4x4枠で簡単!ITHマグラグ(ノート用紙風):枠張りをきれいに、厚みを減らして、仕上がりを格上げ

· EmbroideryHoop
4x4刺繍枠で約10分で縫い上がるITH(In-The-Hoop)マグラグを、裁断サイズから順番に解説します。縫い代の厚みを出さないためのバッティング(キルト綿)処理、ガイドステッチ(目印)を使った封筒式(エンベロープ)背面の位置合わせ、Steam-A-Seamで手縫いなしに口を閉じる方法まで網羅。さらに、マグネット刺繍枠を使った枠張りの考え方、安全面、量産時にブレを減らすための現場目線のチェックポイントもまとめました。
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目次

ITHマグラグに必要な材料

マシン刺繍の世界で「In-The-Hoop(ITH)」は、いわば“枠の中で完結する立体縫製”。材料を重ねていくだけで、裏布・キルト綿・縫い代まで含めた完成品が、基本的に1回の枠張りで仕上がります。

今回のマグラグ(コースターサイズ)は、懐かしい「ノート用紙」風デザイン。標準的な4x4枠で縫えて、ギフトにも向くスピード案件です。

ただし、ベテランほど知っている通り「簡単そうな四角いデザイン」ほど準備の甘さが露骨に出ます。直線と正方形はごまかしが効かず、スタビライザーや枠張りが少しでも甘いと、ラインの歪み・角の丸み・仕上がりのねじれが一発で目立ちます。

Close up of the finished notebook paper themed mug rugs held up to camera.
Intro/Product Showcase

ここで学べること(つまずきやすい点も含めて)

今回は、裏を「封筒式(エンベロープ)」にして“返して仕上げる”構造です。裁断精度、重ね順の理屈、そして厚み(バルク)管理を徹底します。

この工程で一番失敗しやすいのは 厚みのコントロール です。バッティングの切り落としが甘い/裏布の折り方が厚すぎると、押さえが段差に当たりやすくなり、縫い目の乱れや形崩れにつながります。ここでは「レイヤーを増やさない」「縫い代に入れない」を合言葉に進めます。

動画で使用している材料

プロっぽい仕上がりにするには、まず材料の選定と下準備が最短ルートです。

  • 刺繍枠: 4x4インチ(100mm×100mm)以上
  • スタビライザー: しっかり感を出すならカットアウェイ推奨(形が保ちやすい)。ティアアウェイでも可(後処理が楽で、やわらかめの仕上がり)
  • バッティング(キルト綿): 5"×5"(薄手〜中薄程度。高ロフトは厚みと抵抗が増えやすい)
  • 表布: 5"×5"(白無地、または“紙っぽい”柄)
  • 裏布(封筒式):
    • 下側:4"×5"
    • 上側:2〜3"×5"
  • 固定・仕上げ: ペインターズテープ(青/紫など)+Steam-A-Seam(1/4"幅程度の接着テープ)
  • 道具: アップリケ用はさみ(カーブ/ダックビル系)、ロータリーカッター、アクリル定規、角出し(ポイントターナー)
Host displaying the square piece of batting needed for the project.
Supplies overview

道具のアップグレード判断(いつ投資するべきか)

マグラグを1枚作るのは趣味の範囲でも、イベント用に50枚となると“生産”です。量産に入った瞬間、ボトルネックは刺繍データではなく「枠張り」と「再セット」に移ります。

ネジ式枠で、スタビライザーをピンと張るのに時間がかかる/締め付けで手が疲れる/枠跡(枠のリング跡)が気になる…という状態なら、ハード側の見直しタイミングです。

枠張りが詰まるサイン:

  • きっかけ: ネジ締めで手首が痛い、3枚目あたりから張りが落ちる
  • 判断基準: 1回の作業で5個以上作ることが増えた
  • 選択肢: 高品質な マグネット刺繍枠 は、枠張りの“物理”を変えます。ネジと摩擦で引っ張るのではなく、磁力で均一にクランプするため、枠跡を抑えつつ再枠張りが速くなり、ITHのテンポが崩れにくくなります。

厚みを減らすための布とバッティング準備

縫う前に「材料を設計」します。刺繍は裁断台で9割決まる、と言っても過言ではありません。四角が正確でないと、完成も四角になりません。

裁断サイズ(動画の内容)

ここは妥協しないでください。直角を出すためにロータリーカッター推奨です。

  • バッティング: 5"×5"
  • 表布: 5"×5"
  • 裏布:
    • 下側:4"×5"
    • 上側:2〜3"×5"
  • 折り代: 裏布2枚とも、5"側の一辺を 1/2" だけ折ってアイロンで押さえる
View of the blue magnetic 4x4 hoop with stabilizer hooped.
Hoop preparation

なぜ「1/2"の一回折り」が効くのか

初心者がやりがちなのが、裏布端を“きれいに見せたい”一心で、布を完全に二つ折り(厚み2倍)にしてしまうこと。今回はおすすめしません。

動画の手順は、端を 1/2"だけ一回折り して押さえる方法です。理由はシンプルで、刺繍機の押さえ下のクリアランスは限られているからです。スタビライザー+バッティング+表布+裏布(折り厚)…と段差が増えるほど、押さえが“段差”に当たり、送りが乱れやすくなります。一回折りなら厚みが増えにくく、角も出やすくなります。

Ironing a 1/2 inch hem on the patterned backing fabric.
Fabric preparation

見落としがちな消耗品&事前チェック(ここを飛ばさない)

布以外の準備が、糸絡みや針折れの保険になります。

  • 針: 新しい刺繍針を推奨(例:75/11相当)。バッティングがしっかりめなら太めにする判断もありますが、まずは新品針で“切れ味”を確保してください。
  • 下糸(ボビン糸): 裏は隠れる構造なので標準的なボビン糸でOK。巻きが柔らかい(スカスカ)とテンションが不安定になりやすいので、触って「しっかり硬い」状態を確認。
  • スティレット/箸: 針の近くを指で押さえない。コメントでも不安の声があり、実際に指を縫ってしまった経験談も出ています。布押さえは木の箸などの道具を“常に手元に”置くのが安全です。

スタビライザー選び(用途で決める)

  1. 飾り用・軽い使用が中心?
    • はい → ティアアウェイ(後処理が早い)
  2. 結露しやすい飲み物に使う/洗う可能性がある?
    • はい → カットアウェイ(形が崩れにくい)

作業前チェック(縫い始める前にここで止めて確認):

  • 直角チェック: すべての布が90度で裁断できている
  • アイロン: 裏布2枚の1/2"折りがしっかり“折り目固定”できている
  • 針: 新品針に交換済み
  • 安全: 布押さえ用の道具(箸/スティレット)が手の届く位置にある
  • 固定材: テープをすぐ使える位置に置いた

注意(安全): ITHは布を置くために枠の近くへ手を入れる場面が多い工程です。ミシン稼働中は、針周辺に指を入れないでください。調整は必ず停止してから行います。多針刺繍機は特に危険が増えるため、道具で押さえる習慣が重要です。


マグネット刺繍枠で安定させる枠張り

動画では、Ricomaの多針刺繍機に青いマグネット刺繍枠を使用しています。見た目は簡単そうでも、再現性を上げるには「張り具合の感覚」を押さえるのがポイントです。

Ricoma machine stitching the placement line on the hoop.
Step 1 Stitching

動画の枠張りアプローチ

ここでは「フローティング(浮かせ置き)」が基本です。ITHでは定番の方法で、材料を節約しやすいのが利点です。

  1. スタビライザーだけを枠張り する
  2. 張りチェック: 指で軽く叩いて、たるみが少ない状態を確認
  3. 配置ステッチ(枠内の目印) を縫う
  4. その上に材料を順に置く

スタビライザーの張りが維持できれば、この方法は非常に安定します。

マグネット刺繍枠の安全メモ

マグネット枠は強い磁力で一気に吸着します。

注意(マグネット): 指挟み注意。パーツの間に指を入れないでください。強い磁力は医療機器等への影響が懸念されるため、取り扱いには十分注意してください。

量産で効いてくる理由

スタビライザーの張りが毎回ブレる/ネジ式がつらい、という場合はアップグレードのサインです。

刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のように均一にクランプできる仕組みは、四角と直線が命のデザインで特に効果が出ます。張力のムラが減ると、ラインの平行が保ちやすくなり、作業が「枠と格闘」から「セットして進める」に変わります。


Step 1:配置ステッチ〜バッティングの仮止め

ここから刺繍機に移ります。速度は無理に上げず、まずは安定優先で。

Trimming excess batting inside the hoop with appliqué scissors.
Trimming Applique

手順

  1. データを読み込み: デザインの上下方向を確認
  2. 配置ステッチ: スタビライザー上に四角の目印が縫われる
  3. バッティングを置く: 5"×5"を目印の上にかぶせる
    • チェックポイント: 目印より四方に少し余裕がある(最低でも各辺1/4"程度)
  4. 仮止め縫い: 次の工程で、配置線より内側を縫ってバッティングを固定

チェックポイント

  • 見た目: しわ・波打ちがない
  • 手触り: ふくらみが偏っていない
  • 固定: 四隅までしっかり縫い込めている(めくれがあるなら停止して直す)

ここまでの状態

スタビライザーの上にバッティングが固定された「土台」ができました。次は厚みを減らす“トリミング”に入ります。


Step 2:アップリケのトリミング(厚み管理の要)

この工程が、角のシャープさと仕上がりの薄さを決めます。

Machine embroidering the text 'Teaching is my super power'.
Design Stitching

手順

  1. 枠を外す: 作品は枠に張ったまま、刺繍機から枠だけ外して作業(安全と作業性を優先)
  2. はさみを当てる: カーブのアップリケはさみで、縫い線に沿わせる
  3. 切り落とす: 縫い線ギリギリまでバッティングをカット(糸は切らない)

なぜ角が厚くならないのか

縫い代の中にバッティングが残るほど、返したときに角が丸く・硬くなります。縫い線の内側でバッティングを落としておけば、縫い代に入るのは基本的に表布と裏布だけになり、角出しがきれいに決まります。

現場のコツ(安全+再セット)

多針刺繍機で枠を戻すときは、枠の装着が甘いとズレの原因になります。しっかり固定できたことを確認してから再開してください。


Step 3:封筒式(エンベロープ)背面を作る

バッティングを落としたら、見た目のレイヤーを作っていきます。

Aligning the back fabric pieces using tweezers and placement lines.
Placement

手順(表側)

  1. 表布を置く: 5"×5"をバッティングの上に置く
  2. デザインを縫う: ノートの罫線や文字を刺繍
    • 補足: この段階では表布は切りません。最後にまとめて外周をトリムします。
Taping the edges of the backing fabric to the hoop with blue tape.
Securing fabric

透明ビニールを入れる(拭ける表面にしたい場合)

動画では、必要ならこのタイミングで透明ビニールを重ねる案が紹介されています。飲み物をこぼしたときに拭き取りやすくなります。

※ビニールを使う場合、上からアイロンを当てると溶ける可能性があるため、仕上げのプレスは裏側から行う判断が安全です(動画でも注意されています)。

手順(裏側の位置合わせ)

封筒式にして返すための“入口”を作ります。

  1. スタビライザー上に、小さな目印(短い線)が縫われています。これが位置合わせガイドです。
  2. 下側の裏布から: 4"×5"を 柄面を下(表が内側) にして、ガイド線に合わせる。折った端は中央側へ。
  3. 上側の裏布: 2〜3"×5"を同じく 柄面を下 にして上から重ねる。折った端同士が中央で重なります。
Removing the blue tape mid-process to clear path for final stitching.
Tape Removal

名入れできる?(コメントで多かった質問)

名入れは「スペースが足りるかどうか」に左右されます。投稿者の回答では、ソフトがあれば追加できる可能性があるとのことです。データ上で罫線とのバランスを見ながら配置するのが確実です。


仕上げ:返して、Steam-A-Seamで口を閉じる

最後は外周を縫って“構造”を完成させます。

Cutting out the finished mug rug from the stabilizer with scissors.
Final Trimming

ペインターズテープで端を固定(外すタイミングが重要)

ここは失敗が出やすいポイントです。押さえの移動で裏布端がめくれると、縫い込みやズレにつながります。

  1. 固定: ペインターズテープで、裏布の端がバタつかないように押さえる
  2. 注意: できるだけ針の進路にテープが入らないようにする(針や糸に粘着がつきやすい)
  3. 一周目: 最初に“仮止めの一周”が入る
  4. 停止: ここで止めてテープを外す
  5. 本縫い: その後、強度のある外周ステッチ(複数回の縫い)で仕上げる
Using a metal point tool to push out the corners of the turned mug rug.
Turning edges

最終外周前チェック:

  • 向き: 裏布は「柄面が内側」(表同士が合わさる向き)になっている
  • 重なり: 中央でしっかり重なっている
  • 速度: 無理な高速にしていない(布が波打つと縫いズレの原因)

枠から外す→トリム→角を落とす→返す

  1. 枠から外す
  2. 外周をカット: 縫い代 1/4" を残して四角く切る
  3. 角を落とす: 角は縫い目ギリギリまで切り込みを入れて厚みを減らす(縫い糸は切らない)
  4. 返す: 封筒口から表に返す
Measuring and inserting Steam-A-Seam tape into the closure opening.
Finishing closure
Ironing the back of the mug rug to seal the fusible tape.
Final Pressing

角出し&プレスで“製品感”を出す

角出しツールで角を整え、アイロンでフラットにします。動画ではOESDのポイントツールを使用しています。

Steam-A-Seamで封筒口を閉じる

手縫いなしで口を閉じる仕上げです。

  1. Steam-A-Seamを適量カット
  2. 重なりの内側に差し込む
  3. 紙側が上になる向きで入れる
  4. 注意: 接着材がはみ出すとアイロンに付着します。布の中に完全に隠れるように入れてから圧着します。
Final display of two finished mug rugs, one teaching theme, one paper theme.
Outro

仕上がりサイズの目安

4x4枠対応のため、完成サイズはコースター程度で、目安は 約3.7"×3.7" です。

量産前の最終チェック:

  • 厚み: 角がゴロつかず、フラットに出ている(厚いなら次回はバッティングをさらに縫い線ギリギリまで)
  • 接着: 封筒口がしっかり閉じている
  • 波打ち: 表面ができるだけ平ら

トラブルシューティング

うまくいかないときは、原因を切り分ければ立て直せます。

症状 ありがちな原因 すぐできる対処 予防策
押さえに布が引っかかる 裏布端がバタついて移動時にめくれる すぐ停止して糸を切り、布を戻す 最終外周前にテープで端を確実に固定する
テープが縫い込まれた 仮止め後にテープを外し忘れた ピンセットで少しずつ除去 仮止め一周で必ず停止→テープ除去
縫い代が分厚い/角が丸い バッティングが縫い代に残っている/裏布を厚く折っている 次回工程で切り落としを改善 バッティングは縫い線ギリギリまで、裏布は1/2"一回折り
四角が歪む 枠張りの張力ムラでスタビライザーが引き込まれる アイロンで整える マグネット刺繍枠 用 枠固定台 などで毎回の張りを標準化する

5) バッチ生産で枠張りを速く・一定にしたい

ギフト1個から、Etsy等の在庫づくりに移ると「枠張り時間=コスト」になります。

  • 症状: 縫う10分より枠張り・再セットの方が時間がかかる
  • 対策: マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような運用を検討。枠固定台+マグネット枠で張りを毎回揃えると、サイズのバラつきが減り、量産の歩留まりが上がります。

仕上がり

ITHのレイヤー構造を一通りクリアできれば、手作り感より“製品感”が前に出る、シャープなコースターが作れます。

標準装備の枠でも作れますが、枠張りがストレスになってきたら道具の見直しが効きます。Ricoma環境での運用を想定するなら ricoma 刺繍枠 のように機種に合う枠選びで段取りが安定します。

また、枠跡を抑えつつ固定力を上げたい場合は マグネット刺繍枠 が有効です。

最後に、どの環境でも共通する“物理”は同じです。スタビライザーを安定させ、バッティングは縫い代に入れず、縫い代幅を守る。これだけで仕上がりは一段上がります。