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1 プロジェクトの概要
フリースブランケット(青・50×60インチ)24枚に、2色のカスタムロゴ(白の文字+赤のハート)を右下コーナーへ45°傾けて刺繍します。位置は目視で均一に見えることを優先し、ブランケットの製品個体差(角の曲がりや丸み)を踏まえて“実用的に揃う”基準を採用します。
- 仕上がりの狙い:24枚を並べても角度・距離感が揃って見えること。
- 使用ミシン:Ricoma TC(多針)、Ricoma EM1010(多針)。
- デザイン色順:白→赤。
- 生地特性:一枚仕立てのフリースで裏面を隠せないため、裏は clean になるように tear-away を使用。
プロのコツ:位置決め後のズレを防ぐには、ピン留めを“最小限の本数で、でも要所に確実に”。ブランケットは重く、持ち上げるほどズレやすいので、作業台上でできるだけ完結させましょう。
2 準備する道具・材料・環境
- 多針刺繍ミシン:Ricoma TC と Ricoma EM1010(2台同時稼働)。
- 刺繍枠:EM1010 は 5×7、TC は 7×7 ラウンド(いずれも動画内実測)。

- スタビライザー:裏=tear-away、表=water-soluble(文字のディテール保護)。
- ツール:アクリル定規(45°ライン付き)、待ち針、はさみ、スプレーボトル、踏み台(ブランケットを床に引きずらせない支持用)。
- 消耗材:ポリエステル刺繍糸(白・赤)。
- デザイン:印刷したテンプレートを2部用意(2台分)。
- 作業環境:2台を見渡せるレイアウト、折り畳み・袋入れのスペース確保。
注意:ここで紹介する機材・サイズ・資材は動画内の明示内容に基づきます。追加の機種設定(速度や回転数など)は動画内では具体言及がありません。
補足メモ:本ケースではマグネット式の枠は使っていませんが、厚物や量産でフーピングの負荷を下げたい場合、一般論として マグネット刺繍枠 を検討する声もあります(本プロジェクトでは未使用)。
クイックチェック:
- デザインの紙テンプレートは2部用意したか?
- 裏=tear-away、表=water-soluble(文字向け)の準備はOK?
- 5×7と7×7の枠は手元にあるか?
- はさみ・スプレー・ピン・定規は作業台に並べたか?

3 セットアップ:向きの統一とガイドづくり
3.1 50×60 の向きを決める
ブランケットは50×60インチで、完全な正方形ではありません。長辺を“横(幅)”と決め、右下コーナーを刺繍位置として統一します。タグは縫い込まれており、取り外さずに運用しました。
注意:個体差で角が丸かったり、端がわずかに波打っていることがあります。全数で“同じ見え方”を優先し、厳密な幾何学より目視の均整を重視します。
3.2 45°の基準線を引く
アクリル定規の45°ラインを活用し、デザインテンプレートのセンター線を45°に合わせます。このとき、コーナーからの距離感も揃えます。

- 目安:下端から約3インチ、側端から約2インチ。
- 角が丸い個体は、見た目の均一感が出るまで微調整。
プロのコツ:45°に合わせたら、テンプレートのコーナー側2点を先にピン留めし、対角線上に補助ピンを1本。これでテンプレートの“回転ズレ”を抑えられます。

クイックチェック:
- 下端3インチ/側端2インチの目安に収まっているか?
- 45°ラインとセンター線は平行か?
- ピンは最低3点、回転ズレを抑える位置にあるか?
関連ツールの考え方:テンプレート位置の再現性を上げるために、作業台での治具・定規の固定も有効です。なお、本ケースでは使用していませんが、一般に“枠を水平に保って位置決めする補助台”として 刺繍用 枠固定台 に類する道具が市販されています(本プロジェクトでは未使用)。
4 手順:量産フローを止めない刺繍ワーク
4.1 逆さフーピングでスロートを避ける
大型でかさばるブランケットは、通常と逆向きに枠をセットし、バルクがミシンのスロート側へ入らないようにします。枠の上下を“逆さ”にし、装着時にブランケットの大半が前方へ垂れ下がる向きになるようにするのがポイントです。

- まっすぐ・均等なテンションでフーピングされているか確認。
- 目視で水平・斜めのズレをチェックし、必要ならやり直す。
プロのコツ:持ち上げて直線や角度を確認すると、捻れやたるみが見つかりやすくなります。納得いくまで“やり直す勇気”が量産の安定に直結します。

参考:Ricomaを使う場合、枠・アタッチメント周りの互換情報として ricoma 刺繍枠 という用語が流通していますが、本件では純正の5×7・7×7枠を使用しています(追加の互換枠は登場しません)。
4.2 マシンへ装着し、上に水溶性を重ねる
枠をミシンに装着し、ブランケットの重みで床に擦らないよう踏み台などで前方を支えます。文字が主体のデザインなので、表側に water-soluble を重ねて毛足への沈み込みを防ぎます。

- 糸色順は白→赤。スタート前に順番を再確認。
- スロートに布が入り込んでいないか、装着後に再点検。

注意:水溶性を忘れると、文字のカンマやハイフンなど細部の線が埋もれやすくなります。
クイックチェック:
- 枠固定の向きは“逆さ”で合っているか?
- 水溶性はデザイン面を完全にカバーしているか?
- 白→赤の順に正しく設定されているか?
備考:市販のマグネット式枠は、厚物の固定で作業負荷を下げられる場合がありますが、このプロジェクトでは使用していません。一般名称として mighty hoop マグネット刺繍枠 などが知られます(機種・ワークにより適否が異なるため、導入時は検証を推奨)。
4.3 並行稼働と監視
2台(Ricoma TC/EM1010)を同時に走らせ、刺繍中に次のフーピングや準備を進めます。ステッチ品質を定期的に目視し、異常音・糸のほつれ・沈み込みなどを早期に検出します。

- Day 1の進捗:9枚完了(合間の雑務・電話で中断あり)。
- 刺繍の合間に裏のtear-awayやジャンプステッチの処理も先行しておくと後工程が楽。
プロのコツ(コメントから):新しい機体を導入したばかりの人は、まず“1台だけ”で安定条件をつかんでから2台並行へ拡張すると、復旧の学習が早まります。
4.4 Day 2:糸切れ・糸尽きの復旧
Day 2で“糸切れだと思ったら実は白糸が空”という典型的なミスが発生。スプール残量を常に意識し、切れたポイントまでバックして再スレッディングして再開します。
- 事前に替えスプールを手元へ。糸道は最初から通し直すのが確実。
- 再開時は“1〜2針戻す”意識で縫い合わせ痕を馴染ませる(動画内で具体の針数は非言及)。
注意:頻発する糸切れは、糸そのものの品質差より“テンションの不良”が主因のことが多いです。今回のTC側は“上糸が緩すぎ”の症状が示唆され、見た目にもルーズでした(動画内談)。
参考情報(一般論):位置決めや段取りの再現性を高める補助具として hoopmaster 枠固定台 のような治具が知られていますが、本プロジェクトでは使っていません。導入可否はワークに応じて検討してください。
5 仕上がりチェックと中間検品
5.1 期待する見え方
- 角度:テンプレートのセンター線が45°、目視で揃って見える。
- 距離:下端3インチ/側端2インチを目安に、全数で違和感がない。
- ステッチ:白の文字が毛足に沈まず、赤のハートが均一に乗る。
クイックチェック:
- ステッチの乗り:文字の細部(カンマ・ハイフン)が途切れていないか?
- 裏のtear-away:抜き残しでゴワつきが出ていないか?
- 表の水溶性:縁のフィルムが残っていないか?
注意:フーピングのテンションが不均一だと、縫い中に“斜めズレ”が見えます。迷ったら外してやり直すほうが最終的に速いことが多いです。
6 仕上げと引き渡し
6.1 後処理の流れ
最後の1枚を終えたら、全数で後処理をまとめて行います。
- 裏のtear-awayを丁寧に除去。
- 表のwater-solubleは手で取れる分をはがし、残りは霧吹きで溶かして乾燥(夜間乾燥→翌朝仕上げ)。
- 前面のジャンプステッチをはさみでカット。
プロのコツ:霧吹きは“必要最小限”で。濡らし過ぎは乾燥時間が延び、毛流れの乱れも起きやすくなります。
6.2 たたみ・再パッケージ
納品時の見栄えを上げるため、依頼者が持ち込んだ包装(袋・紙帯)を保管しておき、元の形に再パッケージします。ブランケットは均一に畳み、ロゴが視認できる面を上にして揃えると整然とした印象になります。
コメントから:価格感はデザインの細かさ・色数・ステッチ数・支給の有無で変動。今回は“ブランケット支給・デジタイズ費なし”で1枚あたり15ドルという実例が共有されています(動画コメントのやり取りより)。
7 トラブルシューティングと復旧
症状→原因候補→対処の順で、動画とコメントに基づく再現性の高い項目に絞って整理します。
- 症状:白糸が途中で止まった/糸切れだと思ったら空巻きだった。
- 原因:スプールの残量管理不足。
- 対処:残量を常時監視し、空なら糸道を最初から通し直して再開。再開位置は直前の針目に自然につながるよう慎重にバック。
- 症状:同じ文字で糸が頻繁にささくれる・切れる。
- 原因:上糸テンションが緩すぎ(動画内談:TC側でルーズな見え方)。
- 対処:テンション指標を確認し、調整しても改善しなければ、針・糸道・ガイドの通し直しで“基本に立ち返る”。
- 症状:文字の細部が毛足に沈む。
- 原因:上面の水溶性スタビライザー不足。
- 対処:文字全体を覆う大きさで水溶性を重ねる。忘れた場合はやり直しも検討。
- 症状:フーピング時に角度ズレが出る。
- 原因:テンプレートの回転ズレ、ピン位置が不適切。
- 対処:45°ラインに合わせ直し、角側2点+対角1点のピン配置で回転を抑制。
プロのコツ(コミュニティより):スプールの巻き方向や糸の撚りはテンションに影響するとの指摘がありました(コメント)。産業用刺繍機への適用可否は明言されていませんが、糸道の抵抗が一定か“引きの感触”で確かめる習慣は有用です。
注意:テンション改善で効果が薄いとき、“糸そのものだけ”を疑うのは早計。動画のケースでは、同じ糸でもEM1010側では問題が少ない場面があった旨が語られ、機体側条件の寄与が示唆されています。
ミニFAQ的補足:本プロジェクトでは未使用ですが、厚物での固定を省力化する目的で マグネット刺繍枠 ricoma em 1010 用 のような呼称のアクセサリが流通しています。導入は自己検証の上で行ってください(本記事は使用実績を含みません)。
8 コメントから
- 価格の目安:支給品・色数・ステッチ数・デジタイズ有無で変動。今回の共有例は“支給・デジタイズ費なし”で1枚15ドル。
- 新規導入の声:TC-1501のテンションが難しいという共有も(復旧方法の詳細回答は付いていません)。
- ブランケットの入手元に関するコメントもありました(具体サイト名の提示はありましたが、本記事では個別の出どころを推奨しません)。
関連情報(一般論):磁力固定タイプの枠やスターターキットの名称として 5.5 mighty hoop スターターキット などが知られますが、本プロジェクトでは使用していません。名称の紹介に留めます。
チェックリスト(準備)
- 印刷テンプレート2部、アクリル定規(45°ライン)、ピン、tear-away/water-soluble、白糸・赤糸、はさみ、スプレー、踏み台。
- 枠:5×7(EM1010)、7×7ラウンド(TC)。
- 作業台:2台同時を見渡せる配置、畳み・袋入れの場所。
チェックリスト(セットアップ)
- 長辺=横を基準、右下コーナーに統一。
- 45°に合わせ、3インチ/2インチを目安にピン留め。
- 逆さフーピングでスロート回避、表に水溶性を重ねる。
チェックリスト(運用)
- スプール残量を随時確認(特に白→赤の切替前後)。
- ステッチの乗り・糸道・テンションを定期確認。
- 仕上げ作業(tear-away除去・水溶性溶解・糸始末)を並行下準備。
最後に:磁力枠の互換・呼称は多岐にわたりますが、今回の実作業はあくまで“純正枠+逆さフーピング”で完走しています。参考用語として マグネット刺繍枠 brother 用 や マグネット刺繍枠 11x13 などの名称が検索上出てきますが、機種・サイズ適合は必ずご自身の環境でご確認ください(本プロジェクトでは未使用)。
