Table of Contents
1 プロジェクトの概要
刺繍ビジネスの実務は、機材選定や縫製技術だけでは完結しません。客層の見極め、集客手段、請求と支払い、作業の時間配分など、経営レイヤーの意思決定が品質と利益を左右します。本ガイドは、以下の目的で構成されています。
- 迷いがちな分岐(Etsyなどのマーケットプレイス運用か、B2Bに集中するか)を、判断軸とともに提示する。
- 受注から納品までの具体フローを、支払いと納期の設計と合わせて示す。
- コメントで寄せられた実務上の課題(受け渡し、請求・発送、糸番手、ボビンなど)に、現場目線で回答を埋め込む。
なお、本記事は動画およびコメントに基づく情報のみを用い、機種やパラメータの推測は行いません。固有名詞は出典にある範囲に限定し、未言及の数値は「動画で未具体化」と明記します。

1.1 どんな人に向くか
- 刺繍の副業・独立を現実的に設計したい人。
- Etsy依存から脱却し、地域のB2B顧客(業務用ユニフォーム、ロゴ刺繍など)で継続受注を目指す人。
- 家庭や他の責務との両立を前提に、納期・工程・現金回収を安定化したい人。
1.2 実現できること
- 仕入れと価格設計の見直しによる資金繰りの改善。
- 受注・校了・請求・製造・納品の一本化で、無駄なやり取りと滞留を削減。
- 量産の方法論(HTV/DTF/スクリーンプリント)をケースで使い分け、時間単価を向上。
2 準備:道具・材料・情報源
2.1 初めての刺繍機のリアル
初号機として単針機のBrother PE800を使い始め、のちに手放す検討をしているという経験が紹介されています。モデルチェンジ(PE900)もあり、中古市場での流通・売れ行きには波があることが分かります。

2.2 どこで何を買うか(消耗品・備品)
- 刺繍用消耗品(安定紙・オイル・針など):Allstitch.com を主要な調達先とし、Amazonも併用。
- 収納・オフィス用品:Amazon中心。
- コメント情報:Ricoma TC1501向けボビンはAllstitchの「Coats V15 Trusew(サイズL)」が実例として共有されています(リンク由来)。

プロのコツ
- 仕入れ先は2系統(専門EC+汎用EC)を確保すると欠品リスクを下げられます。
注意
- 商品リンクはプラットフォームの更新で無効化されることがあります。購入前に「機種適合」「サイズ」「数量」を必ず再確認してください。
クイックチェック
- いま必要な消耗品(針・ボビン・安定紙・オイル)は最低2ロット確保できていますか?
準備チェックリスト
- 調達先リスト(専門EC/汎用EC)
- 最低在庫の基準(針・ボビン・安定紙)
- 支払い手段の統一(後述のQuickBooks等)
- 顧客対応テンプレ(見積、校了、請求、受け渡し)
3 セットアップ:運営設計と環境づくり
3.1 トレーニング提供の考え方
現時点では1対1のトレーニングは提供しない方針。理由は、家庭のスケジュールと、すべての質問に即答できないリスクへの配慮です。将来的に見直す可能性はあるが、現段階ではコメントやメールでの質疑対応をベースとしています。

3.2 ネットワーキング:DecoSummitへの参加
8月開催のDecoSummitに参加予定。現地での撮影やミート&グリートに積極的で、早割情報にも触れています。業界イベントは、最新動向の把握や同業との接続に有効です。

3.3 地域広告の費用対効果
地域の広告誌数社へ打診した結果、2社は未返信、1社は詳細な説明を受けるも月額500ドル超(6〜12ヶ月継続)と高額で見送り。現状は口コミ(B2B)を主軸にしています。

プロのコツ
- 有料広告は「原価+時間+回収見込み」の3軸で投資判断。まずは紹介ループの設計(既存顧客の友人・同業紹介)を強化し、無償チャネルで反応を確認してから拡張すると損失が限定されます。
3.4 ワークライフ設計:非交渉事項の先置き
在宅運営では、家庭・教育・住まいを非交渉事項として優先。熱処理が必要な作業は朝の涼しい時間帯に回し、午後はホームスクールなど柔軟に配置。顧客には10〜14日のターンアラウンドを提示し、家庭優先の運営方針を守ります。

クイックチェック
- 本日の「高温」工程(熱圧着/プレス)は、家の温度計画に合わせて朝に寄せましたか?
4 手順:受注から納品までのワークフロー
4.1 受注と要件確定
- 受注窓口:現状はメール経由が中心。デザイン(ロゴ)を受け取り、デジタイジング後にサンプルを確認。
- 校了:図案・位置・数量・単価・納期を確定。
- コメント活用:カスタム受注は「メール→QuickBooksで請求」運用。ウェブサイト整備を進行中との情報あり。
参考として、読者が検討する用語例を挙げると、左胸位置決めに使われることの多い冶具としてhoopmaster 枠固定台が知られています(本記事内では特定の採用可否は述べません)。
4.2 見積と請求(前金100%)
- ポリシー:支払いは100%前金。分割やツケは扱わない。
- 請求書の最初の一行に「前金必須」「支払により規約に同意」の趣旨を明記。金額が想定より高い場合は、数量調整で対応。
- ツール:QuickBooksで一元管理(コメントに基づく実例)。Squareを使う人もいる模様。
注意
- 前金なしの着手は、在庫の滞留・未回収の最大要因です。値引きではなく数量調整で予算に合わせるのが安全です。
4.3 製造方式の選択(時間単価の設計)
- HTVは除草(ウィーディング)工程が時間を奪いがちで、好みではないという見解。
- DTFは多少割高でもプレスで高速処理でき、時間当たりの出力が向上しやすい。

- スクリーンプリントは版の用意など初期工数がかかるが、手動プレスでも一度に多枚数を流せ、総生産性が高い。導入候補としてRiley Hopkins 360に関心があるとのコメント返信がありました(導入済みとは言っていません)。
プロのコツ
- 小ロット・多品種はDTF、同柄・中〜大ロットはスクリーン(内製/外注/転写)で時間単価を最適化。
4.4 受け渡し・発送
- 同一地域の顧客:知らない人は自宅ではなく町の集合場所(大型店の駐車場など)で受け渡し。知人・知人の紹介なら自宅受け取りもケースバイケース。
- 発送:必要時はPirateShip.comで発送ラベルを作成(郵便局より安い場合あり)。
- 送料設定:箱サイズ・重量が見込みにくいときは、近隣顧客ほど「直接受け取り」志向が強くなることも。(コメント情報)
4.5 仕入と在庫
- 主な仕入れはAllstitchとAmazon。地域広告は投資対効果が合うまで見送り、口コミ経由のB2Bを強化。
- ボビン:Ricoma TC1501向けに「Coats V15 Trusew(Size L)」の実例が共有されています。購入前に互換性を確認してください。
操作チェックリスト
- 受注情報(ロゴ・数量・納期・単価)
- 請求書(前金100%・支払い完了確認)
- 加工方式(HTV/DTF/スクリーン)と段取り表
- 受け渡し方法(直接/発送)と費用見積
5 仕上がりチェックと中間検証
5.1 帽子刺繍の針選択
- 多くの案件で65/9を使用、帽子(RichardsonやFlexfit)も同様という実例が示されています。6〜7個ごとに針交換。極厚生地(Carhartt等)では75/11に切替え。
クイックチェック
- 帽子の浮きを抑え、表面の糸張りが均一か。
- 角の密度が過剰で貫通抵抗が増していないか。
5.2 糸の番手と細部表現
コメントでは、通常は40番、微小文字や繊細なディテールには60番を使用するという運用が共有されました。これにより文字の可読性を確保しながら、総ステッチ量と時間のバランスが取りやすくなります。
5.3 糸切り(上糸の尾の残り)
Ricoma機で上糸の尾が残る症状について、作者も経験があり、設定で改善できる可能性が示唆されています。いずれにせよメーカーサポートへの問い合わせが推奨されています(コメント)。
注意
- 糸切りの遅延・不完全切断は、タイミングや刃の摩耗、設定値の影響が考えられます。無闇に分解せずサポートに相談し、指定手順で確認してください。
5.4 B2B品質の要点
- ロゴの再現性(線幅・カーブ・埋まり)。
- 左胸などの位置精度と量産時の再現性。
- 納期内納品と梱包(シワ・埃・糸屑の除去)。
なお、位置合わせ用の固定具や磁力枠には多様な選択肢があります。たとえば市場にはmighty hoop マグネット刺繍枠やマグネット刺繍枠 brother 用のようなキーワードで検索される製品群が存在しますが、本記事では特定製品の採用可否や効果を断定しません。
6 結果とハンドオフ
6.1 B2Bへの転換効果
Etsyの手数料高騰・市場飽和・プラットフォームの不確実性を回避し、ロゴ刺繍などのB2B受注へ軸足を移すことで、トレンド追随の競争から離脱。品質と顧客対応で差別化し、紹介経路で受注が増加する流れをつくります。

6.2 生産性と方式選択の最終整理
- HTV:小ロット・簡易だが、ウィーディングがボトルネックになりやすい。
- DTF:単価は上がるが、時短で収益性を保ちやすい。
- スクリーン:初期段取りは重いが、同柄大量で最強の時間単価。キレのある仕上がりも魅力。
6.3 受け渡しの型
- 地元:顔が見える相手は集合場所受け渡し中心。
- 隣町・遠方:発送ラベルでコスト最適化。送料への心理的抵抗がある顧客には、受け取りの選択肢を提示。
7 トラブルシューティングと復旧
症状→原因仮説→対処の順で整理します。
- 症状:上糸の尾が残る/長い糸が表面に散らばる。
- 可能原因:糸切りタイミング設定、刃の状態、機械タイミング。
- 対処:機種サポートに連絡し、該当設定を確認。自己流分解は避ける。
- 症状:帽子で針折れ・糸抜けが頻発。
- 可能原因:針番手と生地厚の不整合、密度過多、押さえ圧・押え当たり。
- 対処:厚物は75/11へ変更、標準は65/9。刺しゅう密度・速度を見直し。
- 症状:納期遅延・作業が家事と衝突。
- 可能原因:工程の時間帯設計が不十分。
- 対処:熱工程を朝へ、学習は午後へなど、季節・住環境に合わせて時差運用。顧客には10〜14日を基準に余裕を持たせる。
- 症状:入金遅延・取り立て負荷。
- 可能原因:着手金なし・条件不明記。
- 対処:前金100%の明文化。請求書の最初の一文で合意を取る。数量調整で予算に合わせる。
クイックチェック(週次)
- 刺しゅう方式の選択は、ロット・納期・単価に合致?
- 受け渡し方法(対面/発送)は、顧客の負担と自社の安全性を両立?
- 在庫・消耗品は「次の一週間」を無補充で回せる量がある?
なお、検索の観点では、環境に合わせた枠・冶具の検討時にマグネット刺繍枠 babylock 刺繍ミシン 用やjanome 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠のような語で情報収集するユーザーもいますが、適合可否は必ずメーカー仕様で確認してください。
8 コメントから:現場の知見と補足
8.1 受け渡し動線(在宅運営)
- 知らない顧客は自宅NG、町中の駐車場などで受け渡し。送料に敏感な顧客もいるため、対面ニーズは堅調。
- 発送はPirateShip.comでラベルを購入しコスト最適化。
8.2 請求・会計・出荷
- QuickBooksで見積・請求・入金を一元管理する運用が共有されました(Squareを使う人も)。
- 発送頻度が低い場合でも運用手順をテンプレ化し、宛名・品目・数量・追跡番号の記録を残す。
8.3 糸・ボビン・細部
- 糸:通常40番、微小文字は60番を使い分け。
- ボビン:Ricoma TC1501の実例として「Coats V15 Trusew(L)」が共有。
8.4 将来計画と設備
- スクリーンプリントの機材候補としてRiley Hopkins 360に関心。手動でも大量生産で時間単価が高いのが動機。
- 「多頭機の導入」「日次の注文数増」「従業員の雇用」など、5年計画としてスケールを見据える。
8.5 Etsyからの転換を考える人へ
- 写真・商品説明・差別化が完璧でないと埋没しやすい。既製デザインや共通モックの流用は競合過多になりやすい。
- 地域B2Bへ転換すると、ロゴ刺繍などで価値が伝わりやすく、紹介が連鎖しやすい。
8.6 最高のアドバイス:プランを持つ
- 5W1H(誰に/何を/いつ/どこで/なぜ/どうやって)を文章化し、開始日を未来日で設定して準備完了でローンチ。
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最後に、検索語の例として挙げると、Brother単針の周辺機器ではbrother pe800 用 マグネット刺繍枠や、10針機向けのbrother pr1055x関連の情報収集ニーズが高い傾向があります。海外業務機ではhappy 刺繍ミシンの話題や、枠サイズの比較(例:bai 刺繍枠)といったキーワードも見受けられますが、これらは一般的な検索の一例であり、本記事は特定製品の採用や性能差を断定しません。
補足:市場にはricoma mighty hoop スターターキットのような語で検索されるスターターセットもあります。導入時は互換性・保証範囲・サポート窓口を事前に確認してください。
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H3付き要点まとめ
- 支払い:前金100%(請求書の最初の一行で合意)。
- 納期:10〜14日をベースに、家庭の非交渉事項を優先。
- 方式:HTVは小ロット限定、DTFで時短、スクリーンは大量で本領。
- 受け渡し:自宅外での対面、必要時は発送ラベル最適化。
- 品質:針番手(65/9、厚物は75/11)、糸番手(40/60)の使い分け。
- 調達:Allstitch+Amazonの二本柱で欠品リスクを回避。
