目次
(冒頭の埋め込み案内:この記事は、Sewing Parts Online チャンネルの動画「Embroidery for Beginners: Project 1 - Drawstring Bag」をもとに構成しています。動画なしでも進められますが、流れは画面デモに合わせています。)
マシン刺繍は道具解説だけでも学べますが、実際に「1つ完成させる」と一気に自信がつきます。この裏地付き巾着ギフトバッグは、まさに最初の成功体験に向いた題材です。小さめ枠、シンプルな文字、そして“縫って使える”仕上げまで一通り入っています。
この記事のゴールは、織物コットンを安定させる枠張り、2色デザインをきれいに刺す段取り、そして刺繍パネルをきちんとした巾着に仕立てる流れを、作業手順として再現できるようにすることです。

この記事で身につくこと
- 動画で紹介されている、しっかりした綿の織物に対するスタビライザー/針/糸の選び方
- 位置ズレを抑えつつ「太鼓張り」を作る枠張り手順(布を噛ませない)
- ミシン内蔵の文字を選び、枠サイズ適合を確認し、編集画面で配置を調整する流れ
- 低ストレスで進める刺繍実行ルーティン(開始→監視→色替え→取り外し)
- 刺繍済み布を、裏地付き巾着に仕立てる(通し口の罫線・縫製・リボン通し)
はじめての刺繍に必要な材料と道具
このプロジェクトは「初心者が迷いやすい変数」を減らす設計です。伸びにくい織物コットン、小さめ枠、単純な文字デザイン。まずは枠張りと縫い品質に集中できます。

動画で使っている基本アイテム(理由つき)
- 生地: デモは、しっかりした綿の織物生地。伸びが少ないので、刺繍中にデザインが歪みにくく、最初の練習に向きます。
- スタビライザー: 織物コットンには ティアアウェイ(tear-away) を推奨。縫っている間は支えが必要ですが、完成後に必ずしも裏当てを残す必要がない、という考え方です。
- 針: 刺繍針を使用。動画では Schmetz の刺繍針(サイズ 11、クローム)を選んでいます。
- 糸: 上糸はポリエステル糸/レーヨン糸どちらも適性あり。下糸(ボビン糸)は軽めの太さでテンション確認をする流れで、レッスン内では 60wt に言及があります。
よくある質問(コメントより要約): 「下糸はいつも白(または無難な色)なの?」という質問に対し、チャンネル側は刺繍用ボビン糸は黒か白が一般的で、ほとんどの場合は白を使うと回答しています。白は多くのデザインで裏側の透けリスクを下げやすい、という意味で現場でも扱いやすい選択です。
よくある質問(コメントより要約): 「動画では 60wt と言っていたけれど、90wt の巻き済みボビンを買ってしまった」という不安に対し、チャンネル側は 60wt も 90wt も刺繍ボビンでは一般的で、60wt に触れたのはその機種の取扱説明書推奨に合わせたため、と補足しています。実務的には まず取扱説明書の推奨を優先し、迷う場合は同条件(同じ生地+同じスタビライザー)で試し縫い が最短です。
見落としがちな消耗品・事前チェック
動画の主題ではないものの、初回の成功率を上げる「地味に効く」ポイントです。
- 上糸と下糸の組み合わせ(テンションの考え方): 刺繍は上糸が見せ糸、下糸は細めでボリュームを抑えるのが基本です。想定より太い下糸でも縫える場合はありますが、まずは端切れで裏面の糸引き量(バランス)を確認してください。
- 針の選定ロジック: 動画は織物コットンに刺繍針。基本は「素材構造(織物/ニット)」と「走らせる糸」に合わせ、摩擦を減らして糸切れ・糸ヨレ・目飛びを避けること。取扱説明書に刺繍時の推奨針があるなら、それを最優先にします。
- スタビライザーとトッピング: 動画は織物にティアアウェイ。一般論として、タオルなど毛足がある素材や、輪郭をシャープに出したい場合は水溶性フィルム等のトッピングが効きます。今回のような平織りコットンでは必須ではありませんが、今後の素材展開で役立つ選択肢です。
- 小物とリカバリー: 糸切りバサミ(スニップ)、ピンセット(スタビライザーの細片除去)、リッパー(縫い閉じの復旧)、ボビン周りの簡単な清掃。これらは“おまけ”ではなく、刺繍品質を安定させるための基本装備です。
うまくいかない時だけ検討したいアップグレード
枠張りが一番の壁になりやすい(これは普通です)。その場合、デザイン追加よりも「毎回同じ条件で枠張りできる仕組み」の方が効くことがあります。
その文脈で、刺繍ミシン 用 枠入れ は“力技”ではなく 再現性 の話です。中心合わせが毎回揃う、テンションが揃う、やり直し(再枠張り)が減る。
目的別に選ぶ補助ツール(必要な場合のみ):
- 枠張り回数が多い/同じ位置に量産したい → 枠固定台(フーピングステーション)で位置合わせを標準化
- 布ズレが繰り返し起きる → まず印付けとならしを改善し、それでも改善しないならマグネット枠なども検討
枠張り前チェックリスト
- 生地を必要サイズに裁断し、位置合わせ用の中心印を付ける
- 生地に合うスタビライザーを用意(動画の織物コットンはティアアウェイ)
- 刺繍針を装着(動画は刺繍針・サイズ 11)
- ボビンは満量にしておく(途中で下糸切れを起こさない)
- ピンセットと糸切りを手元に置き、糸端とスタビライザー処理をすぐできるようにする
枠張り基礎 101
枠張りは初心者の成否を分けます。動画でも「練習が必要な技術」と言っていますが、その通りで、狙うのは“力”ではなく 適正テンションと位置合わせ です。
生地とスタビライザーの合わせ方
動画の手順は意図的に組まれています。 1) 内枠を外す 2) 生地の中心を印付けする 3) 外枠の上に先にスタビライザーを置く 4) その上に生地を置き、印と枠ガイドを合わせる 5) ロック前に生地をならしてシワを取る

現場のコツ(コメントより要約): スタビライザーにガイド線を引いてセンター合わせをしやすくする、という声がありました。動画のようにデザインを下寄せ配置する場合ほど、基準線があると迷いが減ります。
「太鼓張り」を作る(張りすぎない)
動画の合言葉は「太鼓張り」と「布を噛ませない」です。

チェックポイント: 枠に張った生地を指で軽く叩き、波打ちがなく、たわみが少ない状態を確認します。指で押してシワが中心へ寄っていくなら、テンション不足のサインです。
注意: 引っ張りすぎると枠跡(枠焼け)や歪みの原因になります。逆に緩いと、ズレ・シワ・縫い縮み(パッカリング)につながります。
注意: 内枠を押し込むとき/ネジ付近へ向かってはめ込むときは、指を挟みやすいので手元に集中してください。無理に押し込むと生地を噛んだり、枠側を傷める原因にもなります。
判断の目安:スタビライザーと枠張り、どちらを変える?
迷ったときの実務用の切り分けです。
- 生地が しっかりした織物コットン(動画と同条件)→ ティアアウェイでOK。まずは太鼓張りと位置合わせ精度を上げる
- 生地が ニット/伸びる素材(動画でも言及)→ カットアウェイへ切替。枠張り時に伸ばさないことを最優先
- 再枠張りしても 枠の中で滑る → 印付け・ならし・噛み込みの有無を見直す。それでも改善しないならマグネット枠などを検討
- 同じ配置を繰り返す(複数枚・量産)→ 枠固定台のワークフローでセンター出しを標準化
「最初から 刺繍 枠固定台 が必要?」という疑問はよくあります。単発のギフトなら手作業でも十分成功できますが、繰り返し作業が増えるほど、再枠張りと位置ズレの削減に効いてきます。
ミシン側の設定
動画は Baby Lock Verve と 4x4 枠ですが、流れ自体は多くの家庭用刺繍ミシンで共通です。デザイン選択→枠適合確認→編集(位置)→確定。
デザインの選択と編集
デモでは文字「K」を選び、4x4 枠で確定します。ミシンが対応枠を表示し、「Set」で確定する流れです。

期待する状態: 画面上で、デザインが枠の境界内に収まっていること。境界外なら「いけるはず」と進めず、デザインを小さくする/別デザインにする/配置を見直すのが安全です。
編集画面では、移動・拡大縮小・回転・ミラーが紹介されています。
糸色(カラー)の管理
動画では画面上で糸色を割り当て(文字は白、葉は緑)しています。

よくある質問(コメントより要約): 「カラーボタンは何のため?」という質問がありました。このプロジェクトでは、完成イメージの可視化 と 色替え手順の段取り に直結します。どの色を先に掛けるか、次に何色が来るかを事前に把握できます。
よくある質問(コメントより要約): 「どの色が最初に縫われるの?」という疑問に対し、チャンネル側は 刺繍順はデザイン(データ)側で決まる と説明しています。多くの場合、背景→前景の順になりやすいですが、最終的にはミシンの色順表示とデザインの指示(凡例)を確認するのが確実です。
USBへの保存と呼び出し
動画では、USBメモリを挿して保存(ポケット形の保存アイコン→USB選択)、呼び出し(USBアイコン→フォルダとデザイン選択→Set)を行っています。

よくある質問(コメントより要約): 「保存したデザインが見つからない」という“焦りポイント”があり、実際にはUSB内の特定フォルダ(コメントでは「bPocket」フォルダ)に保存されていた、という例が出ています。データが消えたと決めつける前に、ミシンが自動生成するフォルダ構成 を確認してください。
初心者がやりがちなのは、brother se600 刺繍枠 のように「枠名」で探しているつもりが、実際は「自分の機種でも同じ流れで操作できるか」を知りたいケースです。ファイル形式やUSBの挙動は機種差があるので、最終的には取扱説明書の記載に合わせて、この記事の手順を当てはめるのが安全です。
刺繍開始前チェックリスト
- 画面の枠サイズが、実際に付けた枠と一致(動画は 4x4)
- デザインが枠境界内に収まっている
- スタビライザーが枠範囲を全面カバーしている
- 生地に合う針(このプロジェクトは刺繍針)
- USB使用時、保存先フォルダ(ミシン作成フォルダ)でデザインを確認できる
刺繍を実行する
ここで緊張しがちですが、動画の刺繍は意図的にシンプルです。枠を装着→1色目を糸掛け→縫う→糸端処理→色替え→完了。
枠の装着
動画では、タブを刺繍ユニット側のスロットに差し込み、カチッとロックされるまでスライドして装着しています。

チェックポイント: スタート前に、枠が干渉なく動けること(周囲に物がない/布端や糸が引っかからない)を確認します。
糸掛けと、きれいなスタート
動画では糸掛け後、最近の機種では下糸を引き上げなくてもよい場合があると触れ、数針縫ってから糸端をカットしています。
注意: 針周り・枠の可動域に手や袖を入れないでください。糸端を切る/ズレを直すときは、必ず一時停止または停止してから行います。
よくある質問(コメントより要約): 「多くのミシンは下糸を自動で切ってくれないので、外すと下糸がズルズル出ることがある」という指摘がありました。実務的には、縫い始め数針で糸端を切る、そして 枠を外す前後に“引きずり糸”が出ていないか確認する のが事故防止になります。
縫い進みの監視
動画では、画面に進捗・色ごとの時間・針数が表示されると説明しています。

期待する状態: 表面の縫い目が滑らかで、ループが出ないこと。枠内で生地が波打たず、トンネル状の引きつれや寄りが強く出ないこと。
色替えと完了
デモでは緑に色替えし、糸掛けして再開、葉の部分を縫います。完了後は押えを上げ、刺繍ユニットから枠を外します。

スタビライザーをきれいに外す
枠から外した後、動画ではティアアウェイを破り取り、細かい部分はピンセットで除去しています。

チェックポイント: ティアアウェイはデザイン周囲でスムーズに切り離せるのが理想です。縫い目を引っ張りそうなら、無理に一気に破らず、少しずつ破り、指で刺繍を支えながら進めます。
追加検討:マグネット刺繍枠(枠張りがボトルネックなら)
丁寧に位置合わせしても再枠張りが頻発する/太鼓張りが安定しない/縫っている途中でズレる、という場合は、マグネット刺繍枠 が次の選択肢になります。枠張り時間の短縮や、保持圧のムラを減らす方向で効くことがあります。
注意: マグネットは強力で、指を挟むと危険です。外すときは引き剥がすのではなく“スライドしてずらす”動きで分離し、電子機器や磁気媒体から離して管理してください。
作業チェックリスト(刺繍完了まで)
- 枠が確実に装着・ロックされている
- 数針縫ってから糸端をカットした
- 可動域を監視し、引っかかりがあれば停止した
- デザイン指定の順で色替えした
- 完了後、押えを上げてから枠を外した
- 枠を外してからティアアウェイを除去し、細片はピンセットで取った
巾着バッグに仕立てる
動画は刺繍モードから通常縫製へ切り替え、裏地付き巾着を組み立てます。
表布と裏布を縫う
動画では、表布と裏布を 1/4インチの縫い代で縫い、指定の開き口と上部を残す流れです。

期待する状態: 縫い代 1/4インチが安定し、返し口や組み立てに必要な開きが残っていること。もし開き口を縫い閉じてしまった場合、動画でもリッパーで開け直すのが対処として示されています。
通し口(ドローストリング・チャンネル)を作る
動画では上端から 1.5インチと 2.5インチの位置に線を引き、その線に沿って縫って通し口を作ります。

チェックポイント: 通し口を縫う前に、リボンが通るべき箇所(脇の通過部分)を“縫い潰していないか”を確認します。
リボンを通す
動画では、ボドキン(ひも通し)または安全ピンでリボンを通し、両側から絞れる巾着にしています。

期待する状態: リボンがスムーズに通り、左右均等に絞れること。引っかかる場合は、通し口の縫い目がねじれていないか/どこかを縫い閉じていないかを点検します。

仕上がりと次の一手
これで、中心が揃ったイニシャル刺繍入りの裏地付き巾着が完成です。このワークフローは、文字を変えるだけで他のイニシャルや小さなモチーフにも横展開できます。
ギフトや販売用途なら、最後に「引き渡しチェック」をしておくと安心です。巾着を数回開閉して通りを確認し、表の糸端の残りがないか、裏のスタビライザー片が残っていないかを見ます。
作る数が増えてくると、作業の標準化を考えるのは自然な流れです。枠固定台は位置合わせの再現性を上げ、色替えの手間が気になり始めたら多針刺繍機という方向性も出てきます。アクセサリー選定では、brother ミシン 用 刺繍枠 のようなキーワードだけで推測せず、必ず取扱説明書で「対応枠サイズ」と「枠の取り付け方式」を確認してから合わせるのが確実です。
