目次
失敗しないスタートの設計図:購入から「最初の1針」まで
刺繍機の前に座って、準備万端のつもりだったのに「ファイルがない/壊れている/形式が違う」。この手のストレスは、作業の流れを一気に止めてしまいます。
マシン刺繍は「段取りの連鎖」で成り立ちます。購入 → ダウンロード → 解凍 → サイズ/形式選択 → 転送 → 物理セットアップ(枠張り)。どこか1つでも弱いと、刺繍機は止まります(最悪の場合、素材を台無しにします)。
ここでは、Sweet Peaを例に「デジタルの受け渡し」を分解し、Windows PCでのファイル管理から、USB経由で刺繍機に持ち込むところまでを、作業者目線で手順化します。さらに、USBを持って刺繍機へ移動した後の「枠張り・縫い出し」につながるチェックポイントも橋渡しします。

「成功の連鎖」を意識する
ボタンを押す前に押さえたいのは、刺繍機のエラーの多くが“刺繍機そのもの”ではなく、ファイル準備のミスから始まるという点です。針に糸を通すのと同じくらい、ファイル準備も丁寧に扱う必要があります。
特にITH(In-the-Hoop)系のような複数工程プロジェクトでは、"Side B"が欠けるだけで作業が途中で止まります。
Part 1: 購入まで(アカウントと入手)
Step 1 — リンクの確認(開かない時の対処)
Chrome(または普段のブラウザ)を開き、案内されているリンクからアクセスします。クリックしてもページが開かない場合は、URLをコピーしてアドレスバーに貼り付けてEnterで開きます。
なぜ重要? リンクの不具合やリダイレクトの影響で、正しく商品ページに到達できないことがあります。まずは“正しい入口”を確保します。
Step 2 — 検索は短く・正確に
サイト内検索に 「Luscious」 と入力し、候補に出る 「Luscious Leaf Handbag」 を選びます。


Step 3 — 購入方法の選択(単品か、まとめ買いか)
商品ページでは、主に次の2つの導線があります。
- Buy it now:この1点だけをすぐ購入したい時
- Add to cart:複数デザインをまとめて購入したい時

注意:重複購入に要注意
よく購入する方ほど、購入前に「My Account」の購入履歴を確認しておくと安全です。デジタルデータの二重購入は起こりがちで、スタビライザーや針などの消耗品に回したい予算が削られます。
Part 2: ダウンロード〜保存場所の特定(迷子防止)
決済が完了すると、データは販売元サーバーからPCへ移ります。初心者が「どこに行った?」となりやすいのがここです。

Step 4 — ダウンロード開始(言語の選択)
My Account > Download Files に進み、購入したデザインを探します。
この例では English files(ZIP) を選びます(Germanなど別言語も並ぶため、選択ミスに注意)。

Step 5 — 「フォルダで表示」で着地点を固定する
ダウンロード直後にファイルを開こうとしてしまうのは、よくあるミスです。ここではまだ開きません。
Chromeのダウンロード表示で、進捗の円(青)が最後まで回り切って完了したのを確認してから、ダウンロード項目のメニューで 「フォルダを開く(Show in folder)」 を選びます。
チェックポイント: これでWindowsのエクスプローラーが開き、保存先(多くは「ダウンロード」)が確定します。ここを飛ばすと、保存場所を推測しながら探すことになり、時間が溶けます。


準備:刺繍の「段取り」を先に揃える
現場では、データ準備も生産工程の一部です。刺繍ミシン 用 枠入れ(枠入れ/枠張り)を安定させるためにも、PC作業の時点で“迷いの種”を潰しておきます。
事前チェック(解凍前):
- ダウンロード完了確認: 進捗が100%(途中の一時ファイルではない)
- 言語確認: Englishを選んだ(German等を誤選択していない)
- 保存先の方針: 後で移す前提でも、まず「どこに落ちたか」を把握できている
- USBの状態: 刺繍用USBを用意(多くの刺繍機はFAT32が一般的。機種の指定がある場合はそれに従う)
- 手順書の確認: PDFの説明書がある前提で、工程数(何回枠を張るか)を把握する準備ができている
Part 3: 解凍(ZIPのまま扱わない)と整理
ZIPは「圧縮された梱包」です。中身を取り出さない限り、刺繍機が読める状態にはなりません。
Step 6 — Extract All(必ず“解凍してから”使う)
エクスプローラーでZIPファイルを選び、Extract(展開)→ Extract All(すべて展開) を実行します。
保存先を変えたい場合は Browse で場所を指定し、Extract で解凍します(どこに解凍したか分かる場所にするのが重要です)。

注意:ZIPのままUSBに入れない
チャック(ジッパー)アイコンの付いたフォルダをそのままUSBにコピーすると、刺繍機側で空フォルダ扱いになったり、読み込みで止まったりする原因になります。
Step 7 — 中身の構成を点検する
解凍後のフォルダを開き、次のような構成になっているか確認します。
- Instructions(PDF/JPGなどの手順書)
- サイズ別フォルダ(5x7 / 6x10 / 8x12 など)


現場のコツ: 解凍後、ZIPは削除するか「Backup」など別フォルダへ移動します。ZIPと解凍済みフォルダが同じ場所にあると、「どっちを開くのが正解?」が起きやすくなります。
Part 4: サイズ(枠)と形式(拡張子)の選び方
ここが最も失敗が起きやすいポイントです。刺繍機が厳密に見るのは、サイズ(刺繍可能範囲) と 形式(拡張子) の2つです。
Step 8 — サイズ確認(枠サイズフォルダを選ぶ)
自分が使う枠に対応するサイズフォルダを開きます。動画では 8x12 を選んでいます。
補足: 一般に「枠サイズ」と呼びますが、実際に重要なのは刺繍機が許容する刺繍可能範囲です。サイズがギリギリだと読み込み拒否になることがあります。迷う場合は、機械側の最大範囲に対して余裕のあるサイズを選びます。

Step 9 — 形式確認(拡張子=機種の言語)
サイズフォルダ内には、複数の拡張子が並びます。自分の刺繍機が対応する形式だけを選びます。
- PES: Brother / Babylock
- VP3: Husqvarna Viking / Pfaff
- JEF: Janome
brother ミシン 用 刺繍枠(Brother用の刺繍枠)を使う機種であれば、基本的に .PES を選ぶことになります。JEFをBrotherに入れても読み込めないのと同じで、形式違いは最短で詰みます。
Step 10 — 複数ファイル(Side A/Side B)の取りこぼし防止
「Luscious Leaf Handbag」はITH構成で、工程が分かれます。フォルダ内で Side A と Side B を探し、Ctrlキーを押しながら両方をクリックして同時選択します。

なぜ重要? Side Aだけ持って刺繍機へ行くと、途中でSide Bが必要になって作業が止まり、PCに戻ることになります。段取りが崩れるだけでなく、素材の扱いも雑になりがちです。
Part 5: USBへの転送(安全に、確実に)
Step 11 — Copy(必要なファイルだけ)
必要なファイルだけを選択した状態で Copy(コピー)(またはCtrl+C)を実行し、刺繍用USBメモリをPCに挿します。

Step 12 — Paste(USB側で貼り付け)
「PC」内のUSBドライブ(例:D: や E:)を開き、ルート直下またはプロジェクト用フォルダに Paste(貼り付け)(またはCtrl+V)します。

Step 13 — 取り外しは「取り出し」してから
これは推奨ではなく、必須の作法です。書き込み中に抜くと、小さな刺繍データでも破損することがあります。
- Windows右下のタスクバーで「隠れているインジケーター(矢印)」をクリック
- USBのアイコンを右クリック
- 取り出し(Eject Mass Storage) を選択
- 「安全に取り外せます」の通知を待つ

転送後チェック(Go/No-Go):
- コピー元: 解凍済みフォルダからコピーした
- サイズ: 選んだサイズフォルダ(例:8x12)が使用枠に合っている
- 形式: 拡張子(.PES/.VP3/.JEF)が機種に一致
- 揃い: Side A と Side B がUSB内に両方ある
- 安全: ソフトウェアで取り出してから抜いた
Part 6: デジタルから現場へ(USBの次に起きること)
動画はPC作業で終わりますが、現場はここからが本番です。USBを刺繍機に挿して「スタート」を押すまでに、素材・物理・道具の要因が介入します。
枠張りの現実(品質の8割がここで決まる)
データを読み込んだら、次は素材を安定させます。枠張りでのズレやテンション不良は、シワ(パッカリング)や位置合わせ不良の原因になります。
判断の軸:スタビライザーと道具
- 素材が伸びる(Tシャツ、ニット)
- 対策: カットアウェイ系スタビライザーを基本にします。引き裂きタイプは走行中に素材が動きやすく、歪みが出やすくなります。
- 枠に入れにくい(厚手ジャケット、バッグ、ポケット周り)
- 課題: ネジ式枠は締め込みが重く、素材によっては枠跡が出やすいことがあります。
- 選択肢: マグネット刺繍枠(マグネット刺繍枠)は、摩擦で締め込むのではなく磁力で保持するため、調整がしやすく、枠跡対策として検討されることがあります。
- 量産(10点以上)
- 課題: ネジ締めの繰り返しで手首に負担が出やすい
- 選択肢: Brother系で枠サイズが合う場合、brother 5x7 マグネット刺繍枠のようなマグネット枠は、着脱の反復を短縮しやすい傾向があります。
- 位置精度: 左胸ロゴなど位置精度が重要なら、刺繍用 枠固定台(位置決めを助ける枠固定台)で再現性を上げる考え方があります。
注意:マグネットの安全管理
マグネット刺繍枠は吸着力が強い前提で扱います。
1. 挟み込み注意: 指を接触面に入れない
2. 医療機器: ペースメーカー等がある場合は十分距離を取る
3. 電子機器: ノートPC等の上に直接置かない
刺繍機側での読み込み(最低限の確認)
- USBを挿す
- Side A を読み込む
- 向きの確認: 上下が意図通りか(バッグ上端が枠の上側になっているか等)
運転前チェック(Pre-Flight):
- デザイン一致: 選んだファイルが対象パーツに合っている
- 枠認識: 刺繍機が枠サイズを認識している(エラー表示が出ない)
- 下糸(ボビン糸): 残量が十分(ITHで途中切れは致命的になりやすい)
- 糸調子の感触: 上糸を軽く引いて、適度な抵抗がある(緩すぎるとループが出やすい)
- 干渉: 枠の可動域に余り布や壁が当たらない
トラブルシューティング(症状 → 原因 → 対処)
慌てず、低コストの確認から順に潰します。
| 症状 | ありがちな原因 | 対処(低コスト→高コスト) |
|---|---|---|
| リンクが開かない | ブラウザ設定/リンク不具合 | URLを手動でコピーして新しいタブで開く |
| ダウンロードしたはずのファイルが見つからない | 保存先が不明 | ダウンロード直後に「フォルダを開く(Show in folder)」で着地点を確認(多くはDownloads) |
| 刺繍機で何も表示されない | 形式違い/ZIPのまま | 1) 解凍済みか確認 2) 拡張子が機種に一致しているか確認(BrotherならPES) |
| 「大きすぎる」等で読み込めない | サイズフォルダ違い | PCに戻り、枠に合うサイズフォルダを選び直す |
| 枠跡/シワ(パッカリング) | 枠張り・安定不足 | 1) スタビライザーを見直す 2) 必要に応じて 刺繍用 枠固定台 やマグネット枠で再現性を上げる |
| 糸切れ/糸がささくれる | 針/糸掛け/糸品質 | 1) 糸掛けを最初からやり直す 2) 針交換(新しい75/11) 3) 糸の状態を確認 |
現場基準のまとめ
この手順を一度「型」として身につけると、ファイル準備で迷う時間が減り、刺繍機の前での停止ややり直しが激減します。
USBの中身が整理され、形式とサイズが揃い、必要ファイル(Side A/Side B)も欠けていない。ここまでできて初めて、課題は「PCの問題」から「刺繍の技術(枠張り・素材・糸)」へ移ります。
点数が増えてくると、今度は刺繍枠や治具、スタビライザーがボトルネックになります。その段階で、マグネット枠や枠固定台といった道具を“見た目”ではなく“工程の摩擦を減らす手段”として検討すると、作業が一段安定します。
では、安心してスタートを押しに行きましょう。
