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1 プロジェクトの概要
カットワーク刺繍は、輪郭を縫ってから一部の布を切り抜き、開口部に装飾ステッチを施してレースのような透かしを作る技法です。動画では軽めの生地にフリーモーションで輪郭と葉モチーフが縫われ、その内側をハサミでカット後、バーとグリッドのステッチで開口部を補強・装飾しています。最終的に、しなやかなレース効果を持つテクスチャ豊かな一枚に仕上がります。
この手法が向いているのは、部分的な透け感や軽やかさを加えたい場面です。例えば、小物のアクセントや、ブラウスのヨーク、カーテンの縁などに適しています。一方で、強い摩擦や引っ張りが想定される箇所には不向きな場合があります。その場合は開口の大きさを控えめにするか、密度高めの装飾ステッチで補強する判断が有効です。
プロジェクトの前提として、布をしっかり枠張りし、フリーモーションで安定した送りを得ること、そしてカット時に縫い目を傷つけない手さばきが求められます。なお、動画では特定のスタビライザーや接着材の使用は明示されていません。必要に応じて、各自の環境に合わせて選択してください。
2 準備するもの
動画に基づく最低限の道具と材料は次のとおりです。
- ミシン(フリーモーションでの縫いが可能なもの)
- 刺繍枠(生地を強く張れるもの)
- ハサミ(先が細く鋭いもの)
- 生地(軽めで縫い目が映えるもの)
- 刺繍糸(輪郭と装飾ステッチ用)
コメント情報によれば、製作者は工業用ジグザグミシン SINGER 20u を使用しています。価格については約10年前の情報でおよそ750USDとの記載があり、現行価格は不明です(コメントに基づく補足)。
選択の指針(動画で未言及の点は一般的な判断基準):
- 生地:薄手〜中薄手で目の詰んだものは、カット後の端が乱れにくく扱いやすい。
- 糸:輪郭はやや太め、装飾ステッチは段差の出にくい糸番手が扱いやすい。色はコントラストをつけるとレース感が際立つ。
- ハサミ:先端の湾曲が少ない精密タイプが、縫い目を避けて狙った部分だけを摘まみやすい。
設備拡張のアイデア(動画では使用は確認できません): 安定した枠張りと反復作業の効率化には、刺繍用 枠固定台 を併用すると作業姿勢が安定し、細部の精度が高まりやすくなります。
クイックチェック:
- 枠張りは「弾くような張り」を目指す。
- 下糸・上糸のテンションは、試し縫いで裏面の締まりと表面の目揃いを確認。
- ハサミは必ず研いだものを用意する。

3 セットアップ(開始前の安定化)
3.1 枠張りと位置合わせ
生地を刺繍枠に均一な張力で固定し、モチーフの中心や基準線を把握します。動画では、枠を手で回しながらミシンを進めるため、枠内の生地が局所的にたわまないよう、四辺のテンションを均等に保つことが重要です。状況によっては、マグネット刺繍枠 を用いると着脱が容易になり、定位の微調整も素早く行えます(動画では明示なし)。
3.2 ミシン準備
フリーモーションに適した押えや送り設定を行います(動画中に具体設定は提示されていません)。重要なのは、針落ち位置を常に視認できること、そしてストローク中に布の抵抗が大きく変化しないことです。始点はモチーフの端、返し縫いで留めるか、後処理で糸始末を行うかはデザインに合わせて選びます。
3.3 安全と姿勢
針の進行方向に指を置かない、枠の外周を持って回転させる、カット工程では刃先の角度を一定に保つ——これらはすべて事故防止と仕上がり品質の両面に効きます。特に切り抜き直前は、輪郭が閉じているか必ず確認しましょう。
プロのコツ: グリッドなど直線を多用するデザインでは、目安線として最初の2〜3本を「基準ピッチ」で縫い、その間隔に合わせて残りを埋めていくと、等間隔が自然に維持されます。必要に応じて、hoopmaster 枠固定台 を使って枠の水平を一定に保つと、微妙なズレを抑制できます。



4 手順(アウトライン→カット→装飾ステッチ)
4.1 アウトラインとモチーフの縫製
- 枠に張った生地を針下へセットし、スカラップの輪郭をフリーモーションで連続的に縫います。

- 旋回は枠全体を小刻みに回すイメージで。葉モチーフのような細部は、回転と送りのバランスを一定にし、密度のムラを避けます。
- 小葉や曲線部では、速度を落とし、針が下がったタイミングで角度を変えると、ステッチの角が滑らかにまとまります。
期待する中間結果:
- 輪郭が「閉じて」おり、切り抜き予定の内側と外側が縫いで隔てられている。
- 目揃いが均一で、縫い線が波打っていない。
注意:
- 指先は常に針から十分に離し、枠外周を持つ位置で操作する。
- もし縫い目が不規則になったら、いったん止め、糸調子と送りの一貫性を見直す。
4.2 切り抜き(カットワーク)
- 先の細いハサミで、縫い目の内側だけを少しずつ持ち上げるようにしてカットします。

- 一度に大きく切り進めず、小刻みにスニップすることで誤って縫い糸を切るリスクを下げられます。
- 角や先端は最後に処理し、縫い目との距離を一定に保つと解れにくくなります。
クイックチェック:
- 切り口がギザギザせず、糸を傷つけていない。
- 予定した部分だけが開いている(不要な貫通がない)。

プロのコツ:
- 先に最も狭い部位から切り始めると、全体の緊張が抜けにくく、輪郭に沿った正確なカーブが保てます。
4.3 装飾ステッチ(バー&グリッド)
- バー:開口部の対向する縫い縁を渡るように、水平あるいは緩いカーブでバーを均等間隔に渡します。

- バー終端は縁にしっかり食い込ませ、原布端を包み込むように数針戻して固定すると解れ防止になります。

- グリッド:別の開口部では、水平線を一定ピッチで渡してから、直交する垂直線を重ね、格子を形成します。

- ステッチの交点は軽く重ねて固定し、全体のテンションが均等になるよう、枠の回転と送りを一定に保ちます。

- すべての開口部をバーまたはグリッドで満たし、原布の切り口が露出しないようエッジカバーを徹底します。

決定分岐(動画に基づく判断軸):
- 開口が細長い/曲線が多い → バーで渡すと自然なラインに追従しやすい。
- 面積が広く、均一感を強調したい → グリッドで規則性を与えるとレース感が出る。
補助ツール活用のヒント(動画での使用確認なし):
- グリッドの直線性を保つには、brother 刺繍ミシン 用 クランプ枠 と併用し、枠の垂直・水平基準を逃さない工夫が有効です。
チェックリスト(手順完了時)
- すべての開口が装飾ステッチで満たされ、原布端が見えていない。
- バー/グリッドの間隔が大きくバラついていない。
- 糸の緩みや跳びはねがない。
5 仕上がりチェック
視覚と触感の両面から確認します。 - 良い状態:バーやグリッドが均一で、交点がほつれていない。輪郭から装飾ステッチへ連続性があり、デザインの流れが遮られない。

- 要注意の兆候:
- バーの間隔が途中で詰まる/開く → 枠回転のリズムが崩れている可能性。
- 交点に糸の浮き → 糸調子または糸処理不足。
- 切り口の毛羽立ち → カット時の刃先角度やステッチの食い込み不足。
プロのコツ:
- 仕上げ前に、作品を光にかざして透け感を俯瞰すると、ピッチのムラを視認しやすく微調整箇所を特定できます。必要なら一部のバーを追い縫いして補強しましょう。
6 完成イメージと後処理
完成品は、スカラップの縁取りと葉モチーフがアクセントとなり、開口部に渡されたバーやグリッドが繊細なレース効果を作ります。

後処理のポイント(動画では具体手順は未提示):
- 糸端の処理:裏側で結び留め、余分をカット。必要なら糸端を数針戻して馴染ませる。
- 表面ケア:低温で軽く当て布をしてプレスし、ステッチの段差を整える。
- 用途:小物、縁飾り、アクセントパネルなどに展開しやすい。耐摩耗が必要な箇所は開口を小さめに。
7 トラブルシューティング・リカバリー
症状→原因→対処の順で整理します。
- 症状:バーやグリッドの間隔が乱れる。
- 可能原因:枠回転のリズム不均一/基準線がない。
- 対処:最初の2〜3本を基準幅で引き、以後はそのピッチに合わせる。必要なら軽量のガイドを作り、snap hoop monster マグネット刺繍枠 などで固定安定性を高める(動画での使用確認なし)。
- 症状:切り口が毛羽立ち、端が見える。
- 可能原因:カットの刃先が鈍い/エッジへの縫い込み不足。
- 対処:鋭利なハサミを使い、小刻みスニップでやり直す。バーやグリッド終端を2〜3針重ねてエッジを包む。
- 症状:縫い糸を誤ってカットした。
- 可能原因:刃先角度が急で、縫い目側を掴んでしまった。
- 対処:ほどけが軽微なら同色糸で追い縫い。広範囲なら一旦止め、輪郭から縫い直す。
- 症状:糸の浮き・跳び。
- 可能原因:糸調子・糸通しの不備。
- 対処:糸掛け経路を再確認、試し縫いで表裏の締まりを確認してから本番へ。
- 症状:枠内で生地が滑る。
- 可能原因:枠圧不足/生地が伸びやすい。
- 対処:枠の締め直し。状況により mighty hoop マグネット刺繍枠 を併用して着脱と再セッティングを簡略化(動画での使用確認なし)。
クイックチェック:
- 切る前に、輪郭が完全に閉じているか?
- 仕上げ前に、光に透かしてピッチのムラが無いか?
コミュニティから(コメント要旨):
- 使用機種の問い合わせが多く、作者は「SINGER 20u(工業用ジグザグ)」と回答。
- 価格は「約10年前でおよそ750USD」との補足。現行価格は未確認。
応用と拡張(動画外の一般的ヒント):
- 同意匠を複数箇所に反復する場合、ミシン刺繍 マルチフーピング を計画し、基準線で位置合わせを徹底すると効率が上がります。
- 厚手や立体物への展開では、マグネット刺繍枠 brother 用 やマグネット刺繍枠のクランプ系アクセサリーが有用です(本動画では未使用)。
注意:
- 強い曲面や厚物に装飾を展開する際は、マグネット刺繍枠 だけに頼らず、生地特性に合わせて固定方法を併用してください。
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最後に、作業動線を整えたい場合は、マグネット刺繍枠 と治具の併用や、hoopmaster 枠固定台、刺繍用 枠固定台を使うと姿勢の再現性が高まり、バーやグリッドの等間隔化に寄与します。用途や素材に応じて、brother 刺繍ミシン 用 クランプ枠 などの保持方法も検討すると良いでしょう。
