Table of Contents
1 プロジェクトの概要
ミンキーの手触りを活かしたかぼちゃのプチぬいは、ハロウィンからサンクスギビングまで長く飾れる季節アイテム。今回はオレンジの定番カラーと、パープルの非定番カラーを例に、顔の刺繍・金色のアウトライン・茎のアップリケを組み合わせた「イン・ザ・フープ」構成で作ります。パターンは市販データ(Creative Fabrica)の使用を前提とし、サイズ展開があるため“かぼちゃファミリー”も楽しめます(具体的なサイズやミシン設定の数値は動画中で未記載)。
1.1 イン・ザ・フープとは
刺繍ミシンの枠の中だけで主要工程を完結させる方法です。ステッチ順序に沿って表布・アップリケ・裏布までを縫い合わせ、枠から外してひっくり返し・綿詰め・手縫いで口を閉じれば完成します。フローティング手法と相性がよく、厚みや毛足のあるミンキーでも仕立てがきれいに決まります。
1.2 いつ・なにを作るか
・秋のテーブル周りや玄関のアクセントに。 ・色違いで量産し、高さやサイズ違いでリズムをつけるのもおすすめ。 ・表情刺繍は黒の面縫い+金のアウトラインで映える仕上がりになります。
1.3 本記事で扱う機材・制約
多針機での手順と注意点に絞って解説します。ミシン速度やテンション、押え圧などの具体値は動画中に明示がないため、本記事では“仕上がりで確認すべき状態”を基準に説明します。また、生地の固定では、状況によりマグネット刺繍枠を活用するとフローティングが安定しますが、動画では標準枠を使用しています。

2 準備と用意するもの
2.1 材料
・表布:オレンジのミンキードット、パープルのLuxミンキー(毛足長め) ・茎:オリーブグリーンのミンキードット(オレンジ用)、グレーのミンキー(パープル用) ・裏布:各色の同生地(右面を内側に) ・芯材:12インチ幅のカットアウェイ安定紙(12×8の枠に合う幅) ・トップ用:水溶性安定フィルム(毛足押さえ) ・綿:ポリフィル(量は好みで) ・糸:黒(面縫い)、金(アウトライン)、生地色に合わせた手縫い糸
2.2 道具
・多針刺繍ミシン(EM-1010相当の機能) ・12×8の刺繍枠 ・糸切りはさみ/小ばさみ ・手縫い針
2.3 データと作業スペース
・Creative Fabricaの「Stuffed pumpkin」刺繍データ ・作業台:カッティングマット上でカットするスペース ・手縫いスペース:明るく、針が迷子にならない環境
プロのコツ:毛足の長いミンキーには必ず水溶性フィルムを重ね、面縫いが毛並みに沈まないようにします。特に目・鼻・口など密度の高い面は効果が大きいです。なお、別売の刺繍用 枠固定台を使うと、フローティング時の位置決めと再現性が上がります。
クイックチェック:
- カットアウェイは枠にピンと均一に張れているか。
- フローティングする表布はしわ・波打ちがないか。
- ポリフィルは十分な量を手元に用意したか。
注意:コメントでは家庭用単針機での可否も話題になりましたが、本稿は多針機での手順に基づきます(機種固有の枠サイズ・刺繍範囲は各自確認)。

3 セットアップと下準備
3.1 安定紙を枠に張る(必須)
12×8の枠にカットアウェイをピンと張ります。たるみがあると面縫いで歪み・波打ちが出ます。張力が不足していれば張り直しを。
3.2 フローティングの考え方
表布は枠に挟まず、安定紙の上に置いて縫います。必要に応じて仮止めスプレーやテープでズレを防止。フローティングは素材の厚みや起毛を活かせ、後工程のひっくり返しも楽になります。ミンキーの厚手素材では、マグネット刺繍枠 11x13のような強保持力の枠があると、置き直しや再セットが容易です(本動画では未使用)。
3.3 糸色の準備と順序
黒(面)→金(アウトライン)→茎のアップリケ→本体の最終アウトライン→裏布取り付けの順で進みます。糸替えはステップの切れ目で行い、糸道の掛け違いがないか毎回確認しましょう。
クイックチェック:
- 目・鼻・口の密度が高い面縫いに向け、上糸テンションは“沈み込みなし・糸割れなし”の状態か。
- 金糸の通り道にひっかかりがないか。
- 表布の毛並み方向を意識して配置したか。

4 手順:刺繍から縫い止めまで
以下はオレンジ(定番)とパープル(非定番)の2例で、工程は同様です。
4.1 顔の刺繍(オレンジ)
1) フローティング:オレンジのミンキーを安定紙上に平らに置く。 2) 位置決めステッチ:本体輪郭の下縫いで位置を確定。

3) 水溶性フィルムを重ね、黒糸で目・鼻・口を面縫い。 4) 金糸に替え、目・鼻・口のアウトラインで表情を強調。

プロのコツ:水溶性フィルムは面縫い前に重ね、端で軽くテープ留めしておくと走行風でめくれません。なお、多針環境では色替えの段取りを短縮するため、同色ジョブをまとめると効率が上がります。
注意:フィルム未使用だと、ミンキーの毛足に刺繍が沈み輪郭が甘くなります。必ず重ねましょう。
4.2 茎のアップリケ(オレンジ)
1) 指示ステッチが出たら、茎用のオリーブミンキーを載せてタックダウン。

2) 小ばさみでタックダウン外周ぎりぎりを丁寧にトリミング。

3) 最終アウトラインで茎の縁を縫って固定。
クイックチェック:
- トリミングでタックダウン糸を切っていないか。
- 茎布の毛並み方向が本体とバランスしているか。
4.3 裏布の取り付けとカット(オレンジ)
1) 本体の最終輪郭ステッチの直前に、同生地の裏布を“表面を内向き(右面同士)”で重ねる。 2) 全周の最終アウトラインで表裏を一体化。 3) 枠から外し、ステッチの外側に小さな縫い代を残してカット。返し口は残す。

4) 返し口から表に返し、縁を指先で整える。
プロのコツ:カットは“ステッチを決して切らない”ことが肝心。曲線は小刻みにハサミを入れ、刃先だけで送ると安全です。
4.4 綿詰めと口の手縫い(オレンジ)
1) ポリフィルを少量ずつ角や縁から入れ、最後に中央を満たす。

2) 手縫い糸を生地色に合わせ、糸端を二重結び。 3) ラダーステッチで返し口を閉じ、最後は玉止め→玉を内部に引き込み糸をカット。

期待される結果:表情が正面を向き、表面は均一に膨らみ、縫い目は表から見えません。結び目も表面に出ず、手触りが滑らかであること。
4.5 顔の刺繍(パープル)
1) パープルのLuxミンキーをフローティングし、輪郭下縫い→黒の面縫い→金アウトラインの順に進める。

2) 毛足が長いので、水溶性フィルムは外周までしっかり覆う。
コミュニティから:多数のコメントで「パープルが好き」「ふわふわが可愛い」との声が目立ちました。非定番色でも表情が映える配色(黒×金)は好評です。
4.6 茎のアップリケ(パープル)
グレーのミンキーを載せてタックダウン→外周をトリム→最終アウトラインで固定。

4.7 裏布の取り付け・カット・返し(パープル)
オレンジと同様に裏布を重ねて全周を縫い、返し口を残して外周をカットし、表に返します。
4.8 綿詰めとラダーステッチ(パープル)
均一に詰め、ラダーステッチで閉じます。最後に小ばさみで縫い目周辺の毛並みを軽く起こすと、縫い目がさらに目立たなくなります。


クイックチェック:
- 表裏の最終アウトラインが切れていないか。
- 綿が塊にならず、角まで行き渡っているか。
- 手縫いの縫い目が正しく“梯子状”にかみ合っているか。
5 仕上がりチェック
- 面縫い:黒の面がムラなく、地の色が透けない。
- アウトライン:金のステッチが均一で、角の収まりがきれい。
- 形状:全体がふっくら球状で、シワが寄っていない。
- 縫い目:返し口はラダーステッチで不可視、結び目は内部に隠れている。
- 触感:ミンキーの毛並みが潰れていない。必要に応じて指先や小ばさみで毛を整える。
プロのコツ:毛足が倒れて表情の立体感が弱い場合、ドライヤーの冷風を遠目から当てて毛流れを整えると印象が戻ります(熱は不可)。また、フローティングが不安ならhoopmaster 枠固定台の基準で置き直しの再現性を確保しましょう。
6 完成イメージとその後
オレンジとパープルの2点は、どちらも黒の面×金のアウトラインで表情がくっきり。パープルは“モダンで可愛い”とコミュニティでも好評でした。サイズ違いのパターンで量産すれば、家族のように並べたディスプレイが映えます。
・ディスプレイ例:玄関、棚の上、テーブルセンターの両端など。 ・メンテナンス:埃は粘着テープややわらかいブラシで。水溶性フィルムの残りは自然に消えます。
アイデアの広がり:コメントでは季節のバリエーション(七面鳥、サンタなど)の声もありました。手順は共通化できるため、顔のパーツや配色を変えるだけで応用可能です。
7 トラブルシューティング・リカバリー
症状:面縫いが毛足に沈む→ 原因:水溶性フィルム未使用/密度と毛足の不整合 → 対策:水溶性フィルムを全面に、必要なら2枚重ねで対応。
症状:布が走行中にズレる→ 原因:フローティングの仮止め不足 → 対策:仮止めスプレー/テープを追加。強保持が必要な場合はricoma mighty hoops マグネット刺繍枠のような高保持枠を検討(本動画では未使用)。
症状:タックダウンを切ってしまった→ 原因:トリミング時に刃先が入り過ぎ → 対策:もう一度タックダウンを重ね縫いし、ほつれはフレイチェック(動画内の明示はなし)。
症状:最終カットで縫い目を切った→ 原因:外周カットの攻め過ぎ → 対策:縫い代を控えめに確保し、曲率のきつい箇所は小刻みに。
症状:綿が偏ってデコボコ→ 原因:一度に多く詰めた → 対策:少量ずつ“端→中央”の順で詰め直し、角は綿棒などで押し込む。
症状:返し口の縫い目が目立つ→ 原因:ラダーステッチの幅不均一/糸色不一致 → 対策:糸色を生地に合わせ、幅を一定に。最後の玉は内部に引き込んでからカット。
クイックチェック:仕上げ前に、指で表面をなでて毛並みと膨らみを均し、光の反射でシワや凹みを確認。気になる箇所だけ綿を追加・調整します。
コメントから(要点)
- 非定番色(パープル)は「ふわふわで可愛い」という声が多数。配色は黒の面×金アウトラインが高評価。
- ITHプロジェクトが好きという声も多く、量産やサイズ違いの展開に手応えあり。
- 家庭用単針機の利用可否についての質問がありましたが、動画では多針機での手順のみ。一般論としては、対応枠・刺繍範囲・データサイズが合えば再現可能です。例えばアクセサリとしてbrother pe800 用 マグネット刺繍枠を使うケースもありますが、本動画では具体的な検証はありません。
実践者メモ:より安定を求める場合は、ミンキーのフローティング時にマグネット刺繍枠 ricoma em 1010 用やmighty hoop マグネット刺繍枠のような高保持枠の特性を理解すると、再現性が高まります(本記事の手順自体は標準枠で完遂可能)。また、設置・位置合わせの効率化にはマグネット刺繍枠とあわせて基準治具の活用が有効です。
