Table of Contents
1 プロジェクトの概要
Brother の刺繍機能とScanNCutを連携すると、色替えチャートからアップリケ外形線を認識してカットデータ化し、そのままUSBで引き継いで素材を正確に切り出せます。はさみで細部を切るストレスがなく、指先のような細かい形状もきれいに揃うのが最大の利点です。動画元では園芸用グローブ(Anita Good Designsのアップリケ)を題材に、外形線をカットデータに変換し、わずかなサイズ増でタックダウンがしっかりかかるように仕上げています。
このワークフローは、アップリケ色レイヤー(外形線)を持つ刺繍デザイン全般に適用できます。講師は「どこで入手したデザインでもこの方法でカットファイルが作れる」と述べていますが、対応の可否はご自身の刺繍機に「Applique Material」機能が搭載されているかに依存します。
なお、本記事はBrother Innovis Dream Machine(8500)とBrother ScanNCutを例に説明しますが、他の対応機種でも基本の流れは共通です。機種固有のボタン配置や名称は取扱説明書を参照してください。

プロジェクトの適性と制約は次のとおりです。
- 適している: アップリケの外形がはっきり分かれているデザイン、細部が鋭角・複雑な形状、複数パーツのアップリケ(同手順を繰り返し適用可)
- 注意が必要: アップリケ指定のないデザイン(色レイヤーを切り出せない)、生地準備(糊)が不十分な素材、極端に伸縮の強い素材
刺繍位置合わせを安定させたい場合、作業台に刺繍用 枠固定台を用意しておくと、フープの出し入れがスムーズになります。
2 準備するもの
2.1 機器・ツール
- 刺繍機(例:Innovis Dream Machine 8500)
- ScanNCut(USBポート搭載機)
- USBメモリ
- スタイラス(タッチ操作用)
- パームアイロン(小型アイロン)
刺繍機周りのアクセサリーとして、フープ作業を効率化するためにhoopmaster 枠固定台を活用すると、枠の出し入れや水平の維持が容易になります。
2.2 材料
- アップリケ用生地(片面にヒートシール系の接着シート処理済み)
- 動画で言及:HeatnBond Lite または Steam-a-Seam 2
- 本体生地+安定紙(スタビライザー)
生地の保持やカット後の再配置を安定させたい場合、マグネット刺繍枠 brother 用のようなホールド力の高いフレームも有効です。
2.3 データ
- アップリケを含む刺繍デザイン(例:園芸用グローブ)
2.4 事前チェック
- 刺繍機の色替えチャートに「Applique Material(オレンジのハサミ)」が使えるか。
- USBメモリへの保存・読み出しができるか。
- ScanNCutでUSBの bPocket(表記ゆれ:BPocket)フォルダを開けるか。
【チェックリスト|準備】
- 生地の片面にHeatnBond Lite/Steam-a-Seam 2を処理したか。
- デザインファイルをUSBに用意したか。
- 刺繍枠の出し入れ動線を確保したか。
- 小物(スタイラス、パームアイロン)を手元に置いたか。
3 セットアップの核心
3.1 刺繍機側の基本画面操作
刺繍機の「Embroidery(刺繍)」モードを開き、USBからデザインを呼び出します。

デザインを「Set」したら「Edit」画面に進み、色替えチャート(カラーチャート)アイコンを開きます。

3.2 アップリケ外形の指定理由
色1として表示される園芸用グローブの外形線をアップリケ対象に指定します。ここで「Applique Material(オレンジのハサミ)」を選ぶと、その色レイヤーがカット用外形として扱われます。これにより、ScanNCutで生地を正確にカットでき、タックダウン時に端をきれいに縫い留められます。

アップリケが複数パーツで構成されるデザインでは、各パーツに対して同様に「Applique Material」を付与します。コメントでも複数パーツ(花・スコップなど)への応用が関心として挙げられていましたが、基本はこの繰り返しです。
3.3 USB保存の意味
「Memory」からUSBアイコンを選ぶと、刺繍機が生成したカット情報を含むデータがUSB内のbPocket(またはBPocket)フォルダに保存されます。

ScanNCutがこのフォルダを参照することで、刺繍デザインに対応したカットデータを確実に検出できます。
【チェックリスト|セットアップ】
- 色替えチャートで対象レイヤーに「Applique Material」を設定し、画面に『APPLIQUE MATERIAL』と表示されたか。
- USBメモリに保存し、bPocketフォルダ内に書き出されたか。
- デザインに複数パーツがある場合、すべてに設定したか。
4 手順:刺繍機で作る→USB→ScanNCut→刺繍で仕上げ
4.1 刺繍機でカットファイルを作る(ステップ1〜3)
1) 刺繍を開く→USBからデザインを呼び出し→Edit→色替えチャートを開く。
2) 外形線の色を選択→「Applique Material(オレンジのハサミ)」をタップ→OK。
3) Memory→USBに保存(bPocketフォルダ)。
クイックチェック:刺繍機の画面で『APPLIQUE MATERIAL』が表示され、対象色がオレンジのハサミ状態になっているかを確認しましょう。
注意:コメントでは「retrieving のまま20分」との声がありましたが、これはエクスポート対象が外形(placement)ステッチではなく、別の形状を選んでいたケースがありました。外形線(配置ステッチ)を選んでカット化するのが正解です。
4.2 ScanNCutで読み込み(ステップ4)
USBをScanNCutの側面ポートに挿入し、「Pattern」→「Saved Data」→USB→bPocketフォルダを開きます。


刺繍デザイン全体が表示され、そこからカット対象の外形パーツを選択します。


プロのコツ:複数パーツのときは、必要な外形だけを順番に選択・配置し、同一マットで賢くレイアウトすると素材が節約できます。
4.3 サイズ微調整と配置(ステップ5)
表示された外形のサイズを確認し、タックダウンが確実に端を捉えるように2〜3ステップ分だけ拡大します。

動画では「2〜3回ポチッと増やす」運用で安定していました。コメントでも「高さを増やすと幅も連動して変わる」との指摘があり、縦横は比率を維持したまま拡大されます。配置はカッティングマットの安全域(内側)に収めてください。

クイックチェック:
- 画面上で拡大後のサイズと位置が想定どおりか。
- マット外にはみ出していないか。
注意:拡大しないとタックダウンが端を掴みきれず、糸が生地端をまたがないことがあります。逆に拡大しすぎると外形が露出しすぎます。2〜3ステップの控えめ拡大がバランス良好です。
ここで、作業効率を高めたい方はフープの付け外しや素材の差し替えを見越して、作業スペースにbrother 刺繍ミシン 用 クランプ枠や、保持力の高いマグネット刺繍枠を併用すると段取りがスムーズになります。
4.4 カット実行(ステップ5)
ScanNCutで「Cut」→「Start」を押すと、自動で生地を外形に沿って正確にカットします。刃の設定やマットへの生地貼り付け手順は動画では詳細説明がありませんでしたが、粘着力の落ちたマットは結果に影響するため注意してください。
4.5 余剰生地の除去とパーツ確認
カット終了後、余剰生地をゆっくり剥がして外形パーツを確認します。複雑な指先形状もきれいに再現され、手切りでは難しい精度が得られます。

4.6 配置と仮接着(ステップ6)
刺繍機側では、すでに外形のステッチ(配置ステッチ)が縫われています。そこにカット済みのアップリケ生地を重ね、ぴったり合うように置きます。

フープをいったん外してアイロン台など平面に置き、パームアイロンで軽く押さえて仮接着します。ここでは“軽く”で十分です。あとで刺繍工程でしっかり縫い留められます。
クイックチェック:
- 外形ステッチの線と生地エッジが揃っているか。
- 仮接着が均一で、角や細部が浮いていないか。
4.7 刺繍で仕上げ(ステップ7)
フープを刺繍機に戻し、残りの刺繍工程を実行します。わずかに拡大したおかげでタックダウンが確実に端を捉え、ほつれや粗れのない仕上がりになります。

【チェックリスト|手順】
- 刺繍機:外形レイヤーにApplique Material設定→USB保存済み。
- ScanNCut:bPocket→デザイン→外形パーツ選択→2〜3ステップ拡大→安全位置に配置。
- カット後:余剰生地を除去→外形パーツを外形ステッチに重ね→パームアイロンで仮接着。
- 最終:刺繍でタックダウンと縁取りを完了。
5 仕上がりチェック
- エッジの均一性:タックダウンが全周で生地端を確実に捉えている。
- 露出バランス:生地の出すぎ・足りなさがない(2〜3ステップ拡大が効いている)。
- 細部の再現:指先など狭い部位も欠けや乱れがない。
- 表面のフラットさ:仮接着ムラや浮きがなく、触って段差が目立たない。
プロのコツ:最終の刺繍に入る前、フープを軽く叩いて生地浮きを触感で確認すると安心です。作業テーブルが滑る場合は、すべり止めマットやマグネット刺繍枠 brother 用のような保持力の高いフレームで安定性を確保しましょう。
6 完成像と後処理
完成品は、外形に沿ってぴったりと縫い留められ、切り口が乱れないクリアなエッジが特徴です。動画の園芸グローブでは“指の間”のような手切りが難しい箇所も、ScanNCutの自動カットで美しく揃えられました。糸くずが出にくく、時間短縮にも直結します。
納品・保管の前に、裏面の安定紙の状態を確認し、必要に応じて余分を除去またはカットして整えてください。量産時は作業手順のテンプレート化と、フープ出し入れの一連動線を固定化することで、さらにスループットが向上します。これから刺繍を始める方には、操作が直感的なおすすめ 刺繍ミシン 初心者向けの機種選定と、USB連携がスムーズな環境構築を推奨します。
7 トラブルシューティングと回復
症状→原因→対処の順で整理します。
- 症状:ScanNCutで“retrieving”が続き、データが表示されない。
- 可能原因:エクスポート対象が外形(placement)ステッチではない、またはbPocket以外を見ている。
- 対処:刺繍機で外形レイヤーに「Applique Material」を設定し直す。ScanNCutでUSB→bPocketを開き、外形パーツを選択する。
- 症状:タックダウンが生地端を掴めず、縁に糸がかからない箇所が出る。
- 可能原因:拡大量が足りない、配置がずれている。
- 対処:2〜3ステップ分だけサイズを拡大し、外形ステッチに対して丁寧に重ね直す。仮接着をもう一度軽く行う。
- 症状:生地がカットマット上で滑る/浮く。
- 可能原因:マットの粘着が低下、素材の下処理不足。
- 対処:マットを清掃・更新。生地にはHeatnBond LiteやSteam-a-Seam 2を処理する。必要に応じて作業環境に刺繍用 枠固定台を併用し、位置決めを安定化。
- 症状:複数パーツのレイアウトが煩雑でミスが出る。
- 可能原因:カットと配置の順序が不明確。
- 対処:各パーツごとに「Applique Material」を設定し、ScanNCutで一つずつ選択・配置。名称や順番をメモしておくと混乱を防げます。
- 症状:どの程度の拡大量が適切か分からない。
- 可能原因:生地の厚み・糊・糸密度で最適値が変化。
- 対処:2〜3ステップの拡大を初期値とし、試し縫いで端の捉え具合を確認する。コメントでは高さを増やすと幅も自動で追従するとの実例が共有されています。
- 症状:機種互換が不明。
- 可能原因:各機のボタン配置や機能名の差。
- 対処:刺繍機に「Applique Material」相当の機能があるか取扱説明書で確認。ScanNCut側はUSB→bPocket参照ができれば本手順に沿える見込み。
量産や再現性の確保を重視する方は、作業台にマグネット刺繍枠やbrother ミシン向けの保持具を組み合わせ、フープの装着ミスや歪みを抑えるのが有効です。
コメントから
- 価格や購入リンク:動画では価格・リンクは提示されていません。販売店で最新情報を確認しましょう。
- ラインストーン対応:動画の対象外です。ScanNCut単体の別機能・別手順となります。
- テキスト(文字)のアップリケ化:色レイヤーを「Applique Material」にできるデザインであれば応用可能ですが、動画での実演はありません。
- 生地準備・マット・刃設定:生地はHeatnBond LiteやSteam-a-Seam 2で下処理した旨が述べられていますが、マットや刃設定の詳細は動画では未記載です。
最後に、作業効率と再現性をさらに高めたい場合、brother 刺繍機能付きミシンとScanNCutの連携に加えて、周辺の位置決めや保持具(たとえばマグネット刺繍枠や作業用治具)を整備すると、段取り替えの時間が短縮され、品質のバラつきも抑えられます。
