。
Q. テンションが重要な理由は? A. 布の動きを抑え、刺繍の歪みや波打ちを防ぐため。弱すぎればズレ、強すぎれば外した後にパッカリング(たるみ)が出ます。
Q. 推奨の下紙は? A. 2ozのカットアウェイが汎用。Tシャツやパフォーマンス素材には薄手のWebblon White(1.5oz)を2枚使いするのが一般的。最下層に中厚ティアアウェイを“土台”として1枚入れる方法も示されました。
Q. 枠が固すぎるかの目安は? A. ゴムハンマーが必要なら固すぎ。手圧で入る硬さに緩め、再度セットします。
仕上がりの鍵は「最小サイズの枠」「均一テンション」「適切な下紙」の3点。ここまで整えば、あとはマシンに載せるだけ。あらゆるシャツ刺繍の再現性が高まります。
