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Solaris Upgrade 2のマグネット刺繍枠とは?
厚手の「キルトサンド」を従来の二重枠(内枠+外枠)で枠張りしたことがある方なら、あの“格闘”をよくご存じだと思います。キルト綿の反発に押し返されながら無理に押し込み、やっと入ったと思ったら、合わせたいラインが作業中にわずかにズレてしまう——このストレスが積み重なると、作業の再現性もスピードも落ちます。
動画では、Solaris Upgrade 2に含まれる10x10マグネット刺繍枠を使い、従来の「摩擦で挟み込む」枠張りから、「上から面でクランプする」枠張りへ発想を切り替えることで、Solarisのカメラ(背景スキャン)と組み合わせたエッジ・トゥ・エッジキルティングを安定させる流れを実演しています。

サイズと対応(動画内の前提)
動画では、KathyとAlがSolaris Upgrade 2付属のマグネット刺繍枠を紹介し、Baby Lock Solarisで使う10x10インチ枠としてデモしています。
現場目線(ここがポイント) 「10x10」は“縫える範囲”の目安ですが、実務で効いてくるのは“挟み方”です。一般的な刺繍枠は布をリングで押し広げて固定しますが、マグネット刺繍枠は上から押さえ込むため、キルト綿の厚みがあっても「引っ張って張る」動作を最小限にできます。
補足として、従来枠で起きやすい枠跡(押しつぶし・テカり・段差)も、面で圧が分散されることで出方が変わります。キルティングでは表だけでなく裏も仕上がりに直結するため、枠張りの安定はそのまま品質に効きます。
付属のマグネットリフター(取り外し工具)
動画で強調されている通り、マグネットは非常に強力です。「あったら便利」ではなく、安全に外すための必須工具として扱ってください。指を挟むと危険です。


注意: 挟み込み危険。 強力マグネットは一気に吸着します。マグネットと金属フレームの間に指を入れないでください。動画で示されているマグネットリフターを使い、テコで持ち上げて外します。
作業上の安全メモ(動画から読み取れる範囲で) マグネットは金属に引き寄せられやすいので、枠張り中はハサミ等を不用意に近づけないほうが安心です。吸い寄せられて手元が乱れると、指を挟む事故につながります。
キルティングにマグネット刺繍枠を使う理由
動画の作例は、Disneyパネルに対して、IQ Designer内蔵のクロスハッチ(格子)パターンでキルティングする内容です。ロングアームのように大きなフレームを使わず、刺繍機側で“区画ごとに”つないでいく発想です。

厚い層でも枠張りしやすい
キルトサンド(表布+キルト綿+裏布)は厚みがあり、従来枠だと押し込み・締め込みが負担になります。動画の方法では、下側の金属フレームをキルトの下に差し込むように入れ、上からマグネットで固定します。
品質に効く理由
- 歪みを作りにくい: 無理に引っ張って締めないため、布目が崩れにくい。
- 重量を持ち上げない: キルト全体を持ち上げず、テーブルで支えたまま作業できる。

ズレを抑える(マグネットで“ならす”)
動画では、マグネットを置いた後に、そのマグネット自体を使って布を「ならす(掃く)」動きが出てきます。
手の感覚で合わせる指示(動画の動きの言語化)
- 動作: マグネットを置いたら、上からしっかり押さえつつ、枠の外側へ向けて滑らせる。
- 狙い: たるみを外へ逃がし、面をフラットにする。
- 判定: ピンと張りすぎ(引っ張り)ではなく、波打ちのない“板状のフラット”を目指す。


枠跡(いわゆる“hoop burn”)を減らしたい場面に向く
従来枠で出やすい枠跡は、素材や厚みによっては戻りにくく、仕上げ工程の手間になります。マグネット刺繍枠は押さえ方が異なるため、同じ条件でも枠跡の出方が変わることがあります。キルトのように嵩がある素材では、特に「無理に押し込まない」メリットが作業性に直結します。
手順:キルトを枠張りする(枠張りフライトチェック)
ここでは動画の流れを、現場で繰り返せる順番に整理します。大きいキルトほど「枠張りしてから、設定を変え忘れたことに気づく」事故が起きやすいので、順序を固定しておくと安定します。
平らな作業面を用意する
動画でも、大きくて平らなテーブルで作業しています。膝の上や小さな作業台だと、キルトの自重でズレやすく、枠の位置決めも不安定になります。
事前チェック(動画内で触れている要点+作業上の必須確認)
- 下糸(ボビン糸)の確認: キルティングは裏面にも出るため、上糸と下糸の色・質感の相性を先に確認します(動画の安全チェックにも言及あり)。
- 周辺スペース: ミシン周りにキルトの嵩を逃がすスペースを確保します(動画の準備項目に一致)。
マグネットを置く(順番を固定する)
手順(動画の流れ)
- マグネットを外す: マグネットリフターで端を持ち上げ、フレームから外します。
- 下フレームを差し込む: キルトの下に下側フレームを滑り込ませ、狙い位置へ。
- 既存ステッチを見える状態に: 次の区画とつなぐため、前回の縫い目が確認できる位置に合わせます(動画のチェック項目)。
- 上からクランプ: マグネットを上に置いて固定。
- ならし: マグネットで布を外側へ“掃いて”、たるみを取ります。

チェックポイント マグネットの数が少ないと、振動で布がじわっと動きやすくなります。動画でも複数のマグネットでしっかり固定しています。
張り具合の確認(ズレる前に見抜く)
動画での重要チェックは「位置合わせに必要な既存ステッチが見えていること」です。
簡易テスト 枠を持ったときに、布がマグネットの内側で滑る感触がある場合は固定が弱い可能性があります。スキャン前に、マグネットの配置と“ならし”をやり直します。
準備チェックリスト(フェーズ1終了)
- 前提: SolarisにUpgrade 2が導入済み(動画の前提)。
- 作業環境: 大きい平面が確保できている。
- 安全: マグネットリフターが手元にある。
- 位置合わせ: 前回の縫い目が見える位置で枠張りできている。
カメラで位置合わせを仕上げる(背景スキャン)
Solarisの強みは、背景スキャンで「実物の布」を画面に取り込み、その上でデザインを合わせられる点です。枠の掛け直し回数を減らし、つなぎ目の精度を上げやすくなります。

背景をスキャンする
操作: 画面で 「Scan Background Image」 を選択します。 待機: スキャン中は触らずに待ちます。 結果: 枠内の実際の布が画面に表示されます。
画面上でデザインを合わせる
動画では、矢印キーでデザインを動かし、既存の縫い目に重ねていきます。

合わせ方のコツ(動画の動きに沿った考え方) 全体を一度に合わせようとせず、まずは交点などの“基準になる点”を決めて合わせ、その後に反対側でもズレがないか確認します。これで回転ズレ(斜め)を早めに発見できます。
新しいパターンを既存ステッチにつなぐ
動画でも強調されている通り、デザインのポイントが既存ラインにきちんと接続しているかを確認します。画面上で「だいたい合っている」に見えても、縫うとズレが目立つことがあるため、交点や角など“ズレが見えやすい場所”で判断します。
キルティングで効く重要設定
キルティングは「表がきれい」だけでなく「裏がきれい」も同じくらい重要です。刺繍の常識と逆になる設定があるので注意します。
自動糸切りをOFFにする
Alのアドバイス通り、Automatic Thread Cutter = OFFにします。
理由(動画の意図) 枠内キルティングで自動糸切りを使うと、裏面に結び目や糸端が残りやすく、仕上がりが荒れます。糸切りを切っておけば、裏面の見た目を整えやすくなります。
- キーワード文脈: babylock magnetic hoopでキルティング運用を検討する際、こうした「裏面の仕上げ」を前提にした設定が差になります。

アーム周りの嵩(かさ)をさばく
キルトは大きく重いので、ミシンのフトコロ(スロート)周辺で引っ掛かると、動きが渋くなったり、布が巻き込まれたりします。

注意: 裏布の巻き込み事故(折れ込み縫い)
スタート前に、枠の下側に手を入れて確認します。余ったキルトが下に回り込んだ状態で縫い始めると、裏側を一緒に縫い込んでしまいます。動画でも「下側に布が入り込んでいないか確認する」チェックが入っています。
上糸と下糸(ボビン糸)を合わせる
見た目のチェック 下糸を引き出して上糸と見比べ、色味がズレていると、糸の絡み点が反対面に点として出ることがあります。動画の事前チェックにも「下糸の確認」が含まれているため、枠張り前に済ませておくのが安全です。
手順まとめ:枠張り完了→縫い出しまで(チェックポイント付きSOP)
ここは現場用の手順書として、そのまま使える順番にしています。
Step 1 — マグネット刺繍枠の準備(マグネット取り外し)
目的: 枠を空にして安全に作業開始。 作業: マグネットリフターでマグネットを外し、フレームをクリアにします。
Step 2 — キルトサンドを枠張り
目的: 3層をズレなくフラットに固定。 作業: 下フレームを差し込み、既存ステッチが見える位置に合わせ、マグネットで固定。マグネットで“ならし”。 確認: 既存ステッチが位置合わせに使える状態で見えている。
Step 3 — ミシンに装着
目的: 層を乱さず確実に固定。 作業: 枠をアームに差し込み、レバーでロック。 重要: 余ったキルトの嵩をさばき、引きずりや巻き込みが起きないようにします。


Step 4 — カメラ(背景スキャン)で位置合わせ
目的: 新しい縫い目を既存ラインにつなぐ。 作業: スキャン→画面上で矢印キー調整。 合格基準: 画面上でデザイン線が既存ステッチに重なる。
Step 5 — 縫い出し
目的: キルティング実行。 作業: スタートし、縫いを監視。ジャンプ糸は後で処理。 確認: 自動糸切りがOFFになっている。

設定チェックリスト(フェーズ2終了)
- 糸切り: 「Automatic Thread Cutter」がOFF。
- 枠固定: レバーがロックされ、枠がガタつかない。
- 巻き込み防止: 枠の下側に折れ込みがない。
- 糸: 上糸と下糸(ボビン糸)の相性を確認済み。
運転中チェック(作業中)
- 監視: 縫い始めは特に注意して見守る。
- 仕上げ: ジャンプ糸は後で近くでカット。
トラブルシュート(症状 → 原因候補 → 対処)
問題が起きたら、手当たり次第に触らず、切り分けで戻りを減らします。
症状:「縫い音が重く、糸が傷む」
- 原因候補: 厚みで負荷が上がっている/針や糸条件が合っていない可能性。
- 対処: まずは一旦停止し、枠下の巻き込みや引っ掛かりがないか確認します(動画の注意点)。
症状:「画面では合っているのに、縫うとラインを外す」
- 原因候補: スキャン後に布が動いた/枠張り時の“ならし”不足。
- 対処: スキャン前にマグネット配置と“ならし”をやり直し、既存ステッチが見える状態で再スキャンします。
症状:「裏側が汚く見える(糸端・結び目が目立つ)」
- 原因候補: 自動糸切りがON。
- 対処: Automatic Thread CutterをOFFにして再開します(動画の設定)。
仕上がりとメリット
このワークフローは、キルティングを「運任せ」ではなく「手順で再現する」方向へ寄せてくれます。
エッジ・トゥ・エッジらしい連続感
従来枠で起きやすい歪みやズレを抑え、背景スキャンで既存ステッチに合わせ込むことで、つなぎ目の違和感を減らしやすくなります。ポイントは、マグネット刺繍枠で“引っ張らずに固定する”ことと、スキャン後に布を動かさないことです。
マグネット刺繍枠を検討している場合、投資対効果は「速さ」だけでなく「同じ品質を繰り返せること」に出ます。
従来枠の掛け直し・合わせ直しを減らす
動画の流れでは、枠張り→装着→スキャン→画面上で合わせ込み、という順で、掛け直しによるストレスを減らしています。
道具選びの検索では、マグネット刺繍枠 使い方のような一般的な探し方から、babylock マグネット刺繍枠 サイズのようなサイズ情報、マグネット刺繍枠/マグネット刺繍枠/baby lock マグネット刺繍枠といった表記ゆれまで混在します。本質は「摩擦で押し込む」のではなく「上からクランプする」固定方式だと押さえておくと、情報を整理しやすくなります。
チェックポイント:キルトの“下支え”をどう考えるか
下に何を入れるかは、素材の安定性で判断します。
Q1:キルトサンドは安定している(一般的な表布+キルト綿+裏布)?
- YES: 基本はキルト綿が支えになります。まずは枠張りと位置合わせの精度を優先します。
- NO: 伸びやすい素材が絡む場合は、歪みが出やすいので、ズレが出たら枠張りの固定方法を見直します。
Q2:刺繍のような高密度ステッチではなく、キルティング(走り縫い系)?
- YES: 動画のようにキルティング目的で進めます。
- NO: 高密度の場合は条件が変わるため、まずはテスト縫いで確認します。
Q3:枠張りが作業のボトルネックになっている?
- YES: マグネット方式は、枠張りの身体負担とやり直しを減らす方向で効きます。
- NO: 現状の手順でも、背景スキャンとチェック項目を取り入れるだけで安定します。
