Table of Contents
1 プロジェクトの概要
カットワークは、刺繍で縁取りを作ってから内部の生地を切り抜き、透ける空間を作る技法です。本ガイドでは、花のボーダーデザインを題材に、銀のメタリック糸で下地を形成し、ターコイズで縁取りを重ね、最後にカットで仕上げる流れを再現します。動画では特定機種の数値設定は示されていないため、本記事では工程の意味、注意点、チェック方法に絞って解説します。
1.1 適用シーンと避けるべきケース
- 透け感の美しさを活かしたいボーダーや裾飾りに最適です。
- シアー系や軽めの生地が映えますが、具体的な素材名やスタビライザー種別は動画内で明示されていません。
- 厚すぎる生地や大きく伸びる生地では、カット時にエッジが荒れやすいため注意します。
1.2 このガイドで得られること
- 下地ステッチ→縁取り→カットの最適な順序が理解できる。
- メタリック糸とサテン縁取りの品質を安定させるチェックポイントがわかる。
- 仕上がりの良否をその場で判断するための指標が手に入る。
1.3 用語ミニ解説
- サテンステッチ:縁取りに用いる高密度ステッチ。切り口のほつれを封じる役目を担う。
- カットワーク:刺繍で囲った内側の生地を切り抜いてレース状の抜け感を作る技法。
2 準備するもの
以下は動画に基づく実際の使用物です。
- 刺繍ミシン(機種の詳細数値は未記載)
- 小型で鋭いハサミ(先の尖った糸切り・精密バサミ)
- 下糸ボビンケース
- 生地:薄いブルーの透け感ある布
- 上糸:銀のメタリック糸、ターコイズの刺繍糸
- データ:花のボーダーのデジタイズ済み刺繍データ

コメントでは機械名と価格に関して「SINGER 20u(工業用ジグザグ)」が約10年前で約750米ドルという回答があり、バリエーションについては20u/20u 43を所有し、使用は20uモデルとされています(価格は当時のもの)。また、別コメントには「現在使っているのは SAKURA - 811 / 833」との投稿がありましたが、機材・資材の詳細仕様や入手先は動画では特定されていません。
- 補助ツール例(任意):フープの水平保持や位置合わせを助ける道具は作業安定に有効です。特にボーダーの長手方向を正確に走らせる際は、刺繍用 枠固定台 のような支えがあると歪みを抑えやすくなります。
- 位置決めの安定化に、マグネット刺繍枠 を活用すると、シアー生地でもテンションムラを避けやすい場面があります(機種適合は要確認)。

- 複数コマの連結が必要なら、ミシン刺繍 マルチフーピング のワークフローを事前に計画して、継ぎ目の位置合わせを簡素化しましょう。
クイックチェック
- デザインファイルは花のボーダーになっているか。
- 銀糸とターコイズ糸の準備は完了か。
- 生地はしわなくフープに収まっているか。
3 セットアップと事前調整
3.1 フーピングと水平取り
ボーダーは“真っすぐ”が命です。フープの基準線と生地の耳(または織り目)を平行に合わせ、軽く張った状態で固定します。ここでズレがあると全体の流れが歪んで見えます。

- 生地の滑りやたわみを最小化するため、機種適合が取れるなら マグネット刺繍枠 brother 用 を選ぶと反力のかかり方が均一になりやすく、繊細な縁取りでもブレを抑えられます。
3.2 糸通しとテンション確認
銀のメタリック糸は摩擦や急角度に弱い傾向があるため、糸道の曲がりを少なくし、テンションは強すぎない範囲で安定させます。試し縫いで上糸・下糸バランスを見ておきましょう。

注意
- メタリック糸で“キラつき”が出ずザラつく場合、ガイドの角度やテンションを見直します。糸切れが続くなら針の状態も要検証。
3.3 デザインの位置合わせ
ミシンの原点合わせとボーダーの基準線を一致させ、縫い始め〜終わりまで一様に走るかをプレビューで確認します。必要なら試し縫いでアウトラインの精度を検証しましょう。

プロのコツ
- 長尺ボーダーや複数パネルの連結では、hoopmaster 枠固定台 のサポートがあると再フーピング時の再現性が高まります。
チェックリスト(セットアップ)
- 生地は平行・水平・適正テンションで固定したか。
- 上糸(銀→ターコイズ)の切り替え準備は良好か。
- デザインの開始点・終点と縫走行が想定通りか。

4 手順:ステッチからカットワークまで
以下の手順は動画の進行に忠実です。各ステップの目的と、途中での自己確認ポイントを明記します。
4.1 銀糸で初期アウトラインを縫う(00:09–00:22)
目的:花の形状を布上に正確に描き、後続の充填・縁取りのガイドとする。
- フープ済み生地を装着し、銀糸でアウトラインを縫います。
- 期待する中間結果:花形の輪郭が均一なステッチで現れる。
- チェック:テンションが適正で、デザインパスに忠実であること。
注意
- 糸調子が緩すぎると輪郭が波打ち、強すぎると針孔が大きく見えることがある。問題があれば即時に調整。
チェックリスト(Step1)
- 輪郭の密度はムラなし、糸浮きなし。
- 針音や糸摩擦音が不自然でない。
4.2 花びらを銀糸で充填する(00:23–01:10)
目的:カットワーク前の下地として十分な密度を確保し、色面に輝きを与える。
- 花びら内部を銀糸で詰めます。密度・被覆に注目しながら進行。
- 期待する中間結果:隙間のない、均一で光沢のある充填。
- チェック:目飛びや隙、緩みが見られないこと。
プロのコツ
- もし生地の保持が不安定なら、機種適合の 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 を検討すると、局所的なたわみを抑えて充填のムラを減らせます。
4.3 ターコイズで輪郭を縫い始める(01:11–01:31)
目的:銀の下地に対してコントラストを付け、形状をシャープに強調する。 - 上糸をターコイズに交換し、先に縫った銀の充填に沿って縁取りを開始します。
- 期待する中間結果:銀面との隙間がなく、色の乗りが明瞭な輪郭。
- チェック:色替え後の糸経路に引っかかりがないか、下糸バランスが乱れていないか。
クイックチェック
- 輪郭が充填端に正確に重なっている。
- 糸道のテンション変化で糸締まりが乱れていない。
4.4 ターコイズの二層目・複数パスで縁取りを強化(01:32–02:58)
目的:サテン縁取りの密度を上げ、カット時に端がほつれないよう“壁”を作る。 - 同じターコイズで複数パスを走らせ、縁取りを厚く・密に構築します。





- 期待する中間結果:サテンの幅と密度が均一で、輝きとエッジの直線性が安定。
- チェック:目飛びや糸切れがない。ステッチが波打たず、端が滑らか。
注意
- 高密度域では糸切れが起きやすい。糸切れ時は上糸を再通しし、針先の欠けや摩耗も確認する。
プロのコツ
- ターコイズの縁取りを“外周”までしっかり縫っておくと、カット後のエッジが驚くほどクリーンに見えます。これはボーダー全体の完成感に直結します。
チェックリスト(縁取り強化)
- サテンの幅・密度にムラがない。
- 銀の充填とターコイズの縁取りの境界に段差や隙間がない。
- 外周のエッジが連続している(途切れなし)。
4.5 花びら内部のカット(02:59–03:14)
目的:縁取りで囲われた内側の生地を除去し、透ける“抜け”を作る。 - 先の尖った小鋏で、花びら内部の生地だけを慎重に切り取ります。

- 期待する中間結果:縁取りの糸を切らず、内側の布のみをクリーンに除去。
- チェック:糸を誤って切っていないか、切り口に毛羽立ちが残っていないか。

注意
- 一気に長く切ると、縁の下に刃が入りステッチを傷める恐れがあります。刃先を縁取りに沿わせすぎないよう、少し内側から細かく刻む要領で進めましょう。
プロのコツ
- 余白を“少し残して”最初に大まかに抜き、最後に縁近くを微調整すると糸切断のリスクが激減します。切り屑はピンセットで取り、糸くずは粘着テープで軽くタッチして除去します。
チェックリスト(カット)
- 縁取り糸を一切切っていない。
- 切断面が滑らかで、ほつれ・毛羽が最小。
4.6 参考:用具と保持の工夫
- シアー生地のズレ対策として、マグネット刺繍枠 brother 用 のような適合枠を選ぶと安定しやすいケースがあります。
- 長辺ボーダーを複数回に分ける際は、マグネット刺繍枠 と定規・マーキングを併用して基準線を確実にトレースしましょう。
5 仕上がりチェック
完成前後で、次の観点を確認します。
5.1 視覚チェック
- サテン縁取りの幅が一定で、光の反射が滑らかに流れる。

- 切り抜いた花びら内部のエッジが揃い、糸のほつれなし。
- ボーダーの直進性が保たれている(始点から終点まで蛇行なし)。
5.2 触感チェック
- 縁取りが“固い板状”にならず、適度に柔らかい。
- カット面にざらつきがない(指で軽くなぞって判断)。
クイックチェック - 斜めからの光でサテンの帯が“面”として連続して見えるか。


6 完成イメージと活用
動画の仕上がりは、花のボーダーが均一に走り、銀の充填とターコイズのコントラストが美しいカットワークです。カーテンのヘム、テーブルリネンの縁、軽やかなショールの端飾りなど、透け感を活かした用途によく合います(これらは一般的な活用例であり、動画内で具体的使用先は示されていません)。
- 作品の撮影角度を変えると、刺繍の立体感や糸光沢を強調できます。
プロのコツ
- 初心者への推奨という観点では、まずは扱いやすい機材・枠を選ぶことが近道です。例えば おすすめ 刺繍ミシン 初心者向け の情報を参考にしつつ、ワークフローに合う枠や糸を少数精鋭で揃えると、上達が早くなります。
7 トラブルシューティングとリカバリー
症状→原因→対処の順に整理します。
- 症状:銀糸の目飛びや糸切れが頻発する。
- 可能原因:糸道の角度・摩擦、テンション過多、針摩耗。
- 対処:糸道のカーブを緩やかに、テンションを微下げ、針を点検・交換。
- 症状:ターコイズのサテンに段差・波打ちが出る。
- 可能原因:生地保持の不均一、密度と速度のミスマッチ。
- 対処:フーピングを見直し、適合する枠(例:マグネット刺繍枠 brother 用)で均一保持、試し縫いで速度・密度の妥当性をチェック。
- 症状:カット時に縁取り糸を切ってしまう。
- 可能原因:刃先を縁取りに近づけすぎ、長いストロークで一気に切った。
- 対処:内側から小刻みに進め、最後に縁取り近くを微修正。刃先だけで少しずつ摘んで切る。
- 症状:切り口が毛羽立つ/ほつれる。
- 可能原因:サテン密度が不足、切断後の繊維残り。
- 対処:サテンのパスを追加してエッジを強化し、残った繊維は再トリム。粘着テープで微細な綿埃を除去。
- 症状:ボーダーが終盤で蛇行する。
- 可能原因:再フーピング時の基準線ズレ。
- 対処:位置合わせ治具(例:刺繍用 枠固定台)で再現性を高め、長手方向の基準線を常に再確認。
コメントから
- 機械の名称と価格に関する質問には「SINGER 20u、約10年前で約750米ドル」との回答が寄せられています。
- どの20uかという問いには「20u/20u 43を所有、使用は20u」との回答がありました。
- “刺繍後のカット方法”についての要望も見られました。本記事の4.5で、刃先の入れ方と進め方を具体化して解説しています。
決定の分岐の目安
- 生地が非常に薄い・シアー寄り→保持を最優先し、マグネット刺繍枠 や補助具の併用でテンション均一化。
- 長尺を複数回の縫製で継ぐ→ミシン刺繍 マルチフーピング を前提に基準線と再フーピング治具を併用。
- 機種適合や入手性→手持ちの brother ミシン などに適合する枠(例:マグネット刺繍枠 brother 用)を優先して選定。
仕上げ前の最終チェックリスト - サテン縁取りの連続性と密度は十分か。
- 切り抜き部の毛羽は完全に除去したか。
- ボーダーの直進性と端の整合は取れているか。
