Table of Contents
動画を見る:How to Embroider a Sweatshirt(FIERCEKITTENZ)
秋冬の主役、スウェットに刺繍を入れると一気に“自分の服”になる。けれど厚地で起毛もあり、ただ縫えばいいわけじゃない。だからこそ、安定剤の選び方と重ね方、そしてフーピングが仕上がりを決定づけます。

本記事は動画のワークフローを忠実にたどりながら、「刺繍サンドイッチ」の実践、Mighty Hoopでのフーピング、Hatch Embroidery 3によるスケッチ風デジタイジングまでを、手順・注意点・チェックリストでまとめました。
学べること
- スウェット刺繍に適した安定剤の組み合わせ(tearaway・ノーショーメッシュ・水溶性)
 
- Mighty Hoopでのフーピング手順と配置のコツ
 
- Hatch Embroidery 3で“スケッチ風”に見せるデジタイジング設定
 
- マシン側での180°反転、色の割り当て、フレーミングパスの要点
 
- 仕上げ時の各安定剤の扱いと、快適な着心地に仕上げるチェック
 
スウェットに最適な安定剤を選ぶ スウェットはTシャツより厚く、着用・洗濯回数も多め。つまり“長持ちする安定化”が不可欠です。動画ではまず「WORN NOT TORN(着るならカットアウェイ)」という合言葉を提示。頻回の洗濯に耐えるには、基本的にカットアウェイ系が前提になります。

ただし、厚手のカットアウェイは残留時に肌あたりや段差(デザインの輪郭に出る縁)が気になり、ドレープも損ないがち。そこで選ばれているのがノーショーメッシュ。軽量で肌当たりがよく、余分をトリムしてもごわつきにくいのが魅力です。磁気 刺繍枠
一方、フープに入れる・ステッチアウトする工程で、下層をもう少し安定させたい。そこで一時的な補助としてティアアウェイ(tearaway)をボトムに1層加えます。これは最後に破って外す層。ステッチ中のズレを抑え、作業性を上げます。

起毛感のあるスウェット表面では、糸が沈んで“輪郭がぼやける”問題も。これを防ぐのがトップの水溶性スタビライザー。必須ではないけれど、入れないと後悔しがちと作者。仕上がりの“くっきり感”が段違いです。

プロのコツ
- ノーショーメッシュは“軽いカットアウェイ”という理解でOK。残してこそ耐久性が担保されます。
 
- ティアアウェイは“作業中の補助”。最後に破って除去することを前提に、1層で十分。

注意
- 頻回洗濯の衣類にティアアウェイだけで臨むのはNG。デザインが早くへたる恐れ。
 
- 厚すぎるカットアウェイは肌に当たり、着心地を損ないます。
 
「刺繍サンドイッチ」テクニック レイヤー構成はシンプル。下からティアアウェイ→カットアウェイ(ノーショーメッシュ)→製品(スウェット)→水溶性トッピング。この“4層セット”をそのままフープに入れます。作者はMighty Hoopの強力マグネットフープを使用し、複層でもがっちり保持。

準備段階では、ティアアウェイとノーショーメッシュをベイスティングスプレーで軽く接着。層ズレを予防しながらフープ台座に載せます。Mighty Hoop用のスタビライザーツールがあると、位置決めが格段にラク。なければペインターテープでも代用可。

クイックチェック
- ベイスティングは“薄く均一に”。過剰な糊は布地汚れや針酔いの原因に。
 
- スタビライザーツールは“マシンに載せる前に必ず外す”。これを忘れるとトラブルのもと。

続いて、台座をスウェットの中にスライドし、狙い位置に合わせます。上から水溶性を置き、Mighty Hoopの上枠で一気にクランプ。フリ―アーム機で方向性があるフープなら、スウェット裾がマシン側を向くように上枠を正しく向けておくこと。

マシンに載せる前に、ツール類の外し忘れがないかを最終確認。シワがあればこのタイミングで伸ばし、デザインセンターがずれていないかもチェックします。

プロのコツ - フーピングが煩雑に感じるなら、専用のステーション導入もひとつの手。動画では専用フーピングステーションに言及があります(具体製品名は示されていません)。

Hatch Embroidery 3でスケッチ風デザインを作る 今回のデザインは“スケッチ風”。密度を落とし、エッジを羽毛のようにほぐして、手描きのニュアンスを加えます。使用ソフトはHatch Embroidery 3(Digitizer Edition)。
手順の要点は以下です。
- タタミ(Tatami)フィルの間隔:デフォルト0.4mm → 0.6mmへ拡大(プレビューしつつ好みに応じて調整)
 
- Travel on edge:チェックを外す
 
- ステッチ長:4mm → 3mmに短縮(下敷きを外すため、短めで保持力を確保)
 
- Effectsタブ:Hand stitch effectをON、両端をFeather(幅やRaggednessはプレビューで調整)
 
- Stitchingタブ:Underlays(下敷き)をすべて除去
 
- 仕上げ:トリプルステッチのアウトラインでまとめる
 
これにより、軽やかで“描いたような”見た目と、着心地を損なわない密度感を両立できます。

注意
- 下敷きを外す分、ステッチ長は短めが安全。3mmが動画の推奨値。
 
- 角度(Angle)も調整して、フェザー端の向きをデザインに馴染ませる。

クイックチェック
- プレビューで“密すぎ・スカスカすぎ”を視覚で確認。
 
- タタミ間隔0.6mmは一例。モチーフや生地に応じて柔軟に。
 
作者の推しポイント - Hatchは変更結果をその場でプレビューでき、調整が直感的。デザインの“ラフさ”を好みに寄せやすい。

ステッチアウトに向けたマシン準備 マシンはRicoma MT-1501(マルチニードル)。デザインを転送後、フリ―アームで“裾が手前”に来るセットの場合は、デザインを180°回転させて天地が逆にならないようにします。マルチニードルでは色ごとに使用ニードルを割り当て、フレーミングパスで押さえ金とフープの干渉がないか必ず確認。
コメントからの補足
- スピード目安:今回の収録では600spm。普段は平物は800–1000spm、帽子は600spmを上限目安にすることが多いとのこと(最終的にはデザイン密度次第)。
 
安全のために
- フレーミングパスは必須。押さえ金がフープに当たりそうなら、位置や向きを即修正。
 
仕上げを美しくするコツ ステッチ完了後、フープから外し、余分なスタビライザーを処理します。
- ティアアウェイ:外縁からやさしく破って除去。
 
- ノーショーメッシュ:残す(何度も洗う衣類でデザインを守るため)。
 
- 水溶性:水で除去(洗濯または霧吹き→擦り落とし→自然乾燥)。販売品なら特に、ざらつきが残らないよう丁寧に。

クイックチェック
- 内側の余分なスタビライザーが肌に当たらないか。
 
- たるみ・波打ち・パッカリングがないか。あれば安定剤構成やテンション、デジタイジング密度を見直しましょう。
 
Tシャツにも応用できるスケッチ技法 スケッチ風は密度が軽いので、Tシャツのような薄手にも好相性。下敷きを外し間隔を広げる設定は、生地への負担を和らげます。もちろん、Tシャツではスウェットよりさらに軽い構成に調整してもOK(本記事では具体配合は提示されていません)。
コメントから(実用Q&A) Q. スピードはどのくらい?衣類で変えますか? A. 今回は撮影都合で600spm。通常は平物800–1000spm、帽子は600spmを超えない運用が多い。密度によっては落とす。
Q. 仕上げの安定剤はどう外す? A. ノーショーメッシュは残す。水溶性は洗濯か霧吹き→擦って除去。ティアアウェイは破って外す。
Q. 水溶性のざらつきが残ったら? A. 霧吹きで湿らせて自然乾燥。
プロのコツ(まとめ)
- スウェットの“起毛×密度”に対処する三層構成(ボトム:ティアアウェイ+ノーショー/トップ:水溶性)で、見た目と耐久性を両立。
 
- フーピングは段取り8割。スプレーで層を仮止めし、フレーミングパスで干渉チェックを徹底。
 
- デジタイジングは“軽く・ラフに・でも解像感は高く”。間隔0.6mm・3mm長・ハンドステッチ効果・フェザー端・下敷き除去が核。
 
用語メモ(リサーチの足がかりに) 本動画で使用されているのはMighty Hoopの強力マグネット式フープです。マグネット式フープを探す際、海外では次のような用語が流通しています(本記事は特定機種への適合可否は示しません)。市場用語の理解として参照してください。
- mighty hoop:ブランド名と一般呼称が混在して使われます。
 
- mighty hoops:複数サイズやアクセサリーを示す文脈で見かけます。
 
- mighty hoop sizes:サイズバリエーションの検索語として一般的。
 
- mighty hoop embroidery:マグネット式フープを用いた刺繍全般の話題タグとして使用されることがあります。
 
- mightyhoop:ブランド名のウェブ上の表記ゆれ。
 
- snap hoop monster:別系統のマグネットフープ商品名として耳にする用語。
 
- magnetic hooping station:マグネット式のフーピングステーションの総称。
 
- 磁気 刺繍枠:日本語圏での総称。製品選定は各自のマシン規格に合わせて行いましょう。
 
安全上の注意(動画準拠)
- フーピングツールはマシンへ運ぶ前に必ず外す。
 
- ステッチ前にフレーミングパスを行い、押さえ金がフープに当たらないことを確認する。
 
最後に スウェット刺繍は“重ね方”と“軽やかなデジタイジング”が勝負。動画のワークフローどおりに進めれば、丈夫さ・着心地・見映えの三拍子が揃います。次は、お気に入りのデザインをHatch Embroidery 3で“スケッチ風”に仕立て、Mighty Hoopでスマートにフーピング。あなたの一枚を、永く愛せる一枚に育てていきましょう。
