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Embrilliance の Merrowly アドオンとは?
Merrowlyは、Embrillianceプラットフォーム向けの専用アドオンで、通常の刺繍ミシンで「メロー(ロック/かがり)風」の太い縁取りワッペンを再現しやすくするツールです。動画ではOML EmbroideryのSueが、手作業で縁取りをデジタイズしなくても、文字や図形に対して一気にフェイク・メロー縁を生成できる流れを見せています。
ワッペンの縁(高密度のサテン系ボーダー)は、ミシンにも素材にも負荷がかかります。糸調子・針・スタビライザー(刺繍用の安定衬)・枠張りが揃っていないと、糸切れや波打ち、縁の荒れが一気に増えます。ギフト、クラブ、ユニフォーム、小規模受注など、用途が何であれワッペンは「毎回同じ品質」が命です。ソフト上の操作が速くても、実際の品質(縁がフラット、カットがきれい、糸切れが少ない)は段取りで決まります。

このガイドでできるようになること(つまずきやすい点も含む)
このガイドを読み終えると、次ができるようになります。
- Merrowly対応フォントを見つけ、文字の周りにフェイク・メロー縁を生成する。
- エッジ仕上げモード(Cut when complete/Using pre-cut/Hand cut in hoop)を選び、それぞれが「現物の作業」に何を要求するか理解する。
- Merrowlyの図形(動画では六角形)を読み込み、外部デザイン(動画ではAccuQuiltのアップリケ)と合成する。
- コメントで多い「見つからない」「ボタンがない」系トラブルを回避する。
「枠跡」現実チェック: ビニール、オーガンジー、マイラーのようなデリケート素材でワッペンを縫うと、通常の刺繍枠だと枠跡が出たり、押さえで素材が歪んだりしがちです。強く挟み込むより、安定衬に素材を固定して“浮かせる”段取りの方が安定するケースがあります。そこで、フローティング用 刺繍枠の考え方(マグネット式フレームで実現することが多い)が、素材を傷めにくい現実的なアップグレードになります。

150種類以上の図形テンプレートをどう使うか
SueはMerrowlyの製品ページを見せながら、150種類以上の図形テンプレート、専用フォント、スポーツ/ミリタリー/装飾レイアウトなどの例を紹介しています。ポイントは「数が多い」だけではなく、角やカーブが“縫い崩れしにくい形”として作り込まれていることです。

補足:フェイク・メロー縁で「角がきれい」なことの意味
フェイク・メロー縁は、基本的に高密度のサテン系ボーダーです。密度が高い縁はごまかしが効きません。自作図形で角が鋭すぎると、現場では次が起きやすくなります。
- 糸の摩擦増加:急カーブで同一点への針落ちが集中し、針が熱を持ちやすい。
- 針の逃げ(たわみ):小さすぎるRで針がわずかに振られ、金属音(カチカチ)につながることがある。
- 引きつれ/反り:高密度が“締め付け”として働き、スタビライザーが弱いとワッペンがカップ状に反る。
つまり「テンプレートがきちんと作られている」は見た目以上に、糸切れ・トリム増・不良率の低下に直結します。

ツールの導入目安(遊びから受注へ変わったら)
1枚だけなら多少の段取りの遅さは許容できますが、20〜100枚になるとボトルネックは枠張りになります。位置を毎回同じにするための治具的な考え方として、枠固定台のワークフローは効果が出やすいです。特に、事前カットした素材を“ど真ん中”に置いて縫う場合、枠位置の再現性が品質と歩留まりを左右します。
手順:文字ワッペンを作る
ここはSueが画面上で行った順番に沿って、ミシン側での確認ポイントも足して整理します。

ステップ1 — 文字オブジェクトを作る
- Embrillianceで新規ページを作成。
- レタリングツール(Aのアイコン)を選択。
- 文字を入力(Sueは「OML Embroidery」)してEnter。
チェックポイント:ワークスペースに文字が配置され、右側にプロパティ(Properties)パネルが表示されている。
期待する結果:縁を作る前に、サイズ変更や位置調整ができる編集可能な文字オブジェクトになる。
ステップ2 — Merrowly対応フォントを選ぶ
SueはフォントのドロップダウンからMerrowly専用フォントを選び、「Merrowly Coast」に切り替えています。
チェックポイント:フォント一覧の中で「Merrowly」と名前に付くフォントを選ぶ。通常フォントだと自動縁取りが想定どおりに計算されない場合があります。
期待する結果:文字がMerrowlyフォントのスタイルに更新される。

注意: 機械安全。 高密度のワッペン縁を縫う前に、針は新しいものを推奨します(動画内に番手指定はありませんが、現場では“新品針”が最優先です)。高密度は発熱と摩擦が増えます。厚い積層で針が当たると折損のリスクもあるため、稼働中は針周りに手やハサミを近づけないでください。
ステップ3 — フェイク・メロー縁を生成する
SueはStitch ArtistのツールバーにあるMerrowlyツールをクリックして、文字の周囲に縁を一発生成しています。
チェックポイント:クリック直後に、文字の輪郭に沿って太い縁取りが一気に付く。
期待する結果:文字ベースのワッペンデザイン(太いフェイク・メロー縁付き)が即座に完成する。

つまずきポイント(コメントより要約):「青いボタンが見当たらない」
コメントでは、動画で見えている「簡単だよ、ここをクリック」的なボタンが見つからない、という声が出ています。別の視聴者が代替ルートとして挙げているのが Utility > Add Patch Edge です。画面構成が動画と一致しない場合は、まずこのメニュー経由で同機能を探してください。
段取りチェックリスト(ワッペンを縫う前に)
動画はソフト中心ですが、ワッペンは段取りで勝負が決まります。現場で最低限押さえたい項目です。
- スタビライザー選定:高密度縁に耐えるものを前提に選ぶ(弱いものだと反り・波打ちが出やすい)。
- 素材の余白:ワッペン素材はデザイン外周より十分大きく切って、取り回しと固定の余裕を作る。
- 針:新品に交換(縁で糸切れが出る場合、まず針を疑う)。
- 固定手段:フローティングするなら仮固定(スプレーのり等)を準備。
- 糸道:糸くず噛みや引っ掛かりがないか確認。
- 下糸(ボビン糸):縁で消費が増えるので、残量に余裕のあるボビンを使う。
- 仕上げ方法:Cut when complete/Using pre-cut/Hand cut in hoop を先に決めてから作業する。
枠跡対策: 枠跡が出やすい素材(ビニール等)では、マグネット式の方が“押し潰し”が少なく、平らに保持しやすいことがあります。枠跡軽減の目的で マグネット刺繍枠 を検討する現場は多いです。
AccuQuiltの図形をワッペンに組み込む
Sueの2つ目の流れは、図形ベースです。Merrowlyのワッペン形状を読み込み、その中にAccuQuiltのアップリケデザインを配置します。別ライブラリ同士を合成して1つの商品にする考え方です。

ステップ4 — Merrowlyの図形(六角形)を読み込む
- 新規ページを作成。
- Merge Design をクリック。
- カタログのドロップダウンで Merrowly を選択。
- 反映に時間がかかる場合は、カタログが表示されるまで少し待つ。
- 図形から 六角形 を選ぶ。
- ワークスペースに配置。
- サイズを確認(Sueは 3 x 2 inches を確認し、ワッペンに適切と判断)。
チェックポイント:ワークスペースに六角形のアウトラインが表示される。
期待する結果:文字や内部デザインを入れるための「外枠(コンテナ)」ができる。

現場のコツ:ライブラリの表示が遅いのは珍しくない
Sueは、PCが忙しいとライブラリ表示に時間がかかることに触れています。空に見えても連打せず、数秒待ってから操作した方が結果的に早いです。
ステップ5 — AccuQuiltのアップリケを読み込み、中央に配置する
- もう一度 Merge Design を開く。
- AccuQuilt ライブラリを選ぶ。
- アップリケデザインを選択(Sueは 花)。
- 六角形の上に配置。
- 位置合わせツール等で見た目の中心に合わせる。
チェックポイント:六角形の内側に花が収まって見える。
期待する結果:Merrowlyの外枠+内部のアップリケ要素が合成されたデザインになる。

Sueが強調した制約:AccuQuiltのダイはサイズ固定
Sueは、AccuQuiltのダイ(物理の金型)はサイズが固定で、デザイン側を自由に拡大縮小できない点を説明しています。つまり、合わせ込みは「花を枠に合わせる」のではなく、枠(Merrowly側)を花に合わせるのが基本です。
これは量産の考え方として重要で、固定条件(ダイサイズ、ロゴサイズ、縫い付け位置)があるときは、コンテナ側の余白やボーダーを調整して縫い品質を守ります。

補足:サイズを小さくしすぎるリスク(Sueの注意を現場目線で)
Sueは「図形はリサイズできるが、小さくしすぎないように」と注意しています。小さくしすぎると、現場では次が起きやすくなります。
- 縁の詰まり:縁が過密になり、糸切れや縫い上がりの硬化につながる。
- 発熱・摩擦:同じ箇所への針落ちが増え、素材によってはダメージが出やすい。
- 内側の潰れ:縁の引き締めで内部要素が窮屈になり、見た目が崩れる。

エッジ仕上げ:カットデータ出力か、枠内カットか
Sueはプロパティ(Properties)パネルの Edge タブを開き、仕上げモードを見せています。ここは作業時間に直結する重要ポイントです。
- Cut when complete(Sueは標準的なワッペン手法として紹介)
- Using pre-cut
- Hand cut in hoop
また Using pre-cut を選ぶと、アウトラインをカッター用に書き出して事前カットできることにも触れています。

判断フロー:どのエッジモードを選ぶ?
次の順で決めると迷いにくいです。
- デジタルカッターを使う運用ですか?(Cricut/Silhouette等)
- はい: Using pre-cut。アウトラインを書き出して先に素材をカットし、アップリケ的に組む。
- いいえ: 次へ。
- 枠内でアップリケハサミ等を使ってカットする作業に慣れていますか?
- はい: Hand cut in hoop。配置線→仮止め→停止→枠内で際カット→太縁仕上げ、の流れにしやすい。
- いいえ: 次へ。
- とにかくシンプルに回したいですか?
- はい: Cut when complete。大きめ生地に縫い切ってから取り外し、外周を後カットする。
小規模受注の現実:利益は「段取り時間」で消える
ワッペン販売では、枠張り、トリミング、やり直しが利益を削ります。特に同一位置を繰り返す作業では、位置再現と手の負担軽減が効きます。枠固定台とマグネット枠を組み合わせた、たとえば マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような運用は、位置合わせの安定と作業負担の軽減に寄与します。
注意: マグネットの安全。 マグネット枠は強力です。閉じるときは指を挟まないようにし、ペースメーカー等の医療機器や精密機器から離して保管・使用してください。保管時は不用意に吸着しないようスペーサーを挟むのが安全です。
仕上がりを上げる素材アイデア
Sueは最後に、試してみたい素材や表現として ビニール、オーガンジー、マイラー、メタリック糸、背景素材 を挙げています。

素材が変わると何が変わる?(現場向けの整理)
動画は導入編なので深掘りはしていませんが、素材が変わると段取りの優先順位が変わります。
- ビニール:高密度縁は“ミシン目”になりやすい。枠で強く潰すと表面が傷みやすいので、フローティング寄りの固定が扱いやすいことがあります。
- オーガンジー:滑りやすく引っ張られやすい。固定と安定衬の選び方が結果を左右します。
- マイラー:光るが摩擦が増える。糸切れや引っ掛かりが出たら、まず速度や針・糸の相性を見直す。
- メタリック糸:見栄えは良いが切れやすい。無理に速度を上げない運用が安定します。
枠張りが難しい素材ほど、枠の“掴み方”が結果に直結します。Brotherの単針機クラス(動画ではLuminaireに送る用途に触れています)で、枠跡や段取りに悩む場合、brother luminaire 用 マグネット刺繍枠 のような選択肢を探す人が多いのはこのためです。
段取りチェック(フラットに縫って、きれいに切るために)
スタート前に確認します。
- デザインサイズ:意図したワッペン寸法になっている(Sueは六角形で3 x 2 inchesを確認)。
- Edgeモード:Cut when complete/Using pre-cut/Hand cut in hoop を意図して選んでいる。
- 安定衬の張り:たるみがない(たるみは波打ちの原因)。
- 位置合わせ:中心が出ている。
- カット段取り:使うハサミをミシン横に用意している。
- 可動域:枠が大きく動く工程でも、周囲に干渉物がない。
繰り返し配置が多いなら、hoopmaster 枠固定台 のような治具運用(ブランドを問わず“正確な枠固定台”)が、位置ズレによるやり直しを減らします。
縫製中チェック(稼働中の観察ポイント)
稼働中は次を見ます。
- 音:一定のリズムは正常。金属的な異音が出たら一旦停止して確認。
- 縁の寝方:太縁が浮いたり、トンネル状に引き上がる兆候が出たら早めに止める。
- 渡り糸:自動糸切りがない場合は早めに処理し、縁に巻き込ませない。
- 仕上げ:Edgeモードに合わせて、枠内カット/事前カット/後カットを実行する。
高回転で同じワッペンを回すほど、再枠張りと枠跡が最大の時間ロスになります。そのため、段取り短縮と見栄えの安定を狙って brother luminaire 用 マグネット刺繍枠(同クラス機向け)へ移行する運用が検討されます。
トラブルシューティング
動画内容とコメント傾向から、よくある問題を「操作ミス→環境要因」の順で整理します。
1) 「ライブラリの読み込みが遅い/空に見える」
- 症状:MerrowlyカタログやAccuQuiltライブラリが遅い、空、反応が鈍い。
- 原因候補:PCが他作業で負荷が高く、表示に時間がかかっている。
- 対処:Sueの説明どおり、まず待つ。連打すると余計に重く感じることがあります。
2) 「Merrowlyが見つからず、PatchArtistしか見えない」
- 症状:期待した名称が見当たらない。
- 原因候補:名称の取り違え、導線の違い、表示場所の違い。
- 対処:フォント一覧で「Merrowly」と付くフォント(例:Merrowly Coast)をまず確認。ボタンが見当たらない場合は、機能がメニュー側に統合されている可能性があるため、Utility配下も確認する。
3) 「BXファイルを入れたのにMerrowlyフォントが出ない」
- 症状:BXを入れたが、フォント一覧にMerrowlyが見当たらない。
- 原因候補:再起動しておらず反映されていない、導入が完了していない。
- 対処:Embrillianceを再起動し、フォント一覧でMerrowly表記を探す(コメントでも“見えるフォントは増えたがMerrowly名がない”という声があるため、名称の見落としに注意)。
4) 「動画の“青いボタン”がない」
- 症状:ワンクリックで縁を作る操作が見当たらない。
- 原因候補:バージョン差、表示の違い。
- 対処:コメントで案内されている Utility > Add Patch Edge を使う。
5) 「好きなフォントを何でも使える?」
- 症状:通常フォントでも同じように縁を付けたい。
- 原因候補:Merrowly前提のフォント設計と、通常フォントの形状データの違い。
- 対処:まずは「Merrowly」と付くフォントから始める(Sueもフォント名で判別できる点に触れている)。通常フォントで同等の結果を狙う場合は、より手作業の調整が必要になりやすい。
6) 「Stitch Artist(SA1/SA2/SA3)は必要?」
- 症状:必須かどうか、どのレベルで動くかが分からない。
- 原因候補:バンドル構成や機能の重なりで混乱しやすい。
- 対処:コメントでは「スタンドアロン」「Lv2で使っている」「SA1とMerrowlyを持っている」など複数の声があり、環境差がある前提で確認が必要。動画内ではSueがStitch Artistのツールバーから操作しているため、少なくとも画面上の手順をそのまま再現したい場合はStitch Artist環境があると迷いにくいです。購入前は自分のバンドル内容を確認してください。
まとめ(得られる結果)
Sueの導入デモから、Embrilliance内での実用的なワッペン制作フローが見えます。
- 文字ワッペン:文字入力→Merrowlyフォント(例:Merrowly Coast)→Merrowlyツールで縁生成。
- 図形ワッペン:Merrowlyテンプレート(六角形)をMerge→サイズ確認→内部デザインを配置。
- 仕上げの要:PropertiesのEdgeタブ(Cut when complete/Using pre-cut/Hand cut in hoop)が、現物の作業手順と工数を決める。
縫い上がりを安定させ、スループットを上げたいなら、ソフトはシステムの半分です。もう半分は、スタビライザー選定と再現性のある枠張りです。枚数が増えたら、刺繍 枠固定台で位置合わせを標準化したり、マグネット枠で段取り負担と枠跡を減らしたりする方が、「設定をもう1つ追い込む」より現場改善につながることが多いです。
