Table of Contents
1 プロジェクトの概要(何を・いつやるか)
Gildanクルーネック(サンド)には黒糸で「Home Means Nevada」を刺繍し、背ネックにコーヒーブランドの小さなビニールロゴを熱圧着。Burnsideのカモ柄フーディは、前左胸と背中全面に機械ロゴをスクリーンプリント転写で配置します。白インク版とセーフティオレンジ版があり、白は黒/シルバー×ネイビーのカモ、オレンジはグリーンのカモに使用しました。
今回の生産は、刺繍と熱圧着を同時に走らせず、電源ブレーカーを落とさないよう工程を時間差で組みます。刺繍を先に一気に仕上げ、続いて熱圧着工程に切り替える設計です。
- 対象ガーメント:Gildanクルーネック(サンド)、Burnsideカモ柄フーディ(グリーン/ブラック/シルバー×ネイビー)、教会Tシャツ(ネイビー)
- 技法:多針刺繍(前面刺繍)、熱圧着(背ネックのビニールラベル/スクリーンプリント転写)
- 同時運用の考え方:刺繍と熱圧着は電力負荷の都合で時間差運用
プロのコツ:ガーメントはラックにすべて出し、サイズ順や工程順に並べ替えて“残タスクの見える化”をします。これで取り違えや抜け漏れが減り、移動ロスも最小化できます。

2 準備するものと前提条件
刺繍ではカットアウェイスタビライザーとフーピングの再現性が品質の要。熱圧着では表面の清掃(リントローラー)と位置決めの一貫性が成果を左右します。
- 機材:刺繍機(Ricoma EM-1010、Ricoma TC)、熱圧着機、はさみ、リントローラー、定規、スプレー糊
- 材料:カットアウェイスタビライザー、刺繍糸、スクリーンプリント転写(白/セーフティオレンジ)、紺ビニール(背ネック用)
- データ:Home Means Nevada(黒糸)、DT COFFEEロゴ(ビニール)、Northern Nevada NNM Mechanical(スクリーンプリント転写)
- 前提スキル:多針刺繍の基本操作、フーピング、熱圧着の基本、ポリエステル生地の挙動(昇華)
本プロジェクトでは、刺繍用 枠固定台 とマグネット式のフープを併用し、サイズ違いのガーメントを連続で同位置に配置します。これにより、1枚ごとの微調整を大幅に減らせます。
クイックチェック:
- ガーメントの色・サイズ・ロゴ色の組み合わせは注文書と一致しているか
- 転写の種類(白/オレンジ)と枚数が揃っているか
- スタビライザーは十分な長さでロール残量も確保できているか
3 セットアップ:作業環境と配置の最適化
3.1 機材と電源の基本設計
刺繍機(EM-1010、TC)と熱圧着機は同時に使わず、工程を切り替えます。動画では「同時稼働でブレーカーが落ちる」可能性が指摘されているため、同一回路に高負荷機器を集中させないのが安全です。
3.2 フーピングの再現性をつくる
定規で中心線と下端位置を決め、マグネット式フープで固定。スプレー糊をスタビライザーに軽く使い、布の波打ち・滑りを抑えます。

なお、mighty hoop 8x13 マグネット刺繍枠 はクルーネックの前面に十分なワークエリアを確保でき、繰り返しの位置決めにも適しています。
3.3 サイズ別の機械アサイン
EM-1010には8x13、TCには11x13のフープを割り当て、小・中サイズは前者、大きいサイズは後者で処理します。これにより同時並行で刺繍を進められ、合計のスループットが倍増します。サイズ別の割り当ては動画で言及されていますが、詳しい刺繍面積の設定値までは示されていません。
プロのコツ:hoopmaster 枠固定台 のように基準治具を併用し、左胸や前面中央の基準からズレないように“機械的に”合わせる癖をつけましょう。人手の勘に頼る部分を削れるほど、バッチ生産が安定します。

チェックリスト(セットアップ)
- フープのサイズ割り当て(EM-1010=8x13/TC=11x13)
- 定規での基準線マーキングと糊の軽度使用
- 電源負荷の管理(刺繍⇄熱圧着の切り替え運用)
4 手順:刺繍と熱圧着のワークフロー
4.1 クルーネックのフーピング(Gildan/スタビライザー)
1) クルーネックをmighty hoop マグネット刺繍枠 のスタンド上に置き、シワを丁寧に伸ばします。 2) カットアウェイスタビライザーを所定位置に置き、スプレー糊で軽く固定。 3) 定規で中心線を合わせ、適切なテンションでフープイン。
注意:布が引っ張られ過ぎると刺繍後に戻りジワや歪みが出ます。違和感があったら躊躇なくリフープしましょう。
4.2 刺繍の実行と仕上げ
1) Ricoma EM-1010で刺繍をスタート。縫製中は糸切れやテンションの乱れに注意し、異常があれば停止して調整します。

2) 刺繍完了後、フープから外し、裏面の余分なスタビライザーをはさみで丁寧にトリム。

3) 仕上がりを確認し、フチの乱れ・汚れがないかを検品。

中間結果の目安:黒糸の文字とフローラル要素がクッキリ出ており、布目の歪みが最小であること。余分なスタビライザーはギリギリまで整えても、デザインの境界を欠かないよう注意します。
ここで、ricoma mighty hoops マグネット刺繍枠 を使った連続生産では、同じ基準での繰り返しが品質の揺れを抑えます。特に左胸や前面センターのような“見た瞬間ズレがわかる”場所では効果が大きいです。
4.3 背ネックのビニールラベル(DT COFFEE)
1) 熱圧着機を起動し、クルーネックの背ネック位置にロゴを定規で合わせます。 2) 指示に従って圧着し、指示どおりのタイミング(ホット/コールド)で剥離します。

注意:圧力・温度が不適切だとツヤムラや熱痕が出ます。動画では具体温度・圧力は明記されていないため、材料指示に従いましょう。
プロのコツ:背ネックは肌当たりに敏感な部位。刺繍ではなくビニールを選ぶと刺激が少なく、着用感が向上します。
4.4 カモ柄フーディへのスクリーンプリント転写(前左胸/背中全面)
1) 服全体をリントローラーで清掃(糸くずや毛埃を除去)。 2) 転写シート(白/オレンジ)を必要サイズにトリムし、背中全面→前左胸の順で配置・圧着。



3) 圧着直後の浮き・気泡はないか、エッジがしっかり定着しているか確認。

ここで、マグネット刺繍枠 11x13 のような大きめフープを使っていた刺繍工程と比べ、熱圧着ではプラテン上の平滑さ・水平の取り方が仕上がりを左右します。定規と目印テープで一貫性を確保しましょう。
4.5 教会Tシャツ(ネイビー)への白転写
1) リントローラーで表面を清掃。 2) 白い波形クロスの転写を正面に位置決めして圧着。 3) 仕上がりを確認し、すぐに折り畳んでスタック。



クイックチェック:
- 前左胸は胸骨の左・一定距離に収まっているか(水平・垂直)
- 背中全面は中心線と肩幅基準に対して左右対称か
- 圧着直後に端の浮きが出ていないか
5 仕上がりチェックと中間検品
- 刺繍:糸切れ跡や段差はないか、文字エッジが滑らかか(黒糸のにじみやループ発生がないか)。
- スタビライザー:裏から透けて見える不要分が残っていないか、肌当たりの角が出ていないか。
- 熱圧着(背ネック):ラベルの角が浮いていないか、熱痕が出ていないか。
- 熱圧着(フーディ):カモ柄の透け(ポリエステルの昇華)有無を確認し、想定外なら顧客に共有。
コメントからの学び:サイズごとに転写サイズを変えるかという質問には、「同一サイズの転写で統一(Transfer Expressの価格体系上その方が合理的)」という回答がありました。バッチの整合性とコストの両面で、同一版で揃えるのが今回は正解でした。
なお、マグネット刺繍枠 brother 用 のような対応機種別アクセサリーを使う場合、枠の外周クリアランスと押さえの干渉に注意し、縫製範囲を事前に走査して衝突を防ぐと安心です。
6 完成後の扱いと引き渡し
完成品は糸くずやホコリを再度リントローラーで除去し、サイズ順に畳んでスタックします。ネイビーの教会シャツは箱詰め完了、カモ柄フーディはハンギングで仕上がり確認のうえ梱包へ。

在庫運用についての示唆:コメントでは、保管スペースが限られる場合は「各サイズ最低1枚、MとLは2枚」を目安にしていたが、現在は都度発注に切り替えたという回答がありました。省スペースとキャッシュフローの観点で有効な選択肢です。
7 トラブルシューティングと回復手順
症状:カモ柄が白インク転写に透ける(うっすら柄が見える)
- 可能原因:ポリエステルの昇華による染料の移行
- 対処:顧客に効果を写真で共有し承認を得る(実際、顧客は“文字がカモ柄に見える”意匠を好み承認)。色の乗りが良い地色(シルバー×ネイビー)では透けが目立たず、白がしっかり出た事例も確認済み。
症状:転写位置のズレ(左右非対称、傾き)
- 可能原因:基準線不徹底、プラテンへの置き方の再現性不足
- 対処:定規とテープで基準を作り、毎回同じ手順で位置決め。前左胸は首リブ端・肩線からの距離を一定に。
症状:刺繍の歪み・波打ち
- 可能原因:フーピング時の引っ張り過ぎ、スタビライザーの固定不足
- 対処:スプレー糊で軽固定→しわ伸ばし→適正テンションで再フープ。刺繍前に軽くテンションチェック。
症状:背ネックの熱痕・ツヤムラ
- 可能原因:温度・圧力・時間の不適合
- 対処:材料指示に合わせて再設定。あて布や圧力微調整で改善余地あり(動画では具体値未記載)。
症状:EM-1010の押さえ足・針位置ずれ(再組立後に針先が穴の内側を擦る)
- 可能原因:再組立時の位置ズレ
- 対処:動画やコメント内で具体手順の提示はありません。メーカー手順に従って再調整するか、サポート窓口での確認を推奨(本動画では解答未掲載)。
プロのコツ:mighty hoops マグネット刺繍枠 と基準治具の組み合わせは、工程の“標準化”に直結します。左胸ロゴのような繰り返し精度が問われる箇所ほど、ルール化の価値が高まります。
8 コメントから:現場でよくある質問
- 教会の緊急オーダーは何を使った?→白HTV(トナー機は不使用)。カット→ウィード→プレスを数日に分散して処理。
- 各サイズでデザインサイズは変えた?→同一サイズの転写で統一(Transfer Expressの価格体系・工数の観点)。
- 在庫枚数の目安は?→各サイズ1枚、M/Lは2枚を過去に維持。現在はスペース節約のため都度発注。
なお、マグネット刺繍枠 は布ずれ防止と時短に有効ですが、強磁力による布地の食い込みを避けるため、置く前にしわを伸ばし、スタビライザーで面圧を分散させるのが安全です。
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最後に、刺繍と熱圧着の切り替え運用は、電力負荷の制約を逆手に取り、工程の集中と品質検品のリズムを整える好機になります。刺繍のバッチが終わったら仕上げ・検品・背ネック圧着まで一気に流し、続いて熱圧着の大物(フーディ)に移行—という大きな“山”を刻むことで、全体の見通しと達成感が格段に上がります。hoopmaster 枠固定台 とマグネット刺繍枠の組み合わせで、次のバッチも同じ品質で反復しましょう。
補足:本稿で扱っていない具体的な熱圧着の温度・圧力・時間、刺繍のステッチ数や1枚あたり時間は、元の動画では明記されていません。使用する材料の指示に従い、端材で小テストを実施して設定を確定してください。
