Table of Contents
- はじめに:動画で学ぶ“編み地×刺繍”
 - なにが変わる?ニットに刺繍する魅力
 - 準備のヒント:下書き・テンション・糸選び
 - 実践ステッチ1:しっかり固定の「はじめの結び」
 - 実践ステッチ2:フレンチノットで中心づくり
 - 実践ステッチ3:レイジーデイジーの花びら
 - 実践ステッチ4:ステムステッチで茎を描く
 - 実践ステッチ5:サテンステッチで面を塗る
 - 実践ステッチ6:葉のかたちと葉脈
 - 配置のアイデア:ヨークから袖口、裾へ
 - クイックチェック:仕上がり確認リスト
 - トラブル対処:引きつれ・形崩れを防ぐ
 - コメントから:道具・糸・ブロッキングQ&A
 - プロのコツ:自然なゆらぎと重ね技
 - 次の一歩:パターンの入手とコミュニティへ
 
動画を見る:MALVAROSA How To Embroider Your Knit Projects(ExpressionFiberArts)
シンプルなメリヤス地が、花と葉でふわりと咲き出す。手編みのセーターに刺繍をのせると、着るたびに高揚する一枚に生まれ変わります。ここでは動画の流れに沿って、5つの基本ステッチでマルヴァローサセーターを華やぐ方法を、ニットに最適化したコツとともに解説します。
– この記事で学べること – • 下書き、テンション、糸選びなど“ニット刺繍”の前準備の肝 • フレンチノット/レイジーデイジー/ステム/サテン/リーフの実践ステップ • ヨークから袖・裾まで、配置の考え方と自然に見せるコツ • 仕上がりチェックとよくあるつまずきの回避法 • 視聴者の質問から得た実用的なTIPS(ブロッキング、針・糸)
はじめに:動画で学ぶ“編み地×刺繍” ニットに刺繍をのせるのは難しそう? 実はステッチ自体はシンプルで、ルールに縛られず楽しめるのが魅力です。動画のセーターはCandy Keyの“Malvarosa”。DKウェイト、ふっくらとしたバルーンスリーブ、ほどよいゆとりがあり、主にメリヤス編みで構成。プレーンに着ても素敵ですが、ヨークに花刺繍を散らすと、視線をさらう主役級の一枚に。
なにが変わる?ニットに刺繍する魅力 刺繍は後から追加できる“編集力”。編み上がった作品に季節や気分でモチーフを足せ、袖や裾、脇線にも自由に展開できます。

動画でも「ルールはない。思うままに」と語られる通り、曲線や間隔に少しのゆらぎを残すと、植物の自然味が生きます。なお、機械刺繍の道具に親しんでいる人は、手刺繍と混同しないよう注意。たとえば磁気 刺繍枠はミシン用のアクセサリーで、本稿の手刺繍では不要です。
準備のヒント:下書き・テンション・糸選び ・下書きは水で消えるペンで。いきなり本体に描かず、まずはスワッチで“本当に消えるか”を検証しましょう。

・テンションは“ゆるめ”をキープ。強く引くと編み地がつれてシワや凹みの原因に。糸がふんわり乗るくらいが美しいです。 ・糸は手持ちの毛糸、刺繍糸、シルク糸など好みで。動画ではCash Silk Sock Yarnを使用。

コメントではDMCフロス(225, 501, 503, 504, 613, 819, 3046, Ecru)が紹介されました。糸選びに迷ったら、地色とのコントラストと肌あたりで決めるのがおすすめです。 ・フープは不要。編み地を伸ばしてしまう可能性があるため、手でやさしく支えながら進めます。 ・刺繍前のブロッキングは有効。コメントでは“刺繍後は伸ばしづらくなるので事前に”との助言が寄せられています。
実践ステッチ1:しっかり固定の「はじめの結び」 最初に裏側で糸を確実に留める“太めの結び”を作ります。ダーニングニードルに糸端を通し、長い側を針軸に沿わせて6〜7回ゆるく巻き、根元へスライドしてコロンとした結び目に。

この結びがあると、最初の数針で裏側の糸端をまたぎながら固定でき、作業が安定します。

注意 ・巻きはきつく締めすぎない。ふくらみが出る程度にゆるく巻くのがコツ。 ・結びが小さくて抜けそうなら、やり直して“太さ”を確保しましょう。
実践ステッチ2:フレンチノットで中心づくり 花の中心に小さな粒感を与える定番ステッチ。裏から針を出すときは、編み地の“穴”ではなく“糸そのもの”を割って出すと固定力が増します。

手順 1) 糸を片手で持ち、針に2回巻きつける。 2) 針先を元の位置(またはすぐそば)に戻し、巻きを軽く押さえたまま糸を引き締める。 3) 最後に手を離すと、ぷっくりとしたノットが完成。

クイックチェック ・ノット同士が重なりすぎていないか? ・編み地が引きつらず、表面に自然に“乗っている”か?
コメントから 「最初は目の中を割って通し、その後は穴を使っていたのは?」という質問には、「最初は結びの固定のため。固定後は穴からでOK」との回答が。理屈がわかると安心して進められます。
実践ステッチ3:レイジーデイジーの花びら 中心(フレンチノット群)の近くから針を出し、すぐ脇に戻して糸をほぼ引き切らず“ループ”を残します。

花びらの先端にしたい位置から針を出してループを押さえ、ループの外側へひと針落として留めます。

これを周囲にぐるりと繰り返せば、素朴で可憐な花が咲きます。
プロのコツ ・花びらの長短を少しだけ揺らすと、自然な表情に。 ・大輪にしたいときは花びら数を増やし、隙間があればサテンで埋めて密度を調整。
実践ステッチ4:ステムステッチで茎を描く まっすぐも曲線も得意な“ロープ状”の線。編み地の“1目列”に沿って進むと整います。糸は常に針の下側に置き、2目分先へ刺して、1目分戻った位置から針を出す“バックトラック”を繰り返します。


このリズムで、ヨークの曲面にも自然に沿うラインが描けます。
クイックチェック ・ステッチの間隔は一定か? ・カーブで無理に引かず、糸を寝かせるように沿わせているか?
実践ステッチ5:サテンステッチで面を塗る 円や楕円、花びらなど“面”を埋めて質感を作る方法。片側からもう一方へまっすぐ長い針目をかけ、平行に並べて隙間を埋めます。


密度は好みで調整。軽やかにしたいなら粗め、光沢を出したいなら密に。
注意 ・引きすぎると編み目が沈んで段差が出るので、ふわりと“乗せる”。 ・広い面は途中で方向を少し変えて、光の反射を分散させるとムラが出にくい。
実践ステッチ6:葉のかたちと葉脈 中央線(葉脈)を想定し、中心から左右に交互に斜めの針目をかけて輪郭を作ります。

最後に中央へまっすぐ一針落とすと、葉脈の通った生き生きした葉に。

トラブル対処:引きつれ・形崩れを防ぐ ・パッカリングが出たら…糸をそっと浮かせるように裏から針で持ち上げ、余剰テンションを逃がす。 ・ノットが沈む/抜ける…最初の数針は裏で糸端をまたぎ、結びを補強。必要ならノットを作り直し。 ・線がガタつく…編み地の目列に沿って進む。カーブは針目をやや細かく。
配置のアイデア:ヨークから袖口、裾へ ヨークに花束のように集める、袖の縦線に沿ってツタを這わせる、裾や両脇に点在させるなど、配置は自由。動画でも「袖や裾、サイドにもOK」と紹介。写真を撮ってモノクロにすると、濃淡のバランスが客観視しやすく、刺繍量の加減が決めやすくなります。
ミニ補足:ミシン派へのメモ(読み飛ばしOK) 手刺繍の記事ですが、機械刺繍に慣れた方のために用語を補足しておきます。たとえばmighty hoopやsnap hoop monsterはミシン用のホーピングツール。兄弟機ではbrother 刺繍枠、ベビーロックではbabylock 刺繍枠、ジャノメではjanome 磁気 刺繍枠、工業機ではtajima 刺繍枠などが知られます。とはいえ本稿のテクニックはすべて“手刺繍”向け。ミシン用の器具は使いません。
クイックチェック:仕上がり確認リスト ・ノットや花びらは均一? それとも“自然な揺らぎ”が出ている? ・線のカーブは目列に沿って滑らか? ・サテンの面は必要なだけ埋まっている? 透け感の意図は達成できた? ・裏側の糸始末は平らで、肌に当たっても気にならない?
コメントから:道具・糸・ブロッキングQ&A ・針は?…動画はダーニングニードルを使用。コメントでは「刺繍針でもOK」との回答。 ・糸は?…手持ちの毛糸、刺繍糸、シルク糸など自由。コメントではDMCフロスの具体色が紹介されました。 ・ブロッキングのタイミングは?…「刺繍前に」。刺繍後は伸びが制限され、引きつれやすいとのこと。 ・下書きはどう描く?…水で消えるペンで。まずスワッチで消えるかを試すのが鉄則。 ・編み地の“穴”と“糸の間”、どちらに通す?…開始時は糸を割って通すと固定力UP。固定後は穴でもOK。
プロのコツ ・“ヨークの曲面”を意識してラインを流すと、立体感が増します。 ・花の密度は“中心密・外周疎”にすると、自然なグラデーションに。 ・色選びは2〜3トーンの近似色+1色の差し色が万能。コントラストは地色との相性で調整を。 ・肌当たりが気になる場合は、裏の糸始末を結びだけでなく数目に渡ってすくい、凹凸を減らす。
注意(安全と品質) ・強いテンション、結びの不足、フープによる伸びは、いずれも“形崩れ”の原因。 ・水で消えるペンはメーカーや色で挙動が違うことも。必ずスワッチで事前テストを。
次の一歩:パターンの入手とコミュニティへ ・パターン入手:ExpressionFiberArts.comから“Malvarosa”をダウンロード。サイトでは使用糸のリンクも案内されています。 ・糸選び:動画ではDewy DK(やわらかなつけ心地のDKベース)が紹介。コメントには配合(70%スーパーウォッシュメリノ+20%ナイロン+10%シルク)情報もありました。肌あたりと発色の両立に向くベースです。 ・学びを続ける:サイトでメール登録すると毎週フリーパターンの配信あり。作品の共有や質問も、コミュニティで気軽にどうぞ。
小さなまとめ はじめの結びで“土台”をつくり、フレンチノットで花芯を。レイジーデイジーで花びらを広げ、ステムで線、サテンで面、リーフで息吹を添える。大切なのは、ニットのふくらみを尊重して“ゆるく、やわらかく”。今日仕上がったセーターに、明日は一輪の花を咲かせてみませんか。
補足ノート ・袖や裾、脇線への展開は、よく触れる部位ほど裏の糸始末を丁寧に。細かな引っかかりを回避できます。 ・洗濯の心配がある場合、色落ちしやすい色(特に赤系)は事前に単独で手洗いテストを。コメントでも“先に糸を手洗いして色移りを見る”という実践的なアイデアが共有されています。
さらに知っておきたい(機械刺繍の話題を少しだけ) 手刺繍と機械刺繍は道具が大きく異なります。ミシンを使う場合は、磁力やスナップで挟むホープ類(例:磁気 刺繍枠)を用途に合わせて選択しますが、本記事の手法には不要です。道具選びの迷子を防ぐためのメモとして残しておきます。
最後に 動画のメッセージは明快です。「ルールはない。自然をまねて、自由に」。あなたの編み地に、あなたの花を。完成したら、ぜひ見せてください。コミュニティで会いましょう。
おまけ:用語メモ(機械刺繍派) ・ブラザー系:brother 刺繍枠 など機種別に多彩。手刺繍では使用しません。 ・ベビーロック系:babylock 刺繍枠。こちらもミシン用の治具です。 ・スナップ系ホープ:snap hoop monster は着脱簡単なタイプ。手刺繍では不要。 ・工業/プロ向け:tajima 刺繍枠 など。用語の違いだけ把握しておくと情報収集がスムーズです。
