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動画を見る:Hand Embroidery Design Transfer Methods for Fabric(Fabric Garden)
手刺繍の図案は“きれいに写す”ところから作品が始まります。線が薄い、ズレた、にじんだ——そんなストレスを解消するための実演解説です。

本稿では、Fabric Gardenの動画内容に忠実に、ホットアイロン転写からライトボックスでのトレース、布用マーカーの選び方、そしてTransfer-Ezeの使い方までを整理してご紹介します。
- 学べること
- 主要な図案転写方法のメリット/注意点の理解
- ライトボックスでのトレース手順と固定のコツ
- Frixion・空気で消える・水溶性・Micron Pigma(耐久)ペンの使い分け
- Transfer-Ezeの印刷設定・貼り付け・除去と色移りリスク
はじめに:図案転写が作品を左右する 図案転写は、ステッチのまっすぐさや曲線の美しさに直結します。かつては多くのパターンがホットアイロン転写つきでしたが、今ではごく一部。Aunt Marthaがその代表例です。

現在は、多くのパターンが紙に描かれたライン画のみ。そこで「どう布へ写すか」が課題になります。

伝統と最新:転写方法の全体像
- ホットアイロン転写の思い出
一部のブランド(Aunt Marthaなど)は今もホットアイロン転写を提供しています。図案が直接布へ転写できるのが魅力ですが、現在は少数派です。
- DIYのアイロン転写(専用鉛筆)
専用のアイロン転写ペンシルで紙へなぞり、その紙をアイロンで布に転写する方法もあります。

ライトボックスで極めるトレース術 ライトボックスは、動画の講師が“お気に入り”と推す方法。パターンをライトボックスに置き、ずれないようテープで固定。上から布(ティータオル等)を重ね、透けた線をなぞります。

- セットアップの要点
- パターンを平らに置き、端をテープで固定(ブルーやグリーンのテープなど、紙を傷めないもの)。

- その上に布を重ね、図案が十分に見える位置へ。

- ティータオルの下準備
ティータオルは一般的な生地より縮みが大きいので、トレース前に必ず洗って乾燥させておきます。これで完成後の歪みを防止。

最適な布用マーカーの選び方 この動画で扱うペンは4系統。どれにも長所と注意点があります。目的・手順・気候に合わせて選びましょう。

- 熱で消える(Frixion)
アイロンの熱でインクが消えるタイプ。途中でプレスする予定がある作品だと、せっかくの下書きが消えてしまう恐れがあります。中間プレスのない短期プロジェクトなら選択肢になります。

- 空気で消える(エアーイレース)
一定時間で自然に消えるタイプ。製品表示では「最大数日」残る場合もありますが、乾燥した地域(動画ではカリフォルニア)では一日程度で消えることも。トレース後にすぐ刺せる日だけに使うのが安全です。

- 水溶性(ウォーターイレース)
きれいな細線が描けますが、消すには作品全体を濡らす必要があります。完成後に丸ごと湿らせられるか、工程全体を想定して選びます。

- 耐久(Micron Pigma 01)
薄い細線が描けて、刺しゅう糸やパールコットンで完全に覆えば、消さなくてOK。永久インクゆえに“怖さ”を感じるかもしれませんが、線をきれいに保てば頼れる選択肢です。コツは「羽根描き(フェザリング)をしない」こと。ペン先を止めず、なめらかに一定速度で動かします。

フェザリングのように短い線を重ねると重複線ができ、覆いづらくなります。また、同じ場所にペン先を置いたままにすると、繊維へインクがにじみやすくなります。

Transfer-Ezeで印刷→貼る→縫うをスマートに より“そのまま感覚”で縫い始めたい人にはTransfer-Ezeも選択肢。インクジェットプリンタで低インク設定にし、図案をその専用紙へ印刷。裏紙をはがすと粘着面が現れ、布へ直接貼れます。

- 手順のポイント
- プリンタはインク量を下げる(低インク設定)。インク過多はにじみやすく扱いづらい。
- 印刷後は裏紙をはがし、粘着面を布へ密着させます。
- 作品完成後は、ぬるま湯に浸けて溶かして除去します。

- 濃色フロスの色移り注意
“カラー・ファスト(色堅牢)”表示でも、赤・ネイビー・ハンターグリーン・黒など強い色は濡れたときにわずかに色が出ることがあります。水溶性ペンやTransfer-Ezeなど“水で除去”が前提の方法では、色選びと手順にいっそう注意を払いましょう。
代替のトレース面(お家の道具で) ライトボックスがなくても、窓ガラスに貼って立ってトレースする、透明天板のコーヒーテーブルやソーイングテーブル、さらにはタブレット(iPad)を簡易ライトボックスとして使う方法があります。なお、縦向きで書くとインクが出づらいペンもあるので、ペンの向きと書き味を確認してから本番へ。
クイックチェック
- トレース前
- ティータオルは洗って乾燥済み?
- パターンはテープで平らに固定できている?
- 使うペンの特性(熱・空気・水・耐久)を理解して選定した?
- トレース中
- 布はしわなく、ズレずに重ねられている?
- 耐久ペンなら、ペン先を止めずスムーズに引けている?
- 仕上げ前
- 水で除去する場合、濃色フロスの色移りリスクを再確認した?
- Transfer-Ezeのインク量設定は控えめだった?
プロのコツ
- ライトボックスでの固定は、紙を傷めないマスキング系テープで。貼り直しや微調整がしやすく、紙面の毛羽立ちを防ぎます。
- Micron Pigma 01などの耐久ペンは、線を細く・一定で引ける姿勢と支点づくり(肘や手首の安定)を意識。ラインに自信が持てないカーブは、一気に引くより、体全体で“滑らかに”回し込みます。
- 空気で消えるペンは、乾燥地域での使用時間が短くなる傾向。迷ったら水溶性や耐久ペンに切り替える判断も賢明です。
注意
- 耐久インクは“消えない”のが前提。最終的にステッチで完全に覆える太さ・位置で線を引くこと。
- 水で消す方式(水溶性ペン、Transfer-Eze)は、濃色フロスを使うデザインや、仕上げに水通しできない素材の作品には不向きな場合があります。
- 窓での立ちトレースは姿勢が崩れやすく、線のブレを生みます。長時間の作業は避け、可能なら水平な明かり取り面に切り替えましょう。
機械刺繍ユーザーへの補足 本記事は“手刺繍”の図案転写に焦点を当てていますが、機械刺繍では保持・固定のアプローチが異なります。たとえば、磁力で生地を挟むホールディングは作業効率を高めます。もし機械刺繍での固定に関心があれば、こうした用語で情報収集してみてください(ブランド・機種ごとに適合が異なるため、必ず互換性を確認のうえで)。[編集注:以下は用語例であり、本動画の対象外です。] この領域では 磁気 刺繍枠、特定ブランド向けの brother 磁気 刺繍枠、同様にメーカー別の janome 磁気 刺繍枠、強力磁力で支持する mighty hoop、分割型の snap hoop monster などのキーワードが見られます。さらに一般語として 磁気 刺繍枠 for embroidery や embroidery 磁気 刺繍枠 といった表記も流通しています。
よくある質問(動画に基づく)
- Q. 普通のプリンター用紙に印刷してアイロン転写できますか?
A. 一般のインク印刷では不可。専用の転写鉛筆で紙へ写し、その紙をアイロンで転写する方法なら可能です。
- Q. トレース線がすぐ消えてしまいます。
A. 空気で消えるペンは、トレース直後に刺す前提で使います。時間を置くなら水溶性や耐久ペンへ切り替えを。
- Q. 耐久マーカーでの転写は安全?
A. Micron Pigma 01のような極細の耐久インクは、線をスムーズに引き“完全にステッチで覆う”前提なら有効です。ペン先を止めない・複線化しないのがコツ。
- Q. ティータオルはなぜ事前洗いが必要?
A. 縮みが大きく、完成後に歪みやひきつれが起きやすいからです。
- Q. Transfer-Ezeはどう除去する?
A. ぬるま湯へしっかり浸けて溶かします。濃色フロスの色移りに注意してください。
コメントから 動画では質疑応答の記録は提示されていません。本記事のチェックリストと注意事項を参照し、必要に応じてペンの試し書きや生地端でのテストを行ってください。
おわりに 図案転写は“線を引く作業”以上の意味を持ちます。あなたのステッチを最短距離で美しく導くための、確かな準備です。使う道具の特性を理解し、作品と工程に最適化して選べば、仕上がりはぐっと安定します。今日の一手間が、明日のきれいな一針につながります。
