Table of Contents
1 プロジェクトの概要
Etsyショップの閉鎖を起点に、ビジネスの軸足を「地域コミュニティや企業の大量発注」に移す意思決定のプロセスと、その後の実務をまとめます。年次・月次のEtsyアナリティクスでは利益が伸び悩み、一部の月は赤字でした。制作品目も子ども向け一点物中心から離れ、企業ロゴ入りの帽子やTシャツなど、品質の安定したB2B向けの刺繍・加飾に集中します。

この変化に合わせてロゴを刷新し、名刺代わりとなるWebサイトも“まとめ注文に最適化”していきます。B2Bでは判断が早く、価格や仕様が明確で、見積り待ちのストレスが少ない導線が歓迎されます。

1.1 何を・いつやるか
- 収益の構造を見直し、非採算チャネル(Etsy)をクローズ。
- ロゴを刷新し、B2Bにふさわしい“頼れる外観”へ。
- Web導線を簡潔化し、まとまったロットを注文しやすく。
- 具体的な実務として、梱包、帽子刺繍、HTV転写の基礎運用を固める。
1.2 適用シーンと制約
- 適用シーン:地域の企業・団体向けのロゴ刺繍帽子やワークウェアなどの量産案件。
- 制約:本稿で示すヒートプレスの温度や秒数などの数値は、動画で具体提示がないため記載していません(機材・素材仕様に従ってください)。
2 準備するもの
事前準備は“使う・見せる・届ける”の3視点で揃えると漏れが減ります。
2.1 道具・設備
- 刺繍機(動画ではRicomaの多針機を使用)
- キャップ用フレーム(帽子刺繍)
- スタビライザー(生地支持)
- ヒートプレス(HTV転写)
- Tシャツ位置決め定規
- 梱包用品(透明ポリ袋、段ボール等)
動画内では、フープ固定の作業も登場しますが、製品名やサイズの詳細は明示されていません。フレーミングで安定性を高めたい場合は、作業台の上で使える 刺繍用 枠固定台 を検討すると位置決めの再現性が上がります。
2.2 材料
- ネイビーのTシャツ、ネイビーのキャップ
- 刺繍糸
- HTV(ヒートトランスファービニール)
- 送り状、出荷用ラベル
大量発注では、色番やロット、糸の種類など“可変要素”をシート化しておくと、トレーサビリティが確保できます。帽子は形状が固く湾曲もあるため、フレームのテンション管理を最優先に。
2.3 ファイル・ドキュメント
- デジタイズ済みの刺繍データ(依頼元の既存ロゴを使用)
- 受注書・仕様書(サイズ展開、糸色、位置、個包装の有無など)
コメント欄では「ロゴ自体のデザインは行うのか?」という質問がありましたが、制作者は「グラフィックの新規制作はせず、既存ロゴを受け取りデジタイズして使用」と回答しています。これは内製範囲の線引きに役立ちます。
2.4 準備のチェックリスト(抜粋)
- 刺繍データは依頼ロゴの最新版か(版下の差し替え忘れに注意)
- フレーム・スタビライザーは生地に適合しているか
- 梱包材・送り状はロット分確保できているか
- HTVは色・サイズ・レイアウトが想定どおりか
3 セットアップの要点
リブランディングと注文導線の設計は“誰にどう選ばれるか”を明確にします。
3.1 ロゴの再設計
ターゲットは地域の企業。工事会社が“500個の帽子を頼む先”として見たときに、ライトすぎる印象はミスマッチです。動画では、既存ロゴの雰囲気(ハート要素など)がB2Bにそぐわず、より広い層に届く再設計へ移行中と語られています。訴求は「品質・規模・信頼」の3点に集約しましょう。
3.2 Webサイトの簡素化
まとまった注文では、毎回の見積り待ちが離脱の原因になります。動画では「一定数量でデジタイズ料金を自動で相殺」するなど、自動化を視野に入れた導線を構想しています(具体仕様は未公表)。注文者がファイルをアップロードし、モデル・数量・位置を選べば、すぐに注文確度が見えるのが理想です。
注文画面のワイヤーを描きながら、操作回数・入力項目・待ち時間を“半分に”削るつもりで設計しましょう。その際、フレーミングの均一化を意識して、帽子やポロの胸刺繍など繰り返し出る箇所は、作業治具の選定もセットで検討します。例えば、位置再現性を高めたい場面では 枠固定台 を併用すると、オペレーター間のばらつきが減ります。
3.3 “見せ方”の統一
- 価格表示:できる範囲で事前に。不可なら“概算の目安”で離脱を防止。
- 実績:帽子刺繍の近接写真や、Tシャツの折り畳み梱包の整然さは説得力に直結します。


- 連絡導線:B2Bは電話・メール・見積りフォームの3点セットが安心。
4 手順:梱包・帽子刺繍・HTV転写
ここからは実務パート。動画に基づき、梱包→帽子刺繍→HTV転写の順に要点を整理します。
4.1 梱包(Tシャツの個包装)
1) Tシャツを整え直す:完成品のシワを軽くならし、ロゴ面の擦れを避けるよう畳みます。 2) 透明ポリ袋に封入:サイズ・色ごとに分け、視認性を高めます。
3) 出荷箱へ段積み:同色・同サイズを束ねると検品・受け渡しが早くなります。
期待する中間結果:全サイズが数え直し不要な状態で、箱内の向きが一定。袋の口はしっかりシール。
プロのコツ:大量梱包では、開口を一方向にそろえると検品が2倍速になります。フラップ側を手前にそろえると搬入現場でも崩れにくいです。
クイックチェック:箱の正面から見たとき、サイズ表示が読み取れる向きで並んでいるか。
4.2 帽子刺繍(Ricoma機)
1) キャップの装着:専用フレームにツバと前立てを正しく収め、テンションが均一か確認します。

2) 位置合わせ:ロゴ中心線と帽子のセンターを合わせ、たるみを排除。

3) ステッチ開始:糸切れ・テンション・引き締まりを目視で監視しながら進行。


4) 完了・取り外し:ロゴの端部に浮きがないか、スタビライザーの残りを確認。


期待する中間結果:最初の数文字で糸の載りが均質、ポッカリ抜ける目や波打ちがない。最終は“THE BOAT HOUS”のようにレターエッジが鮮明(動画では表示が途中段階のシーンも含まれます)。
注意:帽子は湾曲面のため、ほんの数ミリのズレが大きく見えます。センター基準とテンションの確認を2回繰り返しましょう。なお、動画では具体的な糸調子値やミシン設定値は示されていません。
プロのコツ:Tシャツへの刺繍シーンではスタビライザー使用が見て取れます。

帽子でも同様に、ロゴサイズや生地厚みに合わせた支持を行うと、縫い目が暴れにくくなります。作業の安定化には 刺繍ミシン 用 枠入れ の手順をルーティン化し、毎回の装着癖を均一化するのが近道です。
4.3 TシャツへのHTV転写
1) 事前プレス:水分・シワを抜いて下地を整えます。

2) 位置決め:Tシャツ用定規で中央・上がり位置を確認。 3) 転写:キャリアシートの上からプレスし、冷却後に剥がします。

期待する中間結果:キャリアを外した直後にエッジが浮かない。表面は均質で銀粉状のムラがない。
注意:温度・圧力・時間は素材・シートに依存するため、動画では具体値は示されていません。必ず素材の仕様書に従ってください。
4.4 量産のための“段取り標準”
- 受注票の最小必須項目(品目・色・サイズ・位置・個包装・希望納期)
- データ管理(デジタイズ版の命名規則:ブランド_アイテム_サイズ_v番号)
- 現場の標準位置(帽子センター、胸ロゴの上がりなど)
量産運用では、同一作業の再現性が命です。特に帽子や袖口などチューブ状の部位は 袖用 刺繍枠 のような専用治具が選択肢になりますが、動画内では帽子専用フレーム以外の治具は具体登場していません。現場に合わせて可否を検討してください。
クイックチェック:1セット(5〜10個)ごとにセンターとテンションを再確認。初回基準からズレが出ていないか。
4.5 コメントから(内蔵Q&Aの要点)
- 価格表は?→制作者は「案件ごとに個別見積り」と回答(価格表は未公開)。
- ロゴ制作は?→「グラフィックは担当せず、既存ロゴをデジタイズして使用」。
- ローカル集客は?→「地域へ切り替えたのが大きな転機だった」と示唆。
5 仕上がりチェック
刺繍・HTVともに、完成に至る前の“途中チェック”が歩留まりを左右します。
5.1 刺繍(帽子)の合格基準
- レターの端がギザつかず、ステッチの重なりが均一。
- 生地のつっぱりがない(反りや波打ちがない)。
- 糸の浮き・渡り糸が目立たない。
クイックチェック:最初の数文字の時点で“糸が布に噛んでいる”実感があるか。噛みが弱いと後半で破綻します。
注意:コメント欄には「トリム長を短く」という指摘もありました。動画では具体的な設定値や調整結果は示されていないため、機種マニュアルに沿って安全に調整してください。
5.2 HTV転写の合格基準
- エッジがめくれない(爪先で軽くなぞっても引っかかりがない)。
- 生地のテカりや圧痕が最小限。
- 位置がセンターから左右均等。
プロのコツ:HTVは事前プレスの有無で歩留まりが大きく変わります。Tシャツが冷えた後に最終仕上げの軽プレスを行うと、縁の落ち着きが出ます。
6 完成後の受け渡しと次アクション
6.1 完成イメージ
- 帽子:白糸でロゴがくっきりと読み取れ、前立て中央に正対。
- Tシャツ:個包装され、箱に整然と段積み。
- HTV:ロゴ位置が中央、粘着ムラなし。
6.2 受け渡し
- 個包装の口を同一方向にそろえ、検品表(数量・サイズ)を同梱。
- 段ボールの外側に案件名・サイズ内訳・箱番号を明記。
6.3 ローカル展開のタイミング
動画では、リブランディング完成後に広告を一気に加速すると言及。地域誌・地域広告ページなど“地元の目に触れる媒体”の活用が主眼です。コメントでも「ローカルに切り替えたのが良かった」と共感が多く、Etsy中心からの転換が成果に結び付いた事例が共有されています。
プロのコツ:現物写真を用意するなら、刺繍の近接写真(エッジ・糸の重なり)と、作業風景(フレーミング、縫製中)を混ぜて掲載するとB2Bの判断が早まります。Ricoma機での作業イメージは訴求力が高いですが、機種名や設定は動画で特定されていないため、記載は最小限に留めましょう。
7 トラブルシューティング・回復ガイド
症状→原因→対策の順で、動画・コメントに基づき要点をまとめます。
7.1 帽子刺繍の位置ズレ
- 症状:ロゴが左右に寄る、上がりが不揃い。
- 可能原因:センター合わせが甘い、テンション不足、装着時のたるみ。
- 対策:装着直後とステッチ直前の2回、センターとテンションを再チェック。装着ルーチン(刺繍枠 →テンション→センター→試し縫い)を標準化。
7.2 ステッチの粗れ・浮き
- 症状:糸が生地に噛まず、段差や浮きが出る。
- 可能原因:支持不足、速度・テンションの不一致。
- 対策:スタビライザーを適合させ、最初の数文字で糸の噛み具合を確認。必要に応じて速度を下げ、糸調子を最適化(動画で具体値は未提示)。
7.3 トリム長が長い
- 症状:渡り糸が残りやすい。
- 可能原因:トリム設定の過大。
- 対策:コメントで示唆がありましたが、動画内に調整結果はありません。機種マニュアルに従って安全に短縮を検討してください。
7.4 HTVの縁が浮く
- 症状:冷却後にエッジが浮き始める。
- 可能原因:事前プレス不足、温度・圧力・時間の不足。
- 対策:必ず事前プレスを行い、素材仕様に基づいて条件を合わせ直す。小片で試験貼付を実施。
7.5 データ・ロゴの取り扱い
- 症状:依頼ロゴが想定と違う、画質不足。
- 可能原因:ロゴ制作の責任範囲が不明確。
- 対策:コメント回答のとおり、制作者は「ロゴ制作は行わず、既存ロゴを受領しデジタイズ」。この線引きを事前に明記。
クイックチェック:初品の時点で、位置・テンション・糸の噛み具合を写真記録し、以後の比較基準に。反復作業のブレが見える化します。
この転換期に、現場の“作業再現性”を支える治具選定も合わせて検討しましょう。特に大量の帽子やチューブ状パーツでは、装着を素早く安定させるために マグネット刺繍枠 を活用する現場もありますが、動画では具体的な製品名・サイズは示されていません。一般論として、磁力で挟む方式は作業の再現性に寄与することがあります。
さらに、機種に応じて使える選択肢は異なります。Ricoma機での運用においては ricoma 刺繍枠 を前提に、仕様適合を必ず確認してください。他ブランド機では 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 の互換性に差があるため、導入前にメーカーの適合表をチェックすると安全です。
B2Bの“選ばれる理由”は、早い・正確・見栄え。この3点を保証する仕組みを、Web・現場・品質の三層で固めていきましょう。ロゴ刷新とサイトの簡素化が進めば、注文者は“会社として任せられる”と判断しやすくなります。なお、作業台上での位置決め安定化には マグネット刺繍枠 11x13 のような大判エリアを扱う製品もありますが、動画ではサイズの具体提示がないため、導入検討時は現場のアイテム寸法と照合してください。
最後に、量産の立ち上げ時には、日々の初品外観・不良票・是正措置を簡易に記録し、翌日の段取りにフィードバックする小回りの効く運用が有効です。特にフーピングの均一化には マグネット刺繍枠 と並んで作業習熟が効きます。現場での“手癖の統一”が、最速の品質改善策になります。

のようにフープ準備を確実に行い、


のような縫製中の安定、
のようなスタビライザーの使いこなしを積み重ねれば、帽子刺繍の出来栄えは着実に安定していきます。HTVは
の流れを守り、位置決めと事前プレスを徹底してください。
チェックリスト(運用まとめ)
- 受注票の必須項目が揃っている(ロゴ・位置・数量・包装)
- フレーミング手順の標準化(センター・テンション・試し縫い)
- 初品の写真記録と合否基準の共有
- Web導線の簡素化(アップロード→数量→概算→注文の最短導線)
- リブランディング素材(ロゴ・実績写真)の整備
補足:Etsyを離れる・残すの判断は“心が向いているか”も重要です。動画では「心が離れた」と率直に語られており、結果としてB2B志向へのピボットが明確になりました。これはビジネスの自然な進化です。
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参考の上で、量産現場の位置決め補助として 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 や マグネット刺繍枠、作業台での位置出しに 刺繍用 枠固定台 を活用する選択肢があります。ただし本稿は動画の事実に基づくため、具体製品・型番・サイズはあくまで一般論としての記述に留めました。最終決定は現場の機材・素材に合わせて行ってください。
が示すように、帽子刺繍ではセンター合わせとテンション維持が最大の肝です。治具選定の前に“手順の標準化”を、治具導入後は“再現性の検証”を、という順番を厳守すると、歩留まりは確実に改善していきます。
最後に、量産で袖や筒状部位が増える際は 袖用 刺繍枠 の検討が有効ですが、動画には登場しないため、ここでは選定の考え方のみ触れました。装着性と生地傷の少なさ、位置決めの再現性を基準に比較してください。
