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1 プロジェクトの概要
糸かけは「コーン→上部ガイド→一次テンションディスク→テンションプレート→チューブ→二次テンション→ブレークセンサー→テイクアップレバー→最終ガイド→針」という順番を守ることが要。どこか一箇所でも外れていると、縫い目の乱れや糸切れにつながります。
このガイドは、動画で示されたBazar91方式をそのまま文字化し、途中のチェック観点を明快に追記しました。とくにテンションプレートの“2枚の間”を確実に通すこと、センサーとテイクアップレバーを確実に経由させること、シャトルエリアの埃を徹底的に除去してから注油することが、品質と寿命の分岐点になります。
また、現場ではアイテムの固定方法が品質に直結しますが、フレームワークの補助として 刺繍用 枠固定台 を併用すると、位置ずれが減り糸道チェックにも集中しやすくなります。
1.1 この方法が有効な場面
- 多針刺繍ミシンの初期セットアップや糸替え時。
- 糸切れや縫い乱れ、異音などの前兆があるときの点検。
- 週次の保守ルーチン(清掃・注油・グリスアップ)。
1.2 適用の前提と制限
- ミシンの細かなモデル差やトルク値、油種の指定などは動画内で具体数値の提示がないため、本記事では一般的表現に留めます。
- カバー着脱やギア周りの作業は、電源オフ・針上停止などの基本安全手順を守って行ってください。
2 準備(環境・道具・消耗品)
良い結果は準備から。明るく清潔な作業スペースで、必要な道具を手元に集めます。
- 道具:ピンセット、はさみ、細い補助ワイヤー(付属品)、ドライバー、六角レンチ、ブラシ、注油ボトル
- 消耗品:糸、油、グリス
- 作業環境:ミシン周辺を清掃し、手元の視界を確保
刺繍対象の固定に自信がない場合は、磁力で素早く固定できる マグネット刺繍枠 を活用すると、作業全体のリピート性が上がります。
2.1 事前チェック
- 糸コーンが安定して置けるか(スタンドの揺れや傾きがないか)。
- ガイドやディスクに糸くずが堆積していないか。
- ブラシやピンセットなど細工具が手の届く範囲にあるか。
2.2 準備のチェックリスト
- 糸・油・グリスの在庫確認
- 工具一式(ピンセット・ドライバー・六角レンチ・ブラシ)
- 作業灯と清潔なワークスペース
3 セットアップの要点(始める前の確認)
開始前に、糸道トラブルを未然に防ぐ条件を整えます。
- 糸の直線性:コーンから上部ガイドまで“まっすぐ”に取れる配置にする。
- ガイドの順守:各ガイド・プレート・センサー・レバーをスキップしない。
- 針の位置:作業時は針先を安全位置に。再組み立てではセンタリング必須。
安定した糸送りと固定には、対象や機種に応じた枠の選択も大切で、例えばハイボリュームな運用では 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 の素早い脱着性が段取りを大きく短縮します。
3.1 クイックチェック
- ガイドに糸が引っかかる感触はないか。
- テンションディスク間に糸が確実に入るか。
- センサーの回転はスムーズか。
4 手順:コーンから針までの糸かけ
以下は動画の順序に沿った、再現性の高い手順です。各ステップに“狙い”と“良い結果の手触り”を併記します。
4.1 糸コーンを載せる(安定最優先)
- コーンを指定ホルダーに置き、しっかり押し込んで座りを良くします。
- ねじれやバタつきは糸の暴れを招くため、ぐらつきゼロを狙います。

狙い:供給源を安定させることで以降のテンション制御を効かせやすくします。量産現場では、機種に適合した周辺機器の整備も効率に効き、例えば hoopmaster 枠固定台 と併用すると段取り替え時の人的ムラを減らせます。
4.2 上部ガイドを“まっすぐ”通す
- コーンから糸を引き出し、上腕部の小孔ガイドを直線で通過させます。

結果:ねじれや引っかかりのない真っ直ぐな糸道。ここで乱れると以降の全箇所に影響が波及します。
4.3 一次テンションディスクとプレートへ
- 上ガイドから糸を引き、一次テンションディスクに差し込みます。

- 続けてテンションプレートを“2枚の間”に確実に通します。

注意:プレートの間に入っていないと、縫いが緩い/硬いといった不安定さの元になります。必要に応じてドライバーで軽く押し入れてください。
プロのコツ:テンション段に進むごとに、指先で軽く“引き感”をチェックし、通し忘れや片寄りを早期に検出します。市場でよく使われる tajima 刺繍枠 などで厚手を扱う現場ほど、テンションの初期条件が縫い品質に直結します。
4.4 チューブを補助ワイヤーで通す
- チューブをいったん外し、付属の細ワイヤーをチューブに通します。
- ワイヤー末端に糸を軽く引っ掛け、ワイヤーを戻して糸をチューブ内に通します。

結果:糸がチューブ内を抵抗なく通る状態。引っかかりがある場合は、ワイヤーの表面や糸の絡みを点検します。
4.5 チューブ再装着→二次テンションへ
- チューブを元の位置に戻します。
- 番号付き(二次)テンションディスクに糸を入れ、“2枚の間”を通して左側から糸が出るようにレイアウトします。

期待:テンションの手応えが揃い、出糸方向が左に統一されます。ここがズレるとバタつきや縫いズレにつながります。
4.6 スレッドブレークセンサーとテイクアップレバー
- 白いセンサー(回転輪)に糸を1〜2周かけ、糸を引いたときに輪が回転することを確認します。

- センサー直下のガイド(“チェッパー”)を通し、Uターンしてテイクアップレバーの小孔に通します。

結果:センサーは糸切れ時に自動停止を促す要。ここが効くと再始動がスムーズです。レバー通過は縫いピッチの安定要因です。運用規模が拡大すると、例えば happy 刺繍ミシン のような多針機でも基本の糸道哲学は共通です。
4.7 最終ガイドを経由し、針へ
- 針棒近くの白いガイドを通し、ピンセットで“表から裏”へ針穴に通します。
- 針近傍の小スプリングガイドに糸を引っ掛けます。

期待:針への通線がクリーンで、余分なたわみがないこと。ここまでで、コーンから針までの全ルートが完成です。大型の刺繍枠運用では brother pr1055x などの機種でも、最後のスプリングガイド掛けまで徹底することでスキップステッチを抑えられます。
4.8 手順のチェックリスト(糸かけ)
- コーンの座りと糸の直線性
- すべてのガイド・ディスク・プレート・センサー・レバーを通過
- テンションプレートは“2枚の間”を確認
- センサー輪は糸で引くと回転する
- 針は前から後ろへ通し、小スプリングガイドに掛かっている
5 手順:清掃・注油・グリスアップ
ここからは週次メンテの中核。動画では「週1回」実施が推奨されました(具体的な曜日指定や量は未提示)。
5.1 シャトル周りの清掃と注油
- シャトルカバーのビスを“少しだけ”緩め、カバーを回して機構を露出します。

- ブラシでシャトル、カッター、ボビンケース周辺に溜まった埃や繊維くずを徹底除去します。

- 清掃後、可動部の摩擦点に注油します。

狙い:蓄積した埃は糸絡み・目飛びの主因。清掃→注油の順で、摩耗と発熱を抑えます。サイズの異なる対象を安定して縫うために、固定側の選択肢として マグネット刺繍枠 brother 用 を導入すると作業時間の短縮にも寄与します。
注意:オイル過多は飛散の原因。ウエスで余分を軽く拭い、油路に沿って必要量だけ与えます。
5.2 シャトルカバーの再装着と針先センタリング
- カバーを元に戻し、針先がカバーの開口“ど真ん中”に入ることを確認します。
- 六角レンチで確実に締結し、カバーがガタつかないようにします。

クイックチェック:針が中央から外れていると、運転時に針折れが頻発します。軽く手回しして干渉の有無を確認してください。
5.3 X/Yガイドの注油
- X/Y軸ガイドの所定の穴や溝にオイルを差し、全体に行き渡るようにします。
期待:フレームの移動が滑らかになり、輪郭の角や小円が安定します。フレーム構成が多様な現場では マグネット刺繍枠 babylock 刺繍ミシン 用 のような対応枠を正しく組み合わせると、機構負荷のムラを減らせます。
5.4 ニードルロッドのスプリング注油
- サイドカバーを開け、ニードルロッドの各スプリングにオイルを差します。

効果:上下動のギクシャクが解消し、糸引きのリズムが整います。
5.5 ギアのグリスアップ(色替えの要)
- ギアカバーを固定する2本のビスを外し、カバーを持ち上げてギアを露出します。
- 溝全体にグリスを行き渡らせます。

- コントロールパネルで“針色変更”を実行し、ギアを回転させながら全面に塗布を完了させます。

注意:再組み立ての際、ニードルセンサーを損傷しないように細心の注意を払います。

5.6 ギアカバーの再装着
- カバーを戻し、センサー類が干渉していないか確認。
- 2本のビスを確実に締めて完了です。
5.7 メンテのチェックリスト
- シャトル周り:清掃→注油の順で完了している
- 針先センタリング:カバー開口の中央に正対
- X/Yガイド:オイルが均一に行き渡る
- ニードルロッド各スプリング:注油済み
- ギア:溝までグリスが行き渡り、回転はスムーズ
- センサー:損傷・干渉なし
6 仕上がりチェックと基準
- 視覚:上糸・下糸のバランスが均一。目飛び・鳥の巣なし。
- 触感:縫い目はフラットで引っかかりなし。フレーム移動は滑らか。
- 作動音:異音がなく、色替え時のギアの切り替わりが円滑。
クイックチェック:糸を軽く手で引いたときに、センサー輪がスムーズに回転するか確認。もし渋ければ糸のかけ直しや清掃ポイントの再点検を行います。運用規模が大きいほど、汎用性のある マグネット刺繍枠 11x13 のような枠サイズを使い分けることで、再現性の高い検査が可能になります。
7 完成後の扱いと次回への引き継ぎ
- 糸道マップを短冊カード化し、ミシン脇に常備すると再現性が上がります。
- 週次のメンテ記録(清掃箇所・注油ポイント・実施日)を残し、次回の基準にします。
- 仕掛かりの糸色やテンション設定は、次回の始業で再現できるようメモを添えます。
フレームと固定治具の運用履歴も残すと改善が進みます。例えば大型ロゴ案件では janome mc400e 刺繍枠 のような別系統の枠運用経験も参考になり、段取りの引き継ぎがスムーズになります。
8 トラブルシューティング
症状→原因→対処の順に、動画の要点を再編しました。
- 糸が頻繁に切れる
- 原因:テンションプレートの“2枚の間”を通っていない/ガイドやセンサーのスキップ
- 対処:4.3〜4.7をやり直し。各ガイドの通過とセンサー回転を確認
- 目飛び・縫いが固い/緩い
- 原因:テンションの偏り、センサー未介在、テイクアップレバー未通過
- 対処:一次・二次テンションの間通過を再チェックし、テイクアップレバーを通す
- フレーム移動がギクシャクする
- 原因:X/Yガイドの油切れ
- 対処:5.3の要領で所定の穴・溝に注油。余分は拭き取り
- 針が折れる/カバーに当たる
- 原因:シャトルカバー再装着時の針先センタリング不良
- 対処:5.2の工程で中央に正対するまで再調整
- 色替えで引っかかる・異音
- 原因:ギアのグリス不足、カバー再装着時のセンサー干渉
- 対処:5.5〜5.6を再実施。全面にグリスを回し、センサーに触れていないか確認
プロのコツ:ルーチンの最後に必ず“軽い手回し”と“センサーの手引き回転”を入れて、干渉や渋さを事前に見つけます。フレームの固定を省力化したいときは マグネット刺繍枠 bai 用 のような選択肢で、治具段取りの時間を圧縮できます。
9 コメントから
動画コメントにはシンプルな称賛と、それに対する丁寧な返答が寄せられていました。内容面での追加の質問は見られませんでしたが、運用の現場では「週次メンテの徹底」と「再組み立て時のセンタリング確認」を毎回の合言葉にすることが、長期安定稼働の近道です。
参考タイムスタンプの要点まとめ(復習用)
- コーン設置:00:19
- 上部ガイド:00:26
- 一次テンション・プレート:00:48/00:57
- チューブ通し(ワイヤー):01:28
- 二次テンション:02:18
- センサー:02:44
- テイクアップレバー:03:22
- 針通し:03:51
- シャトル清掃:04:44 → 注油:05:04
- センタリング:06:04
- ロッドスプリング注油:07:18
- ギアグリス:08:24 → 回転塗り:08:53
- 針センサー配慮:09:07
最後に、広い機種ラインでも原理は共通です。固定具や枠の選択は現場次第ですが、例えば マグネット刺繍枠 brother se1900 用 のような対応製品の運用経験も、安定化の着想源になります。
