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リバースアップリケを攻略:ゴースト・ロンパースをきれいに仕上げる手順書
リバースアップリケとは?
難しそうに見えますが、リバースアップリケは「窓を開ける」発想です。通常のアップリケが“生地を上に載せて縫い付ける”のに対し、リバースアップリケは上側の生地(服地)にアウトラインを縫い、その内側をカットして、下に仕込んだ生地を見せます。
このプロジェクトでは、ロンパースのスウェット前身頃が「カーテン」、下に仕込むハロウィン柄のプリント生地が「ゴースト」として見える構成です。
通常アップリケではなく、あえてリバースを選ぶ理由:
- 質感: くぼみ感のある立体的な見え方になり、仕上がりがワンランク上に見えます。
- 実用性: 仕上げ縫いで縁が固定され、摩擦でめくれにくいので、子ども服の洗濯にも向きます。
ただし、段取りが命です。下に仕込む柄の「どこを見せたいか」を縫う前に決める必要があり、カットは落ち着いて確実に行う必要があります。

レイヤー構造を“サンドイッチ”で理解する
動画の流れを、順番が決まったサンドイッチ作りとして捉えると迷いません。刺繍のシーケンスが、そのまま作業の骨格になります。
- 土台: スタビライザーを枠張りする(皿)。
- 見せる層: 下に仕込むプリント生地を貼る(具)。
- 地図: トレース(下描き)でゴースト位置を縫って可視化。
- 上の層: スウェット前身頃を重ねて固定。
- 額縁: ゴーストの最終アウトラインを仕上げ縫い。
- 窓開け: 枠から外して、上の層だけを慎重にカット。
このリズム——トレース → タックダウン → 仕上げ → カット——がリバースアップリケの基本形です。順番を体に入れると、デザインが変わっても応用できます。
リバースアップリケに向く生地
動画では、上側にスウェットフリース(ニット)、下側にプリントコットン(布帛)を使用しています。この組み合わせは初心者にも扱いやすいです。
- 上側(スウェットフリース): 厚みがあり、カットしても極端にほつれにくいので、多少のカットの揺れが目立ちにくい。
- 下側(コットン布帛): 柄がシャープに出て、見せたいモチーフを作りやすい。
着用・洗濯の補足: リバースアップリケは、上側のカット端が“生地端の表情”として残ることがあります。スウェットでは洗濯で少し丸まり、味としてまとまりやすい一方、上側にほつれやすい素材を選ぶと、洗濯で端が荒れて見え方が崩れる原因になります。
量産や受注を視野に入れると、位置ズレの再発防止が重要になります。手作業の「合わせて祈る」から卒業したい場合は、刺繍用 枠固定台 を“道具”ではなく“工程の再現性を上げる仕組み”として検討すると、歩留まりが上がります。

このプロジェクトに必要なもの
動画では材料が映りますが、実務では「見えない消耗品」と「事前チェック」が仕上がりとトラブル率を左右します。
動画で使用している道具・材料
- 刺繍機: Poolin EOC06。
- 刺繍枠: 長方形枠(ロンパースのサイズに合うもの)。
- スタビライザー: ノーショー・ポリメッシュ(2枚)。
- 接着: 仮止めスプレー(例:Spray n Bond系)/HeatnBond Lite(リボン用)。
- 生地: クリーム色スウェット(上側)、ハロウィン柄プリントコットン(下側)、黒生地(リボン)。
- 小物: 消えるチャコペン、ハサミ、アイロン(動画ではCricut EasyPress Mini)。

消耗品・下準備(現場目線の“効く”リスト)
チュートリアルでは省略されがちですが、ここを押さえると失敗が減ります。
- 針の選定: 75/11のボールポイント針。
- 理由: スウェットはニットなので、シャープ針だと糸を切って穴が残ることがあります。ボールポイントは繊維の間を押し分けて刺さりやすいです。
- カット用ハサミ: アップリケ用(ダックビル)またはカーブ刃の刺繍ハサミ。
- 理由: 枠内で下の生地を傷つけずに、狙ったラインで切り進めやすい。
- 清掃: 糸くずブラシ。
- 理由: スウェットは毛羽が出やすく、ボビン周りに溜まると糸絡みの原因になります。
- 端切れテスト: 「スウェット+プリント+スタビ」のサンドイッチを端切れで再現。
- 理由: カットの力加減(上だけ切る感覚)を本番前に掴めます。
スタビライザー選び(なぜ2枚なのか)
動画では ノーショー・ポリメッシュを2枚、貼り合わせてから枠張りしています。
この選択の理由
- 安定性: スウェットは重くて伸びるため、1枚だと引っ張られて歪みやすい。
- 肌当たり: ロンパースのように肌に当たりやすいアイテムでは、ポリメッシュの柔らかさが有利。
- 形崩れ対策: 2枚にすることでアウトラインの引きつれを抑え、円が楕円になりにくくなります。
下に仕込む生地(見せる柄)の選び方
下のプリント生地は、スタビライザーの上に 表(柄面)を上 にして置きます。
- 配置のコツ: 大柄プリントの場合は、スプレー前に一度枠の上で“見せたい柄が窓の中心に来るか”を仮合わせしてから固定すると、狙い通りの見え方になります。

作業前チェックリスト(ここが揃うまで進まない)
- 針: 75/11ボールポイントの新しい針に交換済み
- 下糸(ボビン糸): 途中で足りなくならない量が巻けている(サテン途中停止は継ぎ目が目立つ)
- スタビ: ポリメッシュ2枚を用意済み
- 生地プレス: 下のプリント生地がフラット(シワはそのまま縫い込まれます)
- スプレー環境: 換気できる場所で仮止めする(機械の近くで噴霧しない)
- チャコ確認: 消えるインクが生地で問題ないか目立たない所でテスト
Step 1: 下準備と枠張り
ここでズレると、胸中心ではなく脇寄りに入るなど致命的になります。刺繍は枠張りで8割決まります。
ポリメッシュ2枚の意味
動画では、2枚を貼り合わせてから枠に入れています。
- 触感チェック: 2枚を重ねた状態が、薄いカード紙のように“しっかり”感じつつ、布のようにしなるのが理想です。土台が弱いと、針が刺さる瞬間に生地が沈む「トランポリン現象」が起き、目飛びの原因になります。

センター出し(位置合わせの基準作り)
動画の方法は、現場でも通用するシンプルで強い手順です。
- スタビ側: 枠張りしてテンションを決めた後に、スタビに十字の中心線を引く。
- 服側: 前身頃を二つ折りして視覚的中心を取り、印を付ける。
- 合わせ: 後工程で、この2つの十字を一致させます。

チェックポイント:「ドラム皮」テスト
- 枠に張ったスタビを軽く叩き、張りのある音がするか確認。
- 見た目: メッシュの目が曲線に歪まず、まっすぐ見えるか。
補足(テンションの考え方) 枠張りは“強すぎず弱すぎず”が正解です。緩いとシワ・波打ち、強すぎると枠跡(繊維が潰れてテカる)や、スタビが抜ける原因になります。
- つまずき: スウェットのような厚物で、内枠を押し込むのが大変/手首が痛い/枠跡が出る
- 選択肢: そうした負担を減らす目的で、マグネット刺繍枠(初出:マグネットで生地を挟み込むタイプの刺繍枠)を使う現場もあります。リングを押し込む力が不要になり、厚みのある箇所でも固定しやすくなります。
Step 2: 刺繍工程(順番厳守)
ここからは実行フェーズです。刺繍データの工程順に、手を入れるタイミングを間違えないのがコツです。
位置縫い〜タックダウン
A) 下に仕込む生地を貼る(フロート法)
動画では、下のプリント生地を「枠に直接挟まず、上に貼る」方法です。
- 枠張りしたスタビに仮止めスプレーを軽く吹く(機械から離れた場所で)。
- プリント生地を 表を上 にして中心を合わせ、中央から外へ撫でて密着させる。


- 触って確認: ふくらみやシワがあれば一度持ち上げて貼り直します。押さえが引っ掛かるとズレや糸切れの原因になります。
B) トレース縫い(下描き)
デザインを呼び出して最初の工程を実行します。 ここは、ゴースト位置を示す ランニングステッチ(下描き線)です。


C) スウェット前身頃(上の層)を重ねる
- 枠を機械から外す(枠張りは崩さない)。
- スウェット前身頃の 裏側 に仮止めスプレーを吹く。
- 前身頃の中心印と、枠(スタビ)の中心印を合わせる。
- フロート: スタビを枠張りしたまま、その上に前身頃を貼り付けて平らにする。


厚物で枠に挟み込むのが難しい場合、この方法は特に有効です。
- 工程の改善案: 同じ配置を何枚も繰り返す場合、手合わせは疲れてズレが出ます。マグネット刺繍枠 用 枠固定台 を使うと、治具で位置を揃えた状態で固定しやすくなり、「曲がって付いた」を減らせます。
- タックダウン→仕上げ: 枠を機械に戻し、次工程を実行。スウェット層を押さえるタックダウンの後、ゴーストの仕上げアウトラインが全レイヤーを貫通して縫われます。
チェックポイント
- 干渉: ロンパースの余り布が針棒の下に入り込んでいないか。
- 平面性: 上の層が引っ張られず、自然にフラットに乗っているか。
通常アップリケ(リボン)を追加する
リボンはミックスメディア的な立体感が出ます。ここは 通常のアップリケ です。
- 配置縫い: リボン位置を示す線を縫う。
- 下準備: 黒いリボン生地の裏にHeatnBond Liteをアイロンで接着(張りを出し、ほつれを抑える)。
- 配置→タック: 配置線に重ね、タックダウンを縫う。
- トリム: 枠を外し、縫い目ギリギリまで余分をカット。
- サテン仕上げ: 最終のサテンで端を覆う。


現場のコツ: サテン仕上げ中の音を聞きます。一定のリズムで回っていれば正常。重い「ゴツゴツ」した音が出るときは、接着芯+スウェット+スタビの重なりで針に負荷が出ている可能性があります。動画内で具体設定は出ていませんが、無理を感じたら速度を落として安定させます。
刺繍工程の最終チェック(カット前)
- 向き: 首側に対してデザインが正しい向きか
- 巻き込み防止: 後身頃などが下に入り、表裏を一緒に縫っていないか
- 貼り付き: 上の層が浮いていないか(浮き=シワの原因)
- 順番: スウェットを乗せる前にトレース縫いを実行したか
- 完了: 仕上げ縫いまで終わってから、リバースのカットに入るか
Step 3: カットして“見せる”
ここが手術パートです。焦らず、一定の余白で揃えます。
カットラインのマーキング
動画では、ゴーストの縫いラインから 内側に1/4インチ をぐるっとマーキングしてから切っています。
- 見え方の意図: 通常アップリケのように縫い目ギリギリまで切るのではなく、クリーム色スウェットを1/4インチ残して「額縁」っぽい表情にしています。
補足ここでアウトラインが歪むと、1/4インチの一定幅が取りにくくなります。刺繍ミシン 用 枠入れ の基本(テンションと平面性)を守るほど、カット幅が揃って見栄えが安定します。
きれいに切るためのハサミ運用
鉄則: 切るのはスウェット(上の層)だけ。
- つまんで穴を作る: ゴースト中央付近でスウェットだけをつまみ、下のプリントと分離して小さく切り込みを入れる。
- 刃の向き: 切り込みから刃を入れ、マーキングに沿って進める。ダックビルを使う場合は、幅広の“ビル”を下側(プリント側)に当ててガードし、上側だけを切る。
- 抜き取り: 一周切れたら、切り取ったスウェット片を外して柄を出す。

チェックポイント
- 深さ: 下のプリントが傷なく見えているか。
- 縫い糸: 仕上げ縫い(アウトライン)を切っていないか。
補足スウェットフリースは比較的寛容です。多少カットラインがガタついても、洗濯で端が少し丸まり、目立ちにくくなることがあります。
仕上げ(ロンパースとして完成させる)
ここからは「作品」から「服」へ。
組み立てのコツ
- 裏側の整理: 裏返して、ゴースト外周の縫い目の外側に沿ってポリメッシュをカット。角は丸く落とします。
- 肌当たり: スタビの角が尖っていると当たりやすいので、丸めるのが安全です。
- 縫製: ロンパースを縫い合わせます(動画ではロックミシン)。
- タグ: ヒートプレスでタグを圧着しています。
量産目線の補足: 単針機は色替えが増えるほど段取りが伸びます。動画は単針で進行しています。
- 段階的な改善: 枠の着脱を楽にする目的でマグネット枠を導入する現場もあります。
作業完了チェック(最終)
- 見え方: 1/4インチの縁が概ね均一に出ている
- 縫い目: 切り込みで縫い糸を傷つけていない
- 肌当たり: 裏のスタビが滑らかで角が立っていない
- プレス: 枠跡が必要に応じて整っている
トラブルシューティング(症状→原因→対処)
| 症状 | 主な原因 | その場の対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| ゴースト位置が胸中心からズレた | 目視合わせの誤差 | 解くのは難しいため、サンプル扱いにする判断も | 服とスタビの中心十字を必ず作り、十字同士で合わせる |
| アウトライン周りが波打つ(パッカリング) | 張り不足/貼り不足 | スチームで多少落ち着く場合あり | 仮止めで全面を密着。再現性を上げるなら 刺繍用 枠固定台 の考え方で位置決めを固定化 |
| 下の生地やスタビまで切ってしまった | ハサミの刃先が下に向いた | 裏から小さく当て布・接着で補修 | ダックビル等で下層をガードし、刃を寝かせる |
| 糸絡み(鳥の巣)/詰まり | 下糸周りの毛羽詰まり/上糸掛け不良 | 絡みを除去し、上糸を最初から掛け直す | スウェットは毛羽が出るため、数着ごとにボビン周りを清掃 |
| 枠跡が強く残る | 枠の締め過ぎ/枠の相性 | スチームや洗いで軽減することが多い | 厚物・起毛は締め過ぎない。必要に応じてマグネット枠を検討 |
| 下糸(白)が表に出る | 上糸テンションが強い | 上糸テンションを少し緩める | まず下糸側の状態を安定させ、毛羽詰まりも確認 |
判断フロー:スタビと作業手順の選び方
START:上側(カットする側)の生地は?
- 伸縮するニット(スウェット、Tシャツ等)
- 必要: 安定性+肌当たり。
- 推奨: ポリメッシュ(カットアウェイ系)。
- 薄手: 1枚
- 厚手(スウェット): 2枚
- 安定した布帛(デニム、帆布、コットン等)
- 必要: かっちり感。
- 選択肢: ティアアウェイ、またはポリメッシュ1枚
NEXT:作業量は?
- 少量(1〜5枚):
- 手段: 通常枠+仮止め+手合わせ
- 重点: センター出しと貼りの丁寧さ
- 継続的(毎月20枚以上など):
- 課題: 手首負担、位置ズレ、枠の着脱時間
- 手段: マグネット枠+位置決め用の枠固定台(フーピング工程の標準化)
まとめ(仕上がりを安定させる要点)
リバースアップリケは、工程を分解すると再現できます。スタビを枠張りし、下の生地をフロートで固定し、トレースで地図を作り、仕上げ縫い後に上だけをカットして窓を開ける——この順番が守れれば、見栄えは安定します。
“魔法”は機械ではなく、下準備にあります。枠張りのテンション、適切なスタビ、そして切りやすいハサミ。この3点が揃うと、狙った「見せ方」が作れます。枠張りの負担や再現性の課題が出てきたら、刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のような選択肢で工程の摩擦を減らすのも一手です。
